上 下
78 / 97
7章 王道の章

憤怒の試練

しおりを挟む
 カインを加えて、小さな石のとりでから赤いとんがり屋根の白い塔がびているという外見の、ヘリオスの灯台の中に入り、一気に灯火室の中へと上がると、灯火台の前にいる白いローブに緑のケープを羽織はお)った茶色のボブヘアーの少女が立っていました。

「あなたは、帝国の幹部エアリアル!」キャンベルがハッとしました。
「フフフ・・・帝国はほろんだと思ったでしょう?確かに、復活祭ミレニアムは失敗に終わったわ、でも、帝国の野望はまだついえたわけじゃないのよ!」これに、フレイヤはさけびます。

「目を覚ましなさい!あなたたちは連盟に利用されているのよ!連盟と帝国はグルよ!」これに、エアリアルはハッとします。
「何ですって!?そんなわけないわ!サタン様が連盟と手を組んでいるなんて・・・!」
「でも、まぎれもない事実ですよ!」キャンベルも言います。

「そう言って私をまどわす気なんでしょう?だまされないわ!今回の事だって、我らが神、カオス様の復活のためですもの!カイン、その様子だと、簡単に懐柔かいじゅうされたようね、全く、臆病おくびょうもいい所よ!せっかく魔法族の悲惨ひさんな状況を教えたのに!もういいわ!ここでち果てなさい!サタン様からいただいた『憤怒ふんど』の力を見せてあげましょう!」エアリアルがいのりを込めると、緑のケープは真っ赤なギザギザの形になり、かみはウニのように逆立っていったのです。

「ここはわたしが行きましょう!」キャンベルがおどり出ると、エアリアルは手から真っ赤な炎の竜巻たつまきを放ってきました。キャンベルも魔法の炎を発して怒りの旋風せんぷうを防ごうとしますが、キャンベルの方が押し負けて、ふっとばされてしまいました。

「これが憤怒の力よ!魔法族の怒り、思い知りなさい!」エアリアルが再び炎のうずを発すると、カインが立ちふさがり、右手で氷のかべを作って攻撃を防ぎ、左手でいやしの光をらして、キャンベルの傷を回復かいふくさせます。それを見たエアリアルはおどろきをかくせません。

「ウソでしょ!?あの優男やさおとこ、別々の魔法を同時に・・・!」エアリアルの攻撃がやむのと同時に、氷の壁も蒸発じょうはつしました。
「よくやったわ!それでこそカインよ!今のあんたは最高にカッコいいわ!」続いてテイルが飛び出し、エアリアルに向かって行くと、間髪かんぱつ入れずに見えないりの連打を放ってエアリアルを翻弄ほんろうします。エアリアルが苦しまぎれに放った炎が消えたとき、そこにテイルの姿がありませんでした。

「あの女、どこに・・・?」
「憤怒で目がくもっているのね、すきだらけよ!」エアリアルがり向く前にテイルが回し蹴りを叩き込み、エアリアルを大きく吹っ飛ばします。

「くっ・・・!」続いて、フレイヤがエアリアルに向かって行くと、エアリアルがそっちを見たのと同時に、フレイヤが横に動いて、後ろにいたキャンベルが合わせた両手から白い光のたばを発すると、エアリアルは起き上がろうとしますが、すぐに力尽きてそのまま横たわりました。

「どうですか?いかりで誰かを傷つけて、それで何かが変わりましたか?」キャンベルがこう言うと、目の前にサタンが現れ、エアリアルは安堵あんどの表情を浮かべます。

「ああっ、サタン様・・・!」しかし、サタンは冷たい笑みを浮かべてこう言い放ちました。
「まったく、せっかく憤怒の力を与えたのに、こうも弱いとは使い物にならないな・・・!でもまぁ、賢者の石を作るのに十分な火の力は集まった。石が完成すれば、メシア様もお喜びになられるだろう」エアリアルは耳をうたがって言いました。

「えっ!?石は我らが神、カオス様の復活のためじゃなかったの?」
「何を言っている?カオスを復活させるなどただの名目めいもく!」
「そんな・・・じゃあ・・・帝国は・・・?」

「まだそんな事を言っているのか?帝国などただの茶番ちゃばんよ!連盟の権威けんいを強めるためのな!そして、連盟と共に私とメシアが世界を支配するのだ!」サタンは灯火台からつぼを取り出すと、失意でうなだれたエアリアルを置いてそのまま去って行きました。

 キャンベルが賢者のたいまつをかかげ、祈りをささげると、灯火台が一段と輝き、そこから真紅しんくの炎に包まれた巨大な鳥が現れたのです。
われは炎と太陽の神ヘリオス!南の賢者朱雀すざくよ!よくぞ憤怒に打ち勝った!そなたの持つ賢者のメダルは今、完全に封印が解かれた!試練に打ち勝ち、我を救った礼をしよう、賢者のたいまつをこちらへ」キャンベルが金色のダイヤ型のかざりのある聖木の杖、賢者のたいまつをかざすと、たいまつの飾りから白い光が放たれ、それがたいまつを包み、そして光が消えました。

「賢者のたいまつは今、真の姿『星皇せいおうのたいまつ』となった!星明りの賢者キャンベルよ!そなたに最強の魔法『博愛はくあいの太陽』をさずけた!」こう言って、ヘリオスは姿を消したのです。そして、キャンベルは、その場で最強魔法を使いました。すると、キャンベルの体が金色の光を発し、それがフレイヤとテイルとカインとエアリアルを、そして、ヘリオシティ中を照らしました。まばゆい光がゆっくりとおさまると、テイルたちはゆっくりと立ち上がり、体の奥から力がいていくのを感じ、エアリアルは、憤怒の力が浄化じょうかされたことにより、元の姿になり、その目はとてもんでいました。

「・・・私は・・・悪い夢ばかり見ていたみたい・・・この時ほど心安らいだときはないわ・・・」エアリアルは両手をキャンベルの前に差し出します。
「罪をつぐなうわ!逮捕たいほして!」キャンベルはエアリアルの手を取って優しく言いました。

「顔を上げて下さい、ぎたことはどうにもなりません・・・罪を償いたいと思うなら、これからはバラ十字団の城に行き、そこで、世のため人のための魔法研究を続けてください」それを聞いたエアリアルは涙をにじませながら、ぎゅっとキャンベルの手を取りました。灯台を出ると、町で暴れていた帝国の魔法使いたちは戦いをやめ、涙を流しながら立っていました。 
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

悠々自適な転生冒険者ライフ ~実力がバレると面倒だから周りのみんなにはナイショです~

こばやん2号
ファンタジー
とある大学に通う22歳の大学生である日比野秋雨は、通学途中にある工事現場の事故に巻き込まれてあっけなく死んでしまう。 それを不憫に思った女神が、異世界で生き返る権利と異世界転生定番のチート能力を与えてくれた。 かつて生きていた世界で趣味で読んでいた小説の知識から、自分の実力がバレてしまうと面倒事に巻き込まれると思った彼は、自身の実力を隠したまま自由気ままな冒険者をすることにした。 果たして彼の二度目の人生はうまくいくのか? そして彼は自分の実力を隠したまま平和な異世界生活をおくれるのか!? ※この作品はアルファポリス、小説家になろうの両サイトで同時配信しております。

わたしは幽霊アパートの管理人!

緒方あきら
児童書・童話
 わたし、山岸彩奈は小学六年生!  大好きな従兄のケイスケお兄ちゃんとの6年前の約束を今でも待っている。  それはなんと幽霊がすむアパートで、幽霊の『旅立ち』をお手伝いすること!  幽霊アパートには個性的な幽霊がそろってる。  おぼうさんの無明さんに、お酒大好きなゲンさん。  ちょっと暗いけどやさしいネクさんに、元占い師のお姉さん、水谷さん。  そしてわたしと同い年の少女、アカリちゃん。  おばあちゃんが始めたこのアパートで、わたしはお手伝いをする。  そこに神社の子どものハルト君も加わって、わたしの日々はとっても充実していた!  だけど『旅立ち』させてあげるということは、お別れするということ――。  さみしい気もちをかかえつつも、みんなの『旅立ち』のためにお仕事をつづけていた。  でもネクさんは悪霊――悪い幽霊になってしまっておはらいされてしまう。  そんなとき、わたしはゲンさんが『旅立ち』するための条件だったお酒をお兄ちゃんからわたされる。わたしが幽霊アパートの管理人としての一歩をふみ出すために。  ゲンさんを見おくって、水谷さんも『旅立ち』していって。  のこったアカリちゃんはわたしとともにわたしの通う小学校にいく。  アカリちゃんやハルト君と見た屋上のけしきはとてもきれい。  そのすばらしいけしきの中で、アカリちゃんは今度は中学生になるとちかって『旅立ち』していく。  幽霊がだれもいなくなったアパート。  新しい幽霊さんをおむかえする準備をしていたら、なんとお兄ちゃんがたおれてしまう!  しかも体からは悪い幽霊が出す黒いけむりが……。  お兄ちゃんが幽霊だったなんて!  わたしはおばあちゃんとハルト君と力をあわせて、お兄ちゃんを救うことに成功する。  そうして――。  わたしたちは今日もまた、新しい幽霊さんをお迎えする。 「ようこそ、幽霊アパートへ!」 

おつかれ おばあちゃん

こぐまじゅんこ
児童書・童話
最近、おばあちゃんはおつかれです。 朝起きるのがつらいし、昼もさっちゃんといっしょにお昼寝しないともたないんです。

スター☆ウォッチャー

泉蒼
児童書・童話
主人公のティムは、小学六年生の男の子。 ティムには、おじいちゃんみたいな、スターウォッチャーになる夢があった。スターウォッチャーは、望遠鏡で星を観測し、その星のなかで起きる物語を、本にして伝える者のこと――。 ある日、ティムが住むアルダーニャに、スターウォッチャーを忌み嫌う侵略者がやってくる。 町中がピンチに陥るなか、みんなを守るために、ティムはスターウォッチャーになる決意をする。  ティムがみんなをまもるために、試練をのりこえ夢をかなえる、ハラハラドキドキのファンタジー!

【完結】アルファポリスでの『書籍化』はナニに魂を売ればデキる?

まみ夜
エッセイ・ノンフィクション
※夢多きお子様は、薄汚い大人にならないように、お読みにならないコトを推奨いたします。 ※個人の感想です。効果、効能を保証するモノでは、ございません。 ※転記は一切許可しておりません。また、引用には著作権法により厳密なルールが定められているので、ご注意ください。 自信満々に物語を書いて、早くも1500ポイント達成かと思っていたら、NEWが取れたら激減。 他の物語に負けないと思っていたのに、お気に入りも一桁、更新しても300ポイント以下。 では、「どうしたらいいか」を前向きに考察をするコラムです。 まずは、「1ページ目を読んでもらえるコトを目標」から始めましょう。 自分が書きたいことを好きに書いているダケで読まれなくていい、という方には無意味な駄文です。 書き手向けの内容ですが、読み専門の方には、より良い物語を探すヒントになる「かも」しれません。 表紙イラストは、lllust ACより、楠あかね様の「魔神」を使用させていただいております。

神在(いず)る大陸の物語~月闇の戦記~【第四章】

坂田 零
ファンタジー
攻め上ってくるサングタール王国を迎え打つべく 強者達は内海アスハーナへと向かう 国盗りの思惑の中 金の月の夜が訪れ、真実は残酷の運命へとリーヤティアを誘うことになる ※この作品は活字が好きな人向けの本格的な抒情詩ファンタジーです  チート、無敵転生、ステフリ、ハーレム等の最近流行りの設定は一切ありませんのでご了承ください

【完】888字物語

丹斗大巴
現代文学
どこからでも読み始められる1話完結のショートショート物語。 ※怖いお話もあります。まえがきの注意事項をご覧ください。

あいつは悪魔王子!~悪魔王子召喚!?追いかけ鬼をやっつけろ!~ 

とらんぽりんまる
児童書・童話
【第15回絵本・児童書大賞、奨励賞受賞】ありがとうございました! 主人公の光は、小学校五年生の女の子。 光は魔術や不思議な事が大好きで友達と魔術クラブを作って活動していたが、ある日メンバーの三人がクラブをやめると言い出した。 その日はちょうど、召喚魔法をするのに一番の日だったのに! 一人で裏山に登り、光は召喚魔法を発動! でも、なんにも出て来ない……その時、子ども達の間で噂になってる『追いかけ鬼』に襲われた! それを助けてくれたのは、まさかの悪魔王子!? 人間界へ遊びに来たという悪魔王子は、人間のフリをして光の家から小学校へ!? 追いかけ鬼に命を狙われた光はどうなる!? ※稚拙ながら挿絵あり〼

処理中です...