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0-1 現実と妄想の境界線

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 妄想と現実の境界線はどこにあるのか。

 そんなもん俺にはわからないし妄想はただ単なる妄想であり現実は現実としてそこにあるだけなのだろう。
 しかしそうだな。断言する。妄想は結局のところ妄想でしかないのだ。
 妄想の世界とは俺の頭の中で描かれる虚の世界であり、現実に起こっているその現象とはまるで関係が無いのだ。
 そして現実は現実として確かにそこにあって決してそこからは逃れる事はできない。
 目を瞑っても耳を塞いでも現実はいつもそこにある。
 そういうわけで頭の中で俺がどんなに最強の男だとしても現実ではただの一介の何の力もないただのサラリーマンでしかないというわけだ。
 今だってそうだ。俺はこんな掃き溜めの街で、そしてその裏路地で、俺より歳の若いクソガキにカツアゲなんかにあったりしている。

「早く出せよ。俺ら、時間なくてさぁ」

「僕たちワン●ンマンだから。毎日筋トレとランニング毎日しまくっててさぁ。言ってる意味わかるよね?」

 ハングレの二人組。

 一人は髪を金色に染めていて白地に派手な柄の入ったシャツを着ていて顔には青い刺青が入っている。
 一人は長い髪を後ろに束ねているペンキで汚れている作業着の男。

 俺はこんな時でも妄想をしている。
 このクソガキの顔をぐちゃぐちゃにして、サイコロステーキにして、ガソリンをかけて燃やして灰にして海に撒く。
 そんな事を思ったとしてもこのクソガキと相対しているというこの現象に対して何の作用もしないばかりか何の解決にもならない。
 だから俺はその過激な妄想に反するように力無く言う事になる。

「わ、わかりました……。お金を出します……」

 俺は財布から3万円出した。
 短髪で金髪の少年が言う。

「ものわかりがいいね。あ、サツにたれこんだら殺すから」

 そして後ろで髪を束ねた作業着姿の青年が笑いながら俺に手を振る。

「募金ありがと~」

 ガキ共は俺から金を受け取ると裏路地の奥に消えていった。
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