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3章 自由の章

帝国の狙い

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 冠を返しに、エルフの里の城に戻った時、すぐるたちは大いに驚きました。
なんと、王室にはティアがおらず、わりに
ティアに生き写しの石像せきぞうかれていたのです。

「なんでこんな石像が・・・!?ティア様は?」
テイルは唖然あぜんとしていましたが、すぐるが言ったことにさらに驚きます。
「・・・これは石像じゃない、ティア様だよ!呪いで石像にされてしまったんだ!」
「ウソでしょ!?なんで!?」

「どうやら、エルフたちが万年樹に向かった時にやられたみたいだ・・・!」
ハヌマーンが言うと、カインも言います。
「・・・これは・・・悪魔の儀式ぎしきで、たましいをとられて
石像になってしまったみたいだ・・・!でも、誰が・・・?」

 アールヴヘイムのはずれの森で、
エアリアルが光り輝く物が入った小瓶こびんを持って言いました。
「何とか、『復活祭ミレニアム』に必要な材料の一つ、ティアの魂が手に入ったわ」
そばにいた黒いローブの女性もいいます。

「見事な作戦でございましたね、エアリアル様!
冠を手にしたものに絶大な力が手に入るという、ウソのうわさを流し、
冠にむらがるおろかな実行部隊の者たちを
盛大せいだいさわがせてエルフたちの気を引き、
城が手薄てうすになったすきにティアの魂を奪うなんて!」

「本当よね、帝国の他の部隊をも手駒てごまにするなんて、さすがエアリアル様」
「ええ、これで、二つの材料のうち、『世界最高の魔力まりょく英知えいち』は手に入ったわ。
次は、『世界最高のパワーと生命力』を持つ、ナイトロードの王、アガレスの魂を奪うとしましょう」

 スピネルに戻ったすぐるとボブは、エルニスとキャンベルとリリスとシェリーに、
アールヴヘイムで起きたことを報告ほうこくしました。

「へえ、そんな事が起こったんだ・・・!」エルニスが言いました。
「あのティア様が、何者かに魂を抜かれて、石にされるなんて・・・!」
キャンベルも驚きをかくせません。

 翌朝、すぐるはスピネルジャーナルの一面の記事を見ていました。
『昨日、アールヴヘイムの女王代理のティアが、何者かによって石にされた模様もよう
これは、他者の力と命を吸い取る悪魔の儀式『吸収の儀式』によるものであることがわかった。
救い出すには、魂を戻す必要ひつようがあるという、
また、森の塔に集まった帝国の兵たちはあらかた逮捕たいほできたが、リーダー格のレイドは取り逃がした』

「力と魂を吸い取るなんて・・・いったい誰が・・・?」
それに、キャンベルはこう言います。
「おそらく、帝国の者たちによるものでしょう。彼女らが作っていた捕獲ほかくビンは、
魂をふうめるための魔法アイテムです」

「それが帝国の言っていた『復活祭ミレニアム』と、何か関係があるのかな・・・?」
エルニスが言うと、ボブも言いました。
「森の開発は、再び話し合いで取りやめになったが・・・この記事を書いたハヌマーンはこう言っていた。
「これは未確認みかくにん情報じょうほうだけど、
ぼくの友人が言うには、帝国のバックにはとんでもない大物がいる」と、
一体、帝国のねらいは何なんだ!?謎が多すぎる!」
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