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嘆きの館
7話 アリスの許嫁
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リリスがクリス家のメイドになって、早一か月になるとき、屋敷のメイドたちは大忙しになっており、床のモップ掛けから、ガラス磨きまで念入りに清掃します。
「やれやれ、今日はアリスの許嫁の男が来る日とはの・・・!」リリスも掃除に気が抜けません。そして、正午になってやっと大掃除が終わると、アリスと使用人たちは、エントランスで相手を出迎えます。
そして、間もなく玄関の扉が開くと、中から、赤い軍服に青い長ズボンを着用した逆立った金髪の青年が現れたのです。
「これはサーベル・ゴルドン伯爵、ゴーシャからはるばる遠路をご苦労様でした」執事が会釈をすると、ゴルドンと気が進まない様子のアリスとともに、二階の大広間へと案内しました。
大広間で、アリスがゴルドンと二人っきりになると、そわそわと落ち着かないアリスをよそに、ゴルドンは話始めました。
「おお、麗しのアリス、あなたはいつ見ても美しい・・・!」
「それは・・・どうも・・・」
「私のゴーシャ王国とそなたのスピネル王国、どちらもこの世界で最も豊かな国、私とアリスが結ばれれば、両国の結びつきは強固なものとなるだろう!」ゴルドンはその後も延々と話を続けますが、アリスは全く気が進まなかったのです。
ゴルドンが部屋を去った後、心配になったリリスがやってきました。
「アリス殿、お疲れ様じゃ・・・!」
「ああ、リリスさん・・・」リリスの姿を見たアリスは安堵の声を漏らすと、二人はソファに座ります。
「お主、あのゴルドンと言う男と本当に結婚したいのかの?」これに、アリスは首を横に振ります。
「いいえ、知っての通り、わたくしはジョンが好きなの・・・でも、ジョンは平民の生まれ、一方、ゴルドンは北のゴーシャと言う国に住む名のある貴族、お母さまは間違いなくゴルドンとわたくしが結婚するのが望ましいと思うでしょう。ですが、あのゴルドンと言う方、以前にもお会いしましたが、強引な自信家で、困った方なの・・・!あの方の目的はおそらく、わたくしではなく、この国と自分の成り上がり・・・!」
「確かに、そんな感じだったの・・・!」(あれなら、断然すぐるがよいわ!)
「それに引き換え、ジョンは優しくて穏やかで純粋な人・・・どうすれば・・・!?」
仕事に戻ったリリスは、どうすればいいか悩みながら、二階でモップ掛けをしていると、半開きになっている女主人の部屋のドアから話し声が聞こえてきたのです。リリスの魔族としての聴覚はそれを聞き逃さず、こっそりと聞いてみました。
「なんと!?アリスには、私以外に好きな男がいると!?それも平民の・・・!」
「そういう事、私が送った手紙で今夜七時に、屋敷の裏にジョンが来るように仕向けたわ、世間にはモンスターに殺されたと言っておきましょう、どうか頼んだわよ!」
「お任せください!そんな優男、簡単に切り捨ててやります!ジョンの野郎!平民の分際でアリスに近づいたことを後悔させてやるぜ!」ゴルドンが指を鳴らす音が響きわたります。
「やれやれ、今日はアリスの許嫁の男が来る日とはの・・・!」リリスも掃除に気が抜けません。そして、正午になってやっと大掃除が終わると、アリスと使用人たちは、エントランスで相手を出迎えます。
そして、間もなく玄関の扉が開くと、中から、赤い軍服に青い長ズボンを着用した逆立った金髪の青年が現れたのです。
「これはサーベル・ゴルドン伯爵、ゴーシャからはるばる遠路をご苦労様でした」執事が会釈をすると、ゴルドンと気が進まない様子のアリスとともに、二階の大広間へと案内しました。
大広間で、アリスがゴルドンと二人っきりになると、そわそわと落ち着かないアリスをよそに、ゴルドンは話始めました。
「おお、麗しのアリス、あなたはいつ見ても美しい・・・!」
「それは・・・どうも・・・」
「私のゴーシャ王国とそなたのスピネル王国、どちらもこの世界で最も豊かな国、私とアリスが結ばれれば、両国の結びつきは強固なものとなるだろう!」ゴルドンはその後も延々と話を続けますが、アリスは全く気が進まなかったのです。
ゴルドンが部屋を去った後、心配になったリリスがやってきました。
「アリス殿、お疲れ様じゃ・・・!」
「ああ、リリスさん・・・」リリスの姿を見たアリスは安堵の声を漏らすと、二人はソファに座ります。
「お主、あのゴルドンと言う男と本当に結婚したいのかの?」これに、アリスは首を横に振ります。
「いいえ、知っての通り、わたくしはジョンが好きなの・・・でも、ジョンは平民の生まれ、一方、ゴルドンは北のゴーシャと言う国に住む名のある貴族、お母さまは間違いなくゴルドンとわたくしが結婚するのが望ましいと思うでしょう。ですが、あのゴルドンと言う方、以前にもお会いしましたが、強引な自信家で、困った方なの・・・!あの方の目的はおそらく、わたくしではなく、この国と自分の成り上がり・・・!」
「確かに、そんな感じだったの・・・!」(あれなら、断然すぐるがよいわ!)
「それに引き換え、ジョンは優しくて穏やかで純粋な人・・・どうすれば・・・!?」
仕事に戻ったリリスは、どうすればいいか悩みながら、二階でモップ掛けをしていると、半開きになっている女主人の部屋のドアから話し声が聞こえてきたのです。リリスの魔族としての聴覚はそれを聞き逃さず、こっそりと聞いてみました。
「なんと!?アリスには、私以外に好きな男がいると!?それも平民の・・・!」
「そういう事、私が送った手紙で今夜七時に、屋敷の裏にジョンが来るように仕向けたわ、世間にはモンスターに殺されたと言っておきましょう、どうか頼んだわよ!」
「お任せください!そんな優男、簡単に切り捨ててやります!ジョンの野郎!平民の分際でアリスに近づいたことを後悔させてやるぜ!」ゴルドンが指を鳴らす音が響きわたります。
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