セプトクルール『すぐるとリリスの凸凹大進撃!』

マイマイン

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嘆きの館

3話 タイムスリップ

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 光が収まり、すぐるとリリスが恐る恐る目を開けると、そこは大きなお屋敷が見える庭の中だったのです。
「ぬ?ここはあの『嘆きの館』の庭ではないのか!?」
「確かに、あのお屋敷の庭に間違いなさそうだ、でも・・・」

 すぐるが辺りを見回すと、庭の草はていねいに刈り取られ、庭の両端りょうたん花壇かだんには色とりどりの花がえられており、お屋敷の方も、ガラスが割れている様子も、壁にヒビが入っている様子もなく、これを貴族のお屋敷と言えば、誰もうたがいはしないでしょう。

「あのお屋敷、初めて見た時の様なおどろおどろしさはないし、人の気配もちゃんとあるみたいだ」すぐるとリリスは人の気配を感じて、がきかげに隠れて様子を見ます。てつ格子ごうしの庭の門が左右に開き、そこから、白いドレスをまとう、ウェーブのかかった金髪に碧眼へきがんの整った顔立ちの少女がやってきたのです。

「ぬ!?あの者は・・・!?」
「あの女の子の霊にそっくりだ・・・!」すると、お屋敷の扉が開き、中からこんのスーツを着こなした初老の男性執事しつじ出迎でむかえ、会釈えしゃくします。

「おかえりなさいませ、アリスおじょうさま!」その名前を聞いたすぐるとリリスはハッとします。
「ただ今帰りましたわ、じいや」アリスが執事に連れられて屋敷の中に入ります。

「聞いたかい?リリス」
「うむ!間違いなくあの女子おなごはアリスと呼ばれておった!すぐる、これは・・・もしや・・・?!」
「そうだね!ぼくたち、五十年前にタイムスリップしたらしい!」
「しかしお主でも、時間移動する魔法は使えぬはずじゃ・・・?」すぐるは手持ちの絵筆型の杖を見て言いました。

「・・・この『コスモの絵筆』の力だよ!以前、じいちゃんから受けいだこの杖について、ちょっと調べたことがあってね、それによれば、この杖にはたましい宿やどっていて、清き心を持つ者の思いに反応はんのうして、奇跡きせきを起こすことがあるって書いてあったんだ・・・!おそらく、この杖がぼくらやアリスの霊の思いにこたえてくれたのかもしれない」

「なんと・・・そんなことが・・・!?」
「それで、どうすればいいのかな・・・?」
「答えは一つよ!我らは、アリスが恋人のジョンと結ばれるように、手助けをすればよいのじゃ!それには、妾がこのお屋敷のメイドになり、アリスに近づくのじゃ!」これに、すぐるは唖然あぜんとします。

「そんな!?今の時代に魔族の姿で行ったら、さわぎになるぞ!?」
「うむ!だから、こうするのじゃ!」リリスが呪文じゅもんとなえると、彼女はけむりに包まれます。そして煙が晴れた時には、羽と尻尾と角がない、丸い耳の人間の姿になったリリスが立っています。

「うむ、完璧かんぺきよ!妾は魔法が得意ではないが、人間の姿をりる幻術げんじゅつぐらいはできるのじゃ!よし、じゃあ行ってくる、すぐるはかげから援護えんごをしてくれ!」すぐるはうなずきました。

 人間に化けたリリスは、屋敷のノッカーに手をかけて三度鳴らします。そしてほどなくすると、木の扉が開き、先ほどアリスの相手をしていた執事が現れました。

「おや、あなたは我が屋敷にどんなご用件で?」
「うむ・・・わら・・・私はこの屋敷のメイドになりたくて・・・来ました・・・!」

「ほう、この屋敷の使用人になりたいと申しますか、わかりました、どうぞ中へ」執事はリリスの屋敷の中へ招き入れると、リリスはそれに続きます。

 白い壁にレッドカーペットがかれている内装は、あのお化け屋敷の面影おもかげはなく、きれいに整頓せいとんされており、その様子を見たリリスはあっけにとられます。

(うむ・・・やはりここは過去の嘆きの館に違いなさそうじゃ・・・)中央の大階段を上っていき、大広間に案内されると、そこには赤いドレスを着込んだウェーブのかかった金髪の女主人が立っていました。

「爺や、その娘は?」
「この屋敷の使用人になりたくて訪問されたリリスという者だそうです」
「ふむ、わかりました、爺やは下がっていいです」
「ははっ」執事は礼をしながら部屋をあとにすると、女主人はリリスに向き直ります。

「そうですか・・・あなたは我が屋敷のメイドになりたいと・・・!」
「そ・・・そうです!」リリスは会釈えしゃくしながら言います。
「わかりました、ちょうどメイドが一人欲しかったのです。では早速、エプロンドレスに着替きがえてもらいます。仕事内容はメイド長から聞くといいでしょう」

(ここまでは成功のようじゃ・・・!)
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