『完結』セプトクルール 超文明Sの野望

マイマイン

文字の大きさ
上 下
86 / 97
8章 真実の章

傲慢の試練

しおりを挟む
 シルトたちは最上階の特別房を目指して上って行き、途中、妨害ぼうがいしてくる聖戦士たちをけ散らしながら、さらに上を目指します。最上階の特別房の入り口に着くと、目の前に、青い高貴な服と白いミニスカートを着用した、青いひとみの長い金髪の少女が、よろいに身を固めた四人の聖騎士をひきいて現れました。

「あら、ここまで来るなんて思いもしませんでしたよ・・・シルトの皆さん・・・!今まで散々、連盟の邪魔じゃまばかりしてくれましたね・・・!」エリーがこぶしを鳴らしながら言います。

「シルトの旗印(はたじるし)は、『自由と正義』だ!それを脅(おびや)かす者は放っておけん!」メガロが言いました。
「『自由と正義』ですって?アハハハハ!あなたのかかげる正義なんて真の正義ではありませんわ!真の正義は平和のために力を注いでいる我々、世界平和連盟ですのよ!」

「そんな!無理やり相手の両腕りょううで両足をちょん切るのが正義なの!?」カインが言います。
「ああ、あの不埒ふらちな乱暴者の事?あの男、格闘かくとうに長けている事をいいことにはばを利かせていましたね・・・!あんな凶暴きょうぼうなヤツを野放しにしておいては、いずれ、社会に害毒がいどくをもたらすでしょう!あれで少しはおとなしくなるでしょうよ!」

「そんな!確かにあいつはイヤな奴だったけど・・・!じゃあ、テイルの腕と足も切断せつだんするの!?」
「テイル?ああ、あのエルフの武闘家ぶとうかね、女でありながら凶暴きょうぼうでつつしみを知らないし、いいかもしれないわね・・・!」エリーがにやりと笑うと、それを聞いたカインは首を横に振ります。

「違う!テイルは試合以外、悪くない人は絶対になぐったりしないよ!ひどいことをしないで!」
「いいえ!秩序ちつじょおびやかす者にはばつを与えないとね・・・!首をられないだけでも、ありがたいと思いなさい!あなたに手あつ介護かいごしてもらえれば感無量かんむりょうでしょう・・・!」それを聞いていたメガロは、鼻で笑うように言います。

「ほう、平和の名のもとなら手段を選ばないのが、お前たちの正義か!?」エリーは動じることなく言い返します。
「あなた、自分は連盟とはちがうと思っているでしょう?あなたたちシルトだって、自由のためなら平気で法をおかし、暴力ぼうりょくで解決するじゃない!どこが違いますの?」それを聞いたメガロはハッとしますが、ランスロットが前に出ました。

「だまれっ!貴様とメガロ殿どのは違う!」ファフナーも叫びます。
「キャプテンメガロには、弱き者に対する心があるが、貴様きさまにはそれがない!」シルフィーもおどり出ます。
「そうよっ!両腕がなくなったら、愛する人をくこともできないじゃない!」それを聞いたメガロの目からは迷いが消えました。

「・・・そうか、ありがとう、みんな!」メガロたちはエリーたちを見据みすえます。
「ええい!どこまでも連盟に逆らう気なの!?だったら、力ずくで屈服くっぷくさせるまでですわ!」聖騎士たちが身構みがまえると、そこに、閉じ込められていた人々が現れたのです。

「今度はぼくらがメガロを助ける番だ!」
「そうだそうだ!」皆の気迫きはくに、エリーたちはタジタジで、降参こうさんするしかありませんでした。

 あれから、煉獄収容所は陥落かんらくし、収容されていた人々は、全て解放され、エリーはそのままとらわれてしまいました。カインもテイルと無事に再会し、おたがいにき合います。

「ありがとう、カイン!」テイルの目からは、うれしさから涙がこぼれています。
「何言ってるのさ、パートナーなら当然だよ」そして、お互いに口づけをかわしました。

 すぐるとリリスも、後から来たエルニスやキャンベルとも再会します。
「えっ!?もう助けられたの!?」エルニスは唖然あぜんとしています。

「お主ら遅いぞ!」
「やっぱりメガロは英雄だったよ!」
「よかったですね、さあ、スピネルに帰りましょう!」

 メガロは、赤い法衣をまとう、白髭しろひげたくわえたセント・ニコラウスと話しています。
「セント・ニコラウス殿どの、ケガがなくて何よりです!」

「うむ、メガロもよくやってくれた!さあ、今度は我々分教会の拠点きょてんを連盟から取り戻せねば!」そこに、すぐるがやって来ました。
「メガロ、ありがとう!これを・・・!」すぐるが青い六角の『聖者のメダル』を手渡すと、メダルは彼のてのひらで青くかがやいたのです。

「うむ!どうやら『正義』と対になる『傲慢ごうまん』の試練を乗りえたようじゃな!」セント・ニコラウスが言うと、メガロは聖堂騎士たちをひきいてアーケロン号に乗り込み、ラップランドを目指しました。

 ラップランドのノースポールにあるポーラー大聖堂に着いたアーケロン号が停泊ていはくすると、メガロひきいる聖堂騎士団が一気に押し寄せてきました。連盟の聖戦士たちも抵抗しますが、戦力は聖堂騎士団の方が圧倒的あっとうてきに上で、どんどんり返していき、最後その場を仕切っている、よろいとドレスに身を固め、長い金髪を後ろでたばねた、連盟の聖騎士ジュリアとメガロの一騎打いっきうちも、真の正義に目覚めたメガロの杖がジュリアの剣をへし折ったことで勝負がつき、ジュリアはその場を去って行きました。

 分教会の総本山そうほんざんを取り返した聖堂騎士団の団長メガロは、奥にある祭壇さいだんに行き、そこで祈りをささげると、祭壇の前にメガロとうりふたつの姿をした水と海を司る神ポセイドンが現れました。

「うむ、北の聖者玄武げんぶよ、よく傲慢ごうまんの試練に打ち勝った!さあ、その聖者のつえをかざすがよい!」メガロが銀色の十字杖じゅうじじょうをかざすと、中央の青い石から青い閃光せんこうが放たれ、その光のベールは杖全体を包み、光がおさまると、銀色の杖が真珠のように見る角度によってうっすら虹色に輝いて見えます。

「うむ、聖者の杖は『神罰しんばつの杖』となった!そしてメガロには最高の防御魔法『純潔じゅんけつの氷河』をさずけた!さあ、氷河の守護聖人しゅごせいじんメガロよ、行くがいい!」
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

『完結』セプトクルール 勇者エルニスのワンダーランド

マイマイン
児童書・童話
 これは、すぐるがやってくる前の『幻想界』の物語です。ある日突然、平和な国『スピネル王国』にやってきた謎の少年エルニスが、平和を脅かす『魔王軍』に立ち向かう王道ファンタジーです。『セプトクルール』シリーズの始まりの物語をお楽しみください。

コボンとニャンコ

魔界の風リーテ
児童書・童話
吸血コウモリのコボンは、リンゴの森で暮らしていた。 その日常は、木枯らしの秋に倒壊し、冬が厳粛に咲き誇る。 放浪の最中、箱入りニャンコと出会ったのだ。 「お前は、バン。オレが…気まぐれに決めた」 三日月の霞が晴れるとき、黒き羽衣に火が灯る。 そばにはいつも、夜空と暦十二神。 『コボンの愛称以外のなにかを探して……』 眠りの先には、イルカのエクアルが待っていた。 残酷で美しい自然を描いた、物悲しくも心温まる物語。 ※縦書き推奨  アルファポリス、ノベルデイズにて掲載 【文章が長く、読みにくいので、修正します】(2/23) 【話を分割。文字数、表現などを整えました】(2/24) 【規定数を超えたので、長編に変更。20話前後で完結予定】(2/25) 【描写を追加、変更。整えました】(2/26) 筆者の体調を破壊()3/

【完】ノラ・ジョイ シリーズ

丹斗大巴
児童書・童話
✴* ✴* 母の教えを励みに健気に頑張る女の子の成長と恋の物語 ✴* ✴* ▶【シリーズ1】ノラ・ジョイのむげんのいずみ ~みなしごノラの母の教えと盗賊のおかしらイサイアスの知られざる正体~ 母を亡くしてみなしごになったノラ。職探しの果てに、なんと盗賊団に入ることに! 非道な盗賊のお頭イサイアスの元、母の教えを励みに働くノラ。あるとき、イサイアスの正体が発覚! 「え~っ、イサイアスって、王子だったの!?」いつからか互いに惹かれあっていた二人の運命は……? 母の教えを信じ続けた少女が最後に幸せをつかむシンデレラ&サクセスストーリー ▶【シリーズ2】ノラ・ジョイの白獣の末裔 お互いの正体が明らかになり、再会したノラとイサイアス。ノラは令嬢として相応しい教育を受けるために学校へ通うことに。その道中でトラブルに巻き込まれて失踪してしまう。慌てて後を追うイサイアスの前に現れたのは、なんと、ノラにうりふたつの辺境の民の少女。はてさて、この少女はノラなのかそれとも別人なのか……!? ✴* ✴* ✴* ✴* ✴* ✴* ✴* ✴* ✴* ✴*

