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1章

すぐる編1-11 VIPルーム

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 すぐるたちは、図書室に現れた怪しい階段を降りていくと、かがり火に照らされ、石の壁に囲まれた薄暗い通路を進んでいきます。奥には金縁の赤い両開きの扉があり、開けてみました。

 そこは地下とは思えないほど明るく、金色の壁に大理石の床という豪華ごうかな内装だったのです。奥には赤い玉座を思わせるソファーがあり、その中央には紺色こんいろのスーツを着こなし、セットをきめた髪型かみがたをしている魔族まぞく青年せいねんがおり、その周りを女生徒たちが固めています。

 その女生徒の中に、金髪のロングヘアーに碧眼へきがんの少女がいたのです。

「シェリー、こんなところにいたのか!?」シェリーの目はうつろで、ボブの問いかけには返事をしません。
「貴様!シェリーに何かしたのか!?」リリスが食って掛かると、魔族の青年が淡々たんたんと言いました。

「お前たちは何だ?無断でこのアスモ様のⅤIPルームに入ってくるとは・・・!」それを聞いたリリスはハッとします。
「そうか、貴様がアスモか!理事長の息子の・・・ウワサになっておったぞ!貴様!学費の免除や大学のコネと引きかえに女遊びばかりやっておるとな!」これに、アスモは反論します。

「ちょっと違うな、オレは貧しさに苦しめられているあわれな女の子たちを救っているのさ!そのついでにちょっと遊ばせてもらっているだけだ!このシェリーと言う女は何年かに一度のいい女だからな!オレの魔力まりょくで従順な女に仕立てたのだ!ハハッ!」アスモはそう言ってシェリーの胸元に手を伸ばします。

「あら、いけませんわ・・・♡アスモ様・・・」シェリーの目はうつろでしたが、その目からはしずくがこぼれ落ちました。

「やめろよ!シェリーが泣いているじゃねぇか!」ボブが叫びます。
「そうじゃ!女子の心と体をもてあそぶなど許せぬ!覚悟するがよい!」ボブやリリスが身構えると、ソファーのはしに座っていた女生徒が言いました。

「待って!アスモ様にひどいことをしないで!」
「お主ら、アスモに何かされたのか!?」メガネをかけた左の黒髪の女生徒が言いました。

「私にはメトロポリスの大学のコネの件があるの!確かに私たちはアスモ様に身も心も好き放題去れているけど、それは全て私たちの未来や生活のためなの・・・」右の金髪の女生徒も言いました。

「私も、貧しさのあまり学費が払えなくて困っているときにアスモ様に声をかけられたの・・・!言うことを聞けば学費がくひ免除めんじょしてやるって・・・!もしあなたたちが、アスモ様を傷つけたらどうなるか・・・!」
「くっ・・・!」ボブはそれを聞いて戸惑とまどいましたが、リリスはぶれない声で言いました。

「・・・お主たち、本当にそれでよいのか?」
「えっ!?」

「そんな七光りだけの男にいいようにされて!?後で苦しい思いをするからの!」
「それに、コネであの大学に入ったとしても、落第(らくだい)するだけですよ!」キャンベルも言いました。それを聞いた女生徒たちはハッとしましたが、アスモの右に座っていた、レースがあしらわれた白や青が基調のワンピースドレスを着込んだ銀髪のロングヘアーの少女が立ち上がりました。

「あなた、アスモ様になんてことを言うの?魔力が弱い下級悪魔の分際ぶんざいで・・・!」
「ぬ!?お主もまさか・・・!」

「ええ、あなたと同じよ・・・!でも、あなたと一緒にしない方がいいわ!」銀髪の少女は背中からは青いコウモリの翼、ダイヤ型の飾りがついた細長い尻尾、横に曲がった二本の角を生やした魔族の姿になりました。
「やはり、お主も魔族だったか・・・!?」

「ええ!私はマリス!ほこり高き魔族の王家の血を引くもの!あなたなんかとは格が違うわ!」アスモはボブに向き直ります。

「そうか、お前、シェリーに気があるみたいだな?!そのまっすぐな目・・・気に入らん!」アスモも立ち上がり、紫のコウモリの羽根に、スペード型の飾りがついた細長い尻尾、ヤギのような後ろにそった角を生やした魔族の姿になりました。

「オレは人間の父とサキュバスの母から生まれたインキュバスのアスモだ!魔力を持たない人間無勢ぶぜいが!身の程をわきまえさせてやる!」二人の女生徒は戦慄せんりつしました。

「やだ!アスモって魔族だったの!?」
「助けてー!」女生徒は急いですぐるたちの方へと走っていきました。

「キャンベルちゃんは急いでキーパーたちを呼んできて!ぼくとエルニスはリリスとボブの援護えんごをする!」
「わかりました!さぁ、こっちです!」キャンベルは二人の女生徒を連れてⅤIPルームを出ていきました。
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