男子恐怖症の私が男子率の高い私立に入った件

白川 朔

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勉強会

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「みさちゃんなんでこうなるのかな?」
「ごめんなさい。」
あの場を納めるためにはこれ以外の方法を思いつかなかった、と言っておこう。
「田嶋はまだ来ないのか。」
「遅れてごめんね城山さん。」
なっちゃんが姑のように見えてきて、赤髪くんが苛立ち始めた頃合いに、僕の隣の席の田嶋くんが2人のお仲間を連れてやってきた。普段は話しかけないで欲しいのに、今日はなんだか救われた気がした。
まあ、怖いことに変わりは無いから他2人の顔は見れないんだけど。
「翔太から誘っておいて、遅れてくるって常識無いんじゃない。」
「悪いね、でもまだ約束の時間の5分前だ。常識を疑われるようなことはしていないさ。」
なんでこんなにこの2人は仲が悪いんだろう。せっかく、なっちゃんの姑モードから解放されたと思ったのに。これじゃあ、さっきよりも空気が重いじゃないか。なんとかしなきゃ。
「と、取り敢えず皆さん、座りませんか?」
田嶋くんが来てから、みんな立ちっぱなしになっていたから、席に座るように促す。僕の右はが赤髪くん、左が田嶋くん。正面がなっちゃんの位置で席に着いた。座っても空気は改善されることなく、むしろより重くなっているようにも感じる。どうにかしようと思い、机に開いていた教科書を手に取った。
「あの、ここがわからないんだけど、たった、田嶋くん...分かる?」
勉強会で仲良くなる方法は、質問をしてわからない事を共有することだと思う。かなりつっかえながらだったけど意味は伝わった。
「古典?」
僕が田嶋くんに手渡したのは予習をと思って持ってきた教科書だった。
「これ何処の範囲?」
「えっと...。」
かなり先の範囲だと思うけど、
「ちょっと見せてみろ。」
言葉に詰まっていると、赤髪くんが田嶋くんの手から教科書を取った。もしかしたら古典得意なのかな。
「那月わかるか?」
しばらく眺めた後、自分でも分からなかったのかなっちゃんに教科書を差し出した。分からない事を共有出来ている。
「どれ?」
なっちゃんも一緒に考えている。これで少しは仲良くなれるはず。
 すると、なっちゃんは僕と一度目を合わせて微笑んだ。
「みさちゃんの隣変わってくれる?」
僕の隣に座ると、質問した内容を丁寧に教えてくれた。
「なっちゃんは古典得意なんだね。」
「まぁね、でも、わかってる内容を知らないふりしてまで、仲良くする必要はないと思うけど。」
なっちゃんには敵わない。テキトーに手にした教科書は以前一通り理解したものだったので、目についたものを質問しただけだった。
「わかってる問題?」
田嶋くんは全く気づいていなかったようで、僕がうなづいたことで焦っている。セイラで主席を取り続けるためには必要な勉強ではある。
「わかったら翔太は僕が教えてあげるよ。」
「いや。僕はまだ古典を予習していなかっただけだから。」
負け惜しみのようにしか聞こえないけれど、少し和やかな空気にはなった。
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