上 下
174 / 182

第174話 輝く瞳

しおりを挟む
サリーを救出した後、リールに向かい、
攫われたミゲルの人々を救うことが出来た。

更にオリジンの精霊化を使用して、
被験者全員を精霊に変えている。


「それにしても凄い光景だったな……」


「俺も驚いてるよ……
 あれだけ多くの人が精霊になるなんて」


馬車に乗ってルミナスに帰る途中、
母上と共に日々を振り返ると、
改めて偉業を成したと痛感する。


「それにしても、リリス……
 サリーを見て驚かないかな?」


「いや、驚くだろうな……」


母上はリリスの反応を想像して、
冷や汗を流している。
見違えるほどに美しくなった姿を見て、
きっとリリスは驚くだろう……
今まで妹のように接してきたため、
受け入れられなければ落ち込むに違いない。


「まあ綺麗になって帰ってくれば、
 誰だって喜ぶさ……」


「そっか、そうだよね……」


以前母上が帰って来なくて、
リリスが泣いていたのを思い出した……
きっと無事に会えるだけでも喜ぶと思う。
帰りを指折り数えて待っているはずだから……


「見えてきたぞ!
 ルミナスが……」


ようやく長旅が終わると思うと、
急に疲れが押し寄せてきた……
馬車の車内を見渡すと、
婚約者達もぐっすり眠っている。


そしてようやくルミナスの門を通り、
俺達は、無事に帰還したのだった。




◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆




ついに長旅も終わり、レガード家に到着した。
屋敷に着くと同時に使用人が気付いて、
大声を上げて家の中に飛び込んでいく。
まだ早朝だが、すぐに家族達は目を覚ました。


「お、おかえりなさい!
 母上、お兄様……」


一番に到着したのは、アリスだ。
寝巻き姿のまま誰よりも早く走ってきた。


「アリス……
 ただいま……」


俺と母上の顔を見ると、
すぐにアリスは抱きつく。


「お兄様……
 ごめんなさい……いっしょに……
 行けなかった……」


アリスは涙を流して、ひたすら謝っている。
共に戦えなかったと後悔していたのかもしれない。
待っている間も、胸がはち切れる程に苦しかったのだろう。


「アリス、ありがとう……
 信じて待っていてくれて……」


アリスと再会を喜び合っていると、
遅れてリリスが到着する。
母上を見つけた途端に、
リリスは駆け足で飛びついた……

もう離さないと言わんばかりに、
服をぎゅっと握りしめている。


「リリス、ただいま……」


嬉しくて、涙が抑えきれない。
その感情が胸一杯に溢れて、
リリスは言葉を発することが出来ない。


「嬉しすぎて……
 言葉が出ないのか?」


母上は揶揄いながら頭を撫でると、
言葉を発することが出来ず、
リリスは何度も何度も頷いていた……

朝日に照らされて、輝き溢れる笑顔は、
天使のように可愛らしい……


そして、俺たちが夢中になっていると、
もう一人の人物が現れる。
それはリリスが待ちに待った女性だ。


「サリーおば……」


目の前の赤い髪の女性がサリーだと気付いたが、
急に姿が変わり戸惑っている。


「…………お姉ちゃん?」


いきなり美しくなったサリーに対して、
以前と同様に呼ぶのは失礼と思ったのだろう。
幼いながらも配慮しようと頑張っている。


「おばちゃんで良いよ……
 いつも通りに呼んで」


精霊になった自分を恐れて、
リリスに嫌われるのが怖かった。
しかし幸せそうなリリスの表情を見て、
余計な取り越し苦労だったと安心する。
そしてサリーがその一言を発すると、
リリスは、今まで通りに呼びかけた。


「サリーおばちゃん!」


キラキラと瞳を輝かせて、
サリーの懐に飛び込んだ……
本当の姉妹のように涙を流して喜び合っている。
俺達は、その様子を微笑ましく見つめていた……


それからは父上やリーナ、ベルも現れ、
レガードのみんなと再会を喜び合う。
これでレガード家の問題は、一件落着となったが、ミゲルの住民や精霊達に関しては解決したわけではない。


しばらくの間、喜びを分かち合い、
報告も兼ねて城に出向くことになった……




◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆



謁見の間に到着すると、
既に賢者が報告を済ませており、
陛下は精霊を見ても驚きはしなかった。

そしてこれから今後について話し合うことになる。
謁見の間には、遠征メンバーである7人の戦士、
母上、サリー、精霊達が集められていた。


「捜索隊の者達よ……
 本当に素晴らしい活躍だった……」


国の重要戦力である宮廷魔術師を救い、
更に魔族の陰謀を阻止した。
陛下は、その功績を手放しで賞賛している。


「精霊達については、
 オリジン殿と協議しつつ、
 ルミナスとエルフの里で受け入れる」


流石にミゲルの街だけでは、精霊達を守りきれないと判断して、エルフと同様にルミナスで保護することになった。
魔人計画が明るみになった今、
精霊達も狙われるのは間違いない。


「ルミナス国王陛下……
 受け入れて下さり感謝する……
 我々も、命をかけてルミナスを支援しよう」


正式にオリジンが精霊の力を使って、
ルミナスを守ると宣言した。
探知、感知に優れた精霊達の協力は、
ルミナスにとっても有り難い。


「それでは、大体のことが決まったな……」


犠牲者達への今後の支援が決まり、
謁見は終了になるかと思われた。
しかし、女神がユーリを通して口を開く。
その内容は、俺のスキルとサリーの存在が大きく関わっていた。
そして物語は、新たな展開へと突き進む……
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

蘇生魔法を授かった僕は戦闘不能の前衛(♀)を何度も復活させる

フルーツパフェ
大衆娯楽
 転移した異世界で唯一、蘇生魔法を授かった僕。  一緒にパーティーを組めば絶対に死ぬ(死んだままになる)ことがない。  そんな口コミがいつの間にか広まって、同じく異世界転移した同業者(多くは女子)から引っ張りだこに!  寛容な僕は彼女達の申し出に快諾するが条件が一つだけ。 ――実は僕、他の戦闘スキルは皆無なんです  そういうわけでパーティーメンバーが前衛に立って死ぬ気で僕を守ることになる。  大丈夫、一度死んでも蘇生魔法で復活させてあげるから。  相互利益はあるはずなのに、どこか鬼畜な匂いがするファンタジー、ここに開幕。      

特殊部隊の俺が転生すると、目の前で絶世の美人母娘が犯されそうで助けたら、とんでもないヤンデレ貴族だった

なるとし
ファンタジー
 鷹取晴翔(たかとりはると)は陸上自衛隊のとある特殊部隊に所属している。だが、ある日、訓練の途中、不慮の事故に遭い、異世界に転生することとなる。  特殊部隊で使っていた武器や防具などを召喚できる特殊能力を謎の存在から授かり、目を開けたら、絶世の美女とも呼ばれる母娘が男たちによって犯されそうになっていた。  武装状態の鷹取晴翔は、持ち前の優秀な身体能力と武器を使い、その母娘と敷地にいる使用人たちを救う。  だけど、その母と娘二人は、    とおおおおんでもないヤンデレだった…… 第3回次世代ファンタジーカップに出すために一部を修正して投稿したものです。

半分異世界

月野槐樹
ファンタジー
関東圏で学生が行方不明になる事件が次々にしていた。それは異世界召還によるものだった。 ネットでも「神隠しか」「異世界召還か」と噂が飛び交うのを見て、異世界に思いを馳せる少年、圭。 いつか異世界に行った時の為にとせっせと準備をして「異世界ガイドノート」なるものまで作成していた圭。従兄弟の瑛太はそんな圭の様子をちょっと心配しながらも充実した学生生活を送っていた。 そんなある日、ついに異世界の扉が彼らの前に開かれた。 「異世界ガイドノート」と一緒に旅する異世界

若返ったおっさん、第2の人生は異世界無双

たまゆら
ファンタジー
事故で死んだネトゲ廃人のおっさん主人公が、ネトゲと酷似した異世界に転移。 ゲームの知識を活かして成り上がります。 圧倒的効率で金を稼ぎ、レベルを上げ、無双します。

神に同情された転生者物語

チャチャ
ファンタジー
ブラック企業に勤めていた安田悠翔(やすだ はると)は、電車を待っていると後から背中を押されて電車に轢かれて死んでしまう。 すると、神様と名乗った青年にこれまでの人生を同情された異世界に転生してのんびりと過ごしてと言われる。 悠翔は、チート能力をもらって異世界を旅する。

暇つぶし転生~お使いしながらぶらり旅~

暇人太一
ファンタジー
 仲良し3人組の高校生とともに勇者召喚に巻き込まれた、30歳の病人。  ラノベの召喚もののテンプレのごとく、おっさんで病人はお呼びでない。  結局雑魚スキルを渡され、3人組のパシリとして扱われ、最後は儀式の生贄として3人組に殺されることに……。  そんなおっさんの前に厳ついおっさんが登場。果たして病人のおっさんはどうなる!?  この作品は「小説家になろう」にも掲載しています。

あいつに無理矢理連れてこられた異世界生活

mio
ファンタジー
 なんやかんや、無理矢理あいつに異世界へと連れていかれました。  こうなったら仕方ない。とにかく、平和に楽しく暮らしていこう。  なぜ、少女は異世界へと連れてこられたのか。  自分の中に眠る力とは何なのか。  その答えを知った時少女は、ある決断をする。 長い間更新をさぼってしまってすいませんでした!

前世ポイントッ! ~転生して楽しく異世界生活~

霜月雹花
ファンタジー
 17歳の夏、俺は強盗を捕まえようとして死んだ――そして、俺は神様と名乗った爺さんと話をしていた。話を聞けばどうやら強盗を捕まえた事で未来を改変し、転生に必要な【善行ポイント】と言う物が人より多く貰えて異世界に転生出来るらしい。多く貰った【善行ポイント】で転生時の能力も選び放題、莫大なポイントを使いチート化した俺は異世界で生きていく。 なろうでも掲載しています。

処理中です...