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始まりの反転
窮地に陥る
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「なんですか...今回は...?」
情けない話、同学年ながら敬語で話すことが当たり前だ。
当然生意気な口や反論などしようものなら何をされるか分かったもんじゃない、
馬鹿には下出に出ていくことも処世術だ。
下らないプライドは捨てた、元々無かったかもしれないが。
そして廊下の壁寄りに誰かを囲むようにいた、
3人のうちリーダー格の土井が急に振り返り様に大声でふっかけてきた。
「てめえみたいな根暗野郎にも友達ってのはいるもんなんだなあ!?」
そら、エンジンが掛かった。
ヤンキーの教科書にでもあったのか、こいつは高圧的態度を取ることの最初に大声で怒鳴る。
実際先生に叱られることも回避してきた人生を歩む自分はギョッとする。
周りも当然何事かと顔を出せばまたあいつがあいつに絡んでるのか、
とそれだけのことだとそれぞれ戻って行く。
薄情だとはもう思うことも無くなった。
自分でも同じ立場なら見て見ぬフリをする、そう思うと成長を感じるがこんな形ではしたくなかった。
「おら!聞いてんのかあ!?こいつがその友達なんだろおお!?」
そもそも土井の背後にいる人物が誰なのか分からないので今回の厄介事に他人が連れ込まれたと思うと、
少し気が楽になった。被害者はせめて多い方が...そんな考えを押し殺しつつ、
嫌な心当たりが一人だけうっすら浮かんだ。
「や、やめろ!眼鏡に触るな...いで下さい...」
後ろで玉木共に突っつかれていた子の存在が初めて分かってしまった。
唯一の友達...と言っていいのか微妙なラインの柏木(かしわぎ)くんが弱気に抵抗していた。
彼とはたまたま登下校のルートが大体同じでよく顔合わせるため、
仲良く出来るかもしれないと自分から話掛け、
一時は登下校を同じくした子だ。
なんでよりによって心当たりのあるその柏木くんが
遂にいじめられ仲間になってしまったのか見当も着かない。
自分は人付き合いが上手くないせいか長く話せる存在が柏木くんくらいなのだが、
どうにも話に付き合ってくれるだけでそれもゲームのことばかりで、
薄っぺらな関係なだけに友達と呼ぶには憚られた。
そうしてあまり中途半端な関係も良くないと思い、
しばらくは学校で一緒にいることが無かった彼が何故自分の友達だと分かったのか?
瞬間、夏場でガバガバな毛穴から冷や汗がだらだらと流れてきた。
「あの...その...か、彼は...」
どうにかしなくては。
まず彼との関係性が濃いことを知られれば道連れにしかねない、
いやこの際引きずり込むのも...と考える悪い自分を押し込めてハッキリと突っ撥ぱねた。
「全く知らないです!た、他人です!はい...」
こう言えば大丈夫...
「ああ!?俺たちの言ってることが嘘だってのかあ!?」
「そうだぞ~?」「だぞ~?」
柏木くんに飽きた玉木共も入ってきていつもの1対3になってしまった。
こうなってしまったら黙り込むことしか自分には出来ない。
こうしていつものパターンになるのだ・・・・・・。
いや、今日は違う。
俺の後ろには、正確にはこいつらの後ろには柏木くんがいるんだ。
強気に出なければ柏木くんにも呆れられ、しまいには友達になる機会もここで完全に失う。
ここで気丈に振る舞えず押し切られれば、
彼も巻き込んだピンポンダッシュどっちがより多く出来るか対決などをやらせられかねない...!
今日、今この時こそ、この最悪の流れを自らの力で断ち切る時だ。
「か、彼は関係ない・・・!
そうだ!関係ないよ!それに柏木くんが友達だったらなんだって言うんだ...!」
よ、よし。か細い声ではあるが敬語抜きで言ってやったぞ言ってやった、よくやったぞ慎之s
「・・・ん~?・・・今、柏木君って言ったよな・・・?
他人ってさっき言ってたよな?名前なんて出るかふつー・・・?」
「!」
「言ってたよなあ?」
「「言ってた、言ってた」」
やってしまった。
こんなんだから私立で決められた階層で底辺近くなのだ・・・。
あ、ちなみにこの学校では進学校らしくそれぞれのクラスに学力のランク付けがなされているために、
こんな馬鹿が気軽にヅカヅカ教室に入ってきたり
出来の悪い俺はまだ気の合いそうな真面目くんのいるような
水準の高いクラスの子との交流の機会がないのだg
「なに下向いてんだあ!こっち見やがれえ!」
ヒッと声にならない声で現実逃避の状況整理を止めて、サッと顔を上げた。
あまりにも毎回大声ばかり出すのでニキビ面も相まって土井の顔はいつも真っ赤なのだが、
今回は言質を取ったこともあって嫌らしいしたり顔までしている。
「嘘をついた奴には相応の罰を受けてもらわなきゃなあ・・・?」
「罰だ、罰だ」「痛いぞお~」
相変わらず腹の立つ後方の玉木共のニタニタした顔まで今では眼中に無かった、
ちょうど意識をこちらに向けた3人組の後ろの柏木くんが隙間から見えた。
かなり険しい表情をしている・・・睨まれてる?
「どうしてやるかなあ・・・?まずは・・・」
土井の細い右腕が握りこぶしを作って頭上に掲げられる。
ゲンコツだ、
今まで学校内で行われたことは無かったが嘘をついた者には相応な処罰のつもりだろう。
すっかり処刑人が罪人の首に斧を振り下ろすかのようだ。頭頂部に強い衝撃が・・・来る!
そう目を瞑った時、玉木共のすっとんきょんな声が土井の背後から揃って聞こえた。
「「逃げてる!ゲンちゃん!あいつ逃げてるよ!」」
目をパッと開けて土井と玉木兄弟の後ろを見てみると脱兎の如く逃げる柏木くんの姿が見えた。
腕の振りに比べて足が少し遅いが...
「や、野郎!おい、お前ら!あいつを逃がすな!」
即座に動いた玉木兄弟は、お互いの横に広い体をぶつけあって狭い廊下を走っていった。
その姿を呆然と眺めていた俺の胸ぐらを急に掴んで土井は叫んだ。
「これで終わったと思うな!あの眼鏡野郎と一緒にてめえも極刑に処してやる!いいなあ!?」
「わ、分かったから・・・は、離して・・・」
突き飛ばされて尻餅をついて咽る俺に土井は容赦なく、残酷な宣言を浴びせ掛けた。
「そうだなぁ・・・
お前とあいつには殴る、蹴るなんでも有りの無差別級格闘技でもさせるとするかなぁ・・・」
「!」
「せいぜい血みどろの試合を楽しませろよなあ!!」
そう吐き捨てて高笑いしながら玉木達の後を追っていったのを、
ただ虚ろな目で見送ることしか出来なかった。
情けない話、同学年ながら敬語で話すことが当たり前だ。
当然生意気な口や反論などしようものなら何をされるか分かったもんじゃない、
馬鹿には下出に出ていくことも処世術だ。
下らないプライドは捨てた、元々無かったかもしれないが。
そして廊下の壁寄りに誰かを囲むようにいた、
3人のうちリーダー格の土井が急に振り返り様に大声でふっかけてきた。
「てめえみたいな根暗野郎にも友達ってのはいるもんなんだなあ!?」
そら、エンジンが掛かった。
ヤンキーの教科書にでもあったのか、こいつは高圧的態度を取ることの最初に大声で怒鳴る。
実際先生に叱られることも回避してきた人生を歩む自分はギョッとする。
周りも当然何事かと顔を出せばまたあいつがあいつに絡んでるのか、
とそれだけのことだとそれぞれ戻って行く。
薄情だとはもう思うことも無くなった。
自分でも同じ立場なら見て見ぬフリをする、そう思うと成長を感じるがこんな形ではしたくなかった。
「おら!聞いてんのかあ!?こいつがその友達なんだろおお!?」
そもそも土井の背後にいる人物が誰なのか分からないので今回の厄介事に他人が連れ込まれたと思うと、
少し気が楽になった。被害者はせめて多い方が...そんな考えを押し殺しつつ、
嫌な心当たりが一人だけうっすら浮かんだ。
「や、やめろ!眼鏡に触るな...いで下さい...」
後ろで玉木共に突っつかれていた子の存在が初めて分かってしまった。
唯一の友達...と言っていいのか微妙なラインの柏木(かしわぎ)くんが弱気に抵抗していた。
彼とはたまたま登下校のルートが大体同じでよく顔合わせるため、
仲良く出来るかもしれないと自分から話掛け、
一時は登下校を同じくした子だ。
なんでよりによって心当たりのあるその柏木くんが
遂にいじめられ仲間になってしまったのか見当も着かない。
自分は人付き合いが上手くないせいか長く話せる存在が柏木くんくらいなのだが、
どうにも話に付き合ってくれるだけでそれもゲームのことばかりで、
薄っぺらな関係なだけに友達と呼ぶには憚られた。
そうしてあまり中途半端な関係も良くないと思い、
しばらくは学校で一緒にいることが無かった彼が何故自分の友達だと分かったのか?
瞬間、夏場でガバガバな毛穴から冷や汗がだらだらと流れてきた。
「あの...その...か、彼は...」
どうにかしなくては。
まず彼との関係性が濃いことを知られれば道連れにしかねない、
いやこの際引きずり込むのも...と考える悪い自分を押し込めてハッキリと突っ撥ぱねた。
「全く知らないです!た、他人です!はい...」
こう言えば大丈夫...
「ああ!?俺たちの言ってることが嘘だってのかあ!?」
「そうだぞ~?」「だぞ~?」
柏木くんに飽きた玉木共も入ってきていつもの1対3になってしまった。
こうなってしまったら黙り込むことしか自分には出来ない。
こうしていつものパターンになるのだ・・・・・・。
いや、今日は違う。
俺の後ろには、正確にはこいつらの後ろには柏木くんがいるんだ。
強気に出なければ柏木くんにも呆れられ、しまいには友達になる機会もここで完全に失う。
ここで気丈に振る舞えず押し切られれば、
彼も巻き込んだピンポンダッシュどっちがより多く出来るか対決などをやらせられかねない...!
今日、今この時こそ、この最悪の流れを自らの力で断ち切る時だ。
「か、彼は関係ない・・・!
そうだ!関係ないよ!それに柏木くんが友達だったらなんだって言うんだ...!」
よ、よし。か細い声ではあるが敬語抜きで言ってやったぞ言ってやった、よくやったぞ慎之s
「・・・ん~?・・・今、柏木君って言ったよな・・・?
他人ってさっき言ってたよな?名前なんて出るかふつー・・・?」
「!」
「言ってたよなあ?」
「「言ってた、言ってた」」
やってしまった。
こんなんだから私立で決められた階層で底辺近くなのだ・・・。
あ、ちなみにこの学校では進学校らしくそれぞれのクラスに学力のランク付けがなされているために、
こんな馬鹿が気軽にヅカヅカ教室に入ってきたり
出来の悪い俺はまだ気の合いそうな真面目くんのいるような
水準の高いクラスの子との交流の機会がないのだg
「なに下向いてんだあ!こっち見やがれえ!」
ヒッと声にならない声で現実逃避の状況整理を止めて、サッと顔を上げた。
あまりにも毎回大声ばかり出すのでニキビ面も相まって土井の顔はいつも真っ赤なのだが、
今回は言質を取ったこともあって嫌らしいしたり顔までしている。
「嘘をついた奴には相応の罰を受けてもらわなきゃなあ・・・?」
「罰だ、罰だ」「痛いぞお~」
相変わらず腹の立つ後方の玉木共のニタニタした顔まで今では眼中に無かった、
ちょうど意識をこちらに向けた3人組の後ろの柏木くんが隙間から見えた。
かなり険しい表情をしている・・・睨まれてる?
「どうしてやるかなあ・・・?まずは・・・」
土井の細い右腕が握りこぶしを作って頭上に掲げられる。
ゲンコツだ、
今まで学校内で行われたことは無かったが嘘をついた者には相応な処罰のつもりだろう。
すっかり処刑人が罪人の首に斧を振り下ろすかのようだ。頭頂部に強い衝撃が・・・来る!
そう目を瞑った時、玉木共のすっとんきょんな声が土井の背後から揃って聞こえた。
「「逃げてる!ゲンちゃん!あいつ逃げてるよ!」」
目をパッと開けて土井と玉木兄弟の後ろを見てみると脱兎の如く逃げる柏木くんの姿が見えた。
腕の振りに比べて足が少し遅いが...
「や、野郎!おい、お前ら!あいつを逃がすな!」
即座に動いた玉木兄弟は、お互いの横に広い体をぶつけあって狭い廊下を走っていった。
その姿を呆然と眺めていた俺の胸ぐらを急に掴んで土井は叫んだ。
「これで終わったと思うな!あの眼鏡野郎と一緒にてめえも極刑に処してやる!いいなあ!?」
「わ、分かったから・・・は、離して・・・」
突き飛ばされて尻餅をついて咽る俺に土井は容赦なく、残酷な宣言を浴びせ掛けた。
「そうだなぁ・・・
お前とあいつには殴る、蹴るなんでも有りの無差別級格闘技でもさせるとするかなぁ・・・」
「!」
「せいぜい血みどろの試合を楽しませろよなあ!!」
そう吐き捨てて高笑いしながら玉木達の後を追っていったのを、
ただ虚ろな目で見送ることしか出来なかった。
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