『完結』セプトクルール 超文明Sの野望

マイマイン

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9章 調和の章

カオス復活

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 ボブが剣を振り下ろすと、サタンはやりを出して、ボブの剣を止めます。
距離きょりをとれば、剣など、槍の敵ではない!」ボブは何とか近づこうとしますが、素早く動くサタンの槍を見切るので精一杯です。

 シェリーも弓を引きしぼり、矢を放ちますが、メシアの姿が一瞬いっしゅんで消えたのです。

「そんな弓で私を倒せると思ったのですか・・・!?」シェリーはハッとして後ろを振り向くと、メシアが立っていました。そのまま念力でシェリーを吹っ飛ばしました。しかし、シェリーはすぐに立ち上がり、じっとメシアを見据みすえます。

「それでもまだやるのですか・・・!ならば、あの黒人の男を狙いなさい!」その瞬間しゅんかん、シェリーの顔から生気が消え、うつろな目で弓を構え、ボブに向かって矢を放ったのです。

「な、何をするシェリー!?」ボブはとっさに矢をかわします。シェリーはなおも弓をかまえ、とうとしました。三体一の状況になり、ボブは追いつめられてしまったのです。

「くそっ!」
「どう?我々に刃向うことがどれだけ無駄むだなことかわかりましたか?」メシアはクスクス笑いながらいいます。その時、すぐるの杖が光りかがやき、シェリーをらします。
「解き放て!クリアーキュア!」シェリーの目に生気が戻り、彼女は我にかえりました。

「あれ・・・?わたくしは何を・・・!?」シェリーは辺りをきょろきょろします。
「メシアのテレパシーで操られていたんだ」
「すぐる、すまない!できれば、おれたちだけで倒したかったんだが・・・!」これにすぐるが言いました。

「何言っているんだよ、まともなやり方が通用する相手じゃないよ!ぼくも行く!」
「一人増えたところで、状況は変わりませんよ!」
「それはどうでしょう?それっ!」すぐるが『隠者のメダル』をかざすと、杖からオレンジ色のフラッシュが発せられます。

「・・・悪魔の魔眼まがんの効果ですか・・・?そんな物・・・私には・・・!」何といきなり、目がうつろになったサタンが槍をかまえてメシアにおそい掛かって来たのです。

「くっ!しまった!」メシアは槍をとっさにかわします。
「魔眼は確固かっこたる意志いし信念しんねんのない相手にきやすいんだ!」

「くそっ!ならばお前も!」メシアはすぐるにテレパシーをかけますが、すぐるはすでに『聖者のメダル』を構(かま)えて、メシアのテレパシーをね返しました。その瞬間、メシアもモノに取りつかれたようになり、サタンと同士どうしちを始めたのです。

「やっぱりすぐるはすごいぜ!今だっ!」ボブは体力のなくなったサタンを剣で、シェリーは傷だらけになったメシアを念力で吹っ飛ばして下しました。

「うそ・・・私が間違っていたとでもいうのですか・・・?」メシアはよろよろと立ち上がりますが、すぐにひざをつきました。

「くそっ!オレは・・・世界征服せかいせいふくをして、バカにしたやつらを見返してやるって決めたのに・・・!」ボロボロになったサタンもひざをつきました。そんな中、すぐるたちの後ろから男の声がしたのです。

「無様だな・・・!わが弟しんじよ!」すぐるたちが振り向くと、曲がった刀をたずさえた、ぼさぼさ頭の黒マントの男が現れると、サタンはハッとしました。
「その顔は・・・!わが兄しんや!?」それを聞いたすぐるはハッとしました。

「えっ、しんやとサタンは兄弟!?」
「・・・そうだ!その様子だと、メダルと神器をそろえたようだな、それにより、正と負の神器も目覚めたようだ!」
「正と負の神器!?」

「そうだ!お前が持つ正の神器、『聖魔杖せいまじょうコスモの絵筆』と、おれが持つ負の神器、『暴魔剣ぼうまけんカオスの剣』だ!おれはこの時が来ることをずっと待ちのぞんでいたのだ!幻想界ファンタジアに来る前からな・・・!」

「何だって!?じゃあ君もぼくと同じく・・・!?」すぐるはハッとしました。

「そう、おれも現実界リアリティから来たんだよ。だが、お前や落ちこぼれのしんじと一緒いっしょにするなよ!おれは、一人でここまで来た!全てはこのくそったれな世界をぶっこわし、その後で、新しい世界を造り、絶対の帝王ていおうになるためだ!」その瞬間、地獄じごくからうめくような声がひびいたのです。

「ほう、よく言ったぞしんや!自分以外の全てをのろい、やり場のない怒りを持ち、あくなき力のみを信じるお前こそ、我の新しい体にふさわしい!」全員、声のした空の方を見上げると、大鷲おおわしのカギ爪を持つ手足、槍のようにとがった長い尾、天使と白いつばさと悪魔の黒い翼を生やし、ヤギを思わせる曲がった角を生やしたジャッカルの頭をした巨大な悪魔が現れました。悪魔には白と黒以外、色が見当たりません。

「・・・まさか・・・!あいつが・・・カオス!?」すぐるがハッとすると、悪魔が言いました。

「いかにも、我が名は『カオス・ゼブラフィム』!悪魔族の王にして、世界の負の側面、『混沌こんとん』を司る者!我はこの時が来るのを待ち望んでいた!メシアよ、そなたが造りだした装置は、実に素晴すばらしい!我を信じる負の心に満ちた魂こそ、我のかてとなる!」それを聞いたメシアはうなだれ、落胆らくたんします。

「そんな・・・!世界平和のための装置が・・・混沌の世の中を生み出すことになるなんて・・・!」

「サタンこと、しんじもよく働いてくれた・・・!そなたは現実界リアリティでは、いつも有能な兄と比較ひかくされ、どうしようもないもどかしさに苦しんでいた!そんな負の心に満ちたお前に力を与えたが、中々いい退屈たいくつしのぎにはなった。負の心に満ちた者に力を与え、変わり果てて行く様を見届けるのが、我の何よりの娯楽ごらくなのだ!」それを聞いたしんやも落胆します。

「くそっ!オレはカオスに、もてあそばれていただけだったのか・・・!」
「さてと、おしゃべりはこの辺にして、しんや!そろそろお前の体を使わせてもらおう!」カオスがどす黒いきりとなって、しんやの体に入り込んで行きました。
「うぉああああああっ!」しんやの体は黒いオーラに包まれながら宙に浮き、人間の姿から、徐々にカオスの姿へと変わって行ったのです。
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