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第170話 研究者

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魔王軍四天王アデルの陰謀により、
精霊界が襲撃されたが、精霊の協力のおかげで何とか撃破出来た。
しかし消滅する間際に放ったアデルの言葉が、俺の頭から離れない……


「サリーは、今も捕まっていて……」


研究の餌食になった可能性が高く、ミゲルに戻った後、サリーを救えるのか不安を感じていた……


「どうやら困っているようだな……
 助けて貰った礼に手を貸してやろう……」


言葉を発したのは、精霊界の長老オリジンだ。
全員がアデルの言葉に動揺し、落ち込んでいる。
急な長老の一言に、誰しもが注目した……


「聞いたことがある……
 人間と魔物を融合させると……」


過去の世界で遭遇した魔物も、
アデルが関係していると言っていた。
サリーが捕えられて、何かしらの人体実験を施されている可能性が高い。
それでもオリジンは、手を貸してくれると言う……
俺達全員は、藁にもすがる思いで、
長老の話に耳を傾けた……


「私の持つスキルの中に、
 精霊化というスキルがある……
 精霊になれば、自由に姿を変化できる」


「精霊化!」


オリジンの言う精霊化により、
存在を魔族や人間と言った枠から解き放つ。
そしてそれこそがサリーを救う、唯一の方法だと、オリジンは言った。


「そうすれば、魔族ではなくなるが、
 サリーを救えるということか……」


母上の表情に明るさが戻るが、
オリジンは精霊化に必要な条件を伝えた。


「魔物との融合により、
 人格が支配されていなければな……」


過去の変異種と呼ばれた魔物のように、
理性を失い、手当たり次第に人を襲うようだと救えない。
オリジンは、精霊化するのに、
自我が残っているのが条件だと伝えた。


「サリーは、ミゲルにいるんだよね?」


「あぁ、ここからまた戻るのは、
 あまりに時間がかかりすぎる……」


精霊界に来た道を戻るのに、相応の時間が必要だと途方に暮れていると、長老が声をかけてきた。


「それなら精霊の森につながる近道がある」


「へ?」


過去の世界でもイフリートが精霊界に戻るのに使った道がある。
その手段を使い、ミゲルまですぐに向かえると言った。


「よし、決まりだな!
 ミゲルまで行き、サリーを救うぞ」


そして賢者の声かけにより、
翌日にはミゲルに戻ると決まる。
俺達は明日の戦いに備えるために、
ゆっくりと休んだ……




◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆




朝を迎えるとすぐに、精霊達と共に近道を通り、精霊の森へ移動を開始する。
普通の森を歩いているように思えたが、
気付けば精霊の森に着いていた。
魔界から人間界への転移も終えていたのだ。


そして今は精霊の森で、作戦の打ち合わせをしている。


「もう精霊達を、テレサの扉に隠さなくても良いですね?」


「あぁ、もう大丈夫だと思うぞ!
 あの時は……」


母上が攻めてきた時は、
精霊達を光の剣から守るために、
テレサのスキルで精霊達を扉の中に逃した。
精霊達が殺されてしまうか、人質に取られる可能性があったからだ。


「ミゲルでは、大丈夫だろう!」


既にアデルを倒しているが、
今ならまだ警戒されないと考えて、
精霊の力に頼ることにした。


「よし、精霊達にも調査してもらい、
 サリーを探そう!」


そして俺達は久しぶりのミゲルに戻り、
実験施設で捕まるサリーを探す。


しばらくの間待っていると、
水の精霊ラウラが一軒の民家から、
異常な魔力の乱れを感知した。


「警戒するぞ!
 大掛かりな実験だ!
 まだ他の実力者がいるとも限らない!」


その民家に入るとすぐに地下に繋がる階段があり、ゆっくりと降りていく……
すると、想像以上に広がる施設が見えてきた……


辺り一面に白い壁が広がっている。
これがまさにアデルの言う研究施設だった。


「アニキ!
 森で感じた魔物の匂いがします!」


変異種と呼ばれる魔物達もこの施設にいる。
そして俺も、この施設に足を踏み入れた瞬間、スキルに反応を感じた。


「賢者、探知に反応が……」


「あぁ!サリーは、この施設にいる!」


二人の探知に反応があり、
その方向へ向かって歩いていく。


「この扉の奥に、サリーが……」


俺達は、さらに警戒を強めて部屋の扉を開ける。
そして研究室に足を踏み入れた……



◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆



扉を開けた部屋は、奥行きが広く、
謁見の間と同じくらいの広さを感じる。
その部屋一杯にカプセルのような機械が敷き詰められていた。


「こ、これは……
 魔人計画か!」


「賢者、それって……」


賢者の発した言葉の意味が分からず、
その真意を問おうとした時、
一つのカプセルが開き、中から人が出てきた。


「人?」


「いや、魔族と人間の融合体だよ」


「な、何だって!」


賢者は、その眉間に皺を寄せて、
苛立ちを隠せないでいる……
カプセルを見て、過去に知っていた知識から研究内容を推測した。



「魔物と人間の融合体は事前段階……
 魔族と人間を融合させる計画だった筈……」


「何で……魔族と人間を?」



「人間だけが精霊や女神と繋がれるからだよ」



部屋の奥から、その言葉を発した人物が現れた……
その女性は、魔族のツノを持ち、
白衣を身に纏った研究者だ。


「お前は、ミューズ……
 まさか、お前が絡んでいたのか……」


「ロゼ……
 久しぶりだな」


突如として現れた研究者ミューズが、口を開く。
アデルが行っていた研究に、ミューズが関与していた可能性が高い。
何故人間と魔族を融合させるのか、更なる理由が判明した時、俺達は更に怒りを抑えきれなくなるのであった……

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