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(おまけ)カレンダー短編集

4月 ボブのプレイボール

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 ボブが桜なみ木の道を歩いていると、ジャスパー学園のグラウンドで、少年野球チーム『スピネルフェニックス』の白を基本きほんにした赤のユニフォームを着た少年たちが集まっているのを見ました。その中に、同じユニフォームを着た人間の姿になっているエルニスを見つけたのです。

「よぉ、エルニス!」その声にエルニスがボブのほうを向きました。
「ああ、ボブ君・・・」
「どうしたんだ?みんなガックリしているぞ・・・?」ボブの言う通り、チームメイトたちは、みんなしずんだ顔をしています。

「あのね、ぼくたちこれから『ゴーシャサンダーバード』のチームと野球の試合をすることになっているんだけど、とつぜん、うちのチームの4番バッターの子が熱出して来られなくなったんだ・・・ぼくたちのチーム、人数ぎりぎりでやっているから・・・」
それを聞いたボブは胸に右手を当てて言いました。

「なら、おれが代わりに出てやるぜ!現実界リアリティでは野球をやってきた
からな!」それを聞いたエルニスは目をかがやかせます。
「本当かい!?じゃあ、頼むよ!」間もなく、黄色のユニフォームを着た『ゴーシャサンダーバード』のチームメイトが入場してくると、審判しんぱんがみなを整列せいれつさせます。

「それでは、『スピネルフェニックス』と『ゴーシャサンダーバード』の試合を始めます!お互いに礼!」そして、プレイボールの合図(あいず)がかかると、先行は『ゴーシャサンダーバード』です。

 1回表、1アウトで『ゴーシャサンダーバード』に2点先せいされてしまいます。そして次のバッターが打ったたまがセンターヒットになったかと思われましたが、その球を2るいのエルニスがジャンピングキャッチ!そして、1塁のボブに送球!見事キャッチし、ダブルプレーが決まり1回裏へ。

 7回裏、ここまで両者に点はなしです。1塁にエルニスがいますが、2アウトになっています。そこで、打席に立ったのは、ボブです。まもなく放たれたストレートを、ボブは全力のスイングで迎えうつと、
けたたましい衝突音しょうとつおんとともに、球は大きなアーチを描き、学園のへいを大きく飛び越えたのです。

「すごい!起死回生きしかいせいのホームランだ!」他のチームメイトが感心すると、エルニスとボブはダイヤを一周し、ホームベースに帰還きかんしたのです。これで同点に追いつきました。

 あの後、両者とも得点とくてんは入らず、2対2のまま、9回裏になりました。2アウトで、3塁にエルニスがおり、ボブが打席に立ちます。
「よし!ここでホームランを決めろ!」チームメイトが見守る中、ボブはこう考えていました。

「この場合・・・なまじホームランかヒットを狙うよりは・・・!」ボブは3塁のエルニスに目をやり、意を決して、放たれたボールをバントで迎えうちました。その瞬間、ボブは全力で1塁に、エルニスはホームベースへとかけ出します。まもなく、エルニスはスライディングで、送球よりもギリギリ早くホームベースをとらえ、判定はんていはセーフとなり、『スピネルフェニックス』は、見事勝利をおさめたのです!その直後、エルニスはチームメイトからもみくちゃにされました。

「やったなエルニス!」
「よくやったぞ!」これに、エルニスはみんなの前でこういいました。
「ぼくが最後の得点を入れられたのは、ボブ君のフォローがあってこそなんだ!」これに、チームメイトたちはハッとします。

「確かに、あの場面のバントの判断はんだんはまちがっていなかったな・・・!」そして、ボブももみくちゃにされました。
 空もオレンジ色に染まっていったころ、ボブとエルニスは満足そうに店へと帰っていきました。それ以来、2人の間には確かな友情がめばえたのです。
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