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第138話 隊長
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朝日がカーテンの隙間から差し込んで、眩しさに目を開けると少しずつ意識が覚醒した。
両隣に静かに眠る婚約者二人を見ていると、愛おしさが込み上げてくる。
まずは眠っているマリアの髪を触りながら、
優しく口付けをすると、恥ずかしそうに微笑みを見せた。
「マリア、おはよう」
俺が声をかけると、恥ずかしくなったのか布団の中に隠れてしまう。
そんなマリアが可愛すぎて胸が一杯になる。
「……おはよう」
マリアは少しずつ顔を出して、消え入りそうなほど小さな声で挨拶をしている。
俺とマリアの様子を見ていたのか、
ユーリも後ろから抱きついてきた。
後ろを振り返りユーリを見ると、真っ赤に頬を染めて恥ずかしそうにしている。
乱れる髪を手で綺麗に整えて、ユーリにも口付けを交わした。
「ユーリもおはよう」
ユーリも恥ずかしそうに笑うと、
その笑顔があまりに綺麗で、もう一度唇を奪ってしまった。
後ろからマリアが、次は私の番と言わんばかりに急かしてくる。
「平等にって約束したもん」
甘えるように嫉妬するマリアが可愛くて、
微笑みながら口付けを交わした後に、
今度は言葉で愛を囁いてみた。
俺達はスキルで相手の感情が読めてしまうけれど、大事な気持ちは言葉にして伝えたい。
やはりマリアやユーリの喜ぶ顔が見たいのだ。
そしてマリアも輝く笑顔を見せながら愛情を返してくれる。
そのお返しを貰った途端に俺も幸せで満たされた。
昨日俺達は、いつまでも一緒にいようと誓い合って、三人の絆は更に深まった。
みんなで将来のことを話すのも楽しくて、
止まらなくなってしまう。
「あのさ、お金を貯めて家を買わない?」
ユーリが急に家が欲しいと言い出すと、
俺はふと疑問に思ったことを口にする。
「母上と離れて暮らしても良いの?」
「そ、それは困るな~
あねごがいないのは寂しい」
確かに自立しても良いと思うが、
今はまだ屋敷や土地を貰ったわけではないし、今のままで良いと思う。
俺もせっかく救えた母上と殆ど一緒に暮らせていない。
「もう少し、今を楽しもう!」
まだこの屋敷で家族との時間を楽しみたい。
もう少しだけ長男として甘えたいのだ。
そう思うと、ふと今日はレガードの長男として隊長初任務の日であることを思い出す。
「まだ朝もかなり早いのか……
もうちょっとだけ寝ようか」
そう告げると俺の両腕に、
それぞれの腕を絡めながら、
二人とも静かに眠りについた……
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
そして出発の時間は過ぎて、ミスト調査隊の全員は魔列車に乗り既にルミナスを発っている。
「よし、みんな集まったな」
賢者が声をかけて、魔列車の一室に全員を集めて会議が始まった。
メンバーには父上、リーナを除いたレガードの者、カート家族、フィリア、賢者、そしてサラがいる。
「私たちの目的は聖剣を手に入れること!
絶対に勇者よりも早くだ!」
「そして、目的地の聖剣の神殿が、
空に浮かぶ遺跡の中にある!」
その言葉に居合わせる全員が驚愕していた。
空中遺跡に向かわなければならないが、
俺達は空を移動する術を持っていない。
そして全員が沈黙している中、賢者が口を開いた。
「ミストには魔導飛行船があるのさ!
それに乗り空を飛ぶ!」
何だか物凄く興味を惹かれる単語が出てきて、とても興奮している。
魔導飛行船で空の旅なんて、まさに前世の記憶からすると夢のような話だ。
「かなり魔法が進んでいるのですね?
飛行船なんて凄いです!」
「対人の戦闘魔法だとルミナス、
魔法科学に関してはミストと言われるくらいだ」
それぞれの長所が違うからこそ、
お互いの国は同盟を結び、協力関係を築いてきた。
「ところで魔列車の速度が上がっているが、
ユーリは疲れていないか?」
恐ろしいスピードで走っているが、
ユーリはそれほど疲れていない。
反動があるとすれば、いつもよりも食欲が増している気がする。
「大丈夫みたいですよ?
女神に魔力を貸してますけど」
ユーリから魔力を吸い取り、女神が魔列車の強化をしている。
当然ユーリの魔力がなくなると危険なので、
俺から魔力を送れるように女神が力を授けてくれた。
「俺もマリアから魔力を貰えるので、
循環させればミストまで保つと思います」
俺を中心として魔力は二人に送り合えるようになり、今後も色々と活用できるだろう。
例えば回復魔法にしても俺たちの中で一人でも魔力が残っていれば、マリアの魔法を使えるのだ。
「ますます運命共同体になってきた気が」
そして魔列車がトンネルを潜り抜けると、
ルミナスとは違った近代的な景色が飛び込んできた。
ビルのような建物がたくさん建っており、
更に空を魔導飛行船が飛び回っている。
俺はその光景に目が奪われてしまった。
「凄い!こんな世界があるなんて……」
マリアとユーリも目を輝かせている。
空を自由に飛ぶ魔導飛行船を見て、
今度は空の冒険が出来ると心が馳せる。
「それでは隊長、指揮を頼むぞ!」
陛下から賢者は俺の相談役を任された。
賢者にアドバイスを貰いながら、
これからは俺が作戦の指揮を取るのだ。
俺は部隊を3つに分けて、宿の確保と物資の補給、魔導飛行船の手配と指示をした。
全ての準備が整い次第、翌日に空へ旅立つ計画となる。
そして、最後は隊長の一言で会議を締めることになった。
「勇者の好きには絶対にさせない!
聖剣を手に入れて俺達はみんなを守る!
空の旅になるが、力を貸して欲しい!」
隊員達の賛同する声と共に、士気が高まり会議は終わりを迎えた。
これから先は空中遺跡の奥にある聖剣の神殿へ向かう。
そこでどんな困難が待ち受けようとも隊員全員をルミナスへ生きて帰すと、俺は固く心に誓うのであった……
両隣に静かに眠る婚約者二人を見ていると、愛おしさが込み上げてくる。
まずは眠っているマリアの髪を触りながら、
優しく口付けをすると、恥ずかしそうに微笑みを見せた。
「マリア、おはよう」
俺が声をかけると、恥ずかしくなったのか布団の中に隠れてしまう。
そんなマリアが可愛すぎて胸が一杯になる。
「……おはよう」
マリアは少しずつ顔を出して、消え入りそうなほど小さな声で挨拶をしている。
俺とマリアの様子を見ていたのか、
ユーリも後ろから抱きついてきた。
後ろを振り返りユーリを見ると、真っ赤に頬を染めて恥ずかしそうにしている。
乱れる髪を手で綺麗に整えて、ユーリにも口付けを交わした。
「ユーリもおはよう」
ユーリも恥ずかしそうに笑うと、
その笑顔があまりに綺麗で、もう一度唇を奪ってしまった。
後ろからマリアが、次は私の番と言わんばかりに急かしてくる。
「平等にって約束したもん」
甘えるように嫉妬するマリアが可愛くて、
微笑みながら口付けを交わした後に、
今度は言葉で愛を囁いてみた。
俺達はスキルで相手の感情が読めてしまうけれど、大事な気持ちは言葉にして伝えたい。
やはりマリアやユーリの喜ぶ顔が見たいのだ。
そしてマリアも輝く笑顔を見せながら愛情を返してくれる。
そのお返しを貰った途端に俺も幸せで満たされた。
昨日俺達は、いつまでも一緒にいようと誓い合って、三人の絆は更に深まった。
みんなで将来のことを話すのも楽しくて、
止まらなくなってしまう。
「あのさ、お金を貯めて家を買わない?」
ユーリが急に家が欲しいと言い出すと、
俺はふと疑問に思ったことを口にする。
「母上と離れて暮らしても良いの?」
「そ、それは困るな~
あねごがいないのは寂しい」
確かに自立しても良いと思うが、
今はまだ屋敷や土地を貰ったわけではないし、今のままで良いと思う。
俺もせっかく救えた母上と殆ど一緒に暮らせていない。
「もう少し、今を楽しもう!」
まだこの屋敷で家族との時間を楽しみたい。
もう少しだけ長男として甘えたいのだ。
そう思うと、ふと今日はレガードの長男として隊長初任務の日であることを思い出す。
「まだ朝もかなり早いのか……
もうちょっとだけ寝ようか」
そう告げると俺の両腕に、
それぞれの腕を絡めながら、
二人とも静かに眠りについた……
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
そして出発の時間は過ぎて、ミスト調査隊の全員は魔列車に乗り既にルミナスを発っている。
「よし、みんな集まったな」
賢者が声をかけて、魔列車の一室に全員を集めて会議が始まった。
メンバーには父上、リーナを除いたレガードの者、カート家族、フィリア、賢者、そしてサラがいる。
「私たちの目的は聖剣を手に入れること!
