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4章 大志の章

孤島の世界樹

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 エルニスとキャンベルが四季島へ向かい始めたころ、すぐるとリリスは薬の材料の一つである、『世界樹の実のエキス』を手にするべく、
現在、唯一ゆいいつ世界樹が存在する『レムリアン島』に向かおうとしていたのですが。
「世界樹の実を見つけるのはいいけど・・・」
「問題は、そのレムリアン島の、正確せいかく位置いちが分かっておらぬ、何でも忘れ去られた島だそうじゃ」

「そんな所、どうやって行ったらいいのかな?」二人が途方とほうれていると、
リリスは船着き場を見てハッとしました。なんと、十字が描かれたたてをあしらったはたかかげている帆船はんせん一艘いっそう停泊ていはくしていたのですから。

「ややっ!?あれは、シルトの船ではないか!」リリスが言うシルトとは、最近、世界中をさわがせている海賊かいぞく団で、
恵まれない者たちを助けたり、法でさばけない悪をこらしめている海の義賊ぎぞく集団です。
しかし、そのためならば平気でほうを犯したりするので、世界中から目をつけられています。
以前、すぐるたちの前に立ちはだかり、帝国の者を逃がされたことがあったのです。

「・・・いや・・・待てよ・・・もしかしたら!?」すぐるは何を思ったのか、シルトの船の近くにいる、クリスタルの甲羅こうらを背負い、直立した青い亀のモンスターに近づきました。
「すいません!」すぐるが亀のモンスターに話しかけると、亀のモンスターはすぐるに気づき、ふりむきました。

「ん・・・!?お前は・・・!」
「メガロめ!ここで会ったが百年目!今度こそ成敗せいばいしてくれる!」
「待ってよリリス、ここは押さえて!」すぐるがリリスを止めます。
「お前はあの時の魔法使いか・・・何か用か?」
「じ・・・実は・・・」すぐるはラグーナ諸島で流行っている病気についてメガロに話しました。

「ほう、病気を治すための薬を作るため、材料となる世界樹の実があるレムリアン島への行き方を知っているなら、船に乗せて欲しいと・・・」
「そうなんです・・・!」すぐるは切実に言います。
「・・・どうやら、うそではないようだな。おれたちがこの島に立ち寄ったのは、食料など物資ぶっし補給ほきゅうのためだったのだが、
その病気の事ならおれも知っている。これよりシルトはレムリアン島に向かう予定だ、乗せてやらんでもない」

「えっ?いいんですか!?」
「ああ、弱き者たちの盾となる海賊団、それがシルトだ。だが、邪魔じゃまはするなよ」
「・・・わかりました」すぐるがこう言うと、リリスは頭をかしげていました。
「このメガロと言う者、良き者なのか、悪しき者なのか、よくわからぬな・・・」船に食料や薬と言った物資を積み込み終わると、
すぐるとリリスを乗せたシルトの船は、いかりを上げてレムリアン島へと出航しゅっこうしました。

 シルトの船はその辺の船よりも速く海の上を進んで行き、ある程度ていど行ったところで海面からはなれて行き、空へとき上がって行ったのです。
「わあ、空へと飛びあがった!空からなら、迷わず島まで行けますね」すぐるが言うと、メガロはこう言います。
「ああ、この調子なら、半日足らずで着くぞ、そして、あいつをむかえに行かないとな・・・」
「あいつって誰です?」すぐるがたずねます。

「ああ、あの島にわけあって置いてきた仲間がいる」そして、ものの四時間くらいでレムリアン島が青い海の真ん中に浮いているのが見え、
シルトの船は、海岸近くに着水し、錨を降ろしました。

 レムリアン島は、ヤシの木が何本も立ち並ぶ、熱帯ねったいの島です。
「ラグーナ諸島の北島とそう変わらないね、で、どこに世界樹があるのかな?」
「ここには流れ着いた者たちによって作られた村がある、まずはそこに行くぞ」メガロがすぐるとリリスを村の方へ案内します。

 しげみのおくにある漂流者ひょうりゅうしゃたちの村は、粗末そまつな木製の小屋ばかりの村で、
その周りを、水兵姿の男やお下げにしたエルフ族の女性、しましまのシャツにバンダナを頭に巻いた元海賊の男、
ローブをまとい、とんがり帽子の魔法使いの女性、漁師の男など、さまざまな流れ着いた人々がいました。
そして、白いはだに銀髪のとがった耳と緑色の眼をした者たちもいました。

「わあ、なんだか、見慣みなれない人たちもいるなぁ・・・」すぐるが言いました。
「ああ、あの白い肌の者たちは、いわゆる宇宙人うちゅうじんと言う者だな、何でもシルギアと言う星からはるばるこの地球まで来たらしい」メガロが説明します。
「宇宙人って、本当にいたんだ・・・!」すぐるたちに気づいたシルギア星人たちが説明します。

「我々の故郷、シルギア星は優れた科学文明の星デスガ、そのさかえすぎた文明ガ、自然破壊はかいまねキ、
星全体を巻き込む大戦争を引き起こしたのデス・・・それで我々は故郷こきょうの星をはなレ、あてもない漂流ひょうりゅうを続ケ、この島に流れ着きマシタ・・・」

「あの星は上辺うわべこそハ、とてもゆたかな国ダケド・・・なんでも効率こうりつゆうせんサレル超競争社会・・・もうあんな星には戻りたくナイワ・・・!」
ロングヘアーのシルギア星人の女性が言います。

「なまじ発達はったつしすぎた科学が、国をほろぼしかけたんだな・・・」
「行き過ぎた物質文明は、かえって住みにくい世界をつくってしまうのだな・・・」すぐるとリリスがうなずきながら言いました。
「聞けば、かつてこの地にあったレムリアン国も、科学文明の国だった・・・ほろんだ理由もそこにあるのかもしれんな・・・」メガロも言うと、すぐるとリリスを世界樹の前に案内しました。

 島の北にある森の奥に来ると、そこには天をつらぬかんとばかりにそびえたつ大樹が、空いっぱいに枝をめぐらせ、青々と緑の葉をしげらせていました。
「これが世界樹なんだ・・・」
「大きくて立派な木だの・・・」世界樹の葉は、木漏れ日を受けてかがやいています。

「この世界樹は、本当に平和な地でしか育たないと言われている。伝説では、この木はこの世界を支えていて、完全にれたときは、この世界はほろぶとも・・・」
メガロがそう言うと、すぐるは考えました。
「もしかして、この木が枯れたときは、幻想界ファンタジア現実界リアリティの両方の世界が滅んでしまうのかな・・・それで、薬の材料となる実を取らないと・・・!」

「聞けば、あの薬を作る時は、地に落ちた実の方が効果こうかは高いそうだ。それだけじゅくした物でないと、十分な効果は得られないだろう・・・」メガロが説明します。
「そんな・・・地に落ちた実なんてないよ・・・」
「それに、心なしか木に元気がないように見える・・・この場所に平和をおびやかすものがあるのか・・・?」
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