17 / 182
第17話 差し伸べる手
しおりを挟む
リーナに用意してもらった紅茶を飲みながら本をめくる。
部屋の窓から入り込む風がカーテンを揺らす。
今日はとても気持ちの良い日だ。
私室でゆっくりしながらベルが起きるのを待つ。
「ん…」
「起きたか?」
「はい」
「あの、クリス様、本当に、
本当にありがとうございました…
あの、サーシャやみんなは?」
里のために死に物狂いで戦ったのだ。
捕らえられていた者達がどうなったのか気になるだろう。
「牢に閉じ込められていた人は、
全員保護されたよ」
「そう、ですか」
親友や仲間が無事だと知り安堵したのか、
力が抜けて自然と目を潤ませる。
「あれから王国騎士団も来たからね」
「あの、クリス様……
本当にありがとうございます!
一生かけて恩返ししたいです」
ベルの命だけでなく里を救った。
更にその中にはかけがえのない友人もいる。
俺への感謝の想いが抑えきれないのかもしれない。
「そんな気にしなくても……」
俺は当たり前のことをしたし、
勝手に俺が介入したと思っている。
見捨てられないからな。
「だ、ダメです、私だけでなく、
里の皆んなを助けて下さったのです!
私だけが与えられてばかりでダメです」
顔を赤くしながら俺に訴えかけてくる。
涙腺が緩んでいたのか更に泣いている。
それだけ俺はベルにとって大きな事をしたということか。
「そしたら父上に会いに行こう…
ベルの今後で話したい事もあるようだし」
そう言って俺はベルに向けて手を広げる。
立ち上がることは難しいと思うから手を貸そうと思ったのだ。
驚いたベルは違った意味で頬を染める。
まるで茹でダコのように赤くしながら俺の手を取った。
そしてベルを私室のベッドから起き上がらせたところで、手は自然と離れていく。
「ぁっ」
「ん?何?」
「な、な、な何でもないです…」
表情がコロコロと変わるベルを見て、
俺は笑いながらベルに一声かける。
「転ぶなよー」
あ~、言ってるそばから転んだ。
全く目の離せないやつだな。
ほらっ!
もう、少しだけ手を貸してやるか。
そして俺達は父上の私室へ向かっていった。
◆◇ ◆◇ ◆◇ ◆◇ ◆◇ ◆◇ ◆◇ ◆◇ ◆◇
「キミが、白狼族のベルか…」
「はい、ベルと申します…」
「今回は騎士団の取り締まりが甘く、
迷惑をかけたな……
本当にすまなかった」
「いえ、男爵様が悪いわけでは」
「まあ、これでも王国騎士団の中枢を担う
役職にあるからな」
ゲイルの立場は、王国騎士団の幹部だ。
白狼族の件はそれなりに責任がある。
王国騎士団が後手に回ってしまったのには別の理由があるが、今は口には出していない。
「ところでベルよ」
「はい」
「其方のスキルは魔力を消費し続ける剣、
クリスからは聞いたが、
お前には魔力はない、違うか?」
先日の圧倒的な力は、俺の魔力を与えられてこその力だった。
つまり言い換えればベル一人では使えないスキルだ。
「その通りでございます」
「それならば我が家の使用人に空きがある…
働きながら魔法学園を目指すか?
当然だが給金から学費は差し引くがな」
「へ?」
あまりに急な申し出にベルは頭が空っぽになってしまい全く理解が出来ないでいる。
「あはは、ベル…
レガードの使用人になるかって事だよ」
「良いのですか?