絶対に勇者よりも早くだ!」
「そして、目的地の聖剣の神殿が、
空に浮かぶ遺跡の中にある!」
その言葉に居合わせる全員が驚愕していた。
空中遺跡に向かわなければならないが、
俺達は空を移動する術を持っていない。
そして全員が沈黙している中、賢者が口を開いた。
「ミストには魔導飛行船があるのさ!
それに乗り空を飛ぶ!」
何だか物凄く興味を惹かれる単語が出てきて、とても興奮している。
魔導飛行船で空の旅なんて、まさに前世の記憶からすると夢のような話だ。
「かなり魔法が進んでいるのですね?
飛行船なんて凄いです!」
「対人の戦闘魔法だとルミナス、
魔法科学に関してはミストと言われるくらいだ」
それぞれの長所が違うからこそ、
お互いの国は同盟を結び、協力関係を築いてきた。
「ところで魔列車の速度が上がっているが、
ユーリは疲れていないか?」
恐ろしいスピードで走っているが、
ユーリはそれほど疲れていない。
反動があるとすれば、いつもよりも食欲が増している気がする。
「大丈夫みたいですよ?
女神に魔力を貸してますけど」
ユーリから魔力を吸い取り、女神が魔列車の強化をしている。
当然ユーリの魔力がなくなると危険なので、
俺から魔力を送れるように女神が力を授けてくれた。
「俺もマリアから魔力を貰えるので、
循環させればミストまで保つと思います」
俺を中心として魔力は二人に送り合えるようになり、今後も色々と活用できるだろう。
例えば回復魔法にしても俺たちの中で一人でも魔力が残っていれば、マリアの魔法を使えるのだ。
「ますます運命共同体になってきた気が」
そして魔列車がトンネルを潜り抜けると、
ルミナスとは違った近代的な景色が飛び込んできた。
ビルのような建物がたくさん建っており、
更に空を魔導飛行船が飛び回っている。
俺はその光景に目が奪われてしまった。
「凄い!こんな世界があるなんて……」
マリアとユーリも目を輝かせている。
空を自由に飛ぶ魔導飛行船を見て、
今度は空の冒険が出来ると心が馳せる。
「それでは隊長、指揮を頼むぞ!」
陛下から賢者は俺の相談役を任された。
賢者にアドバイスを貰いながら、
これからは俺が作戦の指揮を取るのだ。
俺は部隊を3つに分けて、宿の確保と物資の補給、魔導飛行船の手配と指示をした。
全ての準備が整い次第、翌日に空へ旅立つ計画となる。
そして、最後は隊長の一言で会議を締めることになった。
「勇者の好きには絶対にさせない!
聖剣を手に入れて俺達はみんなを守る!
空の旅になるが、力を貸して欲しい!」
隊員達の賛同する声と共に、士気が高まり会議は終わりを迎えた。
これから先は空中遺跡の奥にある聖剣の神殿へ向かう。
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