57 / 84
第二章 疑雲猜霧のファルザルク王国
閑話 アレクシリス元王弟殿下の結婚問題
しおりを挟む☆本編が滞っているので、マリーのお巫山戯テイスト閑話を投入いたします。ノリノリで書いてから投稿のタイミングがなく、約一年半くらい御蔵入りしていました。前半、真面目なファルザルク王国竜騎士団の内情解説。後半、マリーが壊れてます。☆
ファルザルク王国竜騎士団長、アレクシリス=ヒンデル=ハイルランデル公爵は御年二十六歳の花の独身だ。正式に臣籍降下したというのに、未だに『王弟殿下』と呼ばれてるのには……まあ、色々と理由があるの。
まず、ファルザルク王国の女王、アレクサンドリア陛下は、年の離れた異母弟を溺愛していている。アレクシリスは、女王陛下の最愛の親友の忘れ形見でもあるからだ。
たとえ、アレクシリスが臣下に下っても、女王陛下は、彼を王太子に次ぐ王位継承権第二位に強制的に据えて、王室と疎遠になる事を許さなかった。
アレクシリスは最年少で竜騎士団の団長を務め、竜族と国の間を取り持っている。
しかも、苛烈な性格の女王陛下を諌める事の出来る貴重な人物という認識で、『王弟殿下』の呼称は認知されているって感じ。
世間一般では、男女の結婚適齢期は十六歳から二十四歳ぐらい。更に、田舎ほど早婚傾向で、貴族社会でも十八歳にもなれば、婚約くらいはしている。
そして、男女共に二十四歳を過ぎてしまうと世間体が悪くなり、何か事情や問題があると思われてしまう。全く理不尽だ……。
アレクシリスは、幼い女の子が一度は夢見るような、容姿端麗、頭脳明晰な金髪碧眼の本物の王子様なのである。
彼は、さらさらの金の髪に、深い青い瞳、甘い微笑みを湛えた、美しい彫刻の様な顔立ちをしている。長身で細身だけど、しっかりと鍛え上げられた筋肉を、軍服に包んでいても駄々漏れの色気でご婦人方を悩殺してる。天然フェロモン男子。
意外と腹黒いくせに、猫のかぶり方は完璧で、ムカつく程隙がない。結婚相手としては、超一流の国内最高物件だ。
彼が、国内でも最高峰の婚姻条件にもかかわらず、未だ婚約者もなく独身の理由は『竜騎士』だからなの?
ファルザルク王国の竜騎士の『契約者』は、独身者がとても多い。
表向きの理由は『契約竜』と『契約者』の契約の絆が深く、精神的に満たされているからだと言われている。
恋人に『わたしと『契約竜』の、どっちが大事なの?!』と、聞かれて『契約竜』と、答える愚か者が結婚出来るはずないと、ベタな笑い話にされてる……。
しかし、真相は『竜騎士』と言う立場は、とても微妙な地位だからだ。
ファルザルク王国は、厳正な審査条件さえ通れば身分に関係なく、誰でも『契約者』になれる制度がある。
おまけに、人間の大空を自由に飛ぶことへの憧れや、竜族の生涯唯一の契約相手に選ばれるロマンがある! ……素晴らしいよね!
竜騎士団は、国軍の中心にありながら、戦闘に参加する事は少ない。存在そのものが、他国への威嚇になる国防の要なのだ。
それゆえなのか、平民出身の竜騎士は騎士団全体の八割と意外に多い。
たとえ、平民出身であっても『契約者』となれば、竜騎士団に所属する事になり、『契約竜』と『契約者』の双方には、王国から一代限りの竜騎士爵の地位を与えられる。竜騎士爵は、貴族の男爵と伯爵の中間位の地位になる。普通の騎士爵よりも、かなり高位でなかなかの厚待遇だ。
さて、ファルザルク王国は、名誉ある竜騎士爵を与えられる機会を、何ゆえ平民出身者へ門戸を開放しているのか?
それは、竜族と契約出来る条件が、完全な一方通行だからだ。竜族が、気に入るか入らないかのみだから……。
『契約者候補』が、どんなに優秀でも、人格者でも、容姿が優れていても、血筋も、身分も高くても関係ない。
竜族が、応じるか否かで終わる。もう、気持ちがいいくらい、バッサリなの。
他国への絶対牽制抑止力である竜騎士団の維持は、ファルザルク王国軍の最重要案件なのだ。
そういうわけで、竜騎士は、貴族社会において尊敬と出自の低さから蔑みの両方の視線に晒される。これも、また理不尽だ。
竜騎士団員は守秘義務の為に、王宮の竜騎士団宿舎が生活の中心で、外出が厳しく制限されている。
当然、異性との出逢いが少なくなる。自然に『契約者』のお相手は、王宮関係の平民出身者の奉公人や貴族社会のご令嬢を選ばざるを得なくなる。どちらも、身分の釣り合いをとるのが難しく、結婚まで至らず破談になりやすいのだった。
竜騎士爵は、結婚が遠くなる傾向でも、竜族と契約可能の条件に、血筋が含まれる訳ではないので、『契約者』の晩婚や独身を国はあまり問題視していない。
それでも、武勲をたてたり出世でもすれば、結婚率は上がっただろう。
しかし、苦労して『契約者』になり、竜騎士団に所属しても、いざ戦闘等に参加するか否かの選択肢まで『契約竜』しだいだ。
一度も戦闘訓練に参加しない『契約竜』もいる。
それに、戦闘訓練に参加しない『契約竜』でも仕事は沢山ある。さすがに、国だって貴重な『竜騎士』を遊ばせてはくれない。要人の送迎だったり、伝令だったり、荷物の配送だったり、需要はたっぷりある。大空を自由に飛べる力持ちさんは、利用価値が高すぎる。まあ、維持費もそれなりなので、コストが高いのがたまにキズ……。
先々代国王の『契約竜』が、契約理由を『三食、昼寝付き、厚待遇』と、答えた話がある。竜族の性格を顕す逸話として、竜騎士団の内輪では有名だ。だが、決して真実は公にはしてはならない。
公式記録で、かの『契約竜』は国王の側を片時も離れず、暗殺者を退けし、竜族と称えられてる。『契約者』の国王は、竜族と契約した稀代の賢王として歴史書に記されている。
真実を知れば、夢もロマンもヘッタクレもあったもんじゃないよね。
竜族の契約動機が、契約者同士の秘密の理由は、あまりに残念過ぎる内容が多いからではない。断じて! …………多分?
そんな竜騎士をやってるから、ファルザルク王国のアレクシリス閣下が結婚出来ないって、理由に……なる? ならない、ですよねー!
アレクシリスが結婚出来ない真相は、他にもあるはず!
因みに、近衛騎士団は、貴族の嫡子以外の就職先として人気が高いの! ただし、王配殿下兼近衛騎士団長の父上様の地獄の訓練を耐えきらなければ入団を許可されないという狭き門だ。みんな頑張れ~!
第一回、『アレクシリスは、何故独身なんだ?!』くあぁぁぁぁいぎ~!
司会は私、ファルザルク王国王太子マリシリスティア王女です。
アレクシリスの一つ年下の二十五歳です。七つ下に性格が非常に残念で、可愛い双子の弟達がいます。二人とも、叔父のアレクシリスを兄上呼びしつつ、尊敬し過ぎてお馬鹿に育ちましたので、私が次期女王です!
婚期が遅れているのは、理想の王配募集中だからで~す!
では、国家魔導師の海野遊帆氏に、まずお伺いします。
ねぇ、ねぇ、ゆ~ほ~、アレクシリスが結婚出来ないのは何故なんだと思う?
『坊●だから、ガッ!いきなり魔力で殴るな! 痛いだろうが!!』
え~、只今、不適切な発言がありました事を、深くお詫び申し上げます。キモオタ変人に聞いた私が間違っておりました。
では、次は私室で寛ぐアレクサンドリア女王陛下です。
ねぇ、ねぇ、母上様。アレクシリスが結婚出来ないのは何故でしょう? 早く、お婿さんにいかないと、一生独身かもよ?
『……アレクシリスはずっと王家にいるのよ。何処にも行かないに決まってるでしょう?』
……やはり、母上様が原因でしょうか?
『そうね。早く、アレクシリスに可愛いお嫁さんをもらって欲しいわね。そして、天使の様な赤ちゃんが見たいわ。絶対、シリスティアリスそっくりな女の子!!』
……母上様は、別の病気デシタネ。
では、ランスグレイルとレンドグレイルの双子の弟達です。二人は、王族専用のリビングにいるようです。愚弟どもには聞くだけ無駄でしょうが、一応聞いておきます。
ランス! アレクシリスが結婚出来ないのは何故だと思う?
『兄上は、女性を面倒くさいって思ってるからじゃないのか? 仕事の方が楽しくて、充実してる感じだから、本気で結婚なんかまだまだ考えてなさそうだよ』
……意外とまともなお答えでした。レンドはどう思う?
『兄上。多分、好きな女性でも出来たんじゃないかな?』
えっ?! レンド! どうして、そんな事わかるの?
『この前、『相手を好きなのか悩んでいる時点で、これを恋と呼べるのか?』って、真剣な顔して呟いていた……』
ぎゃあああああっ! なに?! その恥ずかしい台詞は! アレクシリスが、マジっすかぁ~!!
『マリー姉上、うるさい!』
レンド、アレクシリスは、誰に恋してるかわからないの?!
『誰なんだ! レンド! 教えろ!』
『ランまで、ばか騒ぎするなよ! ……ゲッ!』
あれ? お部屋の温度が、急速に冷凍室化してますね。背後から凍える魔力が……何故? しかも、ランスにレンドも慌てて何処に行くの? そんな、魔王にでも出会ったみたいな顔して逃げ出さなくってもいいじゃない……。え? 後ろ? 何? ゲゲッ!!
まあ、アレクシリス! ごきげんよう。さようなら。って、動けない。靴が床に凍りついてて動けないなぁ~。あはははははは……。
では、第二回をお楽しみに! マリシリスティアでした!
うぎゃああああああぁぁぁぁぁ……!
0
お気に入りに追加
410
あなたにおすすめの小説
亡くなった王太子妃
沙耶
恋愛
王妃の茶会で毒を盛られてしまった王太子妃。
侍女の証言、王太子妃の親友、溺愛していた妹。
王太子妃を愛していた王太子が、全てを気付いた時にはもう遅かった。
なぜなら彼女は死んでしまったのだから。
【完結】いてもいなくてもいい妻のようですので 妻の座を返上いたします!
ユユ
恋愛
夫とは卒業と同時に婚姻、
1年以内に妊娠そして出産。
跡継ぎを産んで女主人以上の
役割を果たしていたし、
円満だと思っていた。
夫の本音を聞くまでは。
そして息子が他人に思えた。
いてもいなくてもいい存在?萎んだ花?
分かりました。どうぞ若い妻をお迎えください。
* 作り話です
* 完結保証付き
* 暇つぶしにどうぞ
【完結】選ばれなかった王女は、手紙を残して消えることにした。
曽根原ツタ
恋愛
「お姉様、私はヴィンス様と愛し合っているの。だから邪魔者は――消えてくれない?」
「分かったわ」
「えっ……」
男が生まれない王家の第一王女ノルティマは、次の女王になるべく全てを犠牲にして教育を受けていた。
毎日奴隷のように働かされた挙句、将来王配として彼女を支えるはずだった婚約者ヴィンスは──妹と想いあっていた。
裏切りを知ったノルティマは、手紙を残して王宮を去ることに。
何もかも諦めて、崖から湖に飛び降りたとき──救いの手を差し伸べる男が現れて……?
★小説家になろう様で先行更新中
逃した番は他国に嫁ぐ
基本二度寝
恋愛
「番が現れたら、婚約を解消してほしい」
婚約者との茶会。
和やかな会話が落ち着いた所で、改まって座を正した王太子ヴェロージオは婚約者の公爵令嬢グリシアにそう願った。
獣人の血が交じるこの国で、番というものの存在の大きさは誰しも理解している。
だから、グリシアも頷いた。
「はい。わかりました。お互いどちらかが番と出会えたら円満に婚約解消をしましょう!」
グリシアに答えに満足したはずなのだが、ヴェロージオの心に沸き上がる感情。
こちらの希望を受け入れられたはずのに…、何故か、もやっとした気持ちになった。
王宮の犬~王太子の愛人の話を蹴って働く私には報復なのか無茶な指令ばかり……超強い協力者といつかきっと一族の安住の地をみつけてやるわ!~
蒼井星空
恋愛
あのバカ王太子。
愛人の話を断ったからと言って、面倒な指令ばっかり出してきて、ほんとなんなのよ!
