『完結』セプトクルール 超文明Sの野望

マイマイン

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6章 正義の章

シルトの財宝

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 すぐるたちはゴーシャの港から帆船はんせんに乗り込み、北の国ラップランドを経由し、そこからシルトの財宝があるミューダス国を目指します。波はおだやかで、船は順調に航海をしており、すぐるたちは、北の国々に行くという事で、コートを用意したりしています。程なくして船はラップランドの玄関口ともいうべき西の港町『アクアポート』にいかりを下ろすと、すぐるたちは食料や薬の補給のために、一旦いったん船を下りて行きました。

 船がミューダスに出航するのに二時間あるので、すぐるたちは四人それぞれ自由行動になり、テイルとカイン、すぐるとリリスの2グループに分かれます。
 すぐるとリリスが港の倉庫から店の方に行こうとすると、そこに、クリスタルの甲羅こうらを背負い、直立した青い亀のモンスターが倉庫の中に入って行くのを見たので、すぐるとリリスはハッとしました。

「あれって、シルトの首領メガロじゃないの?」
「間違いない・・・!倉庫の中に入ってゆくぞ・・・!」すぐるとリリスは気づかれないように後を追い、倉庫の中の様子を見ることにしました。

 倉庫の中は、一つの大きな部屋になっており、そこにメガロをはじめ、白い鳥のつばさと足を持つ赤毛のショートヘアーの少女、角を生やした悪魔族、緑の服を着た小悪魔、よろいに身を固めた角竜トリケラトプスの頭を持つ竜族の戦士、覆面ふくめんをつけた人間の戦士の他、様々な種族の者たちが集まっています。

「あれはシルト海賊団の者たちよの・・・!」
「あの人数じゃ勝ち目はないか・・・!」リリスとすぐるは壁のかげから様子を見ることにしました。

「さて、シルト諸君、今日はナイトロードの救出作戦について話し合うのだが・・・スプラウトよ、そっちの状況はどうだ!?」メガロが緑の服を着た小悪魔に言います。
「やはり、帝国につかまっている人々は、ナイトロードの南にあるヘルズマウンテンのろうにとらわれているッス・・・!」
「そうか、で、ランスロットよ、囚人しゅうじんたちを逃がすトンネルの方はどうだ?」メガロが今度は角竜の戦士に向かって言いました。
「はい、なんとか開通しました!」

「よし、ならば、シルフィーが信号弾を使い、見張りの目を山の南東にさそい出し、そのすきにスプラウトがトンネルから囚人たちを西の海岸へ逃がす。そして、おれたちは放送塔を占拠せんきょし、ナイトロードの者たちに立ち上がるよう呼びかけるのだ!」その場にいた一同はおーっとけ声を上げると、すぐるたちは、こっそりとその場を後にしました。

「メガロたちは、ナイトロードに革命を起こす気なのかな・・・?」
「おそらく・・・そうであろう」
「それにしても、ラグーナ諸島で会ったファフナーって、シルトのスパイだったんだ・・・!」

 アクアポートで準備を済ませたすぐるたちは、再び船に乗り、ラップランドの西に浮かぶ島国、ミューダスへと航海に出かけました。
 ものの20分程度で、船はミューダス国の港に停泊ていはくしました。
「ここがミューダスか、水路がいたるところをかこんでいるね」
「この国では、移動は舟で行うのだな」白い壁に青い屋根の家々が目立つミューダスの町中を、多くの船員、屈強そうな戦士、海賊と言った者たちが集まっています。

「本当にここにシルトの財宝があるのか?」
「あのシルトの財宝か・・・どんなものなんだろうな・・・?」
「きっと、たくさんの金銀財宝だぜ!」
「ウワサだけど・・・シルトの財宝は正義を司るメダルらしいぞ」
「シルトの財宝はオレが頂くぜ!」待ちゆく人々から、そのような話が聞けました。

「みんな、シルトの財宝のうわさを聞きつけて来たんだ・・・シルトの財宝はメダルか・・・!?」
「早く行こうぞ!皆に先をされる前に!」
「このシルトが残した手紙には、『宝は町の地下に隠した』と出ているわ」
「それって、地下水路の事かな?ほら、あそこに水路の入り口があるよ」カインが指さしたところには、地下に入るための石のアーチがあり、四人はそこへ入って行くと、黒マントを羽織った黒髪の男が様子を見ていました。

 レンガ状に組み上げた黒い石の壁のトンネルの中を、すぐるの杖から発せられる魔法の明かりをたよりに四人は進んで行き、そのそばでは、透明とうめいな水がいきおいよく流れています。

「ここって迷路みたいだね・・・」
「みんな、ちゃんとついてきているかしら?」
「ぼくは大丈夫だよテイル」
「わらわもすぐるのそばにおるぞ」地下水路の中は入り組んでおり、まるで迷路のような場所でしたが、すぐるは魔法使いとしてのかんあわてることなく進んで行きます。

「・・・感じる・・・きれいでんだオーラだ・・・!」すぐるはそのオーラにひかれるように進んで行き、青い宝箱がかれている広間に出ました。
「この水路に不似合いな箱だね・・・きっとこれがシルトの財宝なのかな・・・?」すぐるがオーラを感じるその青い箱を開けると、その中に入っていたのは、白銀の十字架を閉じ込めた、手のひらサイズの深い青色の六角の結晶体でした。

「こ・・・これがシルトの財宝・・・!?」一緒に宝箱の中に収められていた手紙を広げて読んでみます。
『見事シルトの財宝、正義を司(つかさど)る『聖者せいじゃのメダル』を見つけた!では、このメダルを持って、ラップランドのノースポールにあるポーラー大聖堂に来い!そこで真実が明らかになる!シルト首領メガロ』

「やっぱりメダルだったんだ・・・!」すぐるたちがその場を後にしようとすると、みんなの目の前に黒マントの男が立ちふさがりました。
「ご苦労だったなすぐる!そのメダルとお前たちが持っているメダルを全て渡してもらおうか!」
「しんや!なぜ君はメダルを狙う!?」
「メダルと神器は、おれの目的のために必要だ!渡してもらうぞ!」しんやは曲がった剣を抜き、いきなりすぐるに襲い掛かってくると、すぐるも杖で受け止めます。

「メダルも神器も渡せない!世界を救うために必要なんだ!」
「世界を救うだと!?お前の様な軟弱なんじゃく者に何ができる!敵に情けをかけたり、力で解決することを知らない奴に!」すぐるは壁際かべぎわに追いつめられてしまいます。
「やはり弱い!この世界を変えるのは『力』だ!」リリスがしんやの背中に炎の息を浴びせかけると、しんやはそこを飛びのきます。

「くっ・・・!そうか・・・!そういう事か・・・!お前が今まで生き残ってこれたのは、そうやって仲間に守られてきたからか・・・!はっはっはっ!」あざ笑うしんやにすぐるはくってかかります。
「なにが悪いんだよ!?」
「仲間と組むのは、自分に力が足りないからそうするんだ!おれはちがう!剣に生き、孤高ここうつらぬく!それこそ真の強者だ!」
「君は一体、何が目的なんだ!?メダルや神器を集めて、何を望む!?」

「お前は世界を救うためにメダルや神器を集めているそうだな?そんな事をして何になる?こんなくだらない世界など救って何になると言うんだ!?」
「この世界がくだらないだって!?そんな事はない!」それを聞いたしんやはすぐるを見下すような目で言います。

「・・・お前なんかに何が分かる!?そうやって仲間にちやほやされてきたお前なんかに!やはりお前は、おれとは宿命が違う!おれはこのくだらない世界を変える!この力で、この剣でな!」
「・・・力で世界を変えられるはずない!」

「それは、そいつに絶対的な『力』がなかったからだ!『メダルと神器を集めた者は、この世界を造り変えるほどの『力』を得られる』おれは創造そうぞうを司る神からそう告げられた!それでおれはこのくだらない世界を変える!お前の様な軟弱者にわかるわけない!」こう言ってしんやは去りました。

「あいつ・・・いったい何だったんだろう・・・?創造を司る神って・・・もしかして・・・カオスの事か・・・!?」様子を見ていたテイルは言いました。
「あいつは何でも暴力ぼうりょくで解決しようとするタイプね・・・そうすることで自分の弱さをかくしているんでしょうね、ああいうやからはいるわ!」すぐるたちは『聖者のメダル』を持って、地上に出ました。
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