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プロローグ

王権のマント

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 スピネルより遠くはなれた海に孤高ここう雰囲気ふんいきただよわせているデモンズ大陸があり、そこには『ナイトロード』と呼ばれる人間以外の異種族がすむ国があって代々だいだい、バンパイア(吸血鬼きゅうけつき)の王家がおさめていました。
 かつて、ナイトロードは、幻想界ファンタジア全土を力でもって支配しようとしましたが、今では王も改心し、かつての邪悪さはなく、人間と共に歩み始めていましたが、住人の多くは、いまだに人間に歩み寄ることをこころよく思っていませんでした。

 ナイトロード国では混沌の帝国カオスエンパイアと名乗るならず者集団が暗躍あんやくしており、彼らはほこりと威光いこうを失ったナイトロードを、かつての強国にしようとしており、王家の象徴しょうちょうである『真祖しんそのマント』を手にし、ナイトロードの支配権しはいけんを我が物にすべく、王妃キャリーをさらい人質にしてきました。

 たくさんの尖塔と青い屋根がり出した白い本城にある、白いかべかこまれた市松いちまつ模様もようの床にレッドカーペットがかれた王室で、貴族然とした青い服と白いミニスカートをまとった赤毛のショートヘアーのととのった顔立ちのレミアン王女が、黒いタキシードを着込んだレミアンに生き写しのアガレス王にうったえます。

「父上!今すぐ母上を救い出してください!」これにアガレス王はなやみながら返事します。
「そうしたいのは山々だが、真祖のマントは我々バンパイア一族の誇りその物!人間からバンパイアに変身した半端者はんぱもののためにマントを犠牲ぎせいにするなど、もっての外と言う声が一族の間で根強いのだ・・・!」

「そんな・・・!このままじゃ・・・!」レミアンがうろたえていると、アガレス王は静かに言います。
「こちらも手をこまねているわけではない、奴らのアジトを部下たちに探させている最中だ・・・!」そこに、親衛隊帳しんえいたいちょうつとめる竜族りゅうぞく騎士きし、トリケロイドが入ってきました。その姿は、角竜トリケラトプスの顔と尾を持つ鎧兵よろいへいといった感じで、アガレス王の前にひざまずいて言います。

陛下へいか、一大事であります!」
「どうした!?」
「我らがナイトロード軍の陸上りくじょう部隊ぶたい隊長のレイド、不死ふし部隊隊長のグーラ、飛空ひくう部隊隊長のグレゴリーが、混沌の帝国カオスエンパイアと行動を共にしたようです!」それに、アガレス王はハッとしました。

「何だと!?わが軍の幹部かんぶが・・・!?」トリケロイドは話を続けます。
「その三人を筆頭ひっとうに、多くのナイトロード国民が、ヘルズマウンテンにある古城、ノワール城に集結しつつあるとの事です!おそらく、ナイトロード国の転覆てんぷく目論もくろんでいるかと・・・!」
「何たることだ・・・!私のやり方は間違っていたのか・・・?だが、これはチャンスかもしれん!アジトさえ分かればなんとかなる!でかしたぞ!」

 ここは、本城より南にある山『ヘルズマウンテン』、そこはアガレス王に反逆した者たちを捕える牢獄ろうごくや、砦をねた放送塔などがある、ナイトロードの要所ようしょです。そのふもとにかつて、真祖と呼ばれた初代ナイトロードの王が住んでいたと言われる、黒い石を積み上げて造られたノワール城が建っています。

「なにぃ!何と生意気な・・・!」燭台しょくだいらされた玉座に座る反乱軍はんらんぐんの中心人物になっているよろいと赤いマントを着込きこんだたんぱつのエルフ族の戦士レイドが、アガレス王から送られてきた手紙をにぎりしめながら言いました。

「『真祖のマントが欲しければ、全軍をあげて、力ずくで本城まで取りに来い!』だと・・・!?宣戦せんせん布告ふこくと言うわけか・・・!?面白い・・・!」レイドが武者震むしゃぶるいをしながら言うと、玉座の前に立つ白いローブに緑のケープを着用するボブヘアーの少女が静かに言います。

「落ち着きなさいレイド、無闇むやみに相手の挑発ちょうはつに乗ったら、相手の思うつぼよ!」
「何を言っているエアリアル!戦士ならば受けた挑戦には応じなければな・・・!これなら、お前の言うとおりわざわざ人質をとる必要もなかったわけだ!いいだろう、乗ってやる!」それを聞いたエアリアルはあきれながら首を横にりながら去りました。

「まったく、単細胞なんだから!これだから生粋きっすい武人ぶじんと言うのは・・・」
 翌朝、レイドひきいる反乱軍が大挙して本城に押しかけてきました。当然、本城にはトリケロイドひきいるナイトロードの親衛隊が待ち構えています。そして、間もなく両者による力と力のぶつかり合いが始まり、城の門前は大混戦になりました。

「おお、反乱軍が全て門前に・・・!」レミアンは大合戦だいかっせんの目をぬすんで裏口から城を出て、一人で南のヘルズマウンテンにあるノワール城を目指します。
 黒い岩肌いわはだが目立つ山のふもとにある黒い城こそ、キャリー王妃がとらわれているノワール城なのです。

「反乱軍が本城に向かったおかげで、こちらは手薄てうすになっているぞ」レミアンがノワール城の入り口になっている鉄で補強された木の門の前に向かうと、門前にエアリアルが待ちかまえていました。
「・・・やっぱり、本城に注意を引きつけ、そのすきにこの城の人質を救う作戦だったわけね・・・!」

「君は・・・!?」
「初めまして王女様、私は混沌の帝国カオスエンパイア諜報ちょうほう部隊ぶたい』の隊長エアリアルよ。せっかく捕えた人質をうばい返されては作戦がふいになってしまうわ・・・!全く、レイドって本当にバカよね・・・!」エアリアルはフンと鼻を鳴らします。

「そこをどいてもらおう!」
「それは、私を倒してからにしてもらいましょう!」間もなく、エアリアルの風の魔法とナイフ、レミアンのバンパイアの身体能力と剣がぶつかり合う音がし、両者共に互角の勝負をしますが、途中で、反乱軍の半人半鳥の女性モンスター、ハーピーがやって来て言いました。

「エアリアル様!わが軍の多くがやられてしまいました・・・!」
「ちっ!ここまでか・・・!」エアリアルは舌打ちをして、風の魔法で姿を消してその場を去りました。その隙にレミアンはノワール城から、真紅のドレスを着て、レミアンを長髪ちょうはつにしたと言う感じのキャリー王妃を救い出しました。

 レミアンは、アガレス王やキャリー王妃のいる本城の玉座の間にいます。
「うむ、混沌の帝国カオスエンパイアの者たちの多くを捕え、マントも守り通すことができ、王妃も救い出すことが出来た。しかし、元幹部の三名と反乱軍の残党ざんとうたちは取り逃がしてしまった・・・!とりあえず、帝国との戦いには勝ったが・・・奴らは船で国外に逃げた、まだ油断はできない!」
「ですね・・・」レミアンはまだ不安の残る声で言いました。

「では、お前は我が国と国交を結んでいる人間たちの国、スピネル国へ大使として行ってもらう!」
「はい!」
「また何かあったら連絡れんらくする!」
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