男子恐怖症の私が男子率の高い私立に入った件

白川 朔

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信頼

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「僕がセイラに来たのは、一番条件がよかったから。うちは大きくはないけど会社を経営してた。父が社長をしていて、まぁそこそこの年商だった。
それが2年くらい前に、父がこのままではいけないと言い出し、新しい経営戦略を提案した。少し無茶なプランだったけどハイリターンな内容だったのでみんな乗り気だった。だけど、みんな見ていなかった。多分父が見せないようにしてたんだ。結果は失敗、慌てた絶対成功すると思っていたものだったから、社員たちは責任追及。父は責任を取って解任することになった。だけど、それで失敗した時の赤字はどうにかなるものじゃない。父はその赤字を置いて蒸発した。
それ以降は母と僕が個人で運用していた株を全て売って会社の破産を免れたけど、まだ不安定でいつ倒産してもおかしくない。
だから、もともと通っていた私立の中学をやめてここに来たって訳。ここは首席である限り、学費生活費を気にせず学校生活を送れる。」
沈黙が続く。重い話なのはわかっていた。冷めてしまった紅茶を飲む気にはなれなかった。
「そっか、じゃ定期テスト頑張らないとだね。」
「そうだな、でもまずこいつの場合クラスに馴染むことだろ。」
あれ。
「可愛そうとか、思わないの?」
「別に、家で会社経営してたらそう言うこともあるだろ。ずっと安定してる家の方が少ない。」
この人たちは、嫌じゃないかもしれない。
「そっか、ありがと。」
「なぁ、礼を言うなら目を見て言えよ。」
「それは、」
ずっと視界に入れないようにしていたから話せていたけど、目を見ては無理だ。
「怖いんだよ。」
言っても良いだろうか。多分この人たちなら憐れんだりはしないだろう。深呼吸して赤髪の目を見る。
「あっ、ああー、あっりが、と」
すぐに下を向く多分、2人はキョトンとしている。顔は見てないけど。
「みさちゃん頑張ったね。」
なっちゃんは褒めて、頭を撫でる。なんで、撫でられてるんだろ。
「お前、対人恐怖症とかか?」
おい赤髪、なんで笑ってるんだよ。
「違います。男性恐怖症です。」
「すごいな。それでセイラに入るとか。」
「頑張って、治します。」
「それなら、手伝ってあげる。」
そう言い放ったなっちゃんはなんだか楽しそう。
「いいの?」
「もちろん、みさちゃんの為なら。」
「俺も手伝ってやる。」
「どうも、」
赤髪は何をするつもりなんだ。
「じゃ、まず俺の事は太一でいいぞ。」
ほんと何がしたいんだ。
「目を見て話せないなら、名前を呼ばないと誰と話したいかわかんないだろ。」
名前を呼ぶのもかなりハードルが高いのを分かっているのか。
「頑張れ、みさちゃん。」
「た、たいっちさん、」
おっ言えた。
「呼び捨てでいいぞ。」
ハードルあげんな、こんにゃろ。
まあ、何はともあれ何とかここで暮らしていけるかもしれない。赤髪も悪いやつではなさそうだし、徐々に慣れていけるだろう。
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