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ヒストリー4 〜ネグロ山の子供達〜

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東エリア 12番地区内 ネグロ山

家族亭近くの広場

《ディエス視点》

ネグロ山は、12番地区中心部から
かなり離れている、険しい山だ。
1番近い町でも、片道2時間以上はかかる。
そのネグロ山に、ひとつの小さな家がある。
粗末な家だが、周りには畑、川、広場などがあり
最低限生活できるだけの環境は整っている。
家は〝家族亭〟と呼ばれている。


?『おりゃー』

【カンッ カンッ】

広場に木と木を打ち合う音が響く。

?『とりゃーー』

【ドンッ】

?『うげっ』

【ドサッ】

?『はっはっはー今日も俺の勝ちだ。』

?『くそっ、またアハトに負けたー。』

アハト『これで30勝1敗だなディエス!
誰も俺の大木は止められねーぞ。』

アハトが空に向かって叫んだ。

ディエス『うるせー。』

アハト『実際の俺の武器は〝斧〟だ。さすがに模擬戦で、斧は使えないから大木にしてるんだぞ。感謝するんだな!はっはっはー!』

【ヒュンッ ビチャッ】

アハト『うわっ。』

ふいに、アハトの顔に卵が投げられた。

アハト『な、なんだ!?卵!?気持ちわりぃー。』

顔に投げられた卵を、手で拭おうとする
アハト。

?『なーにが、大木は誰にも止められねー、っだよ!おもいっきり卵当たってるし。』

ディエス『わっはっはっは!だっさー。』

アハト『セイス!お前かー!顔がベタベタじゃねーか!ぺっぺっ』

セイス『戦場じゃ即死だな。』

アハト『ちょい油断しただけだ!しかも木の影から!相変わらず、卑怯な奴だな。』

セイス『不意打ちは俺の戦闘スタイルだろ。』

アハト『不意打ち反対!あー目に入ったぁ。顔洗ってくる。』

川の方向へ走って行くアハト。

大笑いする、セイスとディエス。

ディエス『くそー、全然アハトに勝てねぇよ。
弱いよなぁ 俺!』

セイス『でも一回だけ勝ってたよな?』

ディエス『一回だけだよ。アハトがご飯の匂いに
つられて油断してたから、勝てただけ。』

セイス『勝ちは勝ちだけどな笑』

ディエス『あーぁ、強くなりてーなー!!!』

空に向かって叫ぶディエス。ディエスが叫ぶと、その波紋で木の葉が揺れ、鳥が羽ばたき、水面も揺れる。

【ビリビリビリビリッ】

セイス『・・相変わらず、すげー声してんな。』

ディエス『俺の声は、魂の叫びだ!!この声だけは誰にも負けない!!!』

【ビリビリッ】

耳を塞ぐセイス。

セイス『わかった、わかった。もう叫ぶな。
ってか、その声を、武器にしたらいいだろ?』

ディエス『そんなもん、武器にできたら
とっくにやってるよ。大体、大声で叫んだって
敵に気付かれるだけじゃん。』

セイス『使い方の問題じゃねーか?』

ディエス『いいんだよ。
俺は、ただの落ちこぼれだし、みんなと
違って、今だに任務ひとつ、与えられてないし。』

セイス『ま、まぁ、先生にも考えがあるんだろ。』

ディエス『・・セイスは任務、何回した?』

セイス『俺か?俺は、そだな・・・5回くらい・・かな。』

ディエス『声ちっちゃ!ほらみろ!もう5回も任務行って全部達成だろ?』

セイス『・・まぁな。』

ディエス『あー羨ましいなー!俺も早く任務達成したいなー!』

セイス(ほんとは8回なんだけど・・)

ディエス『確か、ノンも任務中だったっけ?』

セイス『だな。もう3日たつから
今日には帰って来る予定のはずだけど。』

ディエス『ノンは優秀だから、いつも予定通りに帰って来るもんなぁ。』

カラスが鳴き、日が暮れていく。

?『おーい、セイス、ディエスー。』

セイス『ん?』

ディエス『あ!フィーアだ。』

フィーア『先生が帰ってきたよー』

ディエス『え?わかったー!今行くー!
いこーぜ、セイス。』

セイス『へいへい。』

ふたりがフィーアのところに
走っていく。


 
➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖


時を少し巻き戻す。

ネグロ山 家族亭

《先生視点》


先生『さぁ、着いた着いた。ガキ共腹減らしてんだろーな。これ見たらヨダレ垂らして喜びやがるぜ。』

【ガチャッ ギー】

家族亭の扉を開けると、そこには掃除をしている女の子がいた。

?『おー、フィーア!今帰ったぜ。』

フィーア『あっ先生!おかえりー。』

先生『おう!また掃除してんのか?どうせすぐ汚れるんだ。少しは怠〔なま〕けてもいいんだぞ?』

フィーア『もう先生!あたしが怠〔なま〕けたら誰が掃除すんの?みんな訓練やら遊びやらで何もしないんだよ。』

先生『それに比べてフィーアは、訓練もやって、勉強もやっておまけに掃除もやってる!女の子はフィーア1人だから、みんな甘えてやがるな。
こりゃ、誰もフィーアに頭が上がらねぇ。』

先生は大声で笑った。

先生『フィーア、今日はご馳走だぞ。聞いて驚け!
なんとアイロール産の羊の肉が手に入った!』

先生は胸を張って、おもいっきりドヤ顔をした。

フィーア『えー!すごーい!
よく手に入ったね!みんな喜ぶだろーなー!』

フィーアが手を叩いて喜んでいる。

先生『よし!今日は俺が肉を焼いてやる。塩漬けにして、調理しといたから焼けば、すぐにでも食べれるぜ。フィーアには特別にみんなより大きな肉を
やるよ。』

フィーア『やったー!』

フィーアが掃除道具を片付けて、
木のテーブルに、お皿とコップを並べはじめた。
この木のテーブルは、みんなで大きな木を切って
その木を丸く加工して作ったテーブルだ。
テーブルは、ふたつあり、
10人程が、使えるようになっている。

先生『あいつらは、訓練中か?』

フィーア『そだよ。もう終わった頃だと思うから呼んでくるね。』

先生『おう。』

【ガチャッ バタン】

フィーアがみんなを呼びに行った。

先生『さてと、肉を焼いて、あいつらを喜ばすとするか。』


・・
・・・

【ガチャッ】

フィーア『みんなを呼んできたよー。』

ディエス『先生、おかえりー。』

アハト『おかえりなさい!先生!』

セイス『おかえりです。』 

レベン『先生、おかえりっス。』

ライブ『疲れたー、おかえり先生。』

先生『おーお前ら、帰ってきたか!
もうすぐ出来るから座って待ってろ。』

フィーア『はーい。』

ディエス『羊の肉、楽しみだなー。』

アハト『もう、匂いだけで美味しいのが
伝わってくる・・』

セイス『ライブ!最後に入って来たんだったら
ドア閉めろよ。』

ライブ『はいはーい。怖っっ』

【バタンッ】

レベンが、フライパンで焼かれている
羊の肉を覗き込む。
羊の肉から、ほどよい油がながれでて
塩と混ざった香ばしい香りが部屋中に充満している。

レベン『うわー、これがあの伝説のアイロール産の羊の肉っスかぁ。匂いがやばいっス、じゅる。』

先生『レベンはいつも大袈裟だな笑って、ヨダレを落とすんじゃねーぞ。ヨダレが調味料になっちまうじゃねーか。』

レベン『申し訳ないっス、じゅる。』

フィーア『レベン!先生の邪魔しちゃダメでしょ!こっち来て座りなさいよ!』

先生『姫が怒ってるぞ?レベン笑』

レベン『先生、あれは姫じゃないっス。妖怪、ジョロウグモっスよ。』

フィーア『・・レベン、なんか言った?』

レベン『さ、さぁ、座ってご馳走を待ってるっス。』

レベンはアハトの横に座った。

レベン『アハト、目が怖いっスよ。』

アハトは羊の肉以外、何も見えていないようだ。

先生『みんな、出来たぞー
皿持ってこーい。』

アハト『おおー!』

アハトを先頭にして、みんなが
皿を持っていき、先生が羊の肉を盛りつけしていく。盛りつけした後、それぞれが着席する。

ディエス『そういえば、ノンがまだ帰ってきてないけど。』

フィーアの隣に座っているディエスが言う。

フィーア『予定時間じゃ、もう帰って来るはずなんだけどな。』

ライブ『どーすんの?ノンが来るまで待ってる?』

セイスの隣には、ライブ。

アハト『待てん!』

アハトが鼻息を荒くしながら言う。

レベン『だから、目が怖いって・・』

アハト『羊の肉は、焼いた直後が1番美味い!だから待てん!』

レベン『せんせーい!俺も賛成っス。』

先生『うーん、どうすかっな。』

セイス『先生、もう焼いたんだから食べてしまいましょう。ノンには冷めた肉で我慢してもらって。
このままじゃ、アハトが暴れだします。』

フィーア『ノン、大丈夫かな。何もなかったらいいけど。』

ディエス『ノンは大丈夫さ!今までも失敗した事なかったじゃん。』

フィーア『そーだけど。』

先生『よし!じゃあ食うか!ノンが帰ってきたら
温め直してご馳走するからよ!』

アハト『うん!うん!』

先生『それじゃあ、感謝と願いを込めて神に祈るぞ。』

みんなが、目を閉じて、感謝と願いを込めて祈る。

・・
・・・

先生『目開けていいぞ。』

生命から生命へそれで命は繋がれ、育んでいく。

先生『いただきます。』

アハト
セイス
フィーア 『いただきます!』
ディエス
ライブ

つづく。











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