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6章 正義の章

冬将軍との決着

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 ミューダスから再び船に乗って、ラップランドのノースポールに戻ったすぐるたちは、宿屋で一夜を明かし、翌朝にノースポールを目指して雪原を進んで行きます。
 黒い針葉樹しんようじゅがまばらにある以外、真っ白な雪の原を、すぐるたちは雪を踏みしめる時の独特の音をたてながら東の方へと進んで行きます。三十分程度歩くと、雪があつもった三角屋根のログハウスが目立つスノーラの村が見えてきたので、すぐるたちはそこの宿屋で一休みすることにしました。

「うぅ・・・さすが北の方は寒いや・・・」すぐるは体に着いた雪を払っていいます。
「うぬ・・・生まれて初めて雪をみたぞ・・・きれいじゃが・・・この寒さは・・・たまらぬ・・・!」リリスは体をふるえさせながら、こごえている村人たちにざって、まきストーブにあたります。

「この辺りは年中雪と氷に閉ざされているの、南国出身のリリスにはこたえるでしょうね・・・」
「ノースポールの町は、ここより北東にある北極点の町だよ」四人はしばらく温まってから、再びノースポールを目指して進み始めました。

「えっ!?山をえる道は通行止めになっているって!?」すぐるは東への道を規制きせいしている係員に言います。
「はい、山の方は吹雪いて雪があつく積もってしまい、とても歩いて行ける状況じゃないんですよ・・・」

「そんな!他にノースポールに行ける道はないんですか!?」
「そうですね・・・ここより北の方に、『結晶の回廊かいろう』と呼ばれる氷の洞窟どうくつがあって、そこならノースポールにつながっています」
「ありがとうございます。さあ、そこへ行こう」

 すぐるたちは、灰色の雲が広がる雪原を北進していきます。
「空が怪しくなってきたね・・・早く洞穴ほらあなを見つけなきゃ」しばらく進んで行くと、透明な六角柱の形をした水晶の結晶が所々に生えているがけが見えてきました。
「水晶が生えているという事は、洞窟の入り口はすぐ近くだ・・・あった、ほらあなだ!」

 洞窟の中は辺り一面、氷におおわれており、壁や天井に透明とうめい六角柱ろっかくちゅうの水晶が何本もせり出しています。
「ここって、きれいだけど、すごく寒いね・・・」
「うぬ・・・早く抜けようぞ・・・!」リリスはおぼつかない足取りで震えながら進みます。
すべらないように行きましょう」
「もうそろそろ出口が見えてくる頃なんだけど・・・あっ!出口だ!」すぐるたちは光の射す天然のアーチをくぐって行きました。

 氷の洞窟を抜けると、そこは屋根に雪が積もったレンガを積み上げて造られた家々が目立ち、その間を、生きている雪だるま、キャンベルそっくりの氷の精ジャックフロスト、エルフ族、人間と言った者たちがコートを着込み、行きかっています。
「ここがノースポールか・・・サンタクロースがいる町だって聞いていたなぁ・・・」
「種の違う者たちが、当たり前のように共存しておるの・・・」すぐるとリリスが辺りを見回して言うと、テイルが言いました。

「それで、メガロのやつはどこにいるの・・・!?」
「手紙には・・・『ポーラー大聖堂で待つ』って書いてあったよ・・・あそこだ!」すぐるが指さした方を見ると、色とりどりのまるいステンドグラスがはめ込まれ、三本の尖塔せんとうがそそり立つ立派な聖堂があり、4人はすぐさまそちらへ向かいます。

 聖堂内はチリ一つ落ちておらず、広くて高い天井には、美麗びれいな神話の絵が描かれています。また、左右の壁には、聖者たちが描かれたステンドグラス並んでおり、荘厳そうごん雰囲気ふんいきを出しています。静かな聖堂内の床に、白いコートを着込んだ茶髪ちゃぱつのショートヘアーの青年と、茶髪ロングヘアーの女性という一組の人間の男女が倒れているのを見つけました。4人はすぐさまり、仰向あおむけにさせると、二人のコートの左胸に、ホワイト団のロゴを見つけました。
「これは・・・人間至上主義をかかげてきたホワイト団の者たちだな・・・」カインが言うと、彼は2人を救護きゅうごすることにしました。

 すぐる、リリス、テイルの3人が聖堂の奥の方へ行くと、白いドレスをまとった聖女像のある祭壇さいだんがあり、その前に水晶の結晶を甲羅こうらに使い、猛牛もうぎゅうの角と魚の尾を持つ、直立した青い亀のモンスターが立っています。
「いた!シルト首領のメガロだ!」メガロは振り向き、両の緑のひとみをすぐるに向けます。

「ほう・・・その様子だと、無事にメダルを探し出したようだな・・・!」
「メガロ、ぼくはあなたが根っからの悪人だとは思わない・・・!教えて、トランバニアから、子供たちをさらってきたと言うのは本当なの・・・?」すぐるは不安そうな声で言います。

「・・・確かに、あの国から子供たちをさらったのも、貴族から金品を強奪ごうだつしたものこのおれだ・・・!」メガロが静かに言うと、それを聞いたすぐるはショックを隠しきれません。
「そんな・・・!」これにテイルとリリスはいきどおります。

「やっぱりね!力ずくでも子供たちを救い出してやるわ!」テイルはファイティングポーズをとります。
「今度こそ、貴様との決着をつけてやろうぞ・・・!」
「・・・いいだろう、メダルを探させたのは、お前たちの力と覚悟かくごを試すためだ・・・!わがしかばねを超え、お前たちの想い、つらぬいて見せよ!」メガロは口を大きく開け、れ狂う吹雪を吐き出すと、リリスも口からはげしく燃え盛る炎を放ち、メガロのブレス攻撃を蒸発じょうはつさせます。

「ほう、うでを上げたな・・・!」続いてテイルが一気にメガロに接近せっきんし、ヤツの顔面にするどいハイキックを叩きつけますが、メガロは大きく頑丈がんじょうなあごによるかみつきでテイルのりを受け止め、テイルは痛みのあまり顔をゆがめ、メガロはそのままテイルをハンマーのごとくり回し、投げ飛ばしてしまいました。

「くっ・・・なんて化け物じゃ・・・!今度はわらわが・・・!」リリスが接近し、炎の魔力で強化した右ストレートをメガロの頭にぶつけようとしますが、メガロはまるで微動びどうだにせず、リリスの固く重い拳を頭ではじき返してしまい、リリスは左手で右手を押さえます。
「ぐっ・・・!」

「おれの頭は永久凍土えいきゅうとうどよりもかたいんだよ!」メガロの猛烈もうれつな頭突きは、リリスの顔面をとらえ、そのまま彼女を倒してしてしまいます。
「そんな・・・みんなやられてしまうなんて・・・!」すぐるは力をためて、巨大な魔法弾を放ちますが、メガロは六角の氷のたてを作りだし、すぐるの魔法弾をかがみのごとく跳ね返してしまいます。

「わあっ!」すぐるは自分が放った攻撃をかわしますが、メガロはそのまま氷の盾をこちらめがけて飛ばして来たので、それもすんでの所でかわします。
「どうした?お前たちの力はそんなものか・・・?」すぐるはここまでかとぎゅっと目をつぶりますが、そこでリリスの声がします。

「どうしたすぐる、それでもお主はわらわのパートナーか!?」なんと倒れていたリリスが力をしぼり、ゆっくりと立ち上がります。
「リリス・・・やつの強さは常軌じょうきいっしている・・・!あんな奴・・・」
「バカ者!ここであきらめるのか!?」テイルの声も聞こえます。
「そうよ!子供たちを救い出さなきゃ・・・!」

「ほう、まだやる気か・・・!いい根性だ・・・!」リリスは再びメガロに向かって行き、両の目から光を発します。
「・・・悪魔のがんか・・・そんな物かんぞ・・・?」
「続いて、これじゃあ!」リリスは口から灼熱しゃくねつ業火ごうかを吐き出し、メガロは紅蓮ぐれんの炎に包まれますが、気合を発して、リリスの火をき消してしまいます。ヤツにはげ目すらついていません。

「そんな炎など、おれのオリハルコン装甲そうこうの前では全くの無力だ!」
「オリハルコンの甲羅こうら皮膚ひふ・・・!まてよ・・・!?それならば・・・!」すぐるはハッとします。

「これならどうだ!?エルニスのサンダーウェーブ!」すぐるは勇者のメダルによるエルニスの電撃を杖から放ちます。
「そんな物、このガーディアンブリザードで・・・!」メガロは再び氷の盾を出現させますが、まばゆい稲妻いなずまは氷の盾をつらぬき、メガロははげしい電気のシャワーを浴びることになりました。
「うぉあああああっ!」メガロの体から白い煙が立ち上り、全身をガクガクさせています。

「やっぱり!オリハルコンはいくら頑強がんきょうでも、所詮しょせん金属きんぞく!電気を通すことに変わりはないんだ!」
「さすがすぐるじゃ!われらもいくぞっ!」リリスはりをメガロの腹に放ち、やつを少しよろめかせます。続いて、テイルが格闘用かくとうよう手甲てっこうマスターグローブを右手にはめ、ヤツの胸や腹にストレートを浴びせます。

「いくらアンタの装甲があつ頑丈がんじょうでも、その衝撃しょうげきは体に伝わるわ!」
「ぐぐぐ・・・!」今度はリリスが向かってくると、メガロは苦し紛れに吹雪を吐き出しますが、リリスの炎でかき消され、そのままメガロのふところにもぐりこみ、ヤツの下あごに、炎の腕によるアッパーカットをうちこみ、メガロにしりもちをつかせます。そして、すぐるが全力のサンダーウェーブを放ち、巨大な雷の剣は、メガロの五体をつらぬいたのです。
「・・・見事だ・・・!よくやった・・・がくっ!」メガロはその場に力なく仰向あおむけになりました。
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