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第103話 擬態
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アリスの演技のおかげで、魔導エレベーターに賢者を送り出すことが出来た。
そして想像以上に所長から疑われていない。
それはまさに幻惑の腕輪の効果とアリスの訓練の成果だった。
そして所長は施設の案内を続けていく。
魔導具研究所の中では精霊について詳しく
研究されているようで契約の腕輪も展示されていた。
「精霊についての研究が多いですね」
「この地は水の精霊が多く住んでますから」
テティスは、水の精霊が多く生息する地域でその恩恵を受けている。
更に精霊王の加護を得る事で水魔法のスキルのレベルが上がりやすいのだ。
「水の精霊王、ウンディーネ…」
マリアが展示されている絵を見て呟いた。
その絵はウンディーネが守り神として、
テティスを覆い守るように描かれている。
「ウンディーネは、
100年前にテティスに現れて、
当時の教皇と契約したと聞きます」
「その契約の腕輪はどんな効果が?」
シャルロットが所長に問う。
イフリートの契約の腕輪は、
スキルレベルを二倍にするものだった。
ウンディーネの契約の腕輪の効果が知りたいようだ。
「一説によると…
魔力を吸収できるらしいのです」
俺は所長の表情が、一瞬歪んだ気がした…
「魔力を吸収って凄いわね…」
シャルロットは腕輪の効力に驚愕していた。
相手の魔力を吸収してしまえば全ての行動を制限できてしまう。
そしてウンディーネの話を聞いた後は、
所長からお勧めの魔導具の紹介がされた。
敏捷性を上げる魔導具
力を上げる魔道具
知覚が上昇する魔導具
どれも効果としては素晴らしいが、
その上昇する能力は僅かでイフリートの力の代用にはならなかった。
全員が欲しい魔導具ではないため落胆していたところでクリスの通信機から声が聞こえ始めた。
「おい、15階が…
とんでもないことになってる」
突如として通信機器から賢者の焦る声が聞こえる。
その声は焦りの中に怒りが入り混じっていた。
「た、大変だ…
この研究所は、魔族に支配されている」
「はい?」
俺は魔族という言葉に焦ってしまう。
目の前の所長も魔族なのだろうか。
そう思うと途端に冷や汗をかいてきたのだ。
引き続き小声で賢者と通信を取りたいが、
なかなかタイミングが掴めない。
俺の様子を見たマリアは状況を察知して、
所長にウンディーネの質問を繰り返した。
すると所長は可愛いマリアから声をかけられて鼻の下が伸びている。
俺は違う意味で怒りに震えていた。
問題が解決したら所長を攻撃しようと心に決めた。
「賢者、ひとまず状況を話し続けてください」
小声で賢者に頼み込むと賢者も理解して、
15階の内容を話し続ける。
「まず、最上階には職員が拘束されていて、
魔力を少しずつ吸収されている」
「なんだって!」
つい大きい声を出してしまったと反省したがまだ所長はマリアとの話に夢中のようだ。
「魔族は入り込んでいるが研究所で勤務している
職員全てが魔族という訳ではない」
「はい?」
賢者の言っている意味がわからなかった。
何故魔族でもないのに魔族の味方をするのだろうか。
それが腑に落ちない。
「隷属の首輪だよ…
先程付けられているのを発見した」
奴隷術を行使出来る魔導具が職員に施され、
言いなりにされている可能性がある。
賢者は首輪が付けられた者を上階で発見した。
「それで…
魔力が集められているんだ…」
俺はその先が気になって仕方ない。
一体魔力を吸収して何に使われているのか。
「それはな…」
突如賢者の通信機にノイズが走り声が聞こえなくなる。
「き…を…ろ」
「賢者?大丈夫か?」
ノイズが激しくなり通信機器は途絶えてしまった。
賢者の身に何かがあったのではないかと心配になるが、目の前の所長にも注意を払わなければならない。
魔力を一体何に送っているんだ?
俺達をどうやって苦しめる?
俺は魔力の使い道を考えていた。
そしてふとウンディーネの能力が気になってしまう。
「あの、所長…
ウンディーネは吸収した魔力を、
一体どうするのですか?」
俺はイフリートに螺旋の炎があるように、
ウンディーネにも何か固有スキルがあるはずだと考えた。
「おお、良い質問ですね…
それは眷属の召喚ですよ」
所長がウンディーネの固有スキルを説明した事で賢者の指摘した内容を理解した。
魔力を蓄えた魔王軍はウンディーネの眷属を大量召喚してテティスを襲うつもりだ。
そして、今も所長と話して時間を稼ごうとするマリアを見てそろそろ助け出そうと近づいた。
その時、賢者との通信が回復する。
「クリス、上階で魔族を一人倒した…
そいつは人間に変化できる擬態持ちだ」
そういえばエレノアが使っていたな。
過去の世界で母上に化けてユーリを攫っていた。
「だが、擬態のレベルが低いから、
首筋を見ろ…
そこにアザがある」
そして賢者からの情報を聞き目の前の所長に目を向ける…
「所長にも、アザがある…」
そして、魔族と今も至近距離でマリアが話しているのを確認した。
マリアの危機的状況に頭が痛くなる。
「マリア…」
魔導具研究所は魔族に支配されていた。
クリスのために時間を稼ごうと研究所の所長と話し続けているマリア。
しかしその所長は魔族の一人で、人間に擬態している可能性が高い。
そしてこの危機的状況を乗り越えるために、クリスは思考を張り巡らせていく。
そして想像以上に所長から疑われていない。
それはまさに幻惑の腕輪の効果とアリスの訓練の成果だった。
そして所長は施設の案内を続けていく。
魔導具研究所の中では精霊について詳しく
研究されているようで契約の腕輪も展示されていた。
「精霊についての研究が多いですね」
「この地は水の精霊が多く住んでますから」
テティスは、水の精霊が多く生息する地域でその恩恵を受けている。
更に精霊王の加護を得る事で水魔法のスキルのレベルが上がりやすいのだ。
「水の精霊王、ウンディーネ…」
マリアが展示されている絵を見て呟いた。
その絵はウンディーネが守り神として、
テティスを覆い守るように描かれている。
「ウンディーネは、
100年前にテティスに現れて、
当時の教皇と契約したと聞きます」
「その契約の腕輪はどんな効果が?」
シャルロットが所長に問う。
イフリートの契約の腕輪は、
スキルレベルを二倍にするものだった。
ウンディーネの契約の腕輪の効果が知りたいようだ。
「一説によると…
魔力を吸収できるらしいのです」
俺は所長の表情が、一瞬歪んだ気がした…
「魔力を吸収って凄いわね…」
シャルロットは腕輪の効力に驚愕していた。
相手の魔力を吸収してしまえば全ての行動を制限できてしまう。
そしてウンディーネの話を聞いた後は、
所長からお勧めの魔導具の紹介がされた。
敏捷性を上げる魔導具
力を上げる魔道具
知覚が上昇する魔導具
どれも効果としては素晴らしいが、
その上昇する能力は僅かでイフリートの力の代用にはならなかった。
全員が欲しい魔導具ではないため落胆していたところでクリスの通信機から声が聞こえ始めた。
「おい、15階が…
とんでもないことになってる」
突如として通信機器から賢者の焦る声が聞こえる。
その声は焦りの中に怒りが入り混じっていた。
「た、大変だ…
この研究所は、魔族に支配されている」
「はい?」
俺は魔族という言葉に焦ってしまう。
目の前の所長も魔族なのだろうか。
そう思うと途端に冷や汗をかいてきたのだ。
引き続き小声で賢者と通信を取りたいが、
なかなかタイミングが掴めない。
俺の様子を見たマリアは状況を察知して、
所長にウンディーネの質問を繰り返した。
すると所長は可愛いマリアから声をかけられて鼻の下が伸びている。
俺は違う意味で怒りに震えていた。
問題が解決したら所長を攻撃しようと心に決めた。
「賢者、ひとまず状況を話し続けてください」
小声で賢者に頼み込むと賢者も理解して、
15階の内容を話し続ける。
「まず、最上階には職員が拘束されていて、
魔力を少しずつ吸収されている」
「なんだって!」
つい大きい声を出してしまったと反省したがまだ所長はマリアとの話に夢中のようだ。
「魔族は入り込んでいるが研究所で勤務している
職員全てが魔族という訳ではない」
「はい?」
賢者の言っている意味がわからなかった。
何故魔族でもないのに魔族の味方をするのだろうか。
それが腑に落ちない。
「隷属の首輪だよ…
先程付けられているのを発見した」
奴隷術を行使出来る魔導具が職員に施され、
言いなりにされている可能性がある。
賢者は首輪が付けられた者を上階で発見した。
「それで…
魔力が集められているんだ…」
俺はその先が気になって仕方ない。
一体魔力を吸収して何に使われているのか。
「それはな…」
突如賢者の通信機にノイズが走り声が聞こえなくなる。
「き…を…ろ」
「賢者?大丈夫か?」
ノイズが激しくなり通信機器は途絶えてしまった。
賢者の身に何かがあったのではないかと心配になるが、目の前の所長にも注意を払わなければならない。
魔力を一体何に送っているんだ?
俺達をどうやって苦しめる?
俺は魔力の使い道を考えていた。
そしてふとウンディーネの能力が気になってしまう。
「あの、所長…
ウンディーネは吸収した魔力を、
一体どうするのですか?」
俺はイフリートに螺旋の炎があるように、
ウンディーネにも何か固有スキルがあるはずだと考えた。
「おお、良い質問ですね…
それは眷属の召喚ですよ」
所長がウンディーネの固有スキルを説明した事で賢者の指摘した内容を理解した。
魔力を蓄えた魔王軍はウンディーネの眷属を大量召喚してテティスを襲うつもりだ。
そして、今も所長と話して時間を稼ごうとするマリアを見てそろそろ助け出そうと近づいた。
その時、賢者との通信が回復する。
「クリス、上階で魔族を一人倒した…
そいつは人間に変化できる擬態持ちだ」
そういえばエレノアが使っていたな。
過去の世界で母上に化けてユーリを攫っていた。
「だが、擬態のレベルが低いから、
首筋を見ろ…
そこにアザがある」
そして賢者からの情報を聞き目の前の所長に目を向ける…
「所長にも、アザがある…」
そして、魔族と今も至近距離でマリアが話しているのを確認した。
マリアの危機的状況に頭が痛くなる。
「マリア…」
魔導具研究所は魔族に支配されていた。
クリスのために時間を稼ごうと研究所の所長と話し続けているマリア。
しかしその所長は魔族の一人で、人間に擬態している可能性が高い。
そしてこの危機的状況を乗り越えるために、クリスは思考を張り巡らせていく。
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