私は身寄りのない、しかも獣人です…
皆様にご迷惑なのでは」
「確かにな、普通の貴族ならばだな…
我々は剣に生きるレガード家だ…
王と名前の付くスキル保有者を
邪険には出来ないのだよ…」
獣王剣の秘密を解明することはレガード家にとっても利益になる。
当主として同情だけで行動しない。
ゲイルも貴族である。
実力のある者を引き込むのも派閥争いとしては大切なことだ。
行動の裏には打算があるのだ。
「よろしければ是非、一生をかけて皆様に
クリス様に恩返しをさせてください…」
深々とおじきをするベル…
白狼族は忠誠心の強い種族だ。
レガードのために、クリスのために命をかけると誓う。
今日、正式にレガード家に一人の使用人が
誕生したのだった。
「教育係はリーナとする
これからはリーナに色々と聞きなさい」
そう言い残しゲイルは去っていった。
ベルもリーナに引き連れられて、
今後の身支度を始めていく。
そして俺は、父の私室から庭に移動した。
日課である自主練を終えて1日1回限りの休憩スキルを使ってみることにする。
恐らく例のスキルを獲得しているはずだ。
名前:クリス・レガード Lv.12
MP:300
取得スキル:
休憩 Lv.1
獣王剣Lv.5 ←new
取得魔法:火魔法Lv.2
回復魔法Lv.2
獣王剣、やはり獲得していたか。
獲得は予測していたがまさかレベル5とは。
獣王剣、今使ったら俺の身体はどのように変化するのだろうか……
ベルのように成人の身体になるのだろうか?
今すぐに使ってみたいが人間の俺が使うと反動があるかもしれない。
出来れば休憩を使える状態で試したい。
明日マリア様にも相談してみよう。
ちょうど明日がマリア様との訓練の日だ。
早く明日が待ち遠しい……
明日は素晴らしい一日になる。
そんな気がしている。
部屋の窓から入り込む風がカーテンを揺らす。
今日はとても気持ちの良い日だ。
私室でゆっくりしながらベルが起きるのを待つ。
「ん…」
「起きたか?」
「はい」
「あの、クリス様、本当に、
本当にありがとうございました…
あの、サーシャやみんなは?」
里のために死に物狂いで戦ったのだ。
捕らえられていた者達がどうなったのか気になるだろう。
「牢に閉じ込められていた人は、
全員保護されたよ」
「そう、ですか」
親友や仲間が無事だと知り安堵したのか、
力が抜けて自然と目を潤ませる。
「あれから王国騎士団も来たからね」
「あの、クリス様……
本当にありがとうございます!
一生かけて恩返ししたいです」
ベルの命だけでなく里を救った。
更にその中にはかけがえのない友人もいる。
俺への感謝の想いが抑えきれないのかもしれない。
「そんな気にしなくても……」
俺は当たり前のことをしたし、
勝手に俺が介入したと思っている。
見捨てられないからな。
「だ、ダメです、私だけでなく、
里の皆んなを助けて下さったのです!
私だけが与えられてばかりでダメです」
顔を赤くしながら俺に訴えかけてくる。
涙腺が緩んでいたのか更に泣いている。
それだけ俺はベルにとって大きな事をしたということか。
「そしたら父上に会いに行こう…
ベルの今後で話したい事もあるようだし」
そう言って俺はベルに向けて手を広げる。
立ち上がることは難しいと思うから手を貸そうと思ったのだ。
驚いたベルは違った意味で頬を染める。
まるで茹でダコのように赤くしながら俺の手を取った。
そしてベルを私室のベッドから起き上がらせたところで、手は自然と離れていく。
「ぁっ」
「ん?何?」
「な、な、な何でもないです…」
表情がコロコロと変わるベルを見て、
俺は笑いながらベルに一声かける。
「転ぶなよー」
あ~、言ってるそばから転んだ。
全く目の離せないやつだな。
ほらっ!
もう、少しだけ手を貸してやるか。
そして俺達は父上の私室へ向かっていった。
◆◇ ◆◇ ◆◇ ◆◇ ◆◇ ◆◇ ◆◇ ◆◇ ◆◇
「キミが、白狼族のベルか…」
「はい、ベルと申します…」
「今回は騎士団の取り締まりが甘く、
迷惑をかけたな……
本当にすまなかった」
「いえ、男爵様が悪いわけでは」
「まあ、これでも王国騎士団の中枢を担う
役職にあるからな」
ゲイルの立場は、王国騎士団の幹部だ。
白狼族の件はそれなりに責任がある。
王国騎士団が後手に回ってしまったのには別の理由があるが、今は口には出していない。
「ところでベルよ」
「はい」
「其方のスキルは魔力を消費し続ける剣、
クリスからは聞いたが、
お前には魔力はない、違うか?」
先日の圧倒的な力は、俺の魔力を与えられてこその力だった。
つまり言い換えればベル一人では使えないスキルだ。
「その通りでございます」
「それならば我が家の使用人に空きがある…
働きながら魔法学園を目指すか?
当然だが給金から学費は差し引くがな」
「へ?」
あまりに急な申し出にベルは頭が空っぽになってしまい全く理解が出来ないでいる。
「あはは、ベル…
レガードの使用人になるかって事だよ」
「良いのですか?
私は身寄りのない、しかも獣人です…
皆様にご迷惑なのでは」
「確かにな、普通の貴族ならばだな…
我々は剣に生きるレガード家だ…
王と名前の付くスキル保有者を
邪険には出来ないのだよ…」
獣王剣の秘密を解明することはレガード家にとっても利益になる。
当主として同情だけで行動しない。
ゲイルも貴族である。
実力のある者を引き込むのも派閥争いとしては大切なことだ。
行動の裏には打算があるのだ。
「よろしければ是非、一生をかけて皆様に
クリス様に恩返しをさせてください…」
深々とおじきをするベル…
白狼族は忠誠心の強い種族だ。
レガードのために、クリスのために命をかけると誓う。
今日、正式にレガード家に一人の使用人が
誕生したのだった。
「教育係はリーナとする
これからはリーナに色々と聞きなさい」
そう言い残しゲイルは去っていった。
ベルもリーナに引き連れられて、
今後の身支度を始めていく。
そして俺は、父の私室から庭に移動した。
日課である自主練を終えて1日1回限りの休憩スキルを使ってみることにする。
恐らく例のスキルを獲得しているはずだ。
名前:クリス・レガード Lv.12
MP:300
取得スキル:
休憩 Lv.1
獣王剣Lv.5 ←new
取得魔法:火魔法Lv.2
回復魔法Lv.2
獣王剣、やはり獲得していたか。
獲得は予測していたがまさかレベル5とは。
獣王剣、今使ったら俺の身体はどのように変化するのだろうか……
ベルのように成人の身体になるのだろうか?
今すぐに使ってみたいが人間の俺が使うと反動があるかもしれない。
出来れば休憩を使える状態で試したい。
明日マリア様にも相談してみよう。
ちょうど明日がマリア様との訓練の日だ。
早く明日が待ち遠しい……
明日は素晴らしい一日になる。
そんな気がしている。
12
あなたにおすすめの小説
異世界転生したらたくさんスキルもらったけど今まで選ばれなかったものだった~魔王討伐は無理な気がする~
宝者来価
ファンタジー
俺は異世界転生者カドマツ。
転生理由は幼い少女を交通事故からかばったこと。
良いとこなしの日々を送っていたが女神様から異世界に転生すると説明された時にはアニメやゲームのような展開を期待したりもした。
例えばモンスターを倒して国を救いヒロインと結ばれるなど。
けれど与えられた【今まで選ばれなかったスキルが使える】 戦闘はおろか日常の役にも立つ気がしない余りものばかり。
同じ転生者でイケメン王子のレイニーに出迎えられ歓迎される。
彼は【スキル:水】を使う最強で理想的な異世界転生者に思えたのだが―――!?
※小説家になろう様にも掲載しています。
【改稿版】休憩スキルで異世界無双!チートを得た俺は異世界で無双し、王女と魔女を嫁にする。
ゆう
ファンタジー
剣と魔法の異世界に転生したクリス・レガード。
剣聖を輩出したことのあるレガード家において剣術スキルは必要不可欠だが12歳の儀式で手に入れたスキルは【休憩】だった。
しかしこのスキル、想像していた以上にチートだ。
休憩を使いスキルを強化、更に新しいスキルを獲得できてしまう…
そして強敵と相対する中、クリスは伝説のスキルである覇王を取得する。
ルミナス初代国王が有したスキルである覇王。
その覇王発現は王国の長い歴史の中で悲願だった。
それ以降、クリスを取り巻く環境は目まぐるしく変化していく……
※アルファポリスに投稿した作品の改稿版です。
ホットランキング最高位2位でした。
カクヨムにも別シナリオで掲載。
DIYと異世界建築生活〜ギャル娘たちとパパの腰袋チート
みーくん
ファンタジー
気づいたら異世界に飛ばされていた、おっさん大工。
唯一の武器は、腰につけた工具袋——
…って、これ中身無限!?釘も木材もコンクリも出てくるんだけど!?
