4 / 5
第4話 SHOT
しおりを挟む
「残り3つか……」
八津が端末をズボンのポケットに入れようとすると、手が空を掴んだ。いつの間にか、スミスが手に持って眺めている。
「コレ、なかなか面白いデス! 高度なギジュチュ、使われてマース」
「あんたマジシャンか。返してくれ」
「ワタシに預けた方がイイと思いマスケド」
妙なことをいう。八津が手を差し出すと、スミスは素直に端末を返した。
「いったい何者だ、あんた」
「オウ、ソレよりアレを見てくだサーイ」
スミスの指差す先に、一匹のネズミがいた。地下鉄の通路にネズミがいるのを見たことはないが、異変かどうかは疑わしい。
「ネズミがどうかしたか」
「ハハッ。ただのネズミではなさそうデスヨ、ホラ」
スミスのいう通り、だんだんネズミが大きくなってきた。とどまることを知らないネズミは八津たちの方へ向かってくる。
「おい、あんなもん異変ってレベルじゃねーぞ」
「逃げまショウ!」
八津はスミスと並んで反対方向へ逃げた。ネズミは通路いっぱいまで肥大化して向かってくる。十分逃げ切れる速さだったが、悪夢をみているようだった。
「……あれ、スミス?」
角を曲がり、肥大したネズミから逃れ、ループして同じ通路に戻ってきたのはよかったが、一緒に逃げていたはずのスミスがいなくなっていた。
(ほんとにマジシャンだな、パッと消えた)
百舌鳥がいった通り、スミスも異変で間違いない。彼もやはり、無限空間の住人なのだろうか。
「「止まれ!!」」
「ひっ!?」
パッと消える者もいれば、パッと現れる者もいる。今八津の目の前に現れた二人は後者だ。
「「亜空間警察だ!! 両手を高く上げろ!!」」
わけのわからぬまま、八津はいわれた通りにした。その二人はスーツ姿で容姿は瓜二つ、息ぴったりの話し方で、双子かもしれない。
「お、おい……」
片方が八津の目の前に立ってボディチェック、片方が一瞬で背面に回ってボディチェック、これまた息ぴったりに上半身から下半身まで触られて検査された。
「「何だこれは!!??」」
二人の手が同時に前後からズボンのポケットに差し込まれ、それぞれが端末を握りながら八津に迫る。
「あんたらも異変だな。だとしたら、ネズミと合わせて2つで、残りは1つだ」
「「何をいっている!!??」」
「いや、一人につき1つと数えたら、3つ揃って終了だ」
「「こいつ!!」」
八津は胸ぐらと襟首を二人から同時に掴まれ、宙に浮き上がった。初めての経験で普通に苦しい。足をじたばたさせてもがくが、二人は微動だにしない。この二人にはかなわないなと思った。
「わ、わかった、い、いう、いう」
同時にストンと降ろされる。八津は乱れた服を整えていった。
「百舌鳥という女性との連絡手段に使っているものだ。今は正常に作動しなくなっているが」
「「百舌鳥とは何者だ!!??」」
「無限空間の住人らしい。それ以外はミステリアス」
「「ふざけるな!!」」
八津の顔めがけてダブルパンチが繰り出されようとしたその時――
『パンッ』
乾いた発砲音が一発。二人のスーツのまったく同じ箇所に穴が開く。三人が同時に振り向くと、立入禁止の扉の隙間から銃口が覗いている。二人は八津を残したまま扉へ向かって走り出した。
「八津さん」
別の扉から百舌鳥が現れた。拳銃を構えた姿で。
「ああ、助かりました。あの亜空間警察って何ですか、ずいぶんビビりましたよ」
「それを知る必要はないわ。あなたは消えるから」
百舌鳥が銃口を差し向けた。
「えっ……」
「ありがとう。あなたのおかげで修復箇所はすべて発見できました。感謝します」
「修復箇所?」
「不安定な状態が、あなたのおかげで解消することができた、これで完璧に無限空間に同一化できる、後は仕上げだけ、あなたの存在は、8つ目の異変だからね」
「し、信用してたのに」
「信用って何ですか。さようなら」
『パンッ』
百舌鳥が撃った。八津の胸に穴が開く。不思議と痛くない。八津は飛びかかって百舌鳥を押し倒した。大きな胸を鷲掴みすると、ぐにゃりと崩れる。
「満足?」
額に銃口を押し当てられ、引き金が引かれた。八津の目の前が真っ白になった。
八津が端末をズボンのポケットに入れようとすると、手が空を掴んだ。いつの間にか、スミスが手に持って眺めている。
「コレ、なかなか面白いデス! 高度なギジュチュ、使われてマース」
「あんたマジシャンか。返してくれ」
「ワタシに預けた方がイイと思いマスケド」
妙なことをいう。八津が手を差し出すと、スミスは素直に端末を返した。
「いったい何者だ、あんた」
「オウ、ソレよりアレを見てくだサーイ」
スミスの指差す先に、一匹のネズミがいた。地下鉄の通路にネズミがいるのを見たことはないが、異変かどうかは疑わしい。
「ネズミがどうかしたか」
「ハハッ。ただのネズミではなさそうデスヨ、ホラ」
スミスのいう通り、だんだんネズミが大きくなってきた。とどまることを知らないネズミは八津たちの方へ向かってくる。
「おい、あんなもん異変ってレベルじゃねーぞ」
「逃げまショウ!」
八津はスミスと並んで反対方向へ逃げた。ネズミは通路いっぱいまで肥大化して向かってくる。十分逃げ切れる速さだったが、悪夢をみているようだった。
「……あれ、スミス?」
角を曲がり、肥大したネズミから逃れ、ループして同じ通路に戻ってきたのはよかったが、一緒に逃げていたはずのスミスがいなくなっていた。
(ほんとにマジシャンだな、パッと消えた)
百舌鳥がいった通り、スミスも異変で間違いない。彼もやはり、無限空間の住人なのだろうか。
「「止まれ!!」」
「ひっ!?」
パッと消える者もいれば、パッと現れる者もいる。今八津の目の前に現れた二人は後者だ。
「「亜空間警察だ!! 両手を高く上げろ!!」」
わけのわからぬまま、八津はいわれた通りにした。その二人はスーツ姿で容姿は瓜二つ、息ぴったりの話し方で、双子かもしれない。
「お、おい……」
片方が八津の目の前に立ってボディチェック、片方が一瞬で背面に回ってボディチェック、これまた息ぴったりに上半身から下半身まで触られて検査された。
「「何だこれは!!??」」
二人の手が同時に前後からズボンのポケットに差し込まれ、それぞれが端末を握りながら八津に迫る。
「あんたらも異変だな。だとしたら、ネズミと合わせて2つで、残りは1つだ」
「「何をいっている!!??」」
「いや、一人につき1つと数えたら、3つ揃って終了だ」
「「こいつ!!」」
八津は胸ぐらと襟首を二人から同時に掴まれ、宙に浮き上がった。初めての経験で普通に苦しい。足をじたばたさせてもがくが、二人は微動だにしない。この二人にはかなわないなと思った。
「わ、わかった、い、いう、いう」
同時にストンと降ろされる。八津は乱れた服を整えていった。
「百舌鳥という女性との連絡手段に使っているものだ。今は正常に作動しなくなっているが」
「「百舌鳥とは何者だ!!??」」
「無限空間の住人らしい。それ以外はミステリアス」
「「ふざけるな!!」」
八津の顔めがけてダブルパンチが繰り出されようとしたその時――
『パンッ』
乾いた発砲音が一発。二人のスーツのまったく同じ箇所に穴が開く。三人が同時に振り向くと、立入禁止の扉の隙間から銃口が覗いている。二人は八津を残したまま扉へ向かって走り出した。
「八津さん」
別の扉から百舌鳥が現れた。拳銃を構えた姿で。
「ああ、助かりました。あの亜空間警察って何ですか、ずいぶんビビりましたよ」
「それを知る必要はないわ。あなたは消えるから」
百舌鳥が銃口を差し向けた。
「えっ……」
「ありがとう。あなたのおかげで修復箇所はすべて発見できました。感謝します」
「修復箇所?」
「不安定な状態が、あなたのおかげで解消することができた、これで完璧に無限空間に同一化できる、後は仕上げだけ、あなたの存在は、8つ目の異変だからね」
「し、信用してたのに」
「信用って何ですか。さようなら」
『パンッ』
百舌鳥が撃った。八津の胸に穴が開く。不思議と痛くない。八津は飛びかかって百舌鳥を押し倒した。大きな胸を鷲掴みすると、ぐにゃりと崩れる。
「満足?」
額に銃口を押し当てられ、引き金が引かれた。八津の目の前が真っ白になった。
0
お気に入りに追加
0
あなたにおすすめの小説
サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。
死んだ一人の少女と死んだ一人の少年は幸せを知る。
タユタ
SF
これは私が中学生の頃、初めて書いた小説なので日本語もおかしければ内容もよく分からない所が多く至らない点ばかりですが、どうぞ読んでみてください。あなたの考えに少しでもアイデアを足せますように。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる