猫のランチョンマット

七瀬美織

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閑話 今日のランチョンにゃんこ③

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【注意事項】猫の吐き戻しについて色々と書いてます。そういった表現が苦手な方もいらっしゃるでしょう。本編とは深い関連はありません。ご不快な方は、このお話は飛ばしてお読み下さい。











 ランチョンマットの朝は早い。夜明け前から活動したり、食欲を満たすために私を起こしたりする。

 早朝に起こされない様に、夜寝る前にフードを用意しておけばいい? 

 それは、オススメ出来ないな。フードを出しっ放しにしたくないのには衛生上の問題があるからだ。
 栄養価の高いペットフードは、出しっ放しにすると虫がたかるのだ。ハエやゴキブリは、いくら清潔に保っていても、何処からか湧いて出でくるのだ。
 周りが空き家だらけだから、繁殖場所になっている可能性もある。ホウ酸ダンゴ系の駆除剤だけでは、エンカウント率が下がらないのだ。
 特に、缶詰タイプは水分を多く含むので傷みやすい。猫の健康に配慮して、防腐剤なんか入って無い。衛生にも配慮して作られているから、人間が食べても大丈夫らしいけど、味は塩分控え目だ。ネットに間違って食べた人の話があるけど、薄味ながら美味しいらしい……。

 そして、今朝は吐き戻し注意報が発令中なのである。

 猫の不思議な生態なのだけれど、初めて食べた物や変わった味を食べたら、しばらくすると吐き戻してしまう。半分だったり、全部だったり、吐いてしまうのだ。もちろん、吐かない時もある。

 何故なのか、明確な理由は解明されていないようで、毒を含んだ食べ物を食べてしまわないようにとか、消化器系統が発達していないからとか、早食いで胃に空気が溜まるからとか、諸説あるけどかなりの確率でランチョンは一度吐く。

 えー。やだあー。なんて言わないで、変な物を食べていないか、毛玉をちゃんと吐けているのか、健康チェックに役立つのだから諦めましょう。

 あと、水分と胃酸を含んでいるから、放置していると、フローリングが傷むのだ。床ワックスを塗ってあっても、樹脂ワックスは水分と酸性に長く触れると腐食する。その部分だけペロンと剥げるのだ。

 吐き戻しを発見したら、健康チェックして、キッチンペーパーとビニール小袋で固形物を取り除き、丁寧に水拭きする。乾いた雑巾で水分を取ったら、速乾スプレーの床ワックスを塗っておく。これをしておけば、半年に一度、本格的に床ワックスを塗ってしまうと剥げた面は目立たなくなる。多少はあとが残るかもしれないけど、かなり目立たなくなるそうだ。

 あとは、塗ったワックスが乾くまで手作りガードで囲っておく。最初、ダンボールで円筒状のガードを作ったら、ランチョンマットは大喜びで爪研ぎしたり、突撃して倒したりして遊んでしまった。失敗、失敗。

 なので、今度は油ハネ防止のアルミニウム製のガード利用して作ってみた。パリパリと折り目を付けて、四角くい囲いを作ってみると、かなり立派な物が仕上がった。うむ、満足な出来だ。
 ランチョンは、アルミがギラギラ光るのとパリパリ音がするのが嫌なのか、避けて通る。よしよし。

 さて、なるべく素早く見つけて処理したいけど、同じ時間にするわけではないし、場所も様々なので、たまに踏んづけたりする日もある。
 即、お風呂で足裏を洗って、靴下は手洗いする。胃液だけに酸性だし、魚類は放置すると超臭いからね。

 なんと最近は、ランチョンマットが自己申告してくれるのだ!
 ランチョンが、しょんぼり所在なさげに座ってる横に、吐いたあとがあるのだ。ランチョンはいいだね。叱られるかもと警戒しているようだけど、叱った事は無いよ。だって、生理現象なんだからね。

 生き物を飼うって、当たり前に汚ない作業もしないといけない。猫トイレのお掃除も、私の毎日の習慣になっている。

 オシッコが固まるタイプの猫砂で、固まりの数や大きさを観察する。もちろん、これも健康チェックになるからね。
 フンの匂いに形に大きさ、硬い柔らかい、異物の混入だって、目を光らせている。
 時々、動物病院で悪食な猫の話を聞く。置いてあるスマホやイヤホンのコードを齧って食べちゃったり、オモチャの羽飾りを毟って食べちゃったり、プラスチック製のペンをバリバリ食べたツワモノの話もある。
 飼い主さんは、真っ青になって動物病院に駆けつけてくる。レントゲン撮影や、内臓から出血のあとがないかとか調べて慎重に様子を見る。小さな身体は、ほんの少しの異物で命を落としてしまうからだ。

 こんなに大変なのに、何故そんなに毎日お世話出来るのか?

 それは、愛! 愛しているからに決まっているじゃないの! 

 あ、それはいい? 

 そんな事言わずに、聞いてよ! 私のランチョンマットは超絶かわいいのだ! こんなに尊い存在は、他に無いの! ランチョン! 愛してる!


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