1 / 2
真冬の魔界の窓の外
しおりを挟む
一月にもなると魔界は人間界よりもかなり冷え込む。そもそも魔界の方が人間界よりも平均的に気温が低いのだから当然のことなのかもしれないが、実際に体感している人間の兵はここに来てからこれ程のものだとは。と驚いているだろう。人間界でこの時期の魔界はかなり寒いから気合いを入れて出陣しろだとか、下手をしたら凍傷の恐れあり、だとか言われてからここに赴いだのだろうが、前知識を持ってしてもやはり、体感すると驚きを覚えるのが心情である。そして実際、彼らが人間界で散々警告された通り、兵隊の何割かは凍傷になっているだろうし、七割近くは相当参っていることだろう。ここに永い間暮らしている魔人でさえこの寒さは堪えると言うのに、初めてここに来た人間達が平然としていられるわけがない。そもそも魔人と人間は体の構造が違う。それに寒くて寒くて辛いのに付随して、ここが戦地であると言う精神的負担を背負わなくてはならない。ここは戦争の最前線であり、最も死の確率が高い戦地なのである。いくら辛いと弱音を吐いたところで結局死にたくないのは皆同じなのである。だから皆、神経を研ぎ澄ませて、いつ敵に襲撃されるかわからない魔界の市街を魔法銃を握って血眼になって敵を探し歩くである。
私、クネヒト・アベットはそんな彼ら、人間の兵を潜伏している民家の窓から見つからないように覗いていた。ここに居るの私ただ一人である。なぜなら私達の部隊、それどころか師団はすでに私以外、彼らに全員殺され、私は死にたくなくて戦場からただひたすらに逃亡し、逃げ込んだ先がここだったからである。ここは魔界の第三の都市イバントロ。奇跡的にまだ命ある私は、多くある建物の中でひたすら息を潜めることとなった。これだけ多くの建物の中を全て探索することもないだろうと私は思って、私は内心助かったと思っていた。死の焦りが消えて冷静になった私は現在の魔界について窓の外の人間の兵隊達を偵察しながら思いを巡らせた。ここはもう第三の都市だ。すでに人間軍は魔界の中枢のすぐ近くまで侵攻して来ている。我々の任務はその侵攻を阻止し、人間軍を押し返すと言うものだったはずなのにこんな有様だ。臆病者の一兵士が生き残って居るだけじゃないか。どこもかしこも火事の炎があって、子供の頃遊んだ公園も人間達の爆弾でなくなった。ああ、昔は仲良くやっていたのに。クネヒトは悲観そうな眼差しをしてから、その目をこすった。
戦争当初の魔界は人間軍よりも優勢であった。理由としては、人間は道具を使って魔法を駆使するのに対し、魔人は生身で魔法が使えると言うのと、魔人は人間よりも体が丈夫あると言うこと、そして人間よりも魔界は軍国主義的であり、軍備がもともと整っており、兵士数が多く、これ以前の戦争で活躍した兵士や指揮官達も数多く存在していたからである。しかし次第に劣勢となっていった。これにも要因があった。まず魔人は魔力を消費するたびに体力を消耗する。そして主に魔力を動力として体が機能するのだが、人間と比べて多くのエネルギーを必要し多くの食べ物が必要であった。魔界の民に食料を供給する負担と兵士への負担で経済的な負担が人間よりも重かった。それと人間ならば多少動けるような傷でも、魔人にとっては魔力が漏れ出てしまったり、魔力が逆流したりで致命的になったりもすること。魔人は人間ほど簡単に傷を負わないし、気候にも強いのだが一旦重傷を負うと手がつけられないのである。最後に、これが最も大きな要因であるのだが人間は道具を使って魔法を駆使するので必然的に武器の性能が飛躍的に上がっていたことである。戦争初期には魔人に傷1つつけることのできなかった人間の武器はどんどん魔人にとって致命的なものになっていった。前述した通り魔人は致命傷に弱い。人間の最新兵器で魔人軍はどんどんと押し返された。
クネヒトが目をこすっていると人間の武器の発砲音が聞こえた。クネヒトが目を開けると人間が人間を射殺したようだった。窓の外から怒鳴り声が聞こえる。
「貴様ら、よく見ろ、コイツは魔人共の酒をこっそりポケットに入れてやがった。魔人の作った酒を飲もうとするなど言語道断だ。いくら寒いからといってもこう言う勝手な行動は許さない。酒ならば人間界の酒を飲め。貴様らも同じようなことをしたら銃殺する。」
どうやら人間軍の上官が声を荒らげているようだった。それにしてもひどいことをする。しかし、さっき殺された兵も、元を辿れば私達魔人が戦争を仕掛けたせいだ。私たちが殺したのだ。魔人の私があの上官を貶すことができた立場ではないのかもしれない。だがもし私があの上官ならきっと殺さないだろう。叱ることは正直な話、軍の風潮だとかで少しは感化されて、行うだろうが、殺しはしないだろう。やはりきっとあの上官は冷酷な人間なんだと私は決めつけた。しばらくすると上官は辺りを見回してから大声で召集と言った。上官は暫く休憩に入るとでもいったのか、兵士達は地面に座ったり、煉瓦造りだった壊れた家に腰掛けたりした。
