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3章 自由の章

黒バラ部隊

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 森の木々が開けてくると、そこに白い壁に赤い屋根の立派なお屋敷が建っていました。
「ここがそのお屋敷か・・・」
「思ったより、手入れされておるの」
「ここはかつて、スピネルの貴族、『フランクリン家』が住んでいたお屋敷です。さあ中へ」

みがかれた木材で出来た両開きの扉を開けると、中も白い壁に、
赤いじゅうたんがかれた床と言う、立派な物でしたが、中はしんと静まり返っています。
「さすがに広いね、ここは手分けして探した方がいいかも」
「そうじゃな」
「わたしたちは地下を探しますから、すぐるさんたちは上の方を頼みます」
「行こう」すぐるとリリスとボブは上の方を調べ、エルニスとキャンベルは下の階を探すことにしました。

 エルニスとキャンベルは地下への階段を見つけると、すぐさま下へ降りて行きました。
地下通路の壁には、炎が灯ったランプがいくつもぶら下げてあり、思ったほど暗くはありませんでした。
「ゴーストたちは明かりがいらないから、ランプをつけているという事は」
「はい、誰かがここにいるってことですね、あの一家以外の者が・・・」

 そうやって話していると、先の通路で何者かの気配がしたので、
エルニスとキャンベルは分かれ道の壁のかげに隠れて様子を見ました。
それは、スピネルでうろついていたのと同じく、黒いローブをまとう女性が二人ほど現れました。

「ねえ、あの捕獲ほかくビンの出来具合はどう?」
金髪のロングヘアーの女性が、茶髪のおかっぱ頭の女性にたずねます。
「もう少しで完成ね、『復活祭ミレニアム』に大きく近づくわ」

「一刻も早く完成しろと隊長から命令されているわ。
あれがないと『復活祭ミレニアム』に必要な材料がそろわないもの、
マジカから本を盗んできたおかげでこっちは順調よ。
それで、上の階にいる子供たちの訓練くんれんはどうなっているの?」

「そうねぇ・・・こっちはあんまりかんばしくないわ・・・
かんの鋭い子や、予知能力のある子、魔力のある子を集めて来たけど、
やっぱり、短期間で能力開発をするのは無理があるのかしらね・・・

でも、ついさっきさらってきた金髪の女は極上ごくじょう逸材いつざいね!
魔法使いでもあれほどの魔力の持ち主はそうはいないわ」
二人の女性はこう話しながら、エルニスたちの方を通り過ぎて行きました。

「やっぱり子供たちはここにいるみたいだね・・・『復活祭ミレニアム』って、一体何の事かな・・・?」
「子供たちをさらったのは、能力開発のためだったんですね、
それで帝国の戦力を補強する気でしょうか?シェリーさんもやはり彼女たちにさらわれたのかもしれませんね。
とにかく、先に進みましょう」

 すぐるとリリスとボブは、上の階への階段を上がって行き、大広間と思われし扉をゆっくり開けてみると、
そこには異様いような光景が広がっていました。

黒ローブの女性たちが、ブロックやトゲ床などの障害物しょうがいぶつのあるコースを、目隠しをした少年に歩かせたり、幼い少女に、テーブルに置かれた五枚のカードの裏にある絵柄を当てさせたり、
すぐるがキャンベルとやったのと同じように、魔法でランプに灯をつける訓練を子供たちにやらせたりしていました。子供たちはまるでモノにでも取りつかれたように無表情だったのです。

「な・・・なんじゃこれは・・・!?」リリスが唖然あぜんとしていると、ボブがハッとします。
「あっ!シェリーもいるぞ!目がうつろだ・・・!」
目の前に、緑のケープを羽織はおったボブヘアーの女性が現れました。
「これは、能力開発のための訓練、混沌の帝国カオスエンパイアの戦力を強めるためのものよ」
「能力開発だって!?」

「そう、私は混沌の帝国カオスエンパイアの頭脳『諜報ちょうほう部隊ぶたい
別名『黒バラ部隊』の隊長、四幹部『四凶しきょう』が一角、コントンのエアリアルよ。
そう、あなたたちがすぐるとリリスとボブね、帝国で話題になっているわ」

「なんで知っているんだ・・・!?」すぐるがおどろいて言うと、
エアリアルは涼しい顔で言いました。
「言ったでしょ、私たちは帝国の頭脳、全てお見通しよ。すぐる、ボブ、
あなたたちが現実界リアリティから来たことも、
帝国の幹部かんぶ候補こうほだったウェルダーを倒したことも、
幹部のグリードを倒したことも、今二つメダルを持っていることもね」

「なっ・・・!」すぐるがあっけにとられていると、ボブとリリスが叫びました。
「シェリーは返してもらうぜ!」
わらしたちも解放するのじゃ!わらわの口が火を噴く前に!」
「それはできないわ、サタン様に怒られてしまうもの。
それに、このシェリーと言う女の魔力は目を見張るものがあるわ、
後で帝国の洗脳術せんのうじゅつをかけましょう」それを聞いたリリスはハッとしました。

「なんじゃと?混沌の帝国カオスエンパイアの帝王はメガロではなかったのか!?」
「はぁ?メガロ・・・?ああ、あのシルトの首領しゅりょうね、
あいつは帝国とは何の関係もない、ただの海賊かいぞくよ。我らが混沌の帝国カオスエンパイアの帝王はサタン様よ」
「なにっ!?」

「おそらく連盟は、自分たちにとってジャマなメガロを勝手に帝国のボスとでっち上げたみたいね、
まあ、いい目くらましにはなったわ、連盟は我々を監視かんししているから、かえって好都合よ」

「お前・・・!なぜ混沌の帝国カオスエンパイア賛同さんどうするのじゃ!?
帝国は悪いことをしておるのだぞ!」リリスはエアリアルを指さして叫びます。
「そんな事はないわ!サタン様は魔力があったばかりに気味悪がられ、
町を追われた私を拾ってくれたのよ!そんなサタン様が悪いことなんて・・・!」

「目を覚ますのじゃ!あれを見よ!」リリスが子供たちを指すと、
子供たちの目からは涙が流れていたのです。
「こんな事をさせる者がよき者なわけがなかろう!
お主、それだけの頭がありながら、本当に悪いのは誰なのか、わからぬのか!?」
リリスはいかりのあまり、口から火の粉を巻き上げてうったえますが、エアリアルは涼しい顔です。

「全ては我々の理想の世界のため、それを邪魔するなら容赦ようしゃはしないわ。
サタン様に反逆する者を抹殺まっさつするのも私たちの仕事」
エアリアルは腰に差してあったナイフに手をかけると、彼女の目の色が変わっていきました。

「あははははっ!あなたたちはナイフのさびにしてあげる!」
エアリアルは狂気きょうきじみた野獣のような目でリリスにおそかってきます。
リリスは炎の気による手刀でナイフの刃を受け止めると、伸ばした毒の爪でなぎ払おうとします。
エアリアルはナイフでリリスの爪を受け止めます。

 そこにボブもおどり出て、刀を振り下ろしますが、
エアリアルはサッと横に動いてかわします。リリスは口からさか火炎かえんを吐きだし、すぐるも杖から魔法の火球を放ちますが、
エアリアルは風の魔法を巻き起こし、二人の火をき消してしまいました。

「つ・・・強い・・・!そして速い・・・!」
「二人かりの攻撃を一人で打ち消すなんて・・・!」リリスとすぐるは肩で息をしています。
「フフフ、これが帝国幹部の実力よ。さあ、今度こそ終わりにしてあげる!」そこにエルニスとキャンベルが現れ、
エルニスは電撃を、キャンベルは魔法の炎をちだして、すぐるたちを援護えんごします。

「くっ・・・!この数ではさすがに不利ね、ここは去りましょう」エアリアルの周りで風の渦が巻き起こり、
五人は思わず目を伏せました。風がおさまると、すでにエアリアルの姿はなく、
ローブの女性たちも尻尾を巻いて逃げ出していきました。
その瞬間、子供たちの目に精気せいきが戻っていきます。

「あっ・・・あのお姉ちゃんたちがいなくなっている!」
「これでおうちに帰れるよ!やったー!」そこに子供たちを探していたキーパー協会のカインとテイルが入ってきました。
「ここが奴らのアジトだったのか」
「みんな、もう大丈夫よ、さあ、帰りましょう」カインとテイルは子供たちを連れて、屋敷を後にしました。

 ゴースト一家は、屋敷を取り返してくれたエルニスたちに感謝をしています。
「ありがとうございました。これでまた平和に暮らせます」
「またいつでもあそびに来てください」エルニスたちは、屋敷を後にしました。
「屋敷の地下に行くと、子供たちを操っている装置があってね、それを壊したら、子供たちは自由を取り戻したみたいだね」

「でも、ローブの女性は去りぎわに「これで勝ったと思わないことね!」と言って、
怪しい二つのビンを持って屋敷を出て行ったんです」
エルニスとキャンベルが地下での出来事を話していると、すぐるとリリスが大広間での出来事を話しました。

「帝国は子供たちの能力開発をしていたんだ。帝国幹部のエアリアルは只者ただものじゃなかった!
確かに、これで終わりじゃないな・・・」
「それに、帝国のボスはシルト首領のメガロではなく、サタンと言う者じゃ、一体、何者なのかのう?」

リリスが頭をかしげていると、エルニスも言いました。
復活祭ミレニアムって、一体何の事だろう?それが、あのビンと何の関係があるのかな?」
なぞだらけですね。この本はマジカと言う魔法使いの町から盗まれたものだそうですね。わたしの実家がある町です。届けに行きましょう」
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