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第120話 救う者(3)
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500年前のルミナス城、訓練場で賢者の側近イシスの斬撃を受け止める人物が現れた。
「何者だ、貴様は…」
そして、その人物は決意を込めて高らかに宣言する。
「クリス、レガード…
今日ここで…
賢者を…救う者だ!」
イシスの剣を受け止めたことで鍔迫り合いになるが、まともに打ち合うと危険だと本能が察知した。
その感覚に従い、俺は即座に剣を弾き飛ばす。
そしてその瞬間に、母上が賢者に駆け寄り手当を施していく。
更にユリスとガルムが遅れて訓練場に到着し、
その光景に言葉を失ってしまう。
「先生、これは嘘よね?
まさか先生がこんな事するはずない…」
「ふふふ、事実よ…
今まで貴方が見ていたのは偽りに過ぎない」
イシスは、邪悪な笑みを浮かべながら剣を握り暗黒魔法を発動する。
「ダークスフィア!」
暗黒魔法の槍がユリスへと向かうが、
ユリスは炎の魔法剣で暗黒魔法をかき消した。
更に怒りに震えながら言葉を放つ。
「先生、賢者様をこんなにしたのよね?
絶対に…絶対に許さないわ!」
怒りがユリスの才能を目覚めさせ、
その瞬間、剣術スキルのレベルが7に上がる。
「ここに来て覚醒したのね…
ふふふ、面白いわ…
私が育てた弟子を私が殺してあげる」
不敵な笑みを浮かべながら、高速でユリスに迫る。
そして俺もユリスに加勢しようと動いた時、
賢者が口を開いた。
「覇王を持つ者よ…」
俺は瀕死の賢者に呼ばれ、とても放っておける状況ではなかった。
しかし、ユリスをこのまま1人で戦わせるわけにはいかない…
咄嗟に周りを見回したところで、ガルムが目に入る。
「ガルム、頼む…
俺が行くまでユリスを守ってくれ!」
ガルムは俺の声を聞いた途端に、
姿を変えて、ユリスの元へ駆けていく。
「賢者…」
傷口を見て即座に回復魔法をかけるが、
一向に治る気配が無い。
このままでは賢者を死なせてしまう……
必死に思考を張り巡らしていると、
リルムの病を治した手段を思い出した。
その時に使った素材、龍の生き血だ。
「賢者、俺達は未来の賢者から、
龍を倒して素材を届けるように言われたんだ!」
いきなり突拍子もないことを言われて混乱していると思うが、時間がない。
龍の素材を直接見せて強引に理解させるしかない。
「な、何だと…」
賢者は、袋に入る龍の素材を見て目を見開いている。
恐らく俺の言っていることを最初は信じられなかったが、もう既に真実だと確信している。
「信じられないが本当なんだな…」
「あぁ、もっとゆっくり説明したいが、
そういうわけにもいかないんだ…」
そして、俺は龍の生き血を治療に使えないか問いただした。
「な、なんだと!
それを早く言え!」
賢者は母上に指示をしながら、龍の生き血を素材にして即席の薬を調合した。
「私も悪運が強いね…」
賢者がその薬を飲むと、みるみるうちに傷が回復していく。
まるでおとぎ話に出てくる光景のようだ。
「龍の生き血は、錬金術でも
最高の素材なんだよ…
ありがたく使わせてもらったよ」
間一髪だったが、龍の生き血によって肩に鋭く入っていた傷も見事に塞がっている。
「良かった、師匠!」
母上は涙を流しながら賢者に抱きついた。
この時代で母上を知らない賢者は少し困惑していて、それが可笑しくて笑ってしまう。
その時、突如として通信機から連絡が入る。
それは未来の賢者からだった…
「私に会えて救えたようだね…
私の存在が消えかかっていたから、
連絡出来なかったんだ…」
過去の賢者が攻撃を受けていたため、
未来にも影響していたようだ。
通信出来なくなっていたのはその為だ。
「ここからはラグナ達の部屋に行く…
申し訳ないがクレアだけ先に来れないか?」
賢者はラグナ達のいる部屋に強力な波動を感知して母上に増援を求めた。
そして、俺は聖剣の場所を過去の賢者に確認する。
「私が直接、陛下に渡しに行く予定なんだ…
まだ、私の研究室にある筈だ!」
その情報を聞き、即座に母上に先ほどの通信内容を伝えて一足先に未来へ戻るよう頼み込んだ。
「2人に別れの挨拶が出来ないのは残念だが、
今はユーリが心配だ…
クリス、後は頼んだぞ…」
「ちょっと待て、これは選別だ!
持っていけ!」
そして母上は、賢者から龍の血を受け取り、
研究室まで全速力で駆け抜けた。
「2人とも上手く立ち回ってるじゃないか」
賢者はユリスとガルムの見事な戦いぶりに舌を巻いていた。
イシスの高速剣をギリギリでガルムが防ぎ、
追撃されないようにユリスが剣技で攻撃を仕掛けている。
戦いは膠着状態に陥っている様子だ。
「私も龍の血で封印が解けた…
一緒に加勢しようじゃないか!」
俺と賢者はユリス達に加勢するため、
互いに身体強化を強めて走り始めた。
賢者の研究室に向かい、
クレアは一足先に未来へと時空を超える。
しかし、クリスも一刻も早く戻らなければならない。
なぜならラグナの陰謀である儀式は、
既に完成を迎えようとしている…
「何者だ、貴様は…」
そして、その人物は決意を込めて高らかに宣言する。
「クリス、レガード…
今日ここで…
賢者を…救う者だ!」
イシスの剣を受け止めたことで鍔迫り合いになるが、まともに打ち合うと危険だと本能が察知した。
その感覚に従い、俺は即座に剣を弾き飛ばす。
そしてその瞬間に、母上が賢者に駆け寄り手当を施していく。
更にユリスとガルムが遅れて訓練場に到着し、
その光景に言葉を失ってしまう。
「先生、これは嘘よね?
まさか先生がこんな事するはずない…」
「ふふふ、事実よ…
今まで貴方が見ていたのは偽りに過ぎない」
イシスは、邪悪な笑みを浮かべながら剣を握り暗黒魔法を発動する。
「ダークスフィア!」
暗黒魔法の槍がユリスへと向かうが、
ユリスは炎の魔法剣で暗黒魔法をかき消した。
更に怒りに震えながら言葉を放つ。
「先生、賢者様をこんなにしたのよね?
絶対に…絶対に許さないわ!」
怒りがユリスの才能を目覚めさせ、
その瞬間、剣術スキルのレベルが7に上がる。
「ここに来て覚醒したのね…
ふふふ、面白いわ…
私が育てた弟子を私が殺してあげる」
不敵な笑みを浮かべながら、高速でユリスに迫る。
そして俺もユリスに加勢しようと動いた時、
賢者が口を開いた。
「覇王を持つ者よ…」
俺は瀕死の賢者に呼ばれ、とても放っておける状況ではなかった。
しかし、ユリスをこのまま1人で戦わせるわけにはいかない…
咄嗟に周りを見回したところで、ガルムが目に入る。
「ガルム、頼む…
俺が行くまでユリスを守ってくれ!」
ガルムは俺の声を聞いた途端に、
姿を変えて、ユリスの元へ駆けていく。
「賢者…」
傷口を見て即座に回復魔法をかけるが、
一向に治る気配が無い。
このままでは賢者を死なせてしまう……
必死に思考を張り巡らしていると、
リルムの病を治した手段を思い出した。
その時に使った素材、龍の生き血だ。
「賢者、俺達は未来の賢者から、
龍を倒して素材を届けるように言われたんだ!」
いきなり突拍子もないことを言われて混乱していると思うが、時間がない。
龍の素材を直接見せて強引に理解させるしかない。
「な、何だと…」
賢者は、袋に入る龍の素材を見て目を見開いている。
恐らく俺の言っていることを最初は信じられなかったが、もう既に真実だと確信している。
「信じられないが本当なんだな…」
「あぁ、もっとゆっくり説明したいが、
そういうわけにもいかないんだ…」
そして、俺は龍の生き血を治療に使えないか問いただした。
「な、なんだと!
それを早く言え!」
賢者は母上に指示をしながら、龍の生き血を素材にして即席の薬を調合した。
「私も悪運が強いね…」
賢者がその薬を飲むと、みるみるうちに傷が回復していく。
まるでおとぎ話に出てくる光景のようだ。
「龍の生き血は、錬金術でも
最高の素材なんだよ…
ありがたく使わせてもらったよ」
間一髪だったが、龍の生き血によって肩に鋭く入っていた傷も見事に塞がっている。
「良かった、師匠!」
母上は涙を流しながら賢者に抱きついた。
この時代で母上を知らない賢者は少し困惑していて、それが可笑しくて笑ってしまう。
その時、突如として通信機から連絡が入る。
それは未来の賢者からだった…
「私に会えて救えたようだね…
私の存在が消えかかっていたから、
連絡出来なかったんだ…」
過去の賢者が攻撃を受けていたため、
未来にも影響していたようだ。
通信出来なくなっていたのはその為だ。
「ここからはラグナ達の部屋に行く…
申し訳ないがクレアだけ先に来れないか?」
賢者はラグナ達のいる部屋に強力な波動を感知して母上に増援を求めた。
そして、俺は聖剣の場所を過去の賢者に確認する。
「私が直接、陛下に渡しに行く予定なんだ…
まだ、私の研究室にある筈だ!」
その情報を聞き、即座に母上に先ほどの通信内容を伝えて一足先に未来へ戻るよう頼み込んだ。
「2人に別れの挨拶が出来ないのは残念だが、
今はユーリが心配だ…
クリス、後は頼んだぞ…」
「ちょっと待て、これは選別だ!
持っていけ!」
そして母上は、賢者から龍の血を受け取り、
研究室まで全速力で駆け抜けた。
「2人とも上手く立ち回ってるじゃないか」
賢者はユリスとガルムの見事な戦いぶりに舌を巻いていた。
イシスの高速剣をギリギリでガルムが防ぎ、
追撃されないようにユリスが剣技で攻撃を仕掛けている。
戦いは膠着状態に陥っている様子だ。
「私も龍の血で封印が解けた…
一緒に加勢しようじゃないか!」
俺と賢者はユリス達に加勢するため、
互いに身体強化を強めて走り始めた。
賢者の研究室に向かい、
クレアは一足先に未来へと時空を超える。
しかし、クリスも一刻も早く戻らなければならない。
なぜならラグナの陰謀である儀式は、
既に完成を迎えようとしている…
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