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(おまけ)カレンダー短編集

6月 シェリーの苦悩

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 梅雨つゆ真っただ中のスピネル王国では、長雨にさらされており、王都ジャスパに店をかまえるエルニスとキャンベルの便利屋も開店休業かいてんきゅうぎょう状態じょうたいでした。

 店の中央にあるテーブルの席では、フリルの付いた白いシャツと青いミニスカートを着用し、流れるような金髪きんぱつのロングヘアーの少女が沈んだ顔でまどの外を見ていました。そんな中、茶色のミニスカワンピースを着用し、長い赤毛をツインテールにした魔族の少女リリスが話しかけます。

「どうしたのじゃシェリー?浮かぬ顔をして」これに、シェリーはリリスの方を見て答えます。
「ああ・・・リリスお姉さま・・・ちょっと、昔のことを思い出して・・・」これに、リリスはとなりの席に
座ります。

「話してみてはどうかの?気持ちが楽になるかもしれぬぞ」リリスのほほえみに気持ちがほぐれ、
シェリーは話し始めました。
「・・・わたくしは現実界リアリティの国フランスに住んでいた貴族きぞくの家に生まれましたが、父が日本びいきだったので、日本に引っこし、小さい頃は普通ふつうの子どもと同じようにみんなと遊んでいましたわ。でも、ある年をさかいに、人にはない『力』に目覚め、ある時、わたくしをからかった男の子を、わたくしは念力で傷つけてしまったのです・・・!そして、母も行方不明ゆくえふめいになり、父はわたくしを屋敷やしきの外に出さなくなってしまいましたわ・・・!それからは、自由にあこがれ、窓から外をながめる生活がつづきましたの・・・」

「ほう、話はあらかたすぐるから聞いておったが、つらかったのだな・・・!?」シェリーは話を続けます。
「母が戻り、高校生になって『力』をおさえられるようになっても、まわりからは好奇こうきの目で見られたりする生活が続きましたの・・・」シェリーが話し終わると、リリスが言いました。

「そうか、お主は『力』を持つがゆえに苦しんだのだな、わらわも同じような目にさらされたぞ、ただし、『力』のなさゆえじゃが・・・!」これに、シェリーはハッとします。
「そんな!わたくしにはリリスお姉さまは弱くうつりませんでしたわ!」リリスは話を続けます。

「妾は魔族のはしくれじゃが、生まれつき魔力が弱く、ほかの魔族からは落ちこぼれと呼ばれ続けてきた・・・!今は亡き両親からも、魔力に関してはのぞみはうすいと言われた・・・!
その代わり、鬼種族きしゅぞく(鬼の仲間)としてのうでっぷしや体力には自信があったから、この町の道場どうじょうに通い、武術ぶじゅつを身に着け、今にいたるのじゃ!今では、その辺の男や魔族には負けぬぞ!」それを聞いたシェリーは深く感心します。

「やっぱり、リリスお姉さまは強いですわ!さっきの話の続きですが、高校生活もつらい事ばかりではなく、同じ悩みを持つすぐるさんやたよりになるボブさんがいましたし、何より、リリスお姉さまがそばにいたから安心できましたもの!」
「シェリー・・・!」長雨もあがり、あらためて窓を見ると、空は青く晴れ渡り、大きな虹がかかっていたのです。
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