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第1話
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学校に行かなくなった僕を、両親は無理には行かせなかった。
体育の授業で僕を見ていたクラスの友だちが陽斗に伝えて、陽斗が僕の両親に話したようだ。
両親は学校への期待を既に諦めていた。
父親から「通信制高校への転校も考えてみるか」と言われた。
僕は夜中勉強して明け方に寝る。という生活を続けた。
もしも出席日数が足りなくて留年となっても、高卒認定試験を受けて医学部を受験するつもりだ。
なので高校はどうでも良かった。
◇◇◇
俺は朝、学校に行く準備をしているとLINEにメッセージが来た。洋からだ。
洋:“学校行く前に家に寄ってくれ”
洋の家に行くと両親も洋が朝起きてきたことに驚いていた。
洋は、俺と両親の前で「僕は今日から学校に行く」と宣言した。
両親は「無理しなくていいんだぞ」と引き止めていた。
「これは僕の問題だ。大丈夫、次自殺したくなったら陽斗に相談するから」と洋は言った。
両親は俺に「頼むな、洋を」としつこく言われ、俺はうつむきながら「はい」と言った。
本人が行く気になったのなら止められない。
心配する洋の両親に「じゃあ行ってきます」と挨拶をして洋と家を出た。
俺達は電車に乗って洋に「大丈夫か?」と聞くと、頷きながら「陽斗君は洋君が自殺した理由知ってるの?」と聞かれた。
「いや、ハッキリとは聞いてないんだ。C組の笹原と宮内のイジメが原因だと思うんだけど。飛び降りる前に相談してくれなかったことが悔しくて」
このことは洋の両親や学校の先生から散々聞かれ、同じように答えていた。
少し間があり「え?」と俺は洋を見た。
「今日は朝から付き合わせちゃって悪かったわねぇ」と洋は言った。
「えっと、洋。大丈夫か?」
洋の目を見た。本心から心配して出た言葉だった。洋は笑って「あたしよ、七海」と言った。
俺は笑って「洋、何の冗談だよ」と軽く返した。
「陽斗君、今日からあたしが洋君になって学校行くからフォローしてね」
俺は混乱した。洋がいきなりこんな冗談が言えるほど立ち直ったのか?
無言でいると「フォローしてくれなければ、こないだアタシにキスしたこと、洋君にバラしちゃうわよ」
俺は驚きが隠せなかった。
口を開けてポカーンとなってしまった。
それは洋の部屋でたまたま二人になった時、我慢できずに無理矢理キスをしてしまって、その後正気に戻り土下座して謝った件だ。
洋の家庭教師だと知っていたのに。
その時七海さんは「このことはあたしの胸の中にしまっておく」と言ってくれた。
それからすぐだった。洋が飛び降りて、七海さんが巻き添えで亡くなったのは。
洋の意識が戻ったあと、洋のお母さんから「七海さんが亡くなったことは洋には言わないで」と釘を刺されている。
俺もその方が良いと思い、黙っていた。
七海さんは高校卒業まで養護施設で育ったらしく、洋の両親が七海さんの葬式を出した。養護施設の先生たちに洋の両親が泣きながら謝っていたことが頭にこびりついている。洋の意識が戻ってから2日後のことだった。
頭が混乱したまま、電車を降りて学校に着いた。
体育の授業で僕を見ていたクラスの友だちが陽斗に伝えて、陽斗が僕の両親に話したようだ。
両親は学校への期待を既に諦めていた。
父親から「通信制高校への転校も考えてみるか」と言われた。
僕は夜中勉強して明け方に寝る。という生活を続けた。
もしも出席日数が足りなくて留年となっても、高卒認定試験を受けて医学部を受験するつもりだ。
なので高校はどうでも良かった。
◇◇◇
俺は朝、学校に行く準備をしているとLINEにメッセージが来た。洋からだ。
洋:“学校行く前に家に寄ってくれ”
洋の家に行くと両親も洋が朝起きてきたことに驚いていた。
洋は、俺と両親の前で「僕は今日から学校に行く」と宣言した。
両親は「無理しなくていいんだぞ」と引き止めていた。
「これは僕の問題だ。大丈夫、次自殺したくなったら陽斗に相談するから」と洋は言った。
両親は俺に「頼むな、洋を」としつこく言われ、俺はうつむきながら「はい」と言った。
本人が行く気になったのなら止められない。
心配する洋の両親に「じゃあ行ってきます」と挨拶をして洋と家を出た。
俺達は電車に乗って洋に「大丈夫か?」と聞くと、頷きながら「陽斗君は洋君が自殺した理由知ってるの?」と聞かれた。
「いや、ハッキリとは聞いてないんだ。C組の笹原と宮内のイジメが原因だと思うんだけど。飛び降りる前に相談してくれなかったことが悔しくて」
このことは洋の両親や学校の先生から散々聞かれ、同じように答えていた。
少し間があり「え?」と俺は洋を見た。
「今日は朝から付き合わせちゃって悪かったわねぇ」と洋は言った。
「えっと、洋。大丈夫か?」
洋の目を見た。本心から心配して出た言葉だった。洋は笑って「あたしよ、七海」と言った。
俺は笑って「洋、何の冗談だよ」と軽く返した。
「陽斗君、今日からあたしが洋君になって学校行くからフォローしてね」
俺は混乱した。洋がいきなりこんな冗談が言えるほど立ち直ったのか?
無言でいると「フォローしてくれなければ、こないだアタシにキスしたこと、洋君にバラしちゃうわよ」
俺は驚きが隠せなかった。
口を開けてポカーンとなってしまった。
それは洋の部屋でたまたま二人になった時、我慢できずに無理矢理キスをしてしまって、その後正気に戻り土下座して謝った件だ。
洋の家庭教師だと知っていたのに。
その時七海さんは「このことはあたしの胸の中にしまっておく」と言ってくれた。
それからすぐだった。洋が飛び降りて、七海さんが巻き添えで亡くなったのは。
洋の意識が戻ったあと、洋のお母さんから「七海さんが亡くなったことは洋には言わないで」と釘を刺されている。
俺もその方が良いと思い、黙っていた。
七海さんは高校卒業まで養護施設で育ったらしく、洋の両親が七海さんの葬式を出した。養護施設の先生たちに洋の両親が泣きながら謝っていたことが頭にこびりついている。洋の意識が戻ってから2日後のことだった。
頭が混乱したまま、電車を降りて学校に着いた。
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