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第141話 代表
しおりを挟むクリス達が魔導飛行船を探している間、
各班の隊員はそれぞれの役割を果たしていた。
カート班の役割は、滞在中に宿泊する施設の確保だ。
今一緒に行動しているのは、カートの家族とリリス、サリーである。
「おばちゃーん!」
リリスの元気な声が宿屋の受付に響き渡り、周りの客が振り返る。
血の繋がりの無い二人は全く似ていない。
居合わせる客は、リリスから発せられた言葉に疑問を持っているのだ。
リリスはサリーのことが大好きである。
いつもくっついて歩くリリスを見て、
サリーは癒されているが、たまに自分の名前を省略してしまう瞬間があり複雑な心境なのだ。
「リリスちゃん、サリーの名前を呼んであげてね」
流石にサリーが可哀想だと思い、イリーナが諭そうとするが、あのクレアの娘である。
こんな時にも天然な性格を発揮してしまう。
「へ?だって私、おばちゃんって呼ぶのが好きなのに」
リリスは何故それが失礼なのか分からない。
そんな自然体で接するリリスを見て、
カートは必死に笑いを堪えているが吹き出してしまう。
「サリー、仕方がないじゃないか」
カートはつい笑ってしまったが、本物のおじさんから言われたことに腹が立ち、カートを睨みつけた。
「……奴隷にするぞ」
「す、すいません」
20代からおじさんと呼ばれていたため、
妙な親近感が湧いていたが、決して自分と同じではないと、カートは反省したのだった。
「それにしてもイリーナ、良い宿屋を知っているのだな」
「実はミストには何度か来たことがあったのですよ」
エルフや獣人にも優しい街であるミストは、
移住する場所として候補にあがっていた。
何度か訪れていたが、結局故郷が忘れられずエルフの里に住んでいたのだ。
そしてカートに出会い、今に至っている。
「ママもここに来たことがあったのか……
じゃあ色々と案内してもらおうかな」
普段はずっと一緒にいるが、長寿種族のエルフであるため時折知らない一面が出てくる。
そんなイリーナの新たな一面を見つけた時、
カートは幸せで堪らないのだ。
そして、受付でチェックインを済ませると、
係の者が部屋に誘導していく。
「パパ~」
カートは近づいてきた愛娘を抱きながら、
部屋に向かって階段を登り始めた。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
ミストの特徴として、螺旋状に街が連なっており、
中央に向かうにつれてセキュリティが強くなる。
都市の真ん中に建つ大きなビルこそ、
ミストの要人が集まる議員会館である。
国民から選挙によって議員を選び、
更にその最高権力者を代表と呼んでいる。
「リディア代表と会う約束をしている者だけど」
ミスト議員会館の受付で声を発したのは、
賢者から交渉を任されたシャルロットである。
時期はルミナスの戦士達がまだ旅立つ前であり、
一人だけ先にミストに入国していた。
「アポイントの確認が取れました!
こちらへどうぞ」
受付の女性が機械で予約を確認すると、
魔導エレベーターに案内される。
見たことのない魔導具を目にする度に、
シャルロットはミストの技術力の高さを再認識していた。
「では、最上階に到着しましたので、
ここからは道なりに進んでください」
薄暗い廊下を歩いていくと、正面に扉が見えてくる。
その前に立つ女性騎士から身体検査をされて、
確認が終わると入室を許可された。
「久しぶりだな、リディア」
「シャルロットも元気そうね」
シャルロットが交渉を任されたのには理由がある。
代表であるリディアとは、幼い頃からの友人なのだ。
リディアが短期留学でルミナスを訪れていた際に気が合い、今も定期的に連絡を取り合っている。
「聖剣のことは文書で伝えたが、
交渉を申し出たのには理由があるのだろう?」
事前に国家間で連絡を取り合っているため、
本来であれば会う必要はない。
しかし、即答で許可は出さず交渉を求めた事に、
シャルロットは別の意図を感じていた。
「流石はシャルね!
