上 下
38 / 97
3章 自由の章

ティアの依頼

しおりを挟む
 今度の依頼いらいは、東の恐怖の森にある妖精ようせいたちの国、
『アールヴヘイム』からで、手が空いているすぐるとボブが依頼を受けることにしました。

「へえ、あの森には、エルフと言った妖精たちが住んでいるんだ・・・
きれいな森だから、妖精とかいそうだなとは思っていたけど・・・」
くわしい話はエルフの里にある王宮でするらしいぞ」
 すぐるとボブはスピネル王都を出て、恐怖の森に入ると、今度は森をさらに東へと進んで行きます。

「白いきりがだんだんくなっていくぞ・・・」
「霧につつまれた森ってなんだか、神秘的しんぴてきだね・・・
という事は、ここはもうアールヴヘイムの中だね、
エルフの里は、ここから北の方にあるってね、迷わないようにしなきゃ・・・」
この辺りは、方位ほうい磁石じしゃくくるってしまう
独特どくとく磁場じばを持っていますが、
すぐるは魔法使いとしての感を持っており、
霧の森の中でも、感覚が迷うことはなく、まっすぐ北へと進むことが出来ました。

 霧が晴れ木々が開けてくると、そこは丸太を重ねて建てられたログハウスが目立つ湖畔こはんの村で、
その周りを、とがった耳を持ち、
白と緑のローブをまとった人間そっくりな妖精、エルフたちが行きかっていました。

「ここがエルフたちの里か・・・素朴そぼくだけど、きれいなところだね」
すぐるはあたりを見渡みわたして言います。
「平和そうだな」里の北の方へ行くと、
白い石を組み上げて建てられたアールヴヘイムの女王の城が見えてきました。
見張りの兵士に依頼書を見せると、すぐるとボブは城の中の玉座の間へと急ぎます。

 すぐるとボブの視線の先に、高貴なドレスを身にまとい、
長い黒髪を後ろでお下げにしたエルフの女性が玉座に座っています。
「えっと・・・あなたが依頼主のティア様ですね」すぐるが依頼書を見て言います。

「はい、そうです。女王の妹に代わり、私が留守を預かっています」
「わぁ・・・美人だな・・・!」ボブがティアに見とれていると、依頼内容を話し始めました。

「皆さま、よく来てくださいました。依頼というのは他でもありません。
アールヴヘイムの王権おうけん象徴しょうちょうであるかんむりが、
何者かに盗まれてしまったのです。ぜひ、冠を取り返してきて欲しいのです」
すぐるたちは、依頼内容を聞き終わると、ティアに一礼をして、城の外へと出て行きました。

「冠を探しに行くのはいいけど・・・」
「まず、どこをさがせって言うんだよ・・・?」
エルフの里を出ようとすると、広場に人だかりができているのが分かりました。

「とんでもない話だわ!」すぐるとリリスはハッとして、人だかりに近づいてみました。
その場には、キーパー協会に所属するエルフのテイルと白魔法使いのカインの他、
エルフや森に住む魔法使いたち、そして、スピネルの国民たちが集まっていました。

「ゴーシャがまた森を開発だなんて・・・!」
「またこりもしないでねぇ・・・!」
「そんな・・・!森にはエルフや魔法使いたちが住んでいるというのに・・・!」
それを聞いたすぐるたちはハッとしました。
「えっ!?この森、開発されちゃうんですか!?」それに、テイルとカインが答えます。

「あら、あなたたちはすぐるとボブね。ええ、そうよ、北の国ゴーシャの王が、土地を広げる計画を立てたそうよ。
まったく!すでに、話し合いをしたのに、また私たちの故郷こきょうを・・・!」
テイルがいかりにふるえていると、カインが続けて言います。

「しかも、森で暴れているのはゴーシャの人間たちだけじゃない。
混沌カオス帝国エンパイアの連中も、
人間どもを野放しにはできんと言って、アールヴヘイムの王権の冠を盗み出し、
ゴーシャの者たちを追いだし、森の外へと乗り出そうとしているみたいだ」
それを聞いたボブは言いました。

「そうか、それで冠が盗まれたんだな!取り返すぞ!」ボブは駆(か)け出そうとすると、
すぐるがボブのうでをつかんで言います。
「待ってよ!どこにあるの!?」
「そうだよ、手がかりもないのに、どこ行くんだい?」
話を聞いていたさるの獣人が言いました。

「あなたは?」
「ぼくはハヌマーン・ワイルド、スピネルジャーナルの記者きしゃだよ」
ハヌマーンと名乗った猿の獣人は、赤いチョッキと白いズボンを着用し、
赤のキャップをかぶった半目はんもくの青年で、
こしには短剣を差しています。

「へえ、ぼくらがよく読むあの新聞の記者さん!?なんであなたがここに?」
「ぼくも反対運動に加わったまでさ。そもそも、なんでやつらは冠を盗んだんだろうね?」
それを聞いたすぐるはハッとします。
「そういえばそうだ!なんで盗んだんだろう?お金目当てかな?それとも・・・?」

「いや、これはうわさだけど、あの冠があると、絶大ぜつだいな力が手に入るって言われているんだ」
「絶大な力・・・?奴らはその力で、人間や反対勢力はんたいせいりょくい出そうとしているのかな?」
すぐるがこう言うと、ハヌマーンが答えます。

「まあ、世界支配を目論む混沌カオス帝国エンパイアなら、その可能性はあるだろうね。
そして、これはぼくの推察すいさつだけど、
この事件はかげで糸を引いている者がいるだろう」

「・・・陰で糸を引いている者?」
「そうさ、ぼくは帝国の真実を追っているんだ。
情報によると、帝国は北の塔を根城にしているらしい、
これに、連盟も動き出したようだ」

こうやって話していると、エルフたちがやって来て言いました。
「大変!ゴーシャの者たちとホワイト団が、森の木々を切り倒し始めたの!」
それを聞いたすぐるたちはすぐさま、そちらへ向かいます。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

【完結】アルファポリスでの『書籍化』はナニに魂を売ればデキる?

まみ夜
エッセイ・ノンフィクション
※夢多きお子様は、薄汚い大人にならないように、お読みにならないコトを推奨いたします。 ※個人の感想です。効果、効能を保証するモノでは、ございません。 ※転記は一切許可しておりません。また、引用には著作権法により厳密なルールが定められているので、ご注意ください。 自信満々に物語を書いて、早くも1500ポイント達成かと思っていたら、NEWが取れたら激減。 他の物語に負けないと思っていたのに、お気に入りも一桁、更新しても300ポイント以下。 では、「どうしたらいいか」を前向きに考察をするコラムです。 まずは、「1ページ目を読んでもらえるコトを目標」から始めましょう。 自分が書きたいことを好きに書いているダケで読まれなくていい、という方には無意味な駄文です。 書き手向けの内容ですが、読み専門の方には、より良い物語を探すヒントになる「かも」しれません。 表紙イラストは、lllust ACより、楠あかね様の「魔神」を使用させていただいております。

あいつは悪魔王子!~悪魔王子召喚!?追いかけ鬼をやっつけろ!~ 

とらんぽりんまる
児童書・童話
【第15回絵本・児童書大賞、奨励賞受賞】ありがとうございました! 主人公の光は、小学校五年生の女の子。 光は魔術や不思議な事が大好きで友達と魔術クラブを作って活動していたが、ある日メンバーの三人がクラブをやめると言い出した。 その日はちょうど、召喚魔法をするのに一番の日だったのに! 一人で裏山に登り、光は召喚魔法を発動! でも、なんにも出て来ない……その時、子ども達の間で噂になってる『追いかけ鬼』に襲われた! それを助けてくれたのは、まさかの悪魔王子!? 人間界へ遊びに来たという悪魔王子は、人間のフリをして光の家から小学校へ!? 追いかけ鬼に命を狙われた光はどうなる!? ※稚拙ながら挿絵あり〼

【完結】魔法少女お助け係に任命される 〜力隠してクラスの事件を解決します〜

野々 さくら
児童書・童話
 「不意に思ったことが魔法の力として出てしまう」。そんな力を隠していたのに、クラスのイケメン王子様に見られてしまった。   そこから始まる、恋と友情の物語。  魔夜 優花(まや ゆうか)小学五年生は、生まれた時から「ふっと思ったことが魔法の力になる」能力を持っている。  その力を隠していたが、五年生の一学期の始まりに教室でやらかしてしまった。  落ちそうなペンケースに「落ちないで」と願ったことにより、浮かせてしまい。それを同じクラスになったイケメン王子様、岡村 翼(おかむら つばさ)に見られてしまう。  力について聞かれ優花は必死にごまかすが、翼は優花をやたら構うようになる。  そしてクラスの役割の一つ「お助け係」という一番大変な役をやると立候補して、一緒にやろうと優花を指名してくる。  翼の推理と、優花がこっそり使う魔法により。クラスメイトの悩みやトラブルである。 「ラブレターの差出人の特定」 「友達同士で起きた喧嘩」 「石を割った犯人特定」 「校外学習でクラスメイトが居なくなり、その子を探し出す」 などを解決していく。  そうしていく内に、いつも一人だった優花に友達ができ。ありのままを認めてくれる翼を好きになる。  だけど翼は女子の人気者で、いつも翼の前には女子が居る。  そんな姿に「私だけを見て」、「翼に話しかけないで」と思ってしまう。  それが魔法の力として出てしまい。翼は目が見えなくなり、一緒に居た女子たちの声が出なくなってしまった。  魔法を取り消そうとするが翼を想う気持ちがジャマをして、魔法の力が消えない。  そうしていくうちにクラスメイトに「やっぱり魔女だった」と言われるようになる。  それにより、優花に友達が居なかった理由、魔法の力に対する苦しみが分かっていく。  優花のありのままを受け入れてくれる翼。  優花の気持ちを理解して、助けてくれる友達。  優花の力を怖がり「魔女」だと騒ぐクラスメイト。  クラスのトラブルを解決しながら起こる、恋と友情の物語。 魔夜 優花(まや ゆうか)  思ったことが魔法の力になる、能力を持っている。  性格や口調は強く、翼に対してはハッキリ言うが。本当は優しい性格で、困っている人を放っておけない。魔法の力がバレる危険をしてまで、クラスメイトを助けることもある。 「終わったー!」が口ぐせ。  魔法の力で悩んでいる。 岡村 翼(おかむら つばさ)  イケメン王子様と呼ばれるぐらいカッコよく、女子の人気者。  優花の魔法を見て、やたら絡んでくるようになる。  王子様と呼ばれているが、いたずらっ子の素質を持っており、優花には遠慮なく見せてくる。  実は翼にも、誰にも言えない悩みがあった。

下出部町内漫遊記

月芝
児童書・童話
小学校の卒業式の前日に交通事故にあった鈴山海夕。 ケガはなかったものの、念のために検査入院をすることになるも、まさかのマシントラブルにて延長が確定してしまう。 「せめて卒業式には行かせて」と懇願するも、ダメだった。 そのせいで卒業式とお別れの会に参加できなかった。 あんなに練習したのに……。 意気消沈にて三日遅れで、学校に卒業証書を貰いに行ったら、そこでトンデモナイ事態に見舞われてしまう。 迷宮と化した校内に閉じ込められちゃった! あらわれた座敷童みたいな女の子から、いきなり勝負を挑まれ困惑する海夕。 じつは地元にある咲耶神社の神座を巡り、祭神と七葉と名乗る七体の妖たちとの争いが勃発。 それに海夕は巻き込まれてしまったのだ。 ただのとばっちりかとおもいきや、さにあらず。 ばっちり因果関係があったもので、海夕は七番勝負に臨むことになっちゃったもので、さぁたいへん! 七変化する町を駆け回っては、摩訶不思議な大冒険を繰り広げる。 奇妙奇天烈なご町内漫遊記、ここに開幕です。

【完】888字物語

丹斗大巴
現代文学
どこからでも読み始められる1話完結のショートショート物語。 ※怖いお話もあります。まえがきの注意事項をご覧ください。

宇宙人からの日本人への挑戦状

桃月熊
児童書・童話
平成三十年八月十日 月曜日。 宇宙人が日本中の施設を奪います。 連想ゲームに正解すれば施設は返却されます。

地球一家がおじゃまします

トナミ・ゲン
児童書・童話
1話10分読み切りで、どれから読んでもOK。各10分の話の中にカルチャーショックと平均2回のどんでん返しを盛り込みました。アニメの脚本として書いたものを、多くの人に読んでいただきたいので、小説形式にしました。アニメ化を目指していますので、応援よろしくお願いします! あらすじ:地球に住む父、母、長男ジュン、長女ミサ、次男タク、次女リコの一家6人を『地球一家』と呼ぶことにする。6人は、地球とよく似た星を巡るツアーに参加し、ホームステイしながらいろいろな星の生活を見て回る。ホストファミリーと共に過ごし、地球では考えられないような文化や習慣を体験し、驚きの毎日を過ごしながら家族が成長していく。 アルファポリス、小説家になろうで連載中です。 以下の情報提供サイトで、縦書きやふりがな付きの文章を用意します。 https://twitter.com/gentonami1225

ゆとりある生活を異世界で

コロ
ファンタジー
とある世界の皇国 公爵家の長男坊は 少しばかりの異能を持っていて、それを不思議に思いながらも健やかに成長していた… それなりに頑張って生きていた俺は48歳 なかなか楽しい人生だと満喫していたら 交通事故でアッサリ逝ってもた…orz そんな俺を何気に興味を持って見ていた神様の一柱が 『楽しませてくれた礼をあげるよ』 とボーナスとして異世界でもう一つの人生を歩ませてくれる事に… それもチートまでくれて♪ ありがたやありがたや チート?強力なのがあります→使うとは言ってない   ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~ 身体の状態(主に目)と相談しながら書くので遅筆になると思います 宜しくお付き合い下さい

処理中です...