141 / 182
第141話 代表
しおりを挟む
クリス達が魔導飛行船を探している間、
各班の隊員はそれぞれの役割を果たしていた。
カート班の役割は、滞在中に宿泊する施設の確保だ。
今一緒に行動しているのは、カートの家族とリリス、サリーである。
「おばちゃーん!」
リリスの元気な声が宿屋の受付に響き渡り、周りの客が振り返る。
血の繋がりの無い二人は全く似ていない。
居合わせる客は、リリスから発せられた言葉に疑問を持っているのだ。
リリスはサリーのことが大好きである。
いつもくっついて歩くリリスを見て、
サリーは癒されているが、たまに自分の名前を省略してしまう瞬間があり複雑な心境なのだ。
「リリスちゃん、サリーの名前を呼んであげてね」
流石にサリーが可哀想だと思い、イリーナが諭そうとするが、あのクレアの娘である。
こんな時にも天然な性格を発揮してしまう。
「へ?だって私、おばちゃんって呼ぶのが好きなのに」
リリスは何故それが失礼なのか分からない。
そんな自然体で接するリリスを見て、
カートは必死に笑いを堪えているが吹き出してしまう。
「サリー、仕方がないじゃないか」
カートはつい笑ってしまったが、本物のおじさんから言われたことに腹が立ち、カートを睨みつけた。
「……奴隷にするぞ」
「す、すいません」
20代からおじさんと呼ばれていたため、
妙な親近感が湧いていたが、決して自分と同じではないと、カートは反省したのだった。
「それにしてもイリーナ、良い宿屋を知っているのだな」
「実はミストには何度か来たことがあったのですよ」
エルフや獣人にも優しい街であるミストは、
移住する場所として候補にあがっていた。
何度か訪れていたが、結局故郷が忘れられずエルフの里に住んでいたのだ。
そしてカートに出会い、今に至っている。
「ママもここに来たことがあったのか……
じゃあ色々と案内してもらおうかな」
普段はずっと一緒にいるが、長寿種族のエルフであるため時折知らない一面が出てくる。
そんなイリーナの新たな一面を見つけた時、
カートは幸せで堪らないのだ。
そして、受付でチェックインを済ませると、
係の者が部屋に誘導していく。
「パパ~」
カートは近づいてきた愛娘を抱きながら、
部屋に向かって階段を登り始めた。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
ミストの特徴として、螺旋状に街が連なっており、
中央に向かうにつれてセキュリティが強くなる。
都市の真ん中に建つ大きなビルこそ、
ミストの要人が集まる議員会館である。
国民から選挙によって議員を選び、
更にその最高権力者を代表と呼んでいる。
「リディア代表と会う約束をしている者だけど」
ミスト議員会館の受付で声を発したのは、
賢者から交渉を任されたシャルロットである。
時期はルミナスの戦士達がまだ旅立つ前であり、
一人だけ先にミストに入国していた。
「アポイントの確認が取れました!
こちらへどうぞ」
受付の女性が機械で予約を確認すると、
魔導エレベーターに案内される。
見たことのない魔導具を目にする度に、
シャルロットはミストの技術力の高さを再認識していた。
「では、最上階に到着しましたので、
ここからは道なりに進んでください」
薄暗い廊下を歩いていくと、正面に扉が見えてくる。
その前に立つ女性騎士から身体検査をされて、
確認が終わると入室を許可された。
「久しぶりだな、リディア」
「シャルロットも元気そうね」
シャルロットが交渉を任されたのには理由がある。
代表であるリディアとは、幼い頃からの友人なのだ。
リディアが短期留学でルミナスを訪れていた際に気が合い、今も定期的に連絡を取り合っている。
「聖剣のことは文書で伝えたが、
交渉を申し出たのには理由があるのだろう?」
事前に国家間で連絡を取り合っているため、
本来であれば会う必要はない。
しかし、即答で許可は出さず交渉を求めた事に、
シャルロットは別の意図を感じていた。
「流石はシャルね!