それでこそ私の親友だわ」
リディアは長髪の黒髪に眼鏡をかけた知的な女性であり、身長はシャルロットよりも高い。
更に年齢は13歳でありながら、選挙を勝ち抜き代表に至った化け物である。
「それでリディ、何の用があって私を呼んだのよ?」
「本当は他国に協力してもらうことではないのだけれど……」
リディアは言い難そうな雰囲気を出しながら、シャルロットに告げていく。
「実はね、国家転覆を狙う輩がこの施設にいてね……
その賊を捉えて欲しいの」
「なるほどね……
それで賢者が幻惑の腕輪を渡してきたのね」
「どうやら反対勢力は秘密裏に地下で何かを企んでいる」
リディアには終始監視の目が付きまとう。
誰かに協力を依頼しようとすれば、
即座に反対勢力に殺されてしまうのだ。
「だから、しつこく私を追ってくる輩がいるのね」
「本当にごめんなさい」
深々と頭を下げるリディアの姿を見て、
シャルロットは事態の深刻さを理解した。
「まさか強情で人に頭を下げないリディが、
私に頭を下げるなんてね」
「これでも国を預かる代表だからね……
それに頼れる人がシャルしかいなかったのよ」
確かにこの状況であれば、シャルロットに助けを求めるのも理解できた。
しかし、国家間の交渉に発展しているため、
協力するからには相応の対価が必要になる。
「分かっているわ……
報酬は魔導飛行船の技術よ」
シャルロットは、その報酬に目を見開き驚きを隠せない。
世界が到達できない絶対的な技術を明け渡すというのだ。
それだけリディアが本気だと伺えた。
「ミストが滅びるかもしれないの!
もうなりふり構ってられないわ!」
代表であるリディアは、シャルロットの友人だった。
そして今も反対勢力はリディアの命を狙いつつ、国家転覆を企んでいる。
本気で国を救おうと考えているリディアを見て、
シャルロットは覚悟を決めて依頼を聞く事にした……
各班の隊員はそれぞれの役割を果たしていた。
カート班の役割は、滞在中に宿泊する施設の確保だ。
今一緒に行動しているのは、カートの家族とリリス、サリーである。
「おばちゃーん!」
リリスの元気な声が宿屋の受付に響き渡り、周りの客が振り返る。
血の繋がりの無い二人は全く似ていない。
居合わせる客は、リリスから発せられた言葉に疑問を持っているのだ。
リリスはサリーのことが大好きである。
いつもくっついて歩くリリスを見て、
サリーは癒されているが、たまに自分の名前を省略してしまう瞬間があり複雑な心境なのだ。
「リリスちゃん、サリーの名前を呼んであげてね」
流石にサリーが可哀想だと思い、イリーナが諭そうとするが、あのクレアの娘である。
こんな時にも天然な性格を発揮してしまう。
「へ?だって私、おばちゃんって呼ぶのが好きなのに」
リリスは何故それが失礼なのか分からない。
そんな自然体で接するリリスを見て、
カートは必死に笑いを堪えているが吹き出してしまう。
「サリー、仕方がないじゃないか」
カートはつい笑ってしまったが、本物のおじさんから言われたことに腹が立ち、カートを睨みつけた。
「……奴隷にするぞ」
「す、すいません」
20代からおじさんと呼ばれていたため、
妙な親近感が湧いていたが、決して自分と同じではないと、カートは反省したのだった。
「それにしてもイリーナ、良い宿屋を知っているのだな」
「実はミストには何度か来たことがあったのですよ」
エルフや獣人にも優しい街であるミストは、
移住する場所として候補にあがっていた。
何度か訪れていたが、結局故郷が忘れられずエルフの里に住んでいたのだ。
そしてカートに出会い、今に至っている。
「ママもここに来たことがあったのか……
じゃあ色々と案内してもらおうかな」
普段はずっと一緒にいるが、長寿種族のエルフであるため時折知らない一面が出てくる。
そんなイリーナの新たな一面を見つけた時、
カートは幸せで堪らないのだ。
そして、受付でチェックインを済ませると、
係の者が部屋に誘導していく。
「パパ~」
カートは近づいてきた愛娘を抱きながら、
部屋に向かって階段を登り始めた。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
ミストの特徴として、螺旋状に街が連なっており、
中央に向かうにつれてセキュリティが強くなる。
都市の真ん中に建つ大きなビルこそ、
ミストの要人が集まる議員会館である。
国民から選挙によって議員を選び、
更にその最高権力者を代表と呼んでいる。
「リディア代表と会う約束をしている者だけど」
ミスト議員会館の受付で声を発したのは、
賢者から交渉を任されたシャルロットである。
時期はルミナスの戦士達がまだ旅立つ前であり、
一人だけ先にミストに入国していた。
「アポイントの確認が取れました!