セプトクルール 三賢者と虹色の夜明け

マイマイン
児童書・童話
 現実界に住む魔法使いのすぐるが、幻想界へと旅立ち、仲間たちと共に悪魔王カオスを倒して数年後、すぐるは幻想界で出会い、『誓い』を結んだ魔族の少女リリスと共に、現実界で平和な生活をおくっていました。  しかし、祖父から魔力を受け継いでいるすぐるは、現実界での生活にはなじめず、他の生徒たちからは好奇の目で見られたり、化け物扱いされていましたが、祖父から託された使命の事、リリスが亡き両親から託された使命の事などが忘れられず、再び幻想界へ旅立とうと決意をしたのでした。  今回は主人公が三人で、それぞれの物語を進んでいくことになります。

セプトクルール『すぐるとリリスの凸凹大進撃!』

マイマイン
児童書・童話
 『引っ込み思案な魔法使い』の少年すぐると、『悪魔らしくない悪魔』の少女リリスの凸凹カップルが贈る、ドタバタファンタジー短編集です。 このシリーズには、終わりという終わりは存在せず、章ごとの順番も存在しません。 随時、新しい話を載せていきますので、楽しみにしていてください。

児童絵本館のオオカミ

火隆丸
児童書・童話
閉鎖した児童絵本館に放置されたオオカミの着ぐるみが語る、数々の思い出。ボロボロの着ぐるみの中には、たくさんの人の想いが詰まっています。着ぐるみと人との間に生まれた、切なくも美しい物語です。

荒川ハツコイ物語~宇宙から来た少女と過ごした小学生最後の夏休み~

釈 余白(しやく)
児童書・童話
 今より少し前の時代には、子供らが荒川土手に集まって遊ぶのは当たり前だったらしい。野球をしたり凧揚げをしたり釣りをしたり、時には決闘したり下級生の自転車練習に付き合ったりと様々だ。  そんな話を親から聞かされながら育ったせいなのか、僕らの遊び場はもっぱら荒川土手だった。もちろん小学生最後となる六年生の夏休みもいつもと変わらず、いつものように幼馴染で集まってありきたりの遊びに精を出す毎日である。  そして今日は鯉釣りの予定だ。今まで一度も釣り上げたことのない鯉を小学生のうちに釣り上げるのが僕、田口暦(たぐち こよみ)の目標だった。  今日こそはと強い意気込みで釣りを始めた僕だったが、初めての鯉と出会う前に自分を宇宙人だと言う女子、ミクに出会い一目で恋に落ちてしまった。だが夏休みが終わるころには自分の星へ帰ってしまうと言う。  かくして小学生最後の夏休みは、彼女が帰る前に何でもいいから忘れられないくらいの思い出を作り、特別なものにするという目的が最優先となったのだった。  はたして初めての鯉と初めての恋の両方を成就させることができるのだろうか。

シンクの卵

名前も知らない兵士
児童書・童話
小学五年生で文房具好きの桜井春は、小学生ながら秘密組織を結成している。  メンバーは四人。秘密のアダ名を使うことを義務とする。六年生の閣下、同級生のアンテナ、下級生のキキ、そして桜井春ことパルコだ。  ある日、パルコは死んだ父親から手紙をもらう。  手紙の中には、銀貨一枚と黒いカードが入れられており、カードには暗号が書かれていた。  その暗号は市境にある廃工場の場所を示していた。  とある夜、忍び込むことを計画した四人は、集合場所で出くわしたファーブルもメンバーに入れて、五人で廃工場に侵入する。  廃工場の一番奥の一室に、誰もいないはずなのにランプが灯る「世界を変えるための不必要の部屋」を発見する五人。  そこには古い机と椅子、それに大きな本とインクが入った卵型の瓶があった。  エポックメイキング。  その本に万年筆で署名して、正式な秘密組織を発足させることを思いつくパルコ。  その本は「シンクの卵」と呼ばれ、書いたことが現実になる本だった。

処理中です...