男子恐怖症の私が男子率の高い私立に入った件

白川 朔

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秋山 詩織

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 この女子寮は昨年出来たばかりなのでまだ入居者も少ない。今いるのは、僕ともう1人先輩だけだ。生徒証をかざしてロビーの扉を開ける。この寮は完全オートロック式。24時間366日、警備員が駐在している。各部屋には電話が置いてありルームサービスを頼むこともできる。これが無料なのは贅沢だ。
「こんにちは、お待ちしておりました。2年生の秋山詩織と申します。」
秋山先輩は僕を出迎えてくれた。すらりとした立ち姿は立てば芍薬というのはこういうことだろうか。
「はじめまして」
「伺っております。あなたが新入生の実咲さんですよね。」
軽く寮内の説明をされる。まぁ、まとめると寮の門限は21時であり、それ以降に帰ってくるとロビーから入るときに記録され一定回数を超えると学校に連絡が入って指導対象になる。友人を招きたいときは、部屋番号を入力し生徒証をかざしてもらうことで部屋と繋がり、鍵は中にいる人が開ける。部屋にある電話で#部屋番号を押せば内線が繋がる。というようなことだ。
「実咲さんはどうしてセイラに入られたのですか?」
階段を上りながら先輩は、キラキラした目で聞いてきた。何故かと聞かれても、父親の借金で首が回らなくなり、セイラの特待生制度が頼みの綱だった。とは言えない。
「言いづらいことをお聞きしてしまい申し訳ありません。」
「いえ」
先輩は何かを察したようにうなづいているが、なんとなく間違った解釈をされた気がする。
「分かります。中学では大変だったのですね。でも大丈夫ですよ。ここは優しい方ばかりですから。」
何を言っているのだろうこの先輩は。
「私もそうでしたから。」
まさか、先輩も僕と同じで、
「いじめですよね。」
違った。
「いえ、」
僕はいじめなんかされていない。中学は私立に通っていたし、いじめのある学校環境ではなかった。本当はそのままエスカレーターに乗るつもりだったのに。
「かわいそうに、皆さんはいじめられる人の気持ちがわからないのですよ。」
熱く語りはじめたところで僕の部屋についたらしい。
「では、私はこれで。ずっと一人で寂しかったんですの。よろしくお願いしますね。」
それだけ言って先輩は、帰っていった。
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