こちらへどうぞ」
受付の女性が機械で予約を確認すると、
魔導エレベーターに案内される。
見たことのない魔導具を目にする度に、
シャルロットはミストの技術力の高さを再認識していた。
「では、最上階に到着しましたので、
ここからは道なりに進んでください」
薄暗い廊下を歩いていくと、正面に扉が見えてくる。
その前に立つ女性騎士から身体検査をされて、
確認が終わると入室を許可された。
「久しぶりだな、リディア」
「シャルロットも元気そうね」
シャルロットが交渉を任されたのには理由がある。
代表であるリディアとは、幼い頃からの友人なのだ。
リディアが短期留学でルミナスを訪れていた際に気が合い、今も定期的に連絡を取り合っている。
「聖剣のことは文書で伝えたが、
交渉を申し出たのには理由があるのだろう?」
事前に国家間で連絡を取り合っているため、
本来であれば会う必要はない。
しかし、即答で許可は出さず交渉を求めた事に、
シャルロットは別の意図を感じていた。
「流石はシャルね!
それでこそ私の親友だわ」
リディアは長髪の黒髪に眼鏡をかけた知的な女性であり、身長はシャルロットよりも高い。
更に年齢は13歳でありながら、選挙を勝ち抜き代表に至った化け物である。
「それでリディ、何の用があって私を呼んだのよ?」
「本当は他国に協力してもらうことではないのだけれど……」
リディアは言い難そうな雰囲気を出しながら、シャルロットに告げていく。
「実はね、国家転覆を狙う輩がこの施設にいてね……
その賊を捉えて欲しいの」
「なるほどね……
それで賢者が幻惑の腕輪を渡してきたのね」
「どうやら反対勢力は秘密裏に地下で何かを企んでいる」
リディアには終始監視の目が付きまとう。
誰かに協力を依頼しようとすれば、
即座に反対勢力に殺されてしまうのだ。
「だから、しつこく私を追ってくる輩がいるのね」
「本当にごめんなさい」
深々と頭を下げるリディアの姿を見て、
シャルロットは事態の深刻さを理解した。
「まさか強情で人に頭を下げないリディが、
私に頭を下げるなんてね」
「これでも国を預かる代表だからね……
それに頼れる人がシャルしかいなかったのよ」
確かにこの状況であれば、シャルロットに助けを求めるのも理解できた。
しかし、国家間の交渉に発展しているため、
協力するからには相応の対価が必要になる。
「分かっているわ……
報酬は魔導飛行船の技術よ」
シャルロットは、その報酬に目を見開き驚きを隠せない。
世界が到達できない絶対的な技術を明け渡すというのだ。
それだけリディアが本気だと伺えた。
「ミストが滅びるかもしれないの!
もうなりふり構ってられないわ!」
代表であるリディアは、シャルロットの友人だった。
そして今も反対勢力はリディアの命を狙いつつ、国家転覆を企んでいる。
本気で国を救おうと考えているリディアを見て、
シャルロットは覚悟を決めて依頼を聞く事にした……
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