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9章 調和の章

伝説の楽園

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 白い光が徐々じょじょおさまって行くと、すぐるたちが立っているのはバベルの塔の最上階ではなく、雲なき青い天空のもとに広がる、緑の草地の上でした。

「ここが・・・伝説の楽園『シャングリラ』なのかな・・・?あっ!」すぐるがハッとして見ると、目の前に白い建物とかがみりの塔、風力発電はつでんの風車や太陽光発電のパネルなどが目立つ都市があり、その間を透明とうめいなチューブのようなハイウェイが走っていて、周りを車輪のない車や円盤えんばんが飛び回っています。そして、何より目立つのは、町の中央に、天をつらぬかんとばかりにそびえる、金色にきらめく電波塔でんぱとうを思わせる巨大な塔です。

「わあ!まさに現実界リアリティのSF映画の世界だ!メトロポリスよりすごいかも・・・間違いない!ここが伝説の地『シャングリラ』なんだ!」
「つまり、ここが幻想界平和連盟の本拠地ほんきょちがある場所なのだな!」

 町の中は、きれいに整頓せいとんされており、チリ一つ落ちていません。周りを歩く人々も皆、ととのった服装で、粗末な服を着ている者はいません。

 噴水ふんすいきらめく緑ゆたかな公園に着くと、まずは町の様子を探るべく、エルニス、すぐる、リリスはあの金色の塔に、キャンベルとテイルとレミアンは町の中を、ボブとシェリーは町はずれに広がる森の中へ、メガロとロレンスは町の地下を進むことにしました。

 エルニス、すぐる、リリスは、町の中央にそびえたつ金色の塔に近づいて行きます。
「わあ、そばで見れば見るほど高くて大きいねぇ・・・!」すぐるが、頂上がかすんで見える電波塔の様な塔を見上げて言います。

「もしかしたら、ここが連盟の本部なのか・・・?気を引きめて行かねば・・・!」三人が塔の中に入ると、紺色こんいろのスーツを着た若い女性たちが会釈えしゃくして出迎でむかえました。

「ようこそ、幻想界平和連盟総本部そうほんぶ『ディバインタワー』へ」
「どうぞ、ごゆっくり見学なさってください」あまりにも丁寧ていねいな対応に三人は戸惑とまどいました。

「えっ!?ここが連盟の本部なの・・・?」エルニスはあっけにとられます。
「妾の言ったとおりだったが・・・?」
「・・・確かにとてもきれいな場所だけど、なんか・・・いやな予感がするよ・・・」すぐるは何かを感じ取り、辺りを見渡します。

 流れる黒い階段を使って上の階に上がると、そこは大きな透明とうめいかべかこまれていて、シャングリラ中を見渡せます。

「ここは展望室てんぼうしつだね・・・いたるところに人々が町をのぞき込んでいるよ・・・望遠鏡ぼうえんきょうまである・・・あれ、この塔、まだまだ上があるのに、さらに上に上がるエレベーターはおろか、階段さえないや・・・」すぐるは頭をかしげます。
 
 キャンベルとレミアンとテイルは町中の様子を見て回ることにしました。
「わあ、とてもきれいで平和な国ね」テイルは感心します。
「白を基調とした建物が多くて、空気もんでいるね・・・」

 青々とした芝生しばふに、大きな植木が規則きそく正しく植えられ、色とりどりの花が育っている花壇かだんが並んでいる公園の間を、ジャージを着たジョガーが走っていたり、子供たちが追いかけっこをしたり、犬を連れて散歩したりしている姿を見かけます。そんな平和そのものともいうべき光景こうけいの中で、キャンベルはかない顔をしていました。

「何なんでしょう・・・?確かにとても平和そうですが・・・さっきからこの町全体からイヤな感じを受けます・・・」そんな中、水がきらめく白い噴水のそばで人々が話しているのを見つけ、キャンベルが話しかけます。

「あの~?何の話をしているんですか?」人々は親しみやすそうな声で話しかけます。
「あれ?見かけない顔だね、何って?『シャングリラ七不思議』について話していたところさ」
「『シャングリラ七不思議』?何なんですか、それ・・・?」

「この国シャングリラにはいろんな話やうわさがあるけど、その中でも特に不思議なのが、さっき言った『シャングリラ七不思議』なんだ」
「へえ、良かったら、それについて話してくれませんか?」キャンベルが言いました。

「いいよ、一つ目は『ディバインタワー』で、町の中央に建つ高い金色の塔『ディバインタワー』があって、幻想界平和連盟の本部なんだ。そこは確かにとても高い、けれども、二階の展望室よりも上に上がれそうなエレベーターはおろか、階段すらない、緊急用きんきゅうようの階段さえ見当たらないんだよ」それを聞いたキャンベルたちは驚きました。

「えっ!?非常階段すらない・・・!?」
「それはおかしいわね・・・?」

「二つ目は『ディバインタワーの光』なんだ、時々、ディバインタワーの頂上ちょうじょうからまばゆい光のフラッシュが発せられるんだ。何の合図なのかは、誰もわからない」

なぞの光か・・・」レミアンは頭をかしげます。

「三つめは『平和なシャングリラ』さ、この平和なシャングリラでも、多少の犯罪はんざいあらそいは起きていた。でも、メシア女史じょしが連盟の長になってから、犯罪や争い事が不思議と起こらなくなったんだよ」

「えっ!?犯罪や争いが全く起こらない・・・?!それは不思議ね・・・」テイルも頭をかしげます。

「四つ目は『神隠かみかくし』、シャングリラでらしていた人が、ある日突然とつぜんいなくなることがあるんだ」

「へえ、こんな平和な町でそんなこわいことがあるなんてね・・・!」レミアンは少しふるえています。

「五つ目は『地下の黒い門』町の地下通路に黒い両開きの門があるんだ。そこのおくを見た者は誰もいないんだよ、場所はディバインタワーのすぐ下だ」

なぞの門ですか・・・なにやらあやしいですね・・・?もしや・・・!」キャンベルがハッとします。

「六つ目は『森の中の白いほこら』さ、町の北の方には、自然しぜん保護ほごの森が広がっているんだけど、そこの奥に、森には似つかわしくない白い小さな建物があるんだ。そこはなぜか警備けいび厳重げんじゅうで誰も近づけない。時々、あのメシア代表があのほこらに入って行くのを見かけたんだよ、中には何があるのかな・・・?」

「メシア代表が入るほこらですって・・・?」テイルが頭をかしげます。

「七つ目は何と言ってもあの『メシア代表』さ、連盟をつくったのは間違いなくメシアだけど、彼女はとても不思議な女性で、彼女に命令されると、なぜか、誰も逆らえないんだってさ、どうなっているんだろう?」

「逆らえない不思議な人・・・?それって・・・!?」キャンベルはハッとします。

「と、まあ、さっき言った七つのなぞが『シャングリラ七不思議』なんだ」
「そうですか・・・ありがとうございます」キャンベルは人々にお礼を言って、その場を後にしました。
「・・・やはり、この町には何かがあるようです、あの七不思議を皆さんにも伝えましょう」
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