上官はどこかへ去ってしまって窓からは姿が見えなかった。私はその間ずっと兵士達を偵察していたのだが、何か音が聞こえるのである。この建物の下のようだ。私は心臓がドキドキして汗が出てきた。まさか上がっては来ないよなと。部屋の床に耳をつけて盗聴すると何かすすり泣いているような声が聞こえた。
私、クネヒト・アベットはそんな彼ら、人間の兵を潜伏している民家の窓から見つからないように覗いていた。ここに居るの私ただ一人である。なぜなら私達の部隊、それどころか師団はすでに私以外、彼らに全員殺され、私は死にたくなくて戦場からただひたすらに逃亡し、逃げ込んだ先がここだったからである。ここは魔界の第三の都市イバントロ。奇跡的にまだ命ある私は、多くある建物の中でひたすら息を潜めることとなった。これだけ多くの建物の中を全て探索することもないだろうと私は思って、私は内心助かったと思っていた。死の焦りが消えて冷静になった私は現在の魔界について窓の外の人間の兵隊達を偵察しながら思いを巡らせた。ここはもう第三の都市だ。すでに人間軍は魔界の中枢のすぐ近くまで侵攻して来ている。我々の任務はその侵攻を阻止し、人間軍を押し返すと言うものだったはずなのにこんな有様だ。臆病者の一兵士が生き残って居るだけじゃないか。どこもかしこも火事の炎があって、子供の頃遊んだ公園も人間達の爆弾でなくなった。ああ、昔は仲良くやっていたのに。クネヒトは悲観そうな眼差しをしてから、その目をこすった。
戦争当初の魔界は人間軍よりも優勢であった。理由としては、人間は道具を使って魔法を駆使するのに対し、魔人は生身で魔法が使えると言うのと、魔人は人間よりも体が丈夫あると言うこと、そして人間よりも魔界は軍国主義的であり、軍備がもともと整っており、兵士数が多く、これ以前の戦争で活躍した兵士や指揮官達も数多く存在していたからである。しかし次第に劣勢となっていった。これにも要因があった。まず魔人は魔力を消費するたびに体力を消耗する。そして主に魔力を動力として体が機能するのだが、人間と比べて多くのエネルギーを必要し多くの食べ物が必要であった。魔界の民に食料を供給する負担と兵士への負担で経済的な負担が人間よりも重かった。それと人間ならば多少動けるような傷でも、魔人にとっては魔力が漏れ出てしまったり、魔力が逆流したりで致命的になったりもすること。魔人は人間ほど簡単に傷を負わないし、気候にも強いのだが一旦重傷を負うと手がつけられないのである。最後に、これが最も大きな要因であるのだが人間は道具を使って魔法を駆使するので必然的に武器の性能が飛躍的に上がっていたことである。戦争初期には魔人に傷1つつけることのできなかった人間の武器はどんどん魔人にとって致命的なものになっていった。前述した通り魔人は致命傷に弱い。人間の最新兵器で魔人軍はどんどんと押し返された。
クネヒトが目をこすっていると人間の武器の発砲音が聞こえた。クネヒトが目を開けると人間が人間を射殺したようだった。窓の外から怒鳴り声が聞こえる。
「貴様ら、よく見ろ、コイツは魔人共の酒をこっそりポケットに入れてやがった。魔人の作った酒を飲もうとするなど言語道断だ。いくら寒いからといってもこう言う勝手な行動は許さない。酒ならば人間界の酒を飲め。貴様らも同じようなことをしたら銃殺する。」
どうやら人間軍の上官が声を荒らげているようだった。それにしてもひどいことをする。しかし、さっき殺された兵も、元を辿れば私達魔人が戦争を仕掛けたせいだ。私たちが殺したのだ。魔人の私があの上官を貶すことができた立場ではないのかもしれない。だがもし私があの上官ならきっと殺さないだろう。叱ることは正直な話、軍の風潮だとかで少しは感化されて、行うだろうが、殺しはしないだろう。やはりきっとあの上官は冷酷な人間なんだと私は決めつけた。しばらくすると上官は辺りを見回してから大声で召集と言った。上官は暫く休憩に入るとでもいったのか、兵士達は地面に座ったり、煉瓦造りだった壊れた家に腰掛けたりした。
上官はどこかへ去ってしまって窓からは姿が見えなかった。私はその間ずっと兵士達を偵察していたのだが、何か音が聞こえるのである。この建物の下のようだ。私は心臓がドキドキして汗が出てきた。まさか上がっては来ないよなと。部屋の床に耳をつけて盗聴すると何かすすり泣いているような声が聞こえた。
0
お気に入りに追加
2
あなたにおすすめの小説
〖完結〗その子は私の子ではありません。どうぞ、平民の愛人とお幸せに。
藍川みいな
恋愛
愛する人と結婚した…はずだった……
結婚式を終えて帰る途中、見知らぬ男達に襲われた。
ジュラン様を庇い、顔に傷痕が残ってしまった私を、彼は醜いと言い放った。それだけではなく、彼の子を身篭った愛人を連れて来て、彼女が産む子を私達の子として育てると言い出した。
愛していた彼の本性を知った私は、復讐する決意をする。決してあなたの思い通りになんてさせない。
*設定ゆるゆるの、架空の世界のお話です。
*全16話で完結になります。
*番外編、追加しました。
【完結】いてもいなくてもいい妻のようですので 妻の座を返上いたします!
ユユ
恋愛
夫とは卒業と同時に婚姻、
1年以内に妊娠そして出産。
跡継ぎを産んで女主人以上の
役割を果たしていたし、
円満だと思っていた。
夫の本音を聞くまでは。
そして息子が他人に思えた。
いてもいなくてもいい存在?萎んだ花?
分かりました。どうぞ若い妻をお迎えください。
* 作り話です
* 完結保証付き
* 暇つぶしにどうぞ
【完結】忘れてください
仲 奈華 (nakanaka)
恋愛
愛していた。
貴方はそうでないと知りながら、私は貴方だけを愛していた。
夫の恋人に子供ができたと教えられても、私は貴方との未来を信じていたのに。
貴方から離婚届を渡されて、私の心は粉々に砕け散った。
もういいの。
私は貴方を解放する覚悟を決めた。
貴方が気づいていない小さな鼓動を守りながら、ここを離れます。
私の事は忘れてください。
※6月26日初回完結
7月12日2回目完結しました。
お読みいただきありがとうございます。
【完結】捨ててください
仲 奈華 (nakanaka)
恋愛
ずっと貴方の側にいた。
でも、あの人と再会してから貴方は私ではなく、あの人を見つめるようになった。
分かっている。
貴方は私の事を愛していない。
私は貴方の側にいるだけで良かったのに。
貴方が、あの人の側へ行きたいと悩んでいる事が私に伝わってくる。
もういいの。
ありがとう貴方。
もう私の事は、、、
捨ててください。
続編投稿しました。
初回完結6月25日
第2回目完結7月18日
【完結】亡き冷遇妃がのこしたもの〜王の後悔〜
なか
恋愛
「セレリナ妃が、自死されました」
静寂をかき消す、衛兵の報告。
瞬間、周囲の視線がたった一人に注がれる。
コリウス王国の国王––レオン・コリウス。
彼は正妃セレリナの死を告げる報告に、ただ一言呟く。
「構わん」……と。
周囲から突き刺さるような睨みを受けても、彼は気にしない。
これは……彼が望んだ結末であるからだ。
しかし彼は知らない。
この日を境にセレリナが残したものを知り、後悔に苛まれていくことを。
王妃セレリナ。
彼女に消えて欲しかったのは……
いったい誰か?
◇◇◇
序盤はシリアスです。
楽しんでいただけるとうれしいです。
私はいけにえ
七辻ゆゆ
ファンタジー
「ねえ姉さん、どうせ生贄になって死ぬのに、どうしてご飯なんて食べるの? そんな良いものを食べたってどうせ無駄じゃない。ねえ、どうして食べてるの?」
ねっとりと息苦しくなるような声で妹が言う。
私はそうして、一緒に泣いてくれた妹がもう存在しないことを知ったのだ。
****リハビリに書いたのですがダークすぎる感じになってしまって、暗いのが好きな方いらっしゃったらどうぞ。
狼の子 ~教えてもらった常識はかなり古い!?~
一片
ファンタジー
バイト帰りに何かに引っ張られた俺は、次の瞬間突然山の中に放り出された。
しかも体をピクリとも動かせない様な瀕死の状態でだ。
流石に諦めかけていたのだけど、そんな俺を白い狼が救ってくれた。
その狼は天狼という神獣で、今俺がいるのは今までいた世界とは異なる世界だという。
右も左も分からないどころか、右も左も向けなかった俺は天狼さんに魔法で癒され、ついでに色々な知識を教えてもらう。
この世界の事、生き延び方、戦う術、そして魔法。
数年後、俺は天狼さんの庇護下から離れ新しい世界へと飛び出した。
元の世界に戻ることは無理かもしれない……でも両親に連絡くらいはしておきたい。
根拠は特にないけど、魔法がある世界なんだし……連絡くらいは出来るよね?
そんな些細な目標と、天狼さん以外の神獣様へとお使いを頼まれた俺はこの世界を東奔西走することになる。
色々な仲間に出会い、ダンジョンや遺跡を探索したり、何故か謎の組織の陰謀を防いだり……。
……これは、現代では失われた強大な魔法を使い、小さな目標とお使いの為に大陸をまたにかける小市民の冒険譚!
【完結】記憶を失くした旦那さま
山葵
恋愛
副騎士団長として働く旦那さまが部下を庇い頭を打ってしまう。
目が覚めた時には、私との結婚生活も全て忘れていた。
彼は愛しているのはリターナだと言った。
そんな時、離縁したリターナさんが戻って来たと知らせが来る…。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる