63 / 182
第63話 時空を超えて
しおりを挟む
家族へ別れを告げた夜から清々しい朝を迎える。
そして今日は、この世界で過ごす最後の日。
俺は一日を思う存分楽しむと決めている…
まずはイリーナさんを訪ねて、通い詰めるカートさんを揶揄った。
カートさんはとても焦っていたけどそんな顔を見るのも楽しい…
そして母上、ユーリと一緒に昼食を食べる…
二人と笑いながら食べる食事は幸せな光景だった。
そんな時間がずっと続けば良いのにと思ってしまう。
その最後の瞬間を噛み締めるように大切に味わった…
しかし楽しい時間はあっという間に過ぎるものだ。
今はユグドラシルの大樹を前に全員が集まっている。
ついに旅の終わりを迎えたのだ。
本来のいるべき場所へ帰る時が来た…
「クリス、これからお前を未来へ送る…
ちょうど黒騎士に出会ってすぐだ」
「あの、元々未来に存在する俺は、
どうなるのでしょうか?」
未来の賢者とフィリアを救うには、二人が生きている時間に飛ばなければならない。
そうなると、そこにクリス自身も存在している。
「術式を変えてある…
未来のクリスと存在が融合する。
まあ、上書きに近いな…」
なんだか少し怖いと思ってしまう…
だが最初からこのために過去に遡ってきた。
今更立ち止まることは出来ない…
「なぁ、クリス…
お前とは10年後に会えるんだよな?」
クレアは、もう一度会える事を切に願った…
そしてクリスも母親の目を見てしっかりと頷く…
「それならお前に見合う、
誇らしい息子に育てないとな…」
今もレガードの家にいる二歳のクリスのことを言っている。
「母上……」
そしてユーリがクリスへ告げる。
その瞳は少し潤んでいる…
「クリス…
待ってるから…ずっと…」
「ユーリ…また会おう…
絶対に…」
ユーリの言葉が胸に響く。
俺もこの世界でユーリに会えて良かった…
「さぁ、そろそろ時間だ…」
賢者は、魔法の筒を飲み干していく。
その身体の周りに黄金に輝く魔力が溢れる。
そしてユグドラシルの枝を媒介に大魔法を発動させた。
クリスの足元に大きな魔法陣が現れる。
その魔法陣が現れた瞬間に、
クレアとユーリが叫ぶ。
「クリス!
お前との日々、絶対に忘れないからな」
「母上!」
俺は目の前の母親に感謝しても仕切れない。
自分を産んでくれただけでなく、
こんなにも認めて愛してくれる…
それだけで俺は…
「私は……クリスが…
クリスのことが…大好き!」
ユーリがありったけの思いを言葉にした。
その言葉は苦しいほどに胸に響く…
「ユーリ……ありがとう…」
大切な家族の想いを胸に時空を超えていく。
決して後ろは振り向かない…
前だけを向いて…
未来へ飛び立っていく…
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
そして、時は流れる…
場所は、因縁の地であるエルフの里…
そして今も壮絶な戦いが繰り広げられている。
「はぁ……はぁ」
賢者は、肩で息をしている。
黒騎士相手に近接戦闘を繰り広げ相手を弾き飛ばしたが想像以上に体力を消耗していた。
そしてセトは、業物の剣を装備し始め、
魔界最強の剣技を繰り出そうとしている。
「殴り合いの中…
剣の装備は卑怯じゃないかい?」
「戯れにも飽きた…
一思いに殺してやる」
黒騎士セトが剣での攻撃を繰り出そうとした瞬間…
結界に閉じ込められているクリスの方で激しい次元の歪みが現れる…
その衝撃音が里に響き渡り戦闘を中断させる。
「な、何だと…」
黒騎士は、突然の時空魔法の波動に驚愕している…
目の前にいる賢者は何もしていない。
しかしこの波動と魔力は確かに賢者のものだ。
その瞬間、賢者はニヤリと笑みを浮かべる。
「ふふ、ようやく来たね…
待ちくたびれたよ」
時空魔法による結界は外からは何も受け付けないが、中からは攻撃により破壊できる。
そして目の前の結界に亀裂が走っていく。
「クリス君?」
フィリアも驚きを隠せない…
クリスを閉じ込めるために賢者が結界魔法をかけたはずだった。
しかしそれをいとも簡単に破壊しようとしている。
そして結界はガラスのように割れ、その中から現れた人物は全速力で駆け抜けていく。
あっという間に黒騎士の目前に迫り強烈な蹴りで弾き飛ばす。
フィリアは、自分よりも遥かに洗練された強化格闘術に驚きを隠せない。
更にクリスは相手に時間を与えず追撃する。
水魔法バブルバレットを放ち反撃の隙を与えない。
「遅かったぞ…クリス」
「おまたせ、賢者!」
賢者はクリスに文句を言いたかった。
待たされた十年は余りに長かったのだ。
「本当にクリス君なの?」
クリスはフィリアの問に無言で頷く。
そしてフィリアに声をかける。
「賢者の元へ、
後は、俺がやる」
フィリアは、数分前のクリスとは全くの別人のようだと感じた。
クリスは、規格外の四天王を目の前にしても怯えるどころか自信に満ち溢れている。
「クリス、頼んだよ」
賢者は、そんなクリスを見てやはり過去から時空を超えてきたのだと実感する。
目の前にいるのは間違いなく十年前に一緒に旅をしたクリスだ。
「先程とは比べ物にならない魔力、
しかもロゼよりも上の格闘術…
面白い」
そしてクリスは姿を変え覇王を発動させ、
覇王の輝きが里に広がり溢れていく。
光溢れる覇王の輝きは、時空を超えても尚衰えることはない。
むしろクリスの意志に応じるかのように更に強まっていく。
「黒騎士、覚悟しろよ!」
そして全身に全ての身体強化をかけて、
黒騎士に急接近していく。
「は、覇王だと?
貴様、何者だ!」
黒騎士セトは、ルミナス初代国王との間に因縁があった。
覇王との戦いに誰よりも執着している。
それだけに目の前に現れた覇王を放つ存在に興味が尽きない。
そしてその輝きを懐かしいとさえ感じてしまう。
「クリス・レガード…
時空を超えて…
黒騎士セト、お前を倒す者だ!」
過去へ遡り沢山の仲間と出会い、
共に困難を乗り越えて成長したクリス。
己の全てを懸けて黒騎士セトへと挑んでいく……
そして今日は、この世界で過ごす最後の日。
俺は一日を思う存分楽しむと決めている…
まずはイリーナさんを訪ねて、通い詰めるカートさんを揶揄った。
カートさんはとても焦っていたけどそんな顔を見るのも楽しい…
そして母上、ユーリと一緒に昼食を食べる…
二人と笑いながら食べる食事は幸せな光景だった。
そんな時間がずっと続けば良いのにと思ってしまう。
その最後の瞬間を噛み締めるように大切に味わった…
しかし楽しい時間はあっという間に過ぎるものだ。
今はユグドラシルの大樹を前に全員が集まっている。
ついに旅の終わりを迎えたのだ。
本来のいるべき場所へ帰る時が来た…
「クリス、これからお前を未来へ送る…
ちょうど黒騎士に出会ってすぐだ」
「あの、元々未来に存在する俺は、
どうなるのでしょうか?」
未来の賢者とフィリアを救うには、二人が生きている時間に飛ばなければならない。
そうなると、そこにクリス自身も存在している。
「術式を変えてある…
未来のクリスと存在が融合する。
まあ、上書きに近いな…」
なんだか少し怖いと思ってしまう…
だが最初からこのために過去に遡ってきた。
今更立ち止まることは出来ない…
「なぁ、クリス…
お前とは10年後に会えるんだよな?」
クレアは、もう一度会える事を切に願った…
そしてクリスも母親の目を見てしっかりと頷く…
「それならお前に見合う、
誇らしい息子に育てないとな…」
今もレガードの家にいる二歳のクリスのことを言っている。
「母上……」
そしてユーリがクリスへ告げる。
その瞳は少し潤んでいる…
「クリス…
待ってるから…ずっと…」
「ユーリ…また会おう…
絶対に…」
ユーリの言葉が胸に響く。
俺もこの世界でユーリに会えて良かった…
「さぁ、そろそろ時間だ…」
賢者は、魔法の筒を飲み干していく。
その身体の周りに黄金に輝く魔力が溢れる。
そしてユグドラシルの枝を媒介に大魔法を発動させた。
クリスの足元に大きな魔法陣が現れる。
その魔法陣が現れた瞬間に、
クレアとユーリが叫ぶ。
「クリス!
お前との日々、絶対に忘れないからな」
「母上!」
俺は目の前の母親に感謝しても仕切れない。
自分を産んでくれただけでなく、
こんなにも認めて愛してくれる…
それだけで俺は…
「私は……クリスが…
クリスのことが…大好き!」
ユーリがありったけの思いを言葉にした。
その言葉は苦しいほどに胸に響く…
「ユーリ……ありがとう…」
大切な家族の想いを胸に時空を超えていく。
決して後ろは振り向かない…
前だけを向いて…
未来へ飛び立っていく…
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
そして、時は流れる…
場所は、因縁の地であるエルフの里…
そして今も壮絶な戦いが繰り広げられている。
「はぁ……はぁ」
賢者は、肩で息をしている。
黒騎士相手に近接戦闘を繰り広げ相手を弾き飛ばしたが想像以上に体力を消耗していた。
そしてセトは、業物の剣を装備し始め、
魔界最強の剣技を繰り出そうとしている。
「殴り合いの中…
剣の装備は卑怯じゃないかい?」
「戯れにも飽きた…
一思いに殺してやる」
黒騎士セトが剣での攻撃を繰り出そうとした瞬間…
結界に閉じ込められているクリスの方で激しい次元の歪みが現れる…
その衝撃音が里に響き渡り戦闘を中断させる。
「な、何だと…」
黒騎士は、突然の時空魔法の波動に驚愕している…
目の前にいる賢者は何もしていない。
しかしこの波動と魔力は確かに賢者のものだ。
その瞬間、賢者はニヤリと笑みを浮かべる。
「ふふ、ようやく来たね…
待ちくたびれたよ」
時空魔法による結界は外からは何も受け付けないが、中からは攻撃により破壊できる。
そして目の前の結界に亀裂が走っていく。
「クリス君?」
フィリアも驚きを隠せない…
クリスを閉じ込めるために賢者が結界魔法をかけたはずだった。
しかしそれをいとも簡単に破壊しようとしている。
そして結界はガラスのように割れ、その中から現れた人物は全速力で駆け抜けていく。
あっという間に黒騎士の目前に迫り強烈な蹴りで弾き飛ばす。
フィリアは、自分よりも遥かに洗練された強化格闘術に驚きを隠せない。
更にクリスは相手に時間を与えず追撃する。
水魔法バブルバレットを放ち反撃の隙を与えない。
「遅かったぞ…クリス」
「おまたせ、賢者!」
賢者はクリスに文句を言いたかった。
待たされた十年は余りに長かったのだ。
「本当にクリス君なの?」
クリスはフィリアの問に無言で頷く。
そしてフィリアに声をかける。
「賢者の元へ、
後は、俺がやる」
フィリアは、数分前のクリスとは全くの別人のようだと感じた。
クリスは、規格外の四天王を目の前にしても怯えるどころか自信に満ち溢れている。
「クリス、頼んだよ」
賢者は、そんなクリスを見てやはり過去から時空を超えてきたのだと実感する。
目の前にいるのは間違いなく十年前に一緒に旅をしたクリスだ。
「先程とは比べ物にならない魔力、
しかもロゼよりも上の格闘術…
面白い」
そしてクリスは姿を変え覇王を発動させ、
覇王の輝きが里に広がり溢れていく。
光溢れる覇王の輝きは、時空を超えても尚衰えることはない。
むしろクリスの意志に応じるかのように更に強まっていく。
「黒騎士、覚悟しろよ!」
そして全身に全ての身体強化をかけて、
黒騎士に急接近していく。
「は、覇王だと?
貴様、何者だ!」
黒騎士セトは、ルミナス初代国王との間に因縁があった。
覇王との戦いに誰よりも執着している。
それだけに目の前に現れた覇王を放つ存在に興味が尽きない。
そしてその輝きを懐かしいとさえ感じてしまう。
「クリス・レガード…
時空を超えて…
黒騎士セト、お前を倒す者だ!」
過去へ遡り沢山の仲間と出会い、
共に困難を乗り越えて成長したクリス。
己の全てを懸けて黒騎士セトへと挑んでいく……
0
お気に入りに追加
1,264
あなたにおすすめの小説
蘇生魔法を授かった僕は戦闘不能の前衛(♀)を何度も復活させる
フルーツパフェ
大衆娯楽
転移した異世界で唯一、蘇生魔法を授かった僕。
一緒にパーティーを組めば絶対に死ぬ(死んだままになる)ことがない。
そんな口コミがいつの間にか広まって、同じく異世界転移した同業者(多くは女子)から引っ張りだこに!
寛容な僕は彼女達の申し出に快諾するが条件が一つだけ。
――実は僕、他の戦闘スキルは皆無なんです
そういうわけでパーティーメンバーが前衛に立って死ぬ気で僕を守ることになる。
大丈夫、一度死んでも蘇生魔法で復活させてあげるから。
相互利益はあるはずなのに、どこか鬼畜な匂いがするファンタジー、ここに開幕。
半分異世界
月野槐樹
ファンタジー
関東圏で学生が行方不明になる事件が次々にしていた。それは異世界召還によるものだった。
ネットでも「神隠しか」「異世界召還か」と噂が飛び交うのを見て、異世界に思いを馳せる少年、圭。
いつか異世界に行った時の為にとせっせと準備をして「異世界ガイドノート」なるものまで作成していた圭。従兄弟の瑛太はそんな圭の様子をちょっと心配しながらも充実した学生生活を送っていた。
そんなある日、ついに異世界の扉が彼らの前に開かれた。
「異世界ガイドノート」と一緒に旅する異世界
特殊部隊の俺が転生すると、目の前で絶世の美人母娘が犯されそうで助けたら、とんでもないヤンデレ貴族だった
なるとし
ファンタジー
鷹取晴翔(たかとりはると)は陸上自衛隊のとある特殊部隊に所属している。だが、ある日、訓練の途中、不慮の事故に遭い、異世界に転生することとなる。
特殊部隊で使っていた武器や防具などを召喚できる特殊能力を謎の存在から授かり、目を開けたら、絶世の美女とも呼ばれる母娘が男たちによって犯されそうになっていた。
武装状態の鷹取晴翔は、持ち前の優秀な身体能力と武器を使い、その母娘と敷地にいる使用人たちを救う。
だけど、その母と娘二人は、
とおおおおんでもないヤンデレだった……
第3回次世代ファンタジーカップに出すために一部を修正して投稿したものです。
若返ったおっさん、第2の人生は異世界無双
たまゆら
ファンタジー
事故で死んだネトゲ廃人のおっさん主人公が、ネトゲと酷似した異世界に転移。
ゲームの知識を活かして成り上がります。
圧倒的効率で金を稼ぎ、レベルを上げ、無双します。
神に同情された転生者物語
チャチャ
ファンタジー
ブラック企業に勤めていた安田悠翔(やすだ はると)は、電車を待っていると後から背中を押されて電車に轢かれて死んでしまう。
すると、神様と名乗った青年にこれまでの人生を同情された異世界に転生してのんびりと過ごしてと言われる。
悠翔は、チート能力をもらって異世界を旅する。
あいつに無理矢理連れてこられた異世界生活
mio
ファンタジー
なんやかんや、無理矢理あいつに異世界へと連れていかれました。
こうなったら仕方ない。とにかく、平和に楽しく暮らしていこう。
なぜ、少女は異世界へと連れてこられたのか。
自分の中に眠る力とは何なのか。
その答えを知った時少女は、ある決断をする。
長い間更新をさぼってしまってすいませんでした!
暇つぶし転生~お使いしながらぶらり旅~
暇人太一
ファンタジー
仲良し3人組の高校生とともに勇者召喚に巻き込まれた、30歳の病人。
ラノベの召喚もののテンプレのごとく、おっさんで病人はお呼びでない。
結局雑魚スキルを渡され、3人組のパシリとして扱われ、最後は儀式の生贄として3人組に殺されることに……。
そんなおっさんの前に厳ついおっさんが登場。果たして病人のおっさんはどうなる!?
この作品は「小説家になろう」にも掲載しています。
前世ポイントッ! ~転生して楽しく異世界生活~
霜月雹花
ファンタジー
17歳の夏、俺は強盗を捕まえようとして死んだ――そして、俺は神様と名乗った爺さんと話をしていた。話を聞けばどうやら強盗を捕まえた事で未来を改変し、転生に必要な【善行ポイント】と言う物が人より多く貰えて異世界に転生出来るらしい。多く貰った【善行ポイント】で転生時の能力も選び放題、莫大なポイントを使いチート化した俺は異世界で生きていく。
なろうでも掲載しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる