上 下
156 / 182

第156話 真相

しおりを挟む
緊急事態の際は、レガードの屋敷から城に移動する手筈となっている。
マリアとユーリの情報を聞き、
クレアは即座に避難を決断した。


「防衛作戦でゲイルとアリスは既に城だ!
 私たちも合流すれば、更に安全だろう」


リリスを含めて非戦闘員も一緒にいるため、
敵に遭遇する前に安全圏まで行こうと決めた。


そして、王都の中央街に来たところで、
急にリルムが立ち止まる……


何かあったのかとクレアが問いかけるが、
その瞬間、クレア、ユーリ、サリーの足元に魔法陣が生まれた。


「皆さん……ごめんなさい」


「リルム?お前何を?」


リルムは瞳を潤ませながら謝罪を口にした。
その言葉を発したと同時に、
リルムの影から1人の人物が現れる……
そしてその人物が姿を見せたことに、
全員が驚きを隠せない。


「な、何だと!
 お前は……」


「そうよ、貴方達が警戒している、
 ユミルとは、私のことよ」


目前の女性は影から姿を露わにした。
黒いローブに身を包んだ女性が現れ、
不敵な笑みを浮かべながら声を発する。


「調査をして分かったのよ……
 注意すべき人物は限られている」


足元の魔法陣は光り輝き、
クレア達を包み込んだ。
そして瞬く間に三人の姿が消えてしまった。


「き、貴様!
 一体、何をした?」


シャルロットは、目の前でクレア達に何があったのか心配で堪らない。
そして魔法陣の効果を問い詰めた。


「ふふふ、安心しなさい……
 あの者達の強さは異常だった……
 少し離れた場所まで転移させたわ」


「転移?」


ユミルは、最初からリルムの影に隠れて、
レガードの調査をしていた。
その中で危険人物を確認して、
自分から遠ざけようと動いたのだ。


「上手くいったわ……
 これで強き者を排除出来た」


この場にいるのは、シャルロット、マリア、サラ、リリス、リーネだけだ。


「ふふふ、これで敵はいない……
 ゆっくりと貴方の精霊を頂くわ」


不敵な笑みを浮かべながら魔法陣を発動し、
その中から一人の戦士が現れる。


「私の騎士が、貴方達を殺すの…… 
 この気高き剣の前に散りなさい」


ユミルが声を発すると同時に、
剣士が突進してくる。
即座にシャルロットは、剣を装備して、
相手の剣撃を受け止めた。


「まさか!アンタは!」


「ふふふ、そうよ!
 彼は……」



そして騎士とシャルロットは、真っ向から力比べになるが、急にその姿を大人に変えて身体能力を強化した。
そのスキルを使えるのは、クリスの他に一人しかいない。


「獣王ガルム、私の騎士よ」


身体能力も桁違いに向上していて、
500年の歳月で更に強くなっていた。


「獣王の手で殺されなさい」


ガルムの攻撃が早くなり、シャルロットは防戦一方だが、マリアやサラも黙っているわけではない。
防御壁を展開しようとするが、
ユミルの妨害魔法によって邪魔されてしまう。


「ふふふ、早く精霊契約をしないと、
 死んじゃうわよ……」


「邪魔してくるのはアンタでしょ!」


シャルロットは、シルフィとの精霊契約に集中するが、後少しのところでガルムの攻撃に邪魔されていた。

そして防戦一方だったが、敵の足元に忍ばせた魔法陣で流れを掴めると判断する。


「インフェルノ」


強烈な火柱がガルムを包み込む。
その瞬間にガルムから距離を稼ぎ、
精霊契約を発動させた。


シャルロットとシルフィの光が、
繋がり合うように重なる。
そしてシルフィの姿が消えて、
シャルロットと一体化した。


「素晴らしい……
 これが風の精霊の力……」


シルフィの魔力を目の前にして、
ユミルは興奮を抑えきれない。
その契約が終わるのを見計らって、
精霊召喚を始めた。


「現れなさい!
 私の精霊……」


ユミルが精霊召喚を行うと、まるで夜になったかのように、辺り一面が暗くなる。
そして暗闇の中から、少しずつその姿が見えてきた。


「な、なんだ……
 こんな精霊見たことがないぞ!」


ハイエルフで精霊に詳しいサラであっても、
目の前に佇む暗黒のオーラを纏う女の子の精霊を知り得ない。


「ふふふ、初めて見るようね……
 彼女は闇の精霊テレサ」


白い髪に、黒い瞳をした女の子。
闇の精霊と呼ばれる存在に強い魔力が集まっていく。


「テレサ……
 貴方の力を見せてあげなさい」


そう告げるとテレサの足元の影が伸びて、
マリアとサラを捕まえる。


「う、動けない……」


「影縛りのスキルよ……
 魔力量が相手より多ければ、
 敵の動きを制限できるの」


そしてシャルロット一人しか、戦闘出来る者がいなくなった状況で、テレサとガルムが迫る。


「でも残念……
 精霊契約をして魔力を減らしたのが、
 貴方の敗因よ」


そして影縛りを発動し、マリア達と同様に、
シャルロットも動きを制限された。


「捕まえた……」


邪悪な笑みを浮かべながら、ユミルは、
トドメを刺すようガルムに命じる。
ガルムは、シャルロットの胸に突きを繰り出した。


「お姉ちゃん!!」


マリアの悲鳴が鳴り響いた瞬間、
シャルロットの前に結界魔法が発動して、
ガルムの剣を弾き返す。


「何とか間に合った……」


ギリギリのタイミングで賢者が、
シャルロットの危機を救ってみせた。
そしてここから反撃に出たいところだが、
リルムの隣にガルムが移動する。
不敵な笑みを浮かべるユミルは、
まだ何かを企んでいるように感じられた……
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

蘇生魔法を授かった僕は戦闘不能の前衛(♀)を何度も復活させる

フルーツパフェ
大衆娯楽
 転移した異世界で唯一、蘇生魔法を授かった僕。  一緒にパーティーを組めば絶対に死ぬ(死んだままになる)ことがない。  そんな口コミがいつの間にか広まって、同じく異世界転移した同業者(多くは女子)から引っ張りだこに!  寛容な僕は彼女達の申し出に快諾するが条件が一つだけ。 ――実は僕、他の戦闘スキルは皆無なんです  そういうわけでパーティーメンバーが前衛に立って死ぬ気で僕を守ることになる。  大丈夫、一度死んでも蘇生魔法で復活させてあげるから。  相互利益はあるはずなのに、どこか鬼畜な匂いがするファンタジー、ここに開幕。      

半分異世界

月野槐樹
ファンタジー
関東圏で学生が行方不明になる事件が次々にしていた。それは異世界召還によるものだった。 ネットでも「神隠しか」「異世界召還か」と噂が飛び交うのを見て、異世界に思いを馳せる少年、圭。 いつか異世界に行った時の為にとせっせと準備をして「異世界ガイドノート」なるものまで作成していた圭。従兄弟の瑛太はそんな圭の様子をちょっと心配しながらも充実した学生生活を送っていた。 そんなある日、ついに異世界の扉が彼らの前に開かれた。 「異世界ガイドノート」と一緒に旅する異世界

特殊部隊の俺が転生すると、目の前で絶世の美人母娘が犯されそうで助けたら、とんでもないヤンデレ貴族だった

なるとし
ファンタジー
 鷹取晴翔(たかとりはると)は陸上自衛隊のとある特殊部隊に所属している。だが、ある日、訓練の途中、不慮の事故に遭い、異世界に転生することとなる。  特殊部隊で使っていた武器や防具などを召喚できる特殊能力を謎の存在から授かり、目を開けたら、絶世の美女とも呼ばれる母娘が男たちによって犯されそうになっていた。  武装状態の鷹取晴翔は、持ち前の優秀な身体能力と武器を使い、その母娘と敷地にいる使用人たちを救う。  だけど、その母と娘二人は、    とおおおおんでもないヤンデレだった…… 第3回次世代ファンタジーカップに出すために一部を修正して投稿したものです。

若返ったおっさん、第2の人生は異世界無双

たまゆら
ファンタジー
事故で死んだネトゲ廃人のおっさん主人公が、ネトゲと酷似した異世界に転移。 ゲームの知識を活かして成り上がります。 圧倒的効率で金を稼ぎ、レベルを上げ、無双します。

神に同情された転生者物語

チャチャ
ファンタジー
ブラック企業に勤めていた安田悠翔(やすだ はると)は、電車を待っていると後から背中を押されて電車に轢かれて死んでしまう。 すると、神様と名乗った青年にこれまでの人生を同情された異世界に転生してのんびりと過ごしてと言われる。 悠翔は、チート能力をもらって異世界を旅する。

あいつに無理矢理連れてこられた異世界生活

mio
ファンタジー
 なんやかんや、無理矢理あいつに異世界へと連れていかれました。  こうなったら仕方ない。とにかく、平和に楽しく暮らしていこう。  なぜ、少女は異世界へと連れてこられたのか。  自分の中に眠る力とは何なのか。  その答えを知った時少女は、ある決断をする。 長い間更新をさぼってしまってすいませんでした!

暇つぶし転生~お使いしながらぶらり旅~

暇人太一
ファンタジー
 仲良し3人組の高校生とともに勇者召喚に巻き込まれた、30歳の病人。  ラノベの召喚もののテンプレのごとく、おっさんで病人はお呼びでない。  結局雑魚スキルを渡され、3人組のパシリとして扱われ、最後は儀式の生贄として3人組に殺されることに……。  そんなおっさんの前に厳ついおっさんが登場。果たして病人のおっさんはどうなる!?  この作品は「小説家になろう」にも掲載しています。

前世ポイントッ! ~転生して楽しく異世界生活~

霜月雹花
ファンタジー
 17歳の夏、俺は強盗を捕まえようとして死んだ――そして、俺は神様と名乗った爺さんと話をしていた。話を聞けばどうやら強盗を捕まえた事で未来を改変し、転生に必要な【善行ポイント】と言う物が人より多く貰えて異世界に転生出来るらしい。多く貰った【善行ポイント】で転生時の能力も選び放題、莫大なポイントを使いチート化した俺は異世界で生きていく。 なろうでも掲載しています。

処理中です...