97 / 97
9章 調和の章
エピローグ
しおりを挟む
すぐるがベッドから起き上がると、今いるのはエルニスとキャンベルの店の中ではなく、なんと、すぐるの自室のベッドの中で、窓のカーテンの隙間から、朝日が射しこんでいました。
「あれ・・・?エルニスとキャンベルの店のベッドで寝たはずなのに・・・これは夢かな・・・?」すぐるが自分のほおをつねると、現実通りの痛さを感じます。
「・・・夢じゃない!そうか・・・ぼくは現実界に・・・いや、あれだけ長い時間旅をしたのに、それが全て昨日のことのように感じる・・・幻想界も、そこでの出来事は、全部夢だったのかなぁ・・・?」すぐるが辺りを見回すと、そこはいつも通りの自室でしたが、ある物に目がとまりました。
「あっ!あの杖が絵筆の形になっている!じゃあ・・・!」その後、誰かが階段を急いで駆け上がる足音が聞こえてくると、自室のドアが大きく開きました。
「すぐる!起きるのじゃ!」自室のドアからなんとリリスが現れ、こちらにやってきたのです。
「リ・・・リリス・・・!?な、なんでここにいるの・・・!?」すぐるは目を丸くして叫びました。
「お主と離れたくない・・・!そう思ったら、いつの間にか、この部屋の中におったのじゃ!」すぐるは驚きと嬉しさの混じった感情を抱きながら、階段を下りて行くと、食卓の部屋に、白いシャツとピンクのスカートを着用し、黒髪を肩まで伸ばしたすぐるの母ちえと、すぐるそっくりの黒髪のショートヘアーのすぐるの父としおが、シンプルな白いシャツと黒いズボンを着用して着席していました。
「・・・父さん・・・母さん・・・おはよう・・・」
「おはようすぐる、長い間失踪していた、としおが帰って来たのよ、ちゃんとお帰りなさいって言いなさい」すぐるは戸惑いながら言いました。
「・・・父さん・・・お帰り・・・それで母さん、うちにリリスが来て驚かないの・・・?」
「別に驚かないわよ、今日からリリスちゃん、うちに住むことになったから、仲良くなさい」ちえが何事もなかったかのように返事をしたので、すぐるはあっけにとられました。
「ただいますぐる、よく頑張ったな・・・!」としおがこう言ったので、ちえは頭をかしげます。
「何言っているのあなた?さあ、朝ごはんの準備をしなくちゃ!みんな、手伝ってちょうだい!」
朝食をすませ、すぐるとリリスはすぐるの部屋へと戻りました。
「まさか、リリスが現実界にまで押しかけてくるなんて、思いもしなかったよ・・・!」それを聞いたリリスはもじもじしながら顔を赤らめて言いました。
「・・・さっきも言ったであろう、お主と離れたくないと・・・!のう、すぐる・・・」
「何・・・?」すぐるはリリスと向き合います。
「お主は・・・妾の事が好きか・・・?」リリスは顔をさらに赤らめ、うつむきながら言います。
「えっ!?」すぐるも顔を赤らめます。
「お主からの、ちゃんとした返事を、まだ聞いておらぬ・・・!毒を持っておったり、口から火を噴く女子はイヤか・・・?」リリスはぎゅっと目をつむりながら言うと、すぐるは彼女の両肩に手を置いて言いました。
「イヤじゃないよ・・・!ぼくも、何事にも一生懸命で、元気で優しいリリスの事が大好きだよ・・・!」
その瞬間、リリスの両の瞳が潤みだし、やがて大粒の涙がこぼれだしたのです。
「ううっ・・・!本当によかった!妾も・・・おだやかで優しいすぐるの事が大好きじゃ!」リリスがすぐるの胸に顔をうずめ、しばらく泣いていると、顔を上げ、真剣な目つきで言いました。
「すぐる・・・!本当に妾の事が好きなら・・・妾のくちびるに・・・『誓いの口づけ』をしてくれぬか・・・!」
「えっ!?リリスとキスをするの・・・?」すぐるはあっけにとられました。
「そうじゃ、それとも、妾とキスをするのはイヤか・・・?」すぐるも真剣な目つきになり、リリスと向き合います。
「わかった、するよ・・・!」
「早く・・・!妾の口が火を噴く前に・・・!」すぐるは、リリスのぷるんとしたピンク色で厚めのくちびるに自分のそれを重ねると、心臓が脈を打ち、全身が熱くなっているのを感じました。十秒後、二人はお互いのくちびるを離します。
「うむ!よくぞ応じてくれた・・・!妾は幸せじゃ!」すぐるとリリスはお互いにぎゅっと抱き合います。
「リリス・・・ずっとぼくのそばにいてくれないかな・・・!?」
「喜んで!これからもよしなに願いたい!他の女子に寄りそったら、絶対に許さぬぞ・・・!」
すぐるとリリスが誓いのキスをしてから数年後、二人は同じ高校を受験し、見事二人とも合格しました。リリスも現実界の生活に慣れ、人間の姿を借りながら暮らしています。ボブは平凡な現実界の毎日に戻りましたし、シェリーの元にも母のシャマルが帰って来て、幸せな毎日を取り戻すことが出来、時々、道端でシェリーとすれ違い、あいさつをかわします。
すぐるの『セプト・クルール』の魔法の影響は、確かに現実界にも現れていました。中東で活動していたテロ組織が壊滅したり、風力や太陽光など環境に優しいエネルギー開発や、再生医療など最先端の医療が進んでいるニュースがよく出たり、平和や人権への活動を行う人々が表彰されたりと、少しずつではありますが、世の中はよくなっています。
今、春休みで、すぐるとリリスはすぐるの自室のベッドの上に腰掛けています。
「すぐる、あれからだいぶ時間がたったが、まだ冒険しておる気持ちなのかの?」
「うん、そうだね」すぐるは軽くうなずきます。
「妾もじゃ、幻想界の仲間たちは、今ごろ、どうしておるのかの?」リリスが軽く天を仰ぎながら言うと、すぐる天を仰ぎます。
「最近、幻想界の夢をみるよ、エルニスとキャンベルは相変わらず便利屋を続けていて、みんなに引っ張りだこだったよ。テイルさんはカインさんと共にキーパーを続けているみたいで、レミオンさんこと、レミアンはスピネルの牧場で笛を片手に羊の世話をしていたな」これに、リリスも言いました。
「妾も幻想界の夢を見たぞ、あのロレンスは巡査部長に昇格しておったようだし、これからますます忙しくなるであろうな。あのメガロの夢も見たぞ・・・ヤツはラップランドの聖堂騎士団の団長に戻ったようだがの」
「彼らがいる限り、幻想界は安心かもね、そうそう、メシアことシャマルは、連盟と帝国はつながっていたことを明かして、責任を取って代表をやめたんだってね。今は現実界の旦那さんとシェリーと幸せに暮らしているみたい」
「シェリーの不思議な力は、母の遺伝だったのじゃな、余談だが、シャマルは人間ではなく、エルフだったそうじゃ、これから連盟はどうなるのかのう?」
「赤ん坊に戻ったしんやは、シェリーたちが育てるそうだよ。サタンこと、しんじはどうなったのかはわからないけど。なんだか、また幻想界に行きたくなっちゃったな」
「妾もじゃ!」
「今度は、戦いのためじゃなく、幻想界の新しい物語を知るためにね!」すぐるは立ち上がり、コスモの絵筆だげを手に取り、リリスも立ち上がり、まばゆい光が隙間 から漏れている自室のドアノブに手をかけて開けると、すぐるとリリスは光に満ちた扉の向こうへと歩みだしたのです。
セプトクルール 超文明Sの野望 完
「あれ・・・?エルニスとキャンベルの店のベッドで寝たはずなのに・・・これは夢かな・・・?」すぐるが自分のほおをつねると、現実通りの痛さを感じます。
「・・・夢じゃない!そうか・・・ぼくは現実界に・・・いや、あれだけ長い時間旅をしたのに、それが全て昨日のことのように感じる・・・幻想界も、そこでの出来事は、全部夢だったのかなぁ・・・?」すぐるが辺りを見回すと、そこはいつも通りの自室でしたが、ある物に目がとまりました。
「あっ!あの杖が絵筆の形になっている!じゃあ・・・!」その後、誰かが階段を急いで駆け上がる足音が聞こえてくると、自室のドアが大きく開きました。
「すぐる!起きるのじゃ!」自室のドアからなんとリリスが現れ、こちらにやってきたのです。
「リ・・・リリス・・・!?な、なんでここにいるの・・・!?」すぐるは目を丸くして叫びました。
「お主と離れたくない・・・!そう思ったら、いつの間にか、この部屋の中におったのじゃ!」すぐるは驚きと嬉しさの混じった感情を抱きながら、階段を下りて行くと、食卓の部屋に、白いシャツとピンクのスカートを着用し、黒髪を肩まで伸ばしたすぐるの母ちえと、すぐるそっくりの黒髪のショートヘアーのすぐるの父としおが、シンプルな白いシャツと黒いズボンを着用して着席していました。
「・・・父さん・・・母さん・・・おはよう・・・」
「おはようすぐる、長い間失踪していた、としおが帰って来たのよ、ちゃんとお帰りなさいって言いなさい」すぐるは戸惑いながら言いました。
「・・・父さん・・・お帰り・・・それで母さん、うちにリリスが来て驚かないの・・・?」
「別に驚かないわよ、今日からリリスちゃん、うちに住むことになったから、仲良くなさい」ちえが何事もなかったかのように返事をしたので、すぐるはあっけにとられました。
「ただいますぐる、よく頑張ったな・・・!」としおがこう言ったので、ちえは頭をかしげます。
「何言っているのあなた?さあ、朝ごはんの準備をしなくちゃ!みんな、手伝ってちょうだい!」
朝食をすませ、すぐるとリリスはすぐるの部屋へと戻りました。
「まさか、リリスが現実界にまで押しかけてくるなんて、思いもしなかったよ・・・!」それを聞いたリリスはもじもじしながら顔を赤らめて言いました。
「・・・さっきも言ったであろう、お主と離れたくないと・・・!のう、すぐる・・・」
「何・・・?」すぐるはリリスと向き合います。
「お主は・・・妾の事が好きか・・・?」リリスは顔をさらに赤らめ、うつむきながら言います。
「えっ!?」すぐるも顔を赤らめます。
「お主からの、ちゃんとした返事を、まだ聞いておらぬ・・・!毒を持っておったり、口から火を噴く女子はイヤか・・・?」リリスはぎゅっと目をつむりながら言うと、すぐるは彼女の両肩に手を置いて言いました。
「イヤじゃないよ・・・!ぼくも、何事にも一生懸命で、元気で優しいリリスの事が大好きだよ・・・!」
その瞬間、リリスの両の瞳が潤みだし、やがて大粒の涙がこぼれだしたのです。
「ううっ・・・!本当によかった!妾も・・・おだやかで優しいすぐるの事が大好きじゃ!」リリスがすぐるの胸に顔をうずめ、しばらく泣いていると、顔を上げ、真剣な目つきで言いました。
「すぐる・・・!本当に妾の事が好きなら・・・妾のくちびるに・・・『誓いの口づけ』をしてくれぬか・・・!」
「えっ!?リリスとキスをするの・・・?」すぐるはあっけにとられました。
「そうじゃ、それとも、妾とキスをするのはイヤか・・・?」すぐるも真剣な目つきになり、リリスと向き合います。
「わかった、するよ・・・!」
「早く・・・!妾の口が火を噴く前に・・・!」すぐるは、リリスのぷるんとしたピンク色で厚めのくちびるに自分のそれを重ねると、心臓が脈を打ち、全身が熱くなっているのを感じました。十秒後、二人はお互いのくちびるを離します。
「うむ!よくぞ応じてくれた・・・!妾は幸せじゃ!」すぐるとリリスはお互いにぎゅっと抱き合います。
「リリス・・・ずっとぼくのそばにいてくれないかな・・・!?」
「喜んで!これからもよしなに願いたい!他の女子に寄りそったら、絶対に許さぬぞ・・・!」
すぐるとリリスが誓いのキスをしてから数年後、二人は同じ高校を受験し、見事二人とも合格しました。リリスも現実界の生活に慣れ、人間の姿を借りながら暮らしています。ボブは平凡な現実界の毎日に戻りましたし、シェリーの元にも母のシャマルが帰って来て、幸せな毎日を取り戻すことが出来、時々、道端でシェリーとすれ違い、あいさつをかわします。
すぐるの『セプト・クルール』の魔法の影響は、確かに現実界にも現れていました。中東で活動していたテロ組織が壊滅したり、風力や太陽光など環境に優しいエネルギー開発や、再生医療など最先端の医療が進んでいるニュースがよく出たり、平和や人権への活動を行う人々が表彰されたりと、少しずつではありますが、世の中はよくなっています。
今、春休みで、すぐるとリリスはすぐるの自室のベッドの上に腰掛けています。
「すぐる、あれからだいぶ時間がたったが、まだ冒険しておる気持ちなのかの?」
「うん、そうだね」すぐるは軽くうなずきます。
「妾もじゃ、幻想界の仲間たちは、今ごろ、どうしておるのかの?」リリスが軽く天を仰ぎながら言うと、すぐる天を仰ぎます。
「最近、幻想界の夢をみるよ、エルニスとキャンベルは相変わらず便利屋を続けていて、みんなに引っ張りだこだったよ。テイルさんはカインさんと共にキーパーを続けているみたいで、レミオンさんこと、レミアンはスピネルの牧場で笛を片手に羊の世話をしていたな」これに、リリスも言いました。
「妾も幻想界の夢を見たぞ、あのロレンスは巡査部長に昇格しておったようだし、これからますます忙しくなるであろうな。あのメガロの夢も見たぞ・・・ヤツはラップランドの聖堂騎士団の団長に戻ったようだがの」
「彼らがいる限り、幻想界は安心かもね、そうそう、メシアことシャマルは、連盟と帝国はつながっていたことを明かして、責任を取って代表をやめたんだってね。今は現実界の旦那さんとシェリーと幸せに暮らしているみたい」
「シェリーの不思議な力は、母の遺伝だったのじゃな、余談だが、シャマルは人間ではなく、エルフだったそうじゃ、これから連盟はどうなるのかのう?」
「赤ん坊に戻ったしんやは、シェリーたちが育てるそうだよ。サタンこと、しんじはどうなったのかはわからないけど。なんだか、また幻想界に行きたくなっちゃったな」
「妾もじゃ!」
「今度は、戦いのためじゃなく、幻想界の新しい物語を知るためにね!」すぐるは立ち上がり、コスモの絵筆だげを手に取り、リリスも立ち上がり、まばゆい光が隙間 から漏れている自室のドアノブに手をかけて開けると、すぐるとリリスは光に満ちた扉の向こうへと歩みだしたのです。
セプトクルール 超文明Sの野望 完
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
1
この作品の感想を投稿する
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる