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第83話 侵攻
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ルミナス魔宝祭は移住したエルフがルミナスの国民と親交を深めるのを目的として生まれた。
祭は三日間行われるが特に初日と最終日に人が多い。
本場のエルフの里の魔宝祭ではユグドラシルの魔力放出があった。
それにちなんでルミナスでは大きな花火を打ち上げるのだ。
「いよいよ始まるな…」
そのように呟いたのは王国騎士団所属の
カートだ。
イリーナの出店を止めたかったが祭に命を捧げるエルフを止める事は出来ない。
「パパも早く帰ってきてね!」
パパと呼ばれたのはカートだ。
いつも呼ばれ慣れているはずなのだが、
イリーナから呼ばれると嬉しくて鼻の下が伸びてしまう。
「パパ~早く帰ってきなさいね!」
そして娘はイリーナの真似をしてお嫁さんになったような口調で話している。
そんな娘が可愛すぎて溺愛しているのだ。
そして今日も仕事に行きたくないおじさんと化してしまった。
「パパは、仕事に行きたくないよ~」
そう娘に言い残し渋々職場である騎士団へと向かったのだった。
ルミナスの街の中央通りには出店が多く並んでおり、エルフの里を忠実に再現している。
出店のエルフの店主たちは、カートを見つけると全員が声をかけていく。
「カート、後で飲みに来いよ!」
「おい、うちもだぞ」
カートは嫁がエルフということもあり、
この十年で殆どのエルフと親交を深めていた。
元々人当たりも良くすぐに打ち解けてしまい気付けばカートの家に差し入れが届くようになっている。
知らないうちにエルフとの親善大使的な役割を担っていたのだ。
「イリーナと娘も連れて来いよ」
家族でお世話になることも多い。
何だかんだ一番世渡り上手に立ち回っているのはカートなのかもしれない。
そしてカートは警備の持ち場である城へと到着した。
ここなら高台にあり街を見下ろせる。
開会式の花火が打ち上げられて、
いよいよルミナス魔宝祭が開始した。
「頼んだぞ、クリス…」
カートは祭りが始まると同時に襲撃が近いことを予期した。
詳細までは知らないが、クリスは重要なポジションを担っているのを知っている。
息子同然に考えているクリスを心配しつつも未来を託したのだ。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
そして、ついにその時が来た。
中央通りに向かって魔族が上空から攻めてきたのだ。
ワイバーンに乗る魔族が魔法で攻撃を仕掛けてくる。
各地に広がる血と悲鳴。
ルミナスの魔宝祭は、開始早々に悲惨な光景へと変化してしまった。
人々の死体が次々と積まれてしまう。
「ふははは、人間は脆弱よ」
そう声をあげたのは四天王バルガス。
白い長髪をしており髪を後ろで縛っている。
そして身体は岩のように大きく筋肉で覆われている。
「弱い、弱すぎる!」
目の前で抵抗するエルフ達を殺し城へと向かう。
シンもワイバーンに乗りバルガスに近づく。
「バルガス、城が見えてきましたよ」
「ふふふ、この調子なら城内まで、
お前の部隊は温存できるな」
ほぼ無抵抗に近い状態で中央通りを突破し城を目前としている。
空からの攻撃に対して兵士は有効手段を持ち得ない。
「よし、城へ侵入するぞ!」
バルガスとシンはワイバーンから降りる。
更にシンは転移魔法でオークを200匹呼び出した。
「待っていろ、王女よ…
もうすぐ俺が魔王へと至る」
そして魔王軍四天王バルガスと転生者であるシンは、ルミナス城への侵入を開始したのだ。
城内の中央広間まで侵入しこのまま王女を手中に収められるかと思ったが、そうはいかない。
目の前に最強の宮廷魔術師クレア・レガードとユーリが立ちはだかる。
「残念だがここから先は通さないぞ」
クレアの魔力は人間の中でも圧倒的に優れている。
光の剣を呼び出す魔力操作に目がいきがちだが、
その魔力量と質は人間の中でもトップクラスだ。
「これは食べ応えのある奴が現れた」
バルガスは舌舐めずりをしながらクレアを捕食すること考えている。
「バルガス、オーク達にやらせましょう
力を温存しておいた方が良い」
そう言うと呼び出したオーク200匹をクレア達に向かわせる。
押し寄せてくる大群が城を埋め尽くそうとした時、
ユーリの氷魔法によりオーク200匹の下半身が固まっていく。
「な、なんだと」
この一瞬で凍らされてしまったオークを見て、シンは驚愕している。
「ほう、コイツもまた美味そうだな」
バルガスはユーリの能力を目の当たりにして氷魔法の能力に惚れ込んだ。
そしてクレアと同様に捕食しようと考えている。
「ふふ、喰えるものなら喰ってみろ、
その前に塵にしてやるがな」
クレアは光の剣を200本呼び出し向かわせる。
下半身を凍らされてしまったオーク達は避けることが出来ない。
突き刺さった剣により光の粒子となって消えていく。
「ま、まさか」
シンは初めてクレアを目の当たりにした。
黒騎士セトを撃退した戦士達の力は伊達ではない。
クレアの力の認識を改め直していた。
「素晴らしい…」
バルガスの頭の中はクレアで一杯になってしまった。
クレアの固有スキル、光魔法。
そして唯一無二の光の剣が欲しくて堪らない。
「ふふふ、はははは」
バルガスは身体全体に地属性魔法の身体強化を施して突進を繰り出してきた。
しかしクレアに直線的な攻撃は愚策である。
神速スキルで死角に入ってしまう。
「な、なんだと…
消えただと…」
クレアは笑みを浮かべながら光の剣を30本呼び出す。
死角からの光の剣は一撃必殺の刃だ。
「バルガス、後ろだ!」
光の剣がバルガスの後方へ飛んでいく。
クレアの光の剣は十年間研鑽を積んできたことにより速度が増している。
避けることのできない剣が襲う。
光の剣が直撃しその衝撃波が広がっていく。
シンも眩しさを堪えながらバルガスを見る。
「ふふふ、はははは
これは素晴らしい!」
バルガスの身体は鋼鉄に変化している。
初めて見るスキルがバルガスの身体を覆う。
「喰った能力の一つ、硬質化
鋼の肉体へと変化するんだよ」
そう言い放ったバルガスは地属性魔法を更に身体強化として施し突進をしてくる。
ユーリはクレアの危機を察知して、
瞬時に無詠唱で氷魔法の壁を三枚つくる。
その壁はクレアとバルガスの間に発生していく。
「ふははは」
バルガスは、素手で氷の壁を破壊していく。
一枚、二枚目、三枚目と次々に破壊されてしまう。
クレアの目の前まで迫ったバルガス。
ついにバルガスはクレアを捕食出来ると踏んで舌舐めずりをする。
「宣言通り喰ってやる」
目前に迫ったバルガスがクレアへ言葉を発していく。
「やはり連れてきて正解だったな」
クレアが捕らえられるその瞬間、
死角からの剣撃がバルガスを狙う。
「雷神剣」
雷の魔法剣は鋼の肉体に電撃を通していく。
バルガスは重度の麻痺を受けた。
そして雷魔法を使える者はルミナスで唯一人だけだ。
「お前を連れてきて正解だよ。
アリス…」
クレアの娘、アリス・レガードだ。
アリスは兄を守るために必死に鍛錬をした。
そしてそれがアリスの才能を更に目覚めさせる。
祭は三日間行われるが特に初日と最終日に人が多い。
本場のエルフの里の魔宝祭ではユグドラシルの魔力放出があった。
それにちなんでルミナスでは大きな花火を打ち上げるのだ。
「いよいよ始まるな…」
そのように呟いたのは王国騎士団所属の
カートだ。
イリーナの出店を止めたかったが祭に命を捧げるエルフを止める事は出来ない。
「パパも早く帰ってきてね!」
パパと呼ばれたのはカートだ。
いつも呼ばれ慣れているはずなのだが、
イリーナから呼ばれると嬉しくて鼻の下が伸びてしまう。
「パパ~早く帰ってきなさいね!」
そして娘はイリーナの真似をしてお嫁さんになったような口調で話している。
そんな娘が可愛すぎて溺愛しているのだ。
そして今日も仕事に行きたくないおじさんと化してしまった。
「パパは、仕事に行きたくないよ~」
そう娘に言い残し渋々職場である騎士団へと向かったのだった。
ルミナスの街の中央通りには出店が多く並んでおり、エルフの里を忠実に再現している。
出店のエルフの店主たちは、カートを見つけると全員が声をかけていく。
「カート、後で飲みに来いよ!」
「おい、うちもだぞ」
カートは嫁がエルフということもあり、
この十年で殆どのエルフと親交を深めていた。
元々人当たりも良くすぐに打ち解けてしまい気付けばカートの家に差し入れが届くようになっている。
知らないうちにエルフとの親善大使的な役割を担っていたのだ。
「イリーナと娘も連れて来いよ」
家族でお世話になることも多い。
何だかんだ一番世渡り上手に立ち回っているのはカートなのかもしれない。
そしてカートは警備の持ち場である城へと到着した。
ここなら高台にあり街を見下ろせる。
開会式の花火が打ち上げられて、
いよいよルミナス魔宝祭が開始した。
「頼んだぞ、クリス…」
カートは祭りが始まると同時に襲撃が近いことを予期した。
詳細までは知らないが、クリスは重要なポジションを担っているのを知っている。
息子同然に考えているクリスを心配しつつも未来を託したのだ。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
そして、ついにその時が来た。
中央通りに向かって魔族が上空から攻めてきたのだ。
ワイバーンに乗る魔族が魔法で攻撃を仕掛けてくる。
各地に広がる血と悲鳴。
ルミナスの魔宝祭は、開始早々に悲惨な光景へと変化してしまった。
人々の死体が次々と積まれてしまう。
「ふははは、人間は脆弱よ」
そう声をあげたのは四天王バルガス。
白い長髪をしており髪を後ろで縛っている。
そして身体は岩のように大きく筋肉で覆われている。
「弱い、弱すぎる!」
目の前で抵抗するエルフ達を殺し城へと向かう。
シンもワイバーンに乗りバルガスに近づく。
「バルガス、城が見えてきましたよ」
「ふふふ、この調子なら城内まで、
お前の部隊は温存できるな」
ほぼ無抵抗に近い状態で中央通りを突破し城を目前としている。
空からの攻撃に対して兵士は有効手段を持ち得ない。
「よし、城へ侵入するぞ!」
バルガスとシンはワイバーンから降りる。
更にシンは転移魔法でオークを200匹呼び出した。
「待っていろ、王女よ…
もうすぐ俺が魔王へと至る」
そして魔王軍四天王バルガスと転生者であるシンは、ルミナス城への侵入を開始したのだ。
城内の中央広間まで侵入しこのまま王女を手中に収められるかと思ったが、そうはいかない。
目の前に最強の宮廷魔術師クレア・レガードとユーリが立ちはだかる。
「残念だがここから先は通さないぞ」
クレアの魔力は人間の中でも圧倒的に優れている。
光の剣を呼び出す魔力操作に目がいきがちだが、
その魔力量と質は人間の中でもトップクラスだ。
「これは食べ応えのある奴が現れた」
バルガスは舌舐めずりをしながらクレアを捕食すること考えている。
「バルガス、オーク達にやらせましょう
力を温存しておいた方が良い」
そう言うと呼び出したオーク200匹をクレア達に向かわせる。
押し寄せてくる大群が城を埋め尽くそうとした時、
ユーリの氷魔法によりオーク200匹の下半身が固まっていく。
「な、なんだと」
この一瞬で凍らされてしまったオークを見て、シンは驚愕している。
「ほう、コイツもまた美味そうだな」
バルガスはユーリの能力を目の当たりにして氷魔法の能力に惚れ込んだ。
そしてクレアと同様に捕食しようと考えている。
「ふふ、喰えるものなら喰ってみろ、
その前に塵にしてやるがな」
クレアは光の剣を200本呼び出し向かわせる。
下半身を凍らされてしまったオーク達は避けることが出来ない。
突き刺さった剣により光の粒子となって消えていく。
「ま、まさか」
シンは初めてクレアを目の当たりにした。
黒騎士セトを撃退した戦士達の力は伊達ではない。
クレアの力の認識を改め直していた。
「素晴らしい…」
バルガスの頭の中はクレアで一杯になってしまった。
クレアの固有スキル、光魔法。
そして唯一無二の光の剣が欲しくて堪らない。
「ふふふ、はははは」
バルガスは身体全体に地属性魔法の身体強化を施して突進を繰り出してきた。
しかしクレアに直線的な攻撃は愚策である。
神速スキルで死角に入ってしまう。
「な、なんだと…
消えただと…」
クレアは笑みを浮かべながら光の剣を30本呼び出す。
死角からの光の剣は一撃必殺の刃だ。
「バルガス、後ろだ!」
光の剣がバルガスの後方へ飛んでいく。
クレアの光の剣は十年間研鑽を積んできたことにより速度が増している。
避けることのできない剣が襲う。
光の剣が直撃しその衝撃波が広がっていく。
シンも眩しさを堪えながらバルガスを見る。
「ふふふ、はははは
これは素晴らしい!」
バルガスの身体は鋼鉄に変化している。
初めて見るスキルがバルガスの身体を覆う。
「喰った能力の一つ、硬質化
鋼の肉体へと変化するんだよ」
そう言い放ったバルガスは地属性魔法を更に身体強化として施し突進をしてくる。
ユーリはクレアの危機を察知して、
瞬時に無詠唱で氷魔法の壁を三枚つくる。
その壁はクレアとバルガスの間に発生していく。
「ふははは」
バルガスは、素手で氷の壁を破壊していく。
一枚、二枚目、三枚目と次々に破壊されてしまう。
クレアの目の前まで迫ったバルガス。
ついにバルガスはクレアを捕食出来ると踏んで舌舐めずりをする。
「宣言通り喰ってやる」
目前に迫ったバルガスがクレアへ言葉を発していく。
「やはり連れてきて正解だったな」
クレアが捕らえられるその瞬間、
死角からの剣撃がバルガスを狙う。
「雷神剣」
雷の魔法剣は鋼の肉体に電撃を通していく。
バルガスは重度の麻痺を受けた。
そして雷魔法を使える者はルミナスで唯一人だけだ。
「お前を連れてきて正解だよ。
アリス…」
クレアの娘、アリス・レガードだ。
アリスは兄を守るために必死に鍛錬をした。
そしてそれがアリスの才能を更に目覚めさせる。
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