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9章 調和の章

エピローグ

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 すぐるがベッドから起き上がると、今いるのはエルニスとキャンベルの店の中ではなく、なんと、すぐるの自室のベッドの中で、まどのカーテンの隙間すきまから、朝日が射しこんでいました。

「あれ・・・?エルニスとキャンベルの店のベッドでたはずなのに・・・これはゆめかな・・・?」すぐるが自分のほおをつねると、現実通りの痛さを感じます。

「・・・夢じゃない!そうか・・・ぼくは現実界リアリティに・・・いや、あれだけ長い時間旅をしたのに、それが全て昨日のことのように感じる・・・幻想界ファンタジアも、そこでの出来事は、全部夢だったのかなぁ・・・?」すぐるが辺りを見回すと、そこはいつも通りの自室でしたが、ある物に目がとまりました。

「あっ!あの杖が絵筆の形になっている!じゃあ・・・!」その後、誰かが階段を急いでけ上がる足音が聞こえてくると、自室のドアが大きく開きました。
「すぐる!起きるのじゃ!」自室のドアからなんとリリスが現れ、こちらにやってきたのです。
「リ・・・リリス・・・!?な、なんでここにいるの・・・!?」すぐるは目を丸くして叫びました。

「お主とはなれたくない・・・!そう思ったら、いつの間にか、この部屋の中におったのじゃ!」すぐるはおどろきとうれしさのじった感情をいだきながら、階段かいだんを下りて行くと、食卓の部屋に、白いシャツとピンクのスカートを着用し、黒髪くろかみを肩までばしたすぐるの母ちえと、すぐるそっくりの黒髪のショートヘアーのすぐるの父としおが、シンプルな白いシャツと黒いズボンを着用して着席していました。

「・・・父さん・・・母さん・・・おはよう・・・」
「おはようすぐる、長い間失踪しっそうしていた、としおが帰って来たのよ、ちゃんとお帰りなさいって言いなさい」すぐるは戸惑とまどいながら言いました。

「・・・父さん・・・お帰り・・・それで母さん、うちにリリスが来ておどろかないの・・・?」
「別に驚かないわよ、今日からリリスちゃん、うちに住むことになったから、仲良くなさい」ちえが何事もなかったかのように返事をしたので、すぐるはあっけにとられました。

「ただいますぐる、よく頑張がんばったな・・・!」としおがこう言ったので、ちえは頭をかしげます。
「何言っているのあなた?さあ、朝ごはんの準備をしなくちゃ!みんな、手伝ってちょうだい!」

 朝食をすませ、すぐるとリリスはすぐるの部屋へと戻りました。
「まさか、リリスが現実界リアリティにまで押しかけてくるなんて、思いもしなかったよ・・・!」それを聞いたリリスはもじもじしながら顔を赤らめて言いました。

「・・・さっきも言ったであろう、お主と離れたくないと・・・!のう、すぐる・・・」
「何・・・?」すぐるはリリスと向き合います。

「お主は・・・妾の事が好きか・・・?」リリスは顔をさらに赤らめ、うつむきながら言います。
「えっ!?」すぐるも顔を赤らめます。

「お主からの、ちゃんとした返事を、まだ聞いておらぬ・・・!どくを持っておったり、口から火を女子おなごはイヤか・・・?」リリスはぎゅっと目をつむりながら言うと、すぐるは彼女の両肩りょうかたに手を置いて言いました。

「イヤじゃないよ・・・!ぼくも、何事にも一生懸命いっしょうけんめいで、元気で優しいリリスの事が大好きだよ・・・!」
その瞬間しゅんかん、リリスの両のひとみうるみだし、やがて大粒おおつぶの涙がこぼれだしたのです。
「ううっ・・・!本当によかった!妾も・・・おだやかで優しいすぐるの事が大好きじゃ!」リリスがすぐるの胸に顔をうずめ、しばらく泣いていると、顔を上げ、真剣な目つきで言いました。

「すぐる・・・!本当に妾の事が好きなら・・・妾のくちびるに・・・『ちかいの口づけ』をしてくれぬか・・・!」
「えっ!?リリスとキスをするの・・・?」すぐるはあっけにとられました。
「そうじゃ、それとも、妾とキスをするのはイヤか・・・?」すぐるも真剣な目つきになり、リリスと向き合います。

「わかった、するよ・・・!」
「早く・・・!妾の口が火を噴く前に・・・!」すぐるは、リリスのぷるんとしたピンク色であつめのくちびるに自分のそれを重ねると、心臓がみゃくを打ち、全身が熱くなっているのを感じました。十秒後、二人はおたがいのくちびるをはなします。

「うむ!よくぞおうじてくれた・・・!妾は幸せじゃ!」すぐるとリリスはお互いにぎゅっとき合います。
「リリス・・・ずっとぼくのそばにいてくれないかな・・・!?」
よろこんで!これからもよしなに願いたい!他の女子おなごりそったら、絶対に許さぬぞ・・・!」

 すぐるとリリスが誓いのキスをしてから数年後、二人は同じ高校を受験じゅけんし、見事二人とも合格しました。リリスも現実界リアリティの生活にれ、人間の姿を借りながら暮らしています。ボブは平凡な現実界リアリティの毎日に戻りましたし、シェリーの元にも母のシャマルが帰って来て、幸せな毎日を取り戻すことが出来、時々、道端みちばたでシェリーとすれちがい、あいさつをかわします。

 すぐるの『セプト・クルール』の魔法の影響えいきょうは、たしかに現実界リアリティにも現れていました。中東で活動していたテロ組織そしき壊滅かいめつしたり、風力や太陽光など環境かんきょうに優しいエネルギー開発や、再生医療など最先端さいせんたん医療いりょうが進んでいるニュースがよく出たり、平和や人権への活動を行う人々が表彰ひょうしょうされたりと、少しずつではありますが、世の中はよくなっています。

 今、春休みで、すぐるとリリスはすぐるの自室のベッドの上に腰掛こしかけています。
「すぐる、あれからだいぶ時間がたったが、まだ冒険しておる気持ちなのかの?」
「うん、そうだね」すぐるは軽くうなずきます。
「妾もじゃ、幻想界ファンタジアの仲間たちは、今ごろ、どうしておるのかの?」リリスが軽く天をあおぎながら言うと、すぐる天を仰ぎます。

「最近、幻想界ファンタジアの夢をみるよ、エルニスとキャンベルは相変わらず便利屋を続けていて、みんなに引っ張りだこだったよ。テイルさんはカインさんと共にキーパーを続けているみたいで、レミオンさんこと、レミアンはスピネルの牧場でふえを片手に羊の世話をしていたな」これに、リリスも言いました。

「妾も幻想界ファンタジアの夢を見たぞ、あのロレンスは巡査じゅんさちょう昇格しょうかくしておったようだし、これからますますいそがしくなるであろうな。あのメガロの夢も見たぞ・・・ヤツはラップランドの聖堂騎士団の団長に戻ったようだがの」

「彼らがいる限り、幻想界ファンタジアは安心かもね、そうそう、メシアことシャマルは、連盟と帝国はつながっていたことを明かして、責任を取って代表をやめたんだってね。今は現実界リアリティ旦那だんなさんとシェリーと幸せにらしているみたい」

「シェリーの不思議な力は、母の遺伝いでんだったのじゃな、余談よだんだが、シャマルは人間ではなく、エルフだったそうじゃ、これから連盟はどうなるのかのう?」
「赤ん坊に戻ったしんやは、シェリーたちが育てるそうだよ。サタンこと、しんじはどうなったのかはわからないけど。なんだか、また幻想界ファンタジアに行きたくなっちゃったな」
「妾もじゃ!」

「今度は、戦いのためじゃなく、幻想界ファンタジアの新しい物語を知るためにね!」すぐるは立ち上がり、コスモの絵筆だげを手に取り、リリスも立ち上がり、まばゆい光が隙間 すきまかられている自室のドアノブに手をかけて開けると、すぐるとリリスは光にちたとびらの向こうへと歩みだしたのです。

セプトクルール 超文明Sの野望 完
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