戸惑いながらも、拾った(?)ギャル魔法少女や謎の娘たちと家づくりを始めたおっさん。
土木工事からリゾート開発、果てはダンジョン探索まで!?
「異世界に家がないなら、建てればいいじゃない」
今日もおっさんはハンマー片手に、愛とユーモアと魔法で暮らしをDIY!
建築×育児×チート×ギャル
“腰袋チート”で異世界を住みよく変える、大人の冒険がここに始まる!
腰活(こしかつっ!)よろしくお願いします
異世界に転生した俺は英雄の身体強化魔法を使って無双する。~無詠唱の身体強化魔法と無詠唱のマジックドレインは異世界最強~
北条氏成
ファンタジー
宮本 英二(みやもと えいじ)高校生3年生。
実家は江戸時代から続く剣道の道場をしている。そこの次男に生まれ、優秀な兄に道場の跡取りを任せて英二は剣術、槍術、柔道、空手など様々な武道をやってきた。
そんなある日、トラックに轢かれて死んだ英二は異世界へと転生させられる。
グランベルン王国のエイデル公爵の長男として生まれた英二はリオン・エイデルとして生きる事に・・・
しかし、リオンは貴族でありながらまさかの魔力が200しかなかった。貴族であれば魔力が1000はあるのが普通の世界でリオンは初期魔法すら使えないレベル。だが、リオンには神話で邪悪なドラゴンを倒した魔剣士リュウジと同じ身体強化魔法を持っていたのだ。
これは魔法が殆ど使えない代わりに、最強の英雄の魔法である身体強化魔法を使いながら無双する物語りである。
【完結】487222760年間女神様に仕えてきた俺は、そろそろ普通の異世界転生をしてもいいと思う
こすもすさんど(元:ムメイザクラ)
ファンタジー
異世界転生の女神様に四億年近くも仕えてきた、名も無きオリ主。
億千の異世界転生を繰り返してきた彼は、女神様に"休暇"と称して『普通の異世界転生がしたい』とお願いする。
彼の願いを聞き入れた女神様は、彼を無難な異世界へと送り出す。
四億年の経験知識と共に異世界へ降り立ったオリ主――『アヤト』は、自由気ままな転生者生活を満喫しようとするのだが、そんなぶっ壊れチートを持ったなろう系オリ主が平穏無事な"普通の異世界転生"など出来るはずもなく……?
道行く美少女ヒロイン達をスパルタ特訓で徹底的に鍛え上げ、邪魔する奴はただのパンチで滅殺抹殺一撃必殺、それも全ては"普通の異世界転生"をするために!
気が付けばヒロインが増え、気が付けば厄介事に巻き込まれる、テメーの頭はハッピーセットな、なろう系最強チーレム無双オリ主の明日はどっちだ!?
※小説家になろう、エブリスタ、ノベルアップ+にも掲載しております。
【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜
一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m
✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。
【あらすじ】
神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!
そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!
事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます!
カクヨム(吉野 ひな)にて、先行投稿しています。
異世界転生おじさんは最強とハーレムを極める
自ら
ファンタジー
定年を半年後に控えた凡庸なサラリーマン、佐藤健一(50歳)は、不慮の交通事故で人生を終える。目覚めた先で出会ったのは、自分の魂をトラックの前に落としたというミスをした女神リナリア。
その「お詫び」として、健一は剣と魔法の異世界へと30代後半の肉体で転生することになる。チート能力の選択を迫られ、彼はあらゆる経験から無限に成長できる**【無限成長(アンリミテッド・グロース)】**を選び取る。
異世界で早速遭遇したゴブリンを一撃で倒し、チート能力を実感した健一は、くたびれた人生を捨て、最強のセカンドライフを謳歌することを決意する。
定年間際のおじさんが、女神の気まぐれチートで異世界最強への道を歩み始める、転生ファンタジーの開幕。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる