セプトクルール 短編集

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12月 メガロのクリスマス

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 クリスマスも近くなった冬のゴーシャ国にあるノース孤児院こじいん。そこもクリスマスツリーがかざられ、子供たちは喜んでいますが、そこの運営うんえいは楽じゃなかったのです。

 院長いんちょうをしているエルフのマヤは、院内に図書館としょかんが欲しいと思いましたが、それだけのお金や本がありませんでした。猫の獣人じゅうじんの孤児ニャミーは、テーブルで手紙を書いていました。あて先は、北の国ラップランドにいる海賊、『冬将軍(ふゆしょうぐん)メガロ』です。ニャミーは以前、人さらいの船に乗せられていたのですが、そこをメガロに助けてもらい、この孤児院でくらすようになりました。メガロは悪いお金持ちや貴族きぞくなどからは恐れられていますが、貧しい人たちにとっては英雄えいゆうでした。
そのメガロは今、世界各地で『宝』を集めていると聞いています。

 ニャミーはまたメガロに会いたいと思い、孤児院のクリスマスパーティへの招待状しょうたいじょうを書いていたのです。

 クリスマス当日、夕闇ゆうやみの空からは雪がふる様子はなく、メガロも来る様子はありませんでした。

「せっかく手紙を送ったのに・・・メガロさん、手紙を読んでくれたかにゃあ・・・?」
ニャミーは外に出てメガロを待っていると、マヤ院長がやってきました。

「さぁ、もう入りなさい、カゼひくわよ」空が暗くなってくると、空から白い雪が降ってきて、あたりを銀世界ぎんせかいにすると、やがてローブをまとった聖者せいじゃが大きなソリを引いて孤児院にやって来たのです。その姿を見たニャミーはハッとしました。

「メガロさんにゃー!」ニャミーはメガロの元にかけよります。
「・・・ニャミーか、招待状をありがとうな・・・!」
「覚えててくれたのにゃ!?」
 ニャミーはメガロを孤児院にまねき入れ、みんなでなべをかこんで鍋料理をいただき、みんなでプレゼントを交換し合ったり、雪がもった外で雪だるまを作ったり、雪合戦ゆきがっせんをして楽しみます。

「ニャミーありがとう、今日は楽しかったぞ。さぁ、おれからのプレゼントをここに置いておこう」メガロはソリに積んであった宝箱たからばこを下ろしていきます。一つはとても大きな箱で、もう一つは両手でかかえられる小さな箱です。メガロは雪の降りしきる中をしずかにっていき、ニャミーはずっと手をふりつづけます。

 雪がやんだ朝、メガロが残した箱を開けてみると、小さな箱にはたくさんの財宝ざいほうが、大きい箱には図鑑ずかん絵本えほん童話どうわなど、たくさんの本が入っていました。

「そうでしたか、メガロさんが集めていた宝とは『本』のことでしたか。子供たちをはぐくむ知恵ちえ芸術げいじゅつこそが本当の宝と言うことなのですね、残りの財宝も正しく使いましょう」マヤ院長はその思いをかみしめました。
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