七海さん

ホットサン

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第3話

8

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夕方、俺は生まれて初めて幸運の女神を信じた。
つくばエクスプレスが止まったのだ。
信号機故障で復旧の見込みがたっていない。しかも洋くんは遅番だ!
「帰れないなら、またウチ泊まればいい」
俺はさり気なく言った。
「ありがとうございます、それではお言葉に甘えさせていただきます」
その日の夜、宿直用の洗面用具を持って洋くんは家に来た。
夕飯は病院の食堂で食べてきたようなので、風呂の後ツマミとビールを出して「この前の続き話そうぜ」と言った。
洋くんの卒論テーマだ。
しかし、その話は盛り上がらなかった。
ビールに口をつけた洋くんはすぐにウトウトしだしたのだ。
今日は寝室のベッドの横に布団を敷いてある。コックリコックリと舟を漕いでいる洋くんに「もう寝ろよ」と言うと「え、あーそうですね。すみません、お休みなさい」と言って大あくびをしながら部屋に行った。まだ夜の9時だった。

洋くんはいつも朝が早いからか、夜は早く寝るようだ。
しばらくすると寝室のドアが開いて「お待たせー」と七海さんが出てきた。
今日はパン1ではなく、俺が貸したTシャツと短パン姿だ。
洋くんのときは見ても何も興奮しないが、七海さんになると、露出してる足や胸元を見ると興奮してしまう。
見ているモノは同じなのに・・・
俺は「会いたかったよ」と言いながらハグしてキスをしていた。

俺は七海さんと散々飲んで、一緒にベッドに入り、どうしたら洋くんとルームシェアできるかを相談した。
そうできればあいつを毎日9時に寝かせて、その後ゆっくり七海さんと一緒に過ごせる。

◇◇◇

2日後、洋くんは遅刻をした。

朝、目覚ましがならずに起きられなかったようだ。

佐久間先生から「社会人としての自覚が足りない」と叱られていた。

俺は「まあ、茨城から通っていて毎日5時に起きるのは少しムリがありますよね」とさり気なく言った。

佐久間先生も「もっと近くで一人暮らししたほうが良いのではないか?」と心配そうに洋くんに言った。

その言葉を待っていた!

「そうなんですよ、こないだも俺の部屋でルームシェアしないかって誘ったんですよ、俺も家賃助かるし」と言うと、「それいーじゃないか」と後押しをしてくれた。

洋くんが寝てから目覚ましを止めたのは、七海さんだ。洋くんのお母さんにも「明日は遅番だ」と七海さんが洋くんを真似て嘘を言っておいた。

七海さんとたてた作戦通りだ!

叱られて少し可愛そうだったが、翌日荷物を持って俺の部屋に引っ越して来た。

「ようこそ、洋くん」
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