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⑯ 祖母の言葉
しおりを挟むおばあちゃんが、わたしによくこう言っていた。
『人を、指差しちゃいけません。人でないものも指差しちゃいけません』
わたしは、なぜ人を指差しちゃいけないのか、理由がわからなかった。
おばあちゃんの言葉を聞いちゃいなかった。
素直に、そういうものだと思っていればよかったのに……。
山の奥の廃墟で肝試しをした。
私たちは、自分達の浅はかさを知ることになった!
背後にいた。
真っ暗な人影。
今にも、先輩に襲いかかりそうな姿を……!
声を出して叫ばなきゃ!
声が出ない!
先輩! 先輩! 先輩!
背後! 背後! 背後ーーーー!
プルプル震える身体は、硬直して動かない!
キリキリと糸に引っぱられるように、左腕がゆっくりと持ち上がり、やっと先輩の背後を指差せた!
『人を指差しちゃいけません。人でない物も指差しちゃいけません』
突然、おばあちゃんの言葉が蘇る……!
先輩は、私が指さした背後をゆっくり振り返り、絶叫して逃げた。
私も慌てて後を追った。
ーーーーーーーー 覚えてろ!
知らない男の声がした!
その時から、わたしの左手の人差し指の爪が、まるでウロコが剥がれる様に細かく割れてペリペリ落ちていく……。
他の指の爪は何とも無いのに、左手の人差し指の爪だけ、深爪に勝手になる。
爪は、身のギリギリまで剥がれて落ちていく。爪の先が1ミリ縦に割れて、刺すような痛みと共に、じんわり血が滲んで落ちた。
爪は、伸びては割れた。
いつまでも、痛みは消えなかった。
伸びては割れ続けた……!
医者に見てもらって薬を塗り、食事のバランスも気をつけて生活した。
あれから、もう十数年。
病院を変え、薬を変え、除霊もしてもらった。
だが、伸びた爪は割れて、血が少し滲む程度だが、ジクジクとした痛みは、ずっと消えなかった。
『人を、指差しちゃいけません。人でないものも指差しちゃいけません』
おばあちゃんの言っていた通りだった……。
おばあちゃんは、右手の人差し指にいつも包帯を巻いていた。
葬儀の時、棺の中のおばあちゃんの右手の人差し指に巻かれた包帯を、誰も気にしていなかったのを不思議に思ったのを思い出した。
だから、わたしも娘に、孫に、言って聞かせるのだ……。
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