それでこそ私の親友だわ」
リディアは長髪の黒髪に眼鏡をかけた知的な女性であり、身長はシャルロットよりも高い。
更に年齢は13歳でありながら、選挙を勝ち抜き代表に至った化け物である。
「それでリディ、何の用があって私を呼んだのよ?」
「本当は他国に協力してもらうことではないのだけれど……」
リディアは言い難そうな雰囲気を出しながら、シャルロットに告げていく。
「実はね、国家転覆を狙う輩がこの施設にいてね……
その賊を捉えて欲しいの」
「なるほどね……
それで賢者が幻惑の腕輪を渡してきたのね」
「どうやら反対勢力は秘密裏に地下で何かを企んでいる」
リディアには終始監視の目が付きまとう。
誰かに協力を依頼しようとすれば、
即座に反対勢力に殺されてしまうのだ。
「だから、しつこく私を追ってくる輩がいるのね」
「本当にごめんなさい」
深々と頭を下げるリディアの姿を見て、
シャルロットは事態の深刻さを理解した。
「まさか強情で人に頭を下げないリディが、
私に頭を下げるなんてね」
「これでも国を預かる代表だからね……
それに頼れる人がシャルしかいなかったのよ」
確かにこの状況であれば、シャルロットに助けを求めるのも理解できた。
しかし、国家間の交渉に発展しているため、
協力するからには相応の対価が必要になる。
「分かっているわ……
報酬は魔導飛行船の技術よ」
シャルロットは、その報酬に目を見開き驚きを隠せない。
世界が到達できない絶対的な技術を明け渡すというのだ。
それだけリディアが本気だと伺えた。
「ミストが滅びるかもしれないの!
もうなりふり構ってられないわ!」
代表であるリディアは、シャルロットの友人だった。
そして今も反対勢力はリディアの命を狙いつつ、国家転覆を企んでいる。
本気で国を救おうと考えているリディアを見て、
シャルロットは覚悟を決めて依頼を聞く事にした……
各班の隊員はそれぞれの役割を果たしていた。
カート班の役割は、滞在中に宿泊する施設の確保だ。
今一緒に行動しているのは、カートの家族とリリス、サリーである。
「おばちゃーん!」
リリスの元気な声が宿屋の受付に響き渡り、周りの客が振り返る。
血の繋がりの無い二人は全く似ていない。
居合わせる客は、リリスから発せられた言葉に疑問を持っているのだ。
リリスはサリーのことが大好きである。
いつもくっついて歩くリリスを見て、
サリーは癒されているが、たまに自分の名前を省略してしまう瞬間があり複雑な心境なのだ。
「リリスちゃん、サリーの名前を呼んであげてね」
流石にサリーが可哀想だと思い、イリーナが諭そうとするが、あのクレアの娘である。
こんな時にも天然な性格を発揮してしまう。
「へ?だって私、おばちゃんって呼ぶのが好きなのに」
リリスは何故それが失礼なのか分からない。
そんな自然体で接するリリスを見て、
カートは必死に笑いを堪えているが吹き出してしまう。
「サリー、仕方がないじゃないか」
カートはつい笑ってしまったが、本物のおじさんから言われたことに腹が立ち、カートを睨みつけた。
「……奴隷にするぞ」
「す、すいません」
20代からおじさんと呼ばれていたため、
妙な親近感が湧いていたが、決して自分と同じではないと、カートは反省したのだった。
「それにしてもイリーナ、良い宿屋を知っているのだな」
「実はミストには何度か来たことがあったのですよ」
エルフや獣人にも優しい街であるミストは、
移住する場所として候補にあがっていた。
何度か訪れていたが、結局故郷が忘れられずエルフの里に住んでいたのだ。
そしてカートに出会い、今に至っている。
「ママもここに来たことがあったのか……
じゃあ色々と案内してもらおうかな」
普段はずっと一緒にいるが、長寿種族のエルフであるため時折知らない一面が出てくる。
そんなイリーナの新たな一面を見つけた時、
カートは幸せで堪らないのだ。
そして、受付でチェックインを済ませると、
係の者が部屋に誘導していく。
「パパ~」
カートは近づいてきた愛娘を抱きながら、
部屋に向かって階段を登り始めた。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
ミストの特徴として、螺旋状に街が連なっており、
中央に向かうにつれてセキュリティが強くなる。
都市の真ん中に建つ大きなビルこそ、
ミストの要人が集まる議員会館である。
国民から選挙によって議員を選び、
更にその最高権力者を代表と呼んでいる。
「リディア代表と会う約束をしている者だけど」
ミスト議員会館の受付で声を発したのは、
賢者から交渉を任されたシャルロットである。
時期はルミナスの戦士達がまだ旅立つ前であり、
一人だけ先にミストに入国していた。
「アポイントの確認が取れました!
こちらへどうぞ」
受付の女性が機械で予約を確認すると、
魔導エレベーターに案内される。
見たことのない魔導具を目にする度に、
シャルロットはミストの技術力の高さを再認識していた。
「では、最上階に到着しましたので、
ここからは道なりに進んでください」
薄暗い廊下を歩いていくと、正面に扉が見えてくる。
その前に立つ女性騎士から身体検査をされて、
確認が終わると入室を許可された。
「久しぶりだな、リディア」
「シャルロットも元気そうね」
シャルロットが交渉を任されたのには理由がある。
代表であるリディアとは、幼い頃からの友人なのだ。
リディアが短期留学でルミナスを訪れていた際に気が合い、今も定期的に連絡を取り合っている。
「聖剣のことは文書で伝えたが、
交渉を申し出たのには理由があるのだろう?」
事前に国家間で連絡を取り合っているため、
本来であれば会う必要はない。
しかし、即答で許可は出さず交渉を求めた事に、
シャルロットは別の意図を感じていた。
「流石はシャルね!
それでこそ私の親友だわ」
リディアは長髪の黒髪に眼鏡をかけた知的な女性であり、身長はシャルロットよりも高い。
更に年齢は13歳でありながら、選挙を勝ち抜き代表に至った化け物である。
「それでリディ、何の用があって私を呼んだのよ?」
「本当は他国に協力してもらうことではないのだけれど……」
リディアは言い難そうな雰囲気を出しながら、シャルロットに告げていく。
「実はね、国家転覆を狙う輩がこの施設にいてね……
その賊を捉えて欲しいの」
「なるほどね……
それで賢者が幻惑の腕輪を渡してきたのね」
「どうやら反対勢力は秘密裏に地下で何かを企んでいる」
リディアには終始監視の目が付きまとう。
誰かに協力を依頼しようとすれば、
即座に反対勢力に殺されてしまうのだ。
「だから、しつこく私を追ってくる輩がいるのね」
「本当にごめんなさい」
深々と頭を下げるリディアの姿を見て、
シャルロットは事態の深刻さを理解した。
「まさか強情で人に頭を下げないリディが、
私に頭を下げるなんてね」
「これでも国を預かる代表だからね……
それに頼れる人がシャルしかいなかったのよ」
確かにこの状況であれば、シャルロットに助けを求めるのも理解できた。
しかし、国家間の交渉に発展しているため、
協力するからには相応の対価が必要になる。
「分かっているわ……
報酬は魔導飛行船の技術よ」
シャルロットは、その報酬に目を見開き驚きを隠せない。
世界が到達できない絶対的な技術を明け渡すというのだ。
それだけリディアが本気だと伺えた。
「ミストが滅びるかもしれないの!
もうなりふり構ってられないわ!」
代表であるリディアは、シャルロットの友人だった。
そして今も反対勢力はリディアの命を狙いつつ、国家転覆を企んでいる。
本気で国を救おうと考えているリディアを見て、
シャルロットは覚悟を決めて依頼を聞く事にした……
0
お気に入りに追加
1,264
あなたにおすすめの小説
社畜から卒業したんだから異世界を自由に謳歌します
湯崎noa
ファンタジー
ブラック企業に入社して10年が経つ〈宮島〉は、当たり前の様な連続徹夜に心身ともに疲労していた。
そんな時に中高の同級生と再開し、その同級生への相談を行ったところ会社を辞める決意をした。
しかし!! その日の帰り道に全身の力が抜け、線路に倒れ込んでしまった。
そのまま呆気なく宮島の命は尽きてしまう。
この死亡は神様の手違いによるものだった!?
神様からの全力の謝罪を受けて、特殊スキル〈コピー〉を授かり第二の人生を送る事になる。
せっかくブラック企業を卒業して、異世界転生するのだから全力で謳歌してやろうじゃないか!!
※カクヨム、小説家になろう、ノベルバでも連載中
貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。
黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。
この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。
異世界転生した俺は平和に暮らしたいと願ったのだが
倉田 フラト
ファンタジー
「異世界に転生か再び地球に転生、
どちらが良い?……ですか。」
「異世界転生で。」
即答。
転生の際に何か能力を上げると提案された彼。強大な力を手に入れ英雄になるのも可能、勇者や英雄、ハーレムなんだって可能だったが、彼は「平和に暮らしたい」と言った。何の力も欲しない彼に神様は『コール』と言った念話の様な能力を授け、彼の願いの通り平和に生活が出来る様に転生をしたのだが……そんな彼の願いとは裏腹に家庭の事情で知らぬ間に最強になり……そんなファンタジー大好きな少年が異世界で平和に暮らして――行けたらいいな。ブラコンの姉をもったり、神様に気に入られたりして今日も一日頑張って生きていく物語です。基本的に主人公は強いです、それよりも姉の方が強いです。難しい話は書けないので書きません。軽い気持ちで呼んでくれたら幸いです。
なろうにも数話遅れてますが投稿しております。
誤字脱字など多いと思うので指摘してくれれば即直します。
自分でも見直しますが、ご協力お願いします。
感想の返信はあまりできませんが、しっかりと目を通してます。
異世界転生したら何でも出来る天才だった。
桂木 鏡夜
ファンタジー
高校入学早々に大型トラックに跳ねられ死ぬが気がつけば自分は3歳の可愛いらしい幼児に転生していた。
だが等本人は前世で特に興味がある事もなく、それは異世界に来ても同じだった。
そんな主人公アルスが何故俺が異世界?と自分の存在意義を見いだせずにいるが、10歳になり必ず受けなければならない学校の入学テストで思わぬ自分の才能に気づくのであった。
===========================
始めから強い設定ですが、徐々に強くなっていく感じになっております。
貴族に生まれたのに誘拐され1歳で死にかけた
佐藤醤油
ファンタジー
貴族に生まれ、のんびりと赤ちゃん生活を満喫していたのに、気がついたら世界が変わっていた。
僕は、盗賊に誘拐され魔力を吸われながら生きる日々を過ごす。
魔力枯渇に陥ると死ぬ確率が高いにも関わらず年に1回は魔力枯渇になり死にかけている。
言葉が通じる様になって気がついたが、僕は他の人が持っていないステータスを見る力を持ち、さらに異世界と思われる世界の知識を覗ける力を持っている。
この力を使って、いつか脱出し母親の元へと戻ることを夢見て過ごす。
小さい体でチートな力は使えない中、どうにか生きる知恵を出し生活する。
------------------------------------------------------------------
お知らせ
「転生者はめぐりあう」 始めました。
------------------------------------------------------------------
注意
作者の暇つぶし、気分転換中の自己満足で公開する作品です。
感想は受け付けていません。
誤字脱字、文面等気になる方はお気に入りを削除で対応してください。
お前じゃないと、追い出されたが最強に成りました。ざまぁ~見ろ(笑)
いくみ
ファンタジー
お前じゃないと、追い出されたので楽しく復讐させて貰いますね。実は転生者で今世紀では貴族出身、前世の記憶が在る、今まで能力を隠して居たがもう我慢しなくて良いな、開き直った男が楽しくパーティーメンバーに復讐していく物語。
---------
掲載は不定期になります。
追記
「ざまぁ」までがかなり時間が掛かります。
お知らせ
カクヨム様でも掲載中です。
異世界転生~チート魔法でスローライフ
リョンコ
ファンタジー
【あらすじ⠀】都会で産まれ育ち、学生時代を過ごし 社会人になって早20年。
43歳になった主人公。趣味はアニメや漫画、スポーツ等 多岐に渡る。
その中でも最近嵌ってるのは「ソロキャンプ」
大型連休を利用して、
穴場スポットへやってきた!
テントを建て、BBQコンロに
テーブル等用意して……。
近くの川まで散歩しに来たら、
何やら動物か?の気配が……
木の影からこっそり覗くとそこには……
キラキラと光注ぐように発光した
「え!オオカミ!」
3メートルはありそうな巨大なオオカミが!!
急いでテントまで戻ってくると
「え!ここどこだ??」
都会の生活に疲れた主人公が、
異世界へ転生して 冒険者になって
魔物を倒したり、現代知識で商売したり…… 。
恋愛は多分ありません。
基本スローライフを目指してます(笑)
※挿絵有りますが、自作です。
無断転載はしてません。
イラストは、あくまで私のイメージです
※当初恋愛無しで進めようと書いていましたが
少し趣向を変えて、
若干ですが恋愛有りになります。
※カクヨム、なろうでも公開しています
僕の従魔は恐ろしく強いようです。
緋沙下
ファンタジー
僕は生まれつき体が弱かった。物心ついた頃から僕の世界は病院の中の一室だった。
僕は治ることなく亡くなってしまった。
心配だったのは、いつも明るく無理をして笑うお母さん達の事だった。
そんな僕に、弟と妹を授ける代わりに別の世界に行って見ないか?という提案がもたらされた。
そこで勇者になるわけでもなく、強いステータスも持たない僕が出会った従魔の女の子
処女作なのでご迷惑かける場面が多数存在するかもしれません。気になる点はご報告いただければ幸いです。
---------------------------------------------------------------------------------------
プロローグと小説の内容を一部変更いたしました。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる