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嘆きの館

6話 リリスの奮闘

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 その夜、屋敷の裏の森にて月明りの元、アリスは一人で待っていました。

「あの手紙・・・ちゃんと届いたのかしら・・・?」しばらくすると、シンプルな木綿の服をまとい、メガネをかけた黒髪のショートヘア―の少年がやってきました。
「ジョン!」アリスは目をかがやかせてジョンの元へかけよりました。

「アリス・・・ぼくに用事って何?」
「そ・・・それは・・・!」アリスは顔を赤面させ、もじもじしています。

 その様子を茂みのかげで、女主人は見ていました。
「やっぱり、ジョンと会う気だったのね・・・!後をつけて正解だったわ・・・!よし!」

 女主人は黒い本を取り出し、何やら呪文を唱え始めましたが、アリスとジョンはそんな女主人の悪だくみに気づくことなく、お互いを見つめ合っていました。

「ジョン・・・わたくしは・・・あなたの事が・・・!」
「・・・!?」ジョンも顔を赤くしながらアリスの返事を待っていると、どこからか、のろいの言葉がひびき渡ったのです。

「呪われろ!カースド!」ジョンめがけて放たれたドス黒い呪いの光は、ジョンをかばったアリスに当たってしまったのです。
「きゃあああっ!」呪いを受けてしまったアリスは、その場で倒れてしまったのです。

「アリス!」ジョンがアリスにかけよると、さらに動揺どうようした女主人が現れたのです。
「ああ・・・アリス・・・!ジョン、あなた、またアリスにつきまとって・・・!はなれなさい!」女主人の剣幕けんまくにジョンはその場を離れました。
「こんなはずでは・・・!」女主人はアリスを抱きかかえて運びます。

 翌日、アリスはベッドの上で苦しそうに息をしており、女主人やリリスは心配そうに様子を見ていました。医者が言うには、薬が必要とのことでしたが、それを調合するには、『メディカルハ―ブ』『ケアマッシュ』『悪魔族の毒』が必要とのことでした。

 三つの材料のうち、『メディカルハーブ』は屋敷にあるとのことでしたが、『ケアマッシュ』は、なかなか見つけられないキノコでしたし、『悪魔族の毒』など、その辺の店にはおいておらず、いずれも高値がつくめったに手に入らない代物でした。

「どうすればいいのでしょう・・・!?」女主人がオロオロしているところに、リリスが言いました。
「ならば、妾がそれらの材料を見つけてきます!」
「なんと・・・!?あなたが・・・?」これにリリスはうなずきます。

「うむ!任せてください!それらの材料なら心当たりがあります!」それを聞いた女主人は目を輝かせます。
「じゃあ、お願いね!」

 リリスは屋敷を出て、すぐるがいる宿屋までやってきました。
「どうしたのさ、リリス」
「すぐる・・・!突然ですまぬが・・・!」リリスはすぐるに、アリスの病気を治すための薬の材料について相談します。

「なるほど、『ケアマッシュ』か・・・!実はそのキノコは、この近くにある洞窟どうくつで採れるはず、条件さえととのえば、どこでも生育できるんだ」
「じゃあ、なぜ見つけにくいのじゃ?」

「そのキノコは、普段はその辺のキノコと見分けがつきにくいんだ、でも、本当にそのキノコを必要とする者の前では、そのキノコは黄色く光る!大抵は金もうけのために採りたがっている者が多いから、それで高値がついてしまうんだよ」すぐるは、リリスにケアマッシュの洞窟のある場所を教えました。

 屋敷の裏手に古井戸があり、その中は、広い空洞になっていました。
「この奥にケアマッシュがあるのだな・・・!」リリスは口から炎を吐いて、ランタンに火を付け、奥へと進みました。洞窟の中は暗く、リリスは注意深く進んでいきます。しばらく進むと、奥の方からにぶい緑色の光が見えたので、そこへ行ってみました。

 そこは、緑色の光るコケでおおわれた空間で、辺りには植木の様な大きな赤いかさを持つキノコや、何本もまとまって生えている筆の様なキノコなど、たくさんのキノコが生育していたのです。

「おお!まるでキノコ園だな、それで、ケアマッシュはどこにあるのじゃ!?」リリスはあちこち見まわしますが、すぐるの言う黄色く光るキノコはなかなか見つかりません。

「頼む・・・アリスを救うために・・・ケアマッシュが必要なのじゃ・・・!」すると、リリスの想いに応えるように鈍く黄色に光る、にぎりこぶし大のキノコを見つけました。

「おお!これぞケアマッシュに違いない!」リリスはケアマッシュをそっと採り、洞窟の入口へと戻っていきました。

 屋敷に戻ったリリスは、医者に『ケアマッシュ』と、ワインレッド色の『悪魔族の毒』が入った小瓶こびんを持ってくると、医者はおどろきました。

「おお、間違いなく『ケアマッシュ』と『悪魔族の毒』ですね!しかし、ケアマッシュだけでなく、悪魔族の毒まで・・・どうやって手に入れたのですか?」これにリリスはもじもじしながら言いました。

「うむ・・・店に・・・たまたま・・・売っていました・・・」
「そうですか、ありがとうございました!」

(本当は、妾の爪から分泌ぶんぴつする毒を瓶詰びんづめにしたものじゃ・・・)

 材料がそろったことで薬が出来上がり、アリスの呪いはウソみたいに解けたそうです。
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