『完結』セプトクルール 超文明Sの野望

マイマイン

文字の大きさ
上 下
50 / 97
5章 慈愛の章

聖地奪還

しおりを挟む
 すぐるとリリスは、リヒテンシュタインへの近道である秘密ひみつの地下道を進んで行きます。
地下通路は、灰色の石をレンガ状に組み上げた壁にかこまれた暗い所で、すぐるが杖から魔法の炎の明かりを頼りに進んで行きます。

「地下にこんな通路があるなんて、おどろきだね」
「うぬ、奥に階段があるぞ」二人が階段を上がって行くと、

 そこは白い壁と、青いカーペットがかれている、大理石の床の聖堂せいどう内でした。
「どうやら、ここが正教会の聖地『リヒテン島』の聖堂の中みたいだ」すぐるが辺りを見渡すと、
そこに白装束しろしょうぞくと白い覆面ふくめんをつけた者たちが現れました。

「ホワイト団だ!なんでこんなところに!?」
「お前たちは組織のブラックリストに載っている、すぐるとリリスか!?また我々の邪魔をしに来たな!?」
すぐるとリリスは逃げ出すと、ホワイト団員たちはすぐさま後を追います。
すぐるとリリスはひたすら通路を進んで行き、ホワイト団に追いつかれまいとしますが、行き止まりにぶち当たってしまいました。
「しまった!どうすれば・・・!?」すると、右の壁が開き、そこから手が出てきます。

「こっちだ!」すぐるとリリスはすぐさまそこのかくし戸の中に入って行きました。
 隠し戸を閉めると、そこには、幻想界平和へいわ連盟れんめいの一片、
正教会に所属する法衣ほういをまとったシスターたち、
十字が描かれたよろいに身を固めたせい騎士きしたちと言った者たちが集まっていたのです。

「何とか助かりました。ありがとうございます。この部屋は・・・?」
「ここは、緊急きんきゅうのためにつくられた隠し部屋です」シスターが説明します。
「それにしても、なぜ、ホワイト団の者たちがおったのだ!?」リリスがたずねると、聖騎士が言います。

「うむ、この聖地はホワイト団に乗っ取られてしまったのだ!奴らは人間至上しじょう主義しゅぎをうたい、
我々正教会に代わって世界を浄化じょうかする者と言った。
それで、手始めにこの聖地を我が物にしようとしたのだ。
こうなったのも、正教会の幹部かんぶであるグリムがホワイト団に寝返ったせいだ!
ヤツは教皇きょうこうを人質に、この地をホワイト団の物にしようとしているのだ・・・!それで、うかつに手が出せない状態(じょうたい)なのだ・・・!」

「そうだったのか・・・!ならば、手をこまねいてはいられぬな!」
「でもさ、リリス、人質を取られているんだよ。うかつに手を出したら・・・!」すぐるがこう言うと、リリスはこう言い放ちます。

「このまま奴らの勝手を許せと言うのか!?ならば、わらわがグリムの相手をし、そのすきにすぐるが教皇を救えばよいのだ!」それを聞いた聖騎士はおどろきました。
「何と!危険な方法だが、今となっては、それしかないだろうな・・・」

 すぐるとリリスはホワイト団員たちに見つからないようかべかげに隠れながら慎重しんちょうに進んで行き、
教皇がとらえられている礼拝堂れいはいどうの部屋に着きました。
大きな十字架がかかげられている祭壇さいだんのそばに黒マントを羽織ったグリムと、
高貴な青い服に身を包み、白いひげをたくわえた教皇がしばられていました。
リリスがすぐるに隠れて待機たいきするように言って、彼女一人で礼拝堂の中におどり出て行きます。

「お前がグリムだな!?さっさと教皇を放すがよい!」その声にグリムはり向きました。
「何だ!?お前は!?」
「わらわは悪魔族のリリスと言う者!なぜお主はホワイト団に加担するのじゃ!?」それを聞いたグリムはあざ笑うかのように言いました。

「なんだ、そんな事か!?答えは簡単だ。正教会が異端者いたんしゃと歩むようになったのが、つまらなく思っただけさ!
おまけに正教会は分教会と手を組み、幻想界平和連盟まで組織した。そうなっては、無闇むやみな異端狩りが出来ない!だからホワイト団に付いたまでだ!
ホワイト団なら、人間以外の異端者を好きなだけ狩ることが許される!」それを聞いたリリスは怒りにふるえます。

「おのれの欲のために、仲間を裏切り、悪に加担するとは・・・なんたる不埒ふらちな・・・!」
「悪魔のくせに、正義を語るなど笑止!銀の弾丸で!」グリムがじゅうを抜くと、すぐるは魔法によるバリアで、銀の弾丸を防ぎました。
「何っ!魔法だと!?ならばお前も!」グリムは再び発砲しようとしますが、すぐるは杖から魔法の弾丸を放ち、グリムの銃を弾き落とします。

「くそッ!それなら、切り刻んでくれる!」グリムは2本のナイフを抜き、すぐるにおそかろうとしますが、その前にリリスが立ちふさがりました。
「お前の相手は妾で十分じゃ!」リリスは炎の魔力を右うでに集中させてヤツのナイフを防ぎ、
ミドルキックをグリムの横っ腹に叩きつけると、グリムはその衝撃しょうげきでうずくまります。
そのすきにリリスは炎の腕による正拳せいけんを、グリムの顔面に叩きつけて下しました。

 すぐるは教皇の元に行き、短刀でなわを切り、回復の魔法で傷を治します。教皇は、ゆっくりと立ち上がり、すぐるとリリスを見てこう言いました。
「おお・・・まさか、魔法使いと悪魔族に救われるとは、やはり、共存の道は間違っていなかった・・・!真の自由と平和のためには、共存共栄の道が不可欠だ・・・!」
グリムを下したことにより、正教会の者たちはもり返していき、聖地リヒテンシュタインを取り戻し、教皇はリュッケンシルトに向かうことが出来ました。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

『完結』セプトクルール 勇者エルニスのワンダーランド

マイマイン
児童書・童話
 これは、すぐるがやってくる前の『幻想界』の物語です。ある日突然、平和な国『スピネル王国』にやってきた謎の少年エルニスが、平和を脅かす『魔王軍』に立ち向かう王道ファンタジーです。『セプトクルール』シリーズの始まりの物語をお楽しみください。

コボンとニャンコ

魔界の風リーテ
児童書・童話
吸血コウモリのコボンは、リンゴの森で暮らしていた。 その日常は、木枯らしの秋に倒壊し、冬が厳粛に咲き誇る。 放浪の最中、箱入りニャンコと出会ったのだ。 「お前は、バン。オレが…気まぐれに決めた」 三日月の霞が晴れるとき、黒き羽衣に火が灯る。 そばにはいつも、夜空と暦十二神。 『コボンの愛称以外のなにかを探して……』 眠りの先には、イルカのエクアルが待っていた。 残酷で美しい自然を描いた、物悲しくも心温まる物語。 ※縦書き推奨  アルファポリス、ノベルデイズにて掲載 【文章が長く、読みにくいので、修正します】(2/23) 【話を分割。文字数、表現などを整えました】(2/24) 【規定数を超えたので、長編に変更。20話前後で完結予定】(2/25) 【描写を追加、変更。整えました】(2/26) 筆者の体調を破壊()3/

【完】ノラ・ジョイ シリーズ

丹斗大巴
児童書・童話
✴* ✴* 母の教えを励みに健気に頑張る女の子の成長と恋の物語 ✴* ✴* ▶【シリーズ1】ノラ・ジョイのむげんのいずみ ~みなしごノラの母の教えと盗賊のおかしらイサイアスの知られざる正体~ 母を亡くしてみなしごになったノラ。職探しの果てに、なんと盗賊団に入ることに! 非道な盗賊のお頭イサイアスの元、母の教えを励みに働くノラ。あるとき、イサイアスの正体が発覚! 「え~っ、イサイアスって、王子だったの!?」いつからか互いに惹かれあっていた二人の運命は……? 母の教えを信じ続けた少女が最後に幸せをつかむシンデレラ&サクセスストーリー ▶【シリーズ2】ノラ・ジョイの白獣の末裔 お互いの正体が明らかになり、再会したノラとイサイアス。ノラは令嬢として相応しい教育を受けるために学校へ通うことに。その道中でトラブルに巻き込まれて失踪してしまう。慌てて後を追うイサイアスの前に現れたのは、なんと、ノラにうりふたつの辺境の民の少女。はてさて、この少女はノラなのかそれとも別人なのか……!? ✴* ✴* ✴* ✴* ✴* ✴* ✴* ✴* ✴* ✴*

セプトクルール 三賢者と虹色の夜明け

マイマイン
児童書・童話
 現実界に住む魔法使いのすぐるが、幻想界へと旅立ち、仲間たちと共に悪魔王カオスを倒して数年後、すぐるは幻想界で出会い、『誓い』を結んだ魔族の少女リリスと共に、現実界で平和な生活をおくっていました。  しかし、祖父から魔力を受け継いでいるすぐるは、現実界での生活にはなじめず、他の生徒たちからは好奇の目で見られたり、化け物扱いされていましたが、祖父から託された使命の事、リリスが亡き両親から託された使命の事などが忘れられず、再び幻想界へ旅立とうと決意をしたのでした。  今回は主人公が三人で、それぞれの物語を進んでいくことになります。

セプトクルール『すぐるとリリスの凸凹大進撃!』

マイマイン
児童書・童話
 『引っ込み思案な魔法使い』の少年すぐると、『悪魔らしくない悪魔』の少女リリスの凸凹カップルが贈る、ドタバタファンタジー短編集です。 このシリーズには、終わりという終わりは存在せず、章ごとの順番も存在しません。 随時、新しい話を載せていきますので、楽しみにしていてください。

児童絵本館のオオカミ

火隆丸
児童書・童話
閉鎖した児童絵本館に放置されたオオカミの着ぐるみが語る、数々の思い出。ボロボロの着ぐるみの中には、たくさんの人の想いが詰まっています。着ぐるみと人との間に生まれた、切なくも美しい物語です。

荒川ハツコイ物語~宇宙から来た少女と過ごした小学生最後の夏休み~

釈 余白(しやく)
児童書・童話
 今より少し前の時代には、子供らが荒川土手に集まって遊ぶのは当たり前だったらしい。野球をしたり凧揚げをしたり釣りをしたり、時には決闘したり下級生の自転車練習に付き合ったりと様々だ。  そんな話を親から聞かされながら育ったせいなのか、僕らの遊び場はもっぱら荒川土手だった。もちろん小学生最後となる六年生の夏休みもいつもと変わらず、いつものように幼馴染で集まってありきたりの遊びに精を出す毎日である。  そして今日は鯉釣りの予定だ。今まで一度も釣り上げたことのない鯉を小学生のうちに釣り上げるのが僕、田口暦(たぐち こよみ)の目標だった。  今日こそはと強い意気込みで釣りを始めた僕だったが、初めての鯉と出会う前に自分を宇宙人だと言う女子、ミクに出会い一目で恋に落ちてしまった。だが夏休みが終わるころには自分の星へ帰ってしまうと言う。  かくして小学生最後の夏休みは、彼女が帰る前に何でもいいから忘れられないくらいの思い出を作り、特別なものにするという目的が最優先となったのだった。  はたして初めての鯉と初めての恋の両方を成就させることができるのだろうか。

シンクの卵

名前も知らない兵士
児童書・童話
小学五年生で文房具好きの桜井春は、小学生ながら秘密組織を結成している。  メンバーは四人。秘密のアダ名を使うことを義務とする。六年生の閣下、同級生のアンテナ、下級生のキキ、そして桜井春ことパルコだ。  ある日、パルコは死んだ父親から手紙をもらう。  手紙の中には、銀貨一枚と黒いカードが入れられており、カードには暗号が書かれていた。  その暗号は市境にある廃工場の場所を示していた。  とある夜、忍び込むことを計画した四人は、集合場所で出くわしたファーブルもメンバーに入れて、五人で廃工場に侵入する。  廃工場の一番奥の一室に、誰もいないはずなのにランプが灯る「世界を変えるための不必要の部屋」を発見する五人。  そこには古い机と椅子、それに大きな本とインクが入った卵型の瓶があった。  エポックメイキング。  その本に万年筆で署名して、正式な秘密組織を発足させることを思いつくパルコ。  その本は「シンクの卵」と呼ばれ、書いたことが現実になる本だった。

処理中です...