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第一章 初恋
第七話 竜騎士団見学 ②
しおりを挟む今日のお勉強は、私一人だけだっだ。アレクシリスは、体調を崩したそうで授業をお休みしたからだ。アレクシリスに昨日の竜騎士団の見学話を聞きたかったから残念だ。従者のフレデリクが、授業前に伝えに来たけど、ずいぶん顔色が悪い。大したことはないと、彼は言っていたけど心配だ。フレデリクに、アレクシリスのお見舞いに行きたいと申し出たら、やんわりと断られてしまった。う~ん。
今日もリンジャー先生に、王国の組織について簡単に講義してもらう。アレクシリスがお休みという事もあって、授業というより雑談会になっちゃったけど、それなりに有意義だった。
王国には、魔術師団のギルド『茨の塔』があり、王城の端に本部を置いている。魔法や魔術については、また別の教師に教わる。
王国警備隊の仕組み等々、知りたい事も増えていく。商業ギルドに、冒険者ギルド、傭兵ギルドや、精霊神殿の存在や、挙げればきりがない。
世界が変わっても、国が成り立つ為には、様々な組織や仕組みが必要なのだと思った。
とにかく、午後イチ、竜騎士団の見学だ!
自室に戻り、昼食もさっさと済ませた。この後が楽しみで、ついつい早食いになってしまう。
「まあ、姫様ったら、慌てなくても竜騎士団は無くなりませんよ」
エルシア達に、微笑ましい目で見られて、ちょっと恥ずかしかった。
昼食の紅茶は、ミルクをたっぷり入れて砂糖は少なめにした。デザートが、バニラの風味がアクセントの濃厚なカスタードとバターたっぷりのサクサクパイ生地の絶品カスタードクリームパイだからだ。
この世界の …… と言うよりも、ファルザルク王国の食料事情はとても豊かだ。自国で生産される農産物も種類豊富なうえに、様々な食材とスパイスが輸入されている。あ、図書室に行って、『ファルザルク王国の農産物』について調べないといけなかったが、今日の予定は埋まっている。
ところで、調理法や料理に関しては『落ち人』の異世界知識で『マヨネーズ』や『カレーライス』まであるから充実している。他国には、『ケチャップ』『ソース』『味噌』『醤油』もあるようだ。もちろん、それらも王国に輸入されている。
それから、庶民にまで『栄養』や『食事のバランス』という考えが浸透してる。
だから、ファルザルク王国の料理は、素材を活かした美味しい料理が多く、他国から食事目的に観光客が訪れるほどだった。
春はベリー系のフルーツタルトが旬で美味しいのだが、私の為に用意されるデザート類は、栄養価がとても高い特別な玉子を使った物が多い。王城の片隅で飼育されている特別な鳥が、十日に一つか二つ産み落とす、綺麗な青い殻の大変貴重な玉子だそうだ。一日一個は私が口にする食事に使用されている。かなり贅沢をしているかもしれない。
ただ、私は四歳の割りに身体が小さくて痩せ気味のうえに食も細い。だから、口にする料理は、見た目や味も素晴らしいが、素材は栄養価重視で調理されている。
時々、見た目は美味しそうだけど、苦味や渋みが強い料理が出されたりする。さすがに、食べられないほど不味い食事は出ないけど、見た目と味のギャップが激しくて、口に入れた瞬間に固まってしまう事もある。食事は、毒味されているから大丈夫とわかっていても、ピンク色の甘い香りの野菜がすごく酸っぱかったり、生臭い魚が甘辛かったり、味の予想が微妙に違うと、本能的に飲み込むのを拒否してしまう。
すると、エルシアがすかさず味と素材の解説をしてくれて、安心して飲み込む事が出来るのだ。
さあ、今日はお昼寝なしで、エルシアと護衛騎士のブーフィング親子達とで竜騎士団にお出かけだ。あれ? これって、私のはじめての遠出になるのかな?
ファルザルク王国の王宮の右翼側に、竜騎士団の本部詰所や寮がある。その更に最奥の崖地に建つのが契約竜の寮という配置になっている。王宮から竜騎士団詰所には専用通路一本で行けるのだ。なんだ、近いよね。なんて考えていたら、甘かった。
ファルザルク城は、各棟の配置が迷宮仕様で通路が複雑に繋がっている。高低差のある場所に建物を増改築したせいで、二階から隣の棟へ回廊を渡ると四階に繋がるなんて当たり前だ。
しかも、幼女がテクテク歩くには、無謀なほど広大な敷地面積をドンと誇っていた。
だから、ある程度歩いたら、護衛騎士のロベルト(父)が腕に座る子供抱っこをしてくれた。さすが、元近衛騎士団長の腕は筋肉質で硬くて座り心地があまり良くなかった。あとで、イトラス(息子)と交代してもらおう。
「ロベルト、ありがとうございます」
「おそれながら、姫様が歩くには、距離がございますからね」
「こちらの通路は、近衛騎士以外あまり人がいないのですね」
王宮の王族居住区から出て、公務が行われる中央執務棟を抜けるため、各部署の執務室の廊下の一つを歩いている。この辺りは、出仕している下位貴族や使用人が多数働いているらしい。
でも、廊下を歩く者はなく、所々の扉の前に立つ近衛騎士以外ほぼ無人なのだ。不思議に思ってロベルトに尋ねた。
「本日、姫様が通る通路は、近衛騎士が管理して立ち入り禁止にしております」
「まあ、ではお仕事をされている皆様の邪魔をしてしまったのですね」
「ご心配なく、城内は迂回路も沢山ありますし、この方が少人数で警備しやすいのです」
「そうですか」
でも、外出する度にこれじゃ、申し訳ない気がするな。
「王宮の中央執務棟から、竜騎士団本部詰所までは、直結する専用通路があります。専用通路の入り口までは、警備上迂回しながらの道程になります。専用通路は、竜騎士団員と、騎士団専任の女官達しか利用できません。そこは、規制出来ませんが、竜騎士団から出迎えが参ります」
「お出迎えだなんて、緊張してきます」
「姫様、緊張しているのは、竜騎士団の方々でしょう」
みんな笑っているけど、私の身分は国王の孫ってとこだけだよね。そこまでの身分なの?! なのかな?
私は、まだ幼い子供なので公務に参加したり、貴族と謁見したり、王族として明らかに扱われることがなかった。
王宮の中央執務棟の母上の執務室と、父上の近衛騎士団の詰所でも、上司の娘さんって感じに可愛がられているつもりだった。
改めて考えると、私は、自分の立場をよく解ってない気がした。
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