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第1話
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「待ってたよ、道川くん。もう足は大丈夫そうだな。これで捕まらずに済むな!今日の放課後待ってるからな」校門の前で笹原が洋に駆け寄って、肩に手を回して一緒に歩きながら言った。
宮内もニヤニヤしながら近づいてきた。
俺は何も言えない。
笹原は俺に「道川かりるぞ」と言って連れて行こうとしたが、腕をぶっきらぼうに振り払って「お前とは行かない。陽斗、行こう」と言って俺のもとに戻り一緒に歩きだした。「ふざけんな、道川。お前は俺達と一緒に来るんだよ」とグイッと腕を引っ張るので、洋は「うるさい、離せ」と言って笹原をつきとばした。
洋は気が弱いが、実は腕っぷしは強いことは知っていた。
驚いた宮内が洋につかみかかって来たので、洋は蹴りを入れて「ちょうど良かった、僕も2人に聞きたいことがある。放課後待ってるからな」と言って俺を引っ張り学校の中へ入って行った。
「ほ、本当に七海さんなんですか?」
今の行動は洋ではない事を俺は確信していた。
「だから何度もそう行ってるじゃない!」七海さんは笑いながら言った。
たしかに朝から、洋の仕草は所々で女っぽかった。
俺は信じる気になった。
聞きたい事は山程ある。
しかしチャイムが鳴って俺達は、教室に吸い込まれた。
放課後、七海さんと帰ろうと下駄箱付近で待っていると笹原と宮内が来るのが見えた。
俺はトイレに身を隠したが、下駄箱付近で「クソッ、道川の野郎ふざけやがって」とブツクサ言いながら下駄箱の所で洋が来るのを待ち伏せしている。
そこへ七海さんがやってきた。
「道川、ちょっと面かせよ」
二人に連れられて今は使われていない分室の方に向かった。
俺は(七海さんを助けなきゃ)と思ったが、足が竦んで動けない。
後をつけて見守るのがやっとだった。
分室では洋が殴られ、蹴られて「おら、俺等に服従しますと言え」とナイフで脅されていた。
俺は廊下のカーテンの影から見ていた。
七海さんは、初めは2人を睨んでいたが、途中から怯えて「はい、はい」と言いなりになった。
最後に「明日5万持って来い」と言って2人は帰って行った。
その場にうずくまっている洋。
俺は2人が見えなくなるのを確認して「大丈夫ですか?七海さん」とカーテンの影から出ていった。
七海さんはギロッと俺を睨み「そうやって洋君の親友のふりをして、隠れて見てたんだな」と言った。
俺は言い訳をあれこれ考えたが何も言えず、その場に座り込み泣きながら洋に謝った。
「こ、怖かったんだ、あ、あいつらに目をつけられると、今度は、お、おれがイジメられると思って。ご、ゴメンよ、洋」
俺は洋の前にひれ伏して謝った。
七海さんは冷たく言った。
「洋君の頭の中では、この場所でいつもイジメられていたが、そのカーテンの後ろのお前が助けてくれなかったという記憶が鮮明に残っている。イジメられていた事よりも一番の親友が助けてくれなかったことが、洋君には耐えられなかったんだ」
わかっていた。カーテンの影から覗いている時、一度だけ洋と目が合った。その時は慌てて目をそらしてしまった。
その日、洋は飛び降りたんだ。
宮内もニヤニヤしながら近づいてきた。
俺は何も言えない。
笹原は俺に「道川かりるぞ」と言って連れて行こうとしたが、腕をぶっきらぼうに振り払って「お前とは行かない。陽斗、行こう」と言って俺のもとに戻り一緒に歩きだした。「ふざけんな、道川。お前は俺達と一緒に来るんだよ」とグイッと腕を引っ張るので、洋は「うるさい、離せ」と言って笹原をつきとばした。
洋は気が弱いが、実は腕っぷしは強いことは知っていた。
驚いた宮内が洋につかみかかって来たので、洋は蹴りを入れて「ちょうど良かった、僕も2人に聞きたいことがある。放課後待ってるからな」と言って俺を引っ張り学校の中へ入って行った。
「ほ、本当に七海さんなんですか?」
今の行動は洋ではない事を俺は確信していた。
「だから何度もそう行ってるじゃない!」七海さんは笑いながら言った。
たしかに朝から、洋の仕草は所々で女っぽかった。
俺は信じる気になった。
聞きたい事は山程ある。
しかしチャイムが鳴って俺達は、教室に吸い込まれた。
放課後、七海さんと帰ろうと下駄箱付近で待っていると笹原と宮内が来るのが見えた。
俺はトイレに身を隠したが、下駄箱付近で「クソッ、道川の野郎ふざけやがって」とブツクサ言いながら下駄箱の所で洋が来るのを待ち伏せしている。
そこへ七海さんがやってきた。
「道川、ちょっと面かせよ」
二人に連れられて今は使われていない分室の方に向かった。
俺は(七海さんを助けなきゃ)と思ったが、足が竦んで動けない。
後をつけて見守るのがやっとだった。
分室では洋が殴られ、蹴られて「おら、俺等に服従しますと言え」とナイフで脅されていた。
俺は廊下のカーテンの影から見ていた。
七海さんは、初めは2人を睨んでいたが、途中から怯えて「はい、はい」と言いなりになった。
最後に「明日5万持って来い」と言って2人は帰って行った。
その場にうずくまっている洋。
俺は2人が見えなくなるのを確認して「大丈夫ですか?七海さん」とカーテンの影から出ていった。
七海さんはギロッと俺を睨み「そうやって洋君の親友のふりをして、隠れて見てたんだな」と言った。
俺は言い訳をあれこれ考えたが何も言えず、その場に座り込み泣きながら洋に謝った。
「こ、怖かったんだ、あ、あいつらに目をつけられると、今度は、お、おれがイジメられると思って。ご、ゴメンよ、洋」
俺は洋の前にひれ伏して謝った。
七海さんは冷たく言った。
「洋君の頭の中では、この場所でいつもイジメられていたが、そのカーテンの後ろのお前が助けてくれなかったという記憶が鮮明に残っている。イジメられていた事よりも一番の親友が助けてくれなかったことが、洋君には耐えられなかったんだ」
わかっていた。カーテンの影から覗いている時、一度だけ洋と目が合った。その時は慌てて目をそらしてしまった。
その日、洋は飛び降りたんだ。
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