いつか絶対に思い知らせてやるわ!
(ふぅ...)すみません、取り乱しました。
ごきげんよう、皆さま。わたくしはエリーゼ・ルイン。正式名称はもっと長いのですが、このレフィスオール王国の伯爵であるルイン家の女当主ですわ。
この王国は人族国家であり、私は魔法に秀でた人族、通称"魔族"の長の一族であり、一族を代表して女伯爵をやっております。
そんな私たちに対して多くの者は同じ人族なのに恐れ、蔑んでくるのです。だから私は、いつかもっと魔族の地位を高め、安定した生活をさせてあげるという夢を持っています。ただ、今はまだ力弱く、実現できないので王国の中で犬をやっています。
(なお"犬"というのは蔑称でして、王家や高位貴族から受けた指令を武力で解決する自由軍ですわ。)
それにしても、この内容ではアッシュには頼れないわね。えっ?アッシュって誰ですか?
彼は2つ前の依頼で出会った魔法剣士の青年で、非常に強力な戦士です。彼の魔力は魔族の数十から数百倍という、とんでもない強さを誇っています。ただ、その...彼の愛情がちょっと重たくて。例えば、前回の依頼で、私が少し傷を負っただけで、盗賊団を壊滅させてしまうほどに…。
いけません。間に合わなくなりますわね。それでは皆さん、私は指令をこなしに行って参りますわ!
あまりこちらを舐めないことね……ちょっとアッシュ!あなたに言ったんじゃないから!こらっ!!!
父が死んだのでようやく邪魔な女とその息子を処分できる
兎屋亀吉
恋愛
伯爵家の当主だった父が亡くなりました。これでようやく、父の愛妾として我が物顔で屋敷内をうろつくばい菌のような女とその息子を処分することができます。父が死ねば息子が当主になれるとでも思ったのかもしれませんが、父がいなくなった今となっては思う通りになることなど何一つありませんよ。今まで父の威を借りてさんざんいびってくれた仕返しといきましょうか。根に持つタイプの陰険女主人公。
初夜に「俺がお前を抱く事は無い!」と叫んだら長年の婚約者だった新妻に「気持ち悪い」と言われた上に父にも予想外の事を言われた男とその浮気女の話
ラララキヲ
恋愛
長年の婚約者を欺いて平民女と浮気していた侯爵家長男。3年後の白い結婚での離婚を浮気女に約束して、新妻の寝室へと向かう。
初夜に「俺がお前を抱く事は無い!」と愛する夫から宣言された無様な女を嘲笑う為だけに。
しかし寝室に居た妻は……
希望通りの白い結婚と愛人との未来輝く生活の筈が……全てを周りに知られていた上に自分の父親である侯爵家当主から言われた言葉は──
一人の女性を蹴落として掴んだ彼らの未来は……──
<【ざまぁ編】【イリーナ編】【コザック第二の人生編(ザマァ有)】となりました>
◇テンプレ浮気クソ男女。
◇軽い触れ合い表現があるのでR15に
◇ふんわり世界観。ゆるふわ設定。
◇ご都合展開。矛盾は察して下さい…
◇なろうにも上げてます。
※HOTランキング入り(1位)!?[恋愛::3位]ありがとうございます!恐縮です!期待に添えればよいのですがッ!!(;><)
あなたの子ですが、内緒で育てます
椿蛍
恋愛
「本当にあなたの子ですか?」
突然現れた浮気相手、私の夫である国王陛下の子を身籠っているという。
夫、王妃の座、全て奪われ冷遇される日々――王宮から、追われた私のお腹には陛下の子が宿っていた。
私は強くなることを決意する。
「この子は私が育てます!」
お腹にいる子供は王の子。
王の子だけが不思議な力を持つ。
私は育った子供を連れて王宮へ戻る。
――そして、私を追い出したことを後悔してください。
※夫の後悔、浮気相手と虐げられからのざまあ
※他サイト様でも掲載しております。
※hotランキング1位&エールありがとうございます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる