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ターニングポイント・分岐点3
公認の関係
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そうして別れの挨拶もそこそこに
部屋を出て出口への廊下を歩く。
...まだ信じられない。
俺は本当に親御さんから直々に娘を託されてしまった。
それもまだ俺は学生だ
ただ、
今はもう浮かれることはない。
彼女のことを、そして彼女の母の切なる想いも知っている
もう、ヘラヘラしている場合じゃあないな
自分の顔を力士のように両手でバシバシと叩いた。
覚悟が決まって引き締まる思いだ
「来てたんですね...」
...やはり来たか
公園で俺を見つけた彼女も俺の気配を察知していた。
「黒田さん...」
静かに向き直った。
事情を知れば何とも不思議な感慨に襲われるものだ。
目の前の彼女は、彼女であって彼女でない。
今は鬱の黒田奈々と言ったところか
「母から言われたんでしょう? 何か」
冷え切った心から発する言葉もどこか冷たい
「うん、黒田さんのことについて話したよ」
出来るだけ平静な感じで接することにする。
首を傾げられた
今の亡霊みたいな彼女はそのまま首が回りそうだ。
「何を話したんです...?」
ここで下手に嘘をつく必要は無いだろう
それに...心を見透かされていて、俺を試しているようだ。
「君の精神病のことだよ」
包み隠さず言った
さすがにストレートはまずかったか?
それは杞憂であった。
「...? 私は精神病なんか患ってませんよ?」
小首を傾げて、
と言えば可愛げがあるが
微かに笑みを含んでいるのは怖くも見える。
それにその表情は、
保健室の時のことを思い出す。
「...どうであれ、俺は君のボディカード...のようなものを任されたからよろしく」
握手を求めてみる
「へえ...有り体に言えば公認の彼氏...ですか?」
そう言って若干動揺した俺の手は握られた。
細い腕の割りに力が強く感じられた
握手の時に強い力で握る人は高圧的な態度を取りたい表れだと
何かの番組で見た。
警戒されているのだろうか
「でもまぁ、私は構いませんよ...?」
彼女は自分の頬に差し出した手を当ててゆっくりと笑みを浮かべる
「浬くんのこと好きですから」
...それにもう一つ思い出した
強い握手は好意の表れでもあると...
一体どちらなのか
素直にも手放しにも喜べるものではないし、
公園であった彼女の告白こそ胸に響くものだ。
もはや今の彼女に言われて響くことじゃない
そう思いつつも上がりかけた口角をヒクヒクしながら抑える
「浬くんは私のことどう思いますか?」
ストレートな質問だ。
セリフだけを聞けばどれだけ青春していることか、
と思われるところだが
これは残念ながら寒い廊下で行われている心理戦だ
どう答えたものか
本心で言えば目の前の黒田奈々は言ってみれば別人だ。
軽々しく好意を伝えるのは浮気なようなものだし......
「どうしたの、こんなところで?」
引き戸が開いて黒田お母さんの登場で引き分けに終わった
いつまでも家を退出せずに廊下で話していることが室内からも
分かったのだろう
「...なんでもありません」
母には一瞥もくれずに不愛想に言うと彼女は去っていった。
「あの子ったら...」
また黒田お母さんの心労とシワがかさみそうだ
「何か話したの?」
彼女が見えなくなると俺に話が振られた
「軽くこれからの事情を説明した...感じです」
不安にさせない程度に教える
「そう...何かあったら私にも話してくれる?」
「はい、では失礼します」
頭を下げて出口に向かう
何となく振り返ると、
黒田お母さんの奥の廊下の曲がり角から黒田さんの姿が見えた。
監視するかのような目だ
これは後が長そうだ......
「お邪魔しました」
ドアを開けると冬の寒気がより一層増して俺に吹き付けた。
部屋を出て出口への廊下を歩く。
...まだ信じられない。
俺は本当に親御さんから直々に娘を託されてしまった。
それもまだ俺は学生だ
ただ、
今はもう浮かれることはない。
彼女のことを、そして彼女の母の切なる想いも知っている
もう、ヘラヘラしている場合じゃあないな
自分の顔を力士のように両手でバシバシと叩いた。
覚悟が決まって引き締まる思いだ
「来てたんですね...」
...やはり来たか
公園で俺を見つけた彼女も俺の気配を察知していた。
「黒田さん...」
静かに向き直った。
事情を知れば何とも不思議な感慨に襲われるものだ。
目の前の彼女は、彼女であって彼女でない。
今は鬱の黒田奈々と言ったところか
「母から言われたんでしょう? 何か」
冷え切った心から発する言葉もどこか冷たい
「うん、黒田さんのことについて話したよ」
出来るだけ平静な感じで接することにする。
首を傾げられた
今の亡霊みたいな彼女はそのまま首が回りそうだ。
「何を話したんです...?」
ここで下手に嘘をつく必要は無いだろう
それに...心を見透かされていて、俺を試しているようだ。
「君の精神病のことだよ」
包み隠さず言った
さすがにストレートはまずかったか?
それは杞憂であった。
「...? 私は精神病なんか患ってませんよ?」
小首を傾げて、
と言えば可愛げがあるが
微かに笑みを含んでいるのは怖くも見える。
それにその表情は、
保健室の時のことを思い出す。
「...どうであれ、俺は君のボディカード...のようなものを任されたからよろしく」
握手を求めてみる
「へえ...有り体に言えば公認の彼氏...ですか?」
そう言って若干動揺した俺の手は握られた。
細い腕の割りに力が強く感じられた
握手の時に強い力で握る人は高圧的な態度を取りたい表れだと
何かの番組で見た。
警戒されているのだろうか
「でもまぁ、私は構いませんよ...?」
彼女は自分の頬に差し出した手を当ててゆっくりと笑みを浮かべる
「浬くんのこと好きですから」
...それにもう一つ思い出した
強い握手は好意の表れでもあると...
一体どちらなのか
素直にも手放しにも喜べるものではないし、
公園であった彼女の告白こそ胸に響くものだ。
もはや今の彼女に言われて響くことじゃない
そう思いつつも上がりかけた口角をヒクヒクしながら抑える
「浬くんは私のことどう思いますか?」
ストレートな質問だ。
セリフだけを聞けばどれだけ青春していることか、
と思われるところだが
これは残念ながら寒い廊下で行われている心理戦だ
どう答えたものか
本心で言えば目の前の黒田奈々は言ってみれば別人だ。
軽々しく好意を伝えるのは浮気なようなものだし......
「どうしたの、こんなところで?」
引き戸が開いて黒田お母さんの登場で引き分けに終わった
いつまでも家を退出せずに廊下で話していることが室内からも
分かったのだろう
「...なんでもありません」
母には一瞥もくれずに不愛想に言うと彼女は去っていった。
「あの子ったら...」
また黒田お母さんの心労とシワがかさみそうだ
「何か話したの?」
彼女が見えなくなると俺に話が振られた
「軽くこれからの事情を説明した...感じです」
不安にさせない程度に教える
「そう...何かあったら私にも話してくれる?」
「はい、では失礼します」
頭を下げて出口に向かう
何となく振り返ると、
黒田お母さんの奥の廊下の曲がり角から黒田さんの姿が見えた。
監視するかのような目だ
これは後が長そうだ......
「お邪魔しました」
ドアを開けると冬の寒気がより一層増して俺に吹き付けた。
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