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2章 覇気の章
異国への旅立ち
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平和な人間の王国スピネル。レンガ造りの家々が目立つ町中で、朝から騒ぎが起きていました。
「こらぁ!待ちなさい!」テイルが、黒いバッグを持った黒スーツ姿の男を追いかけています。
黒スーツの男は、追いつかれてたまるかとばかりに、西の港へと足を速めますが、
足はテイルの方がずっと速く、あっという間に追いつかれて足払いをかけられてしまい、バッグを落として転んでしまいました。
男はバッグを拾うべく、起き上がりますが、テイルは男の前に立ちはだかります。
「このアマ!そこをどけ!」男はテイルの顔に殴りかかりますが、テイルはスッとしゃがんでかわし、男の腹めがけて二発のパンチを打ちこみます。
「うぐおっ・・・!」その衝撃に男は耐えきれず、その場でうずくまります。
「往生際が悪いわね!観念しなさい!」テイルが黒いバッグを回収すると、カインがやって来ました。
「さすがテイルだね!さあ、立つんだ!」カインは男を立たせ、ヤツの両手に手錠をかけると、二人は男を連行しました。
『昨日、スピネルの銀行から、時価十万ゴールド相当の金塊が強奪され、
西のニューヨー連邦に密輸しようとした金塊強奪事件が発生した。被疑者は、
金塊を密輸し、ニューヨー連邦に転売しようとした模様。しかし、キーパー協会のテイルとカインのバディが、犯人を取り押さえ、無事に金塊を取り戻し、強奪事件は未遂に終わった』
「やれやれ、最近、金塊がらみの事件が多いな・・・」ここは、スピネルにある便利屋の店の中で、すぐるが今日の新聞の見出しを見てると、キャンベルが言います。
「そうですね、すぐるさん、ちゃんと金塊を輸出しようとすれば、その分税金がかかりますし、ニューヨー連邦では、金塊を税金の額ごと買い取りますので、
密輸すれば、税金の差額分儲かりますよ」これにエルニスも言います。
「しかも、危険な武器や薬物とちがって、チェックもぬるいから、やりやすいのも魅力なんだろうね・・・」
「それで、ぼろ儲けするのだな・・・」リリスが言うと、キャンベルはこう言います。
「ですが、これは立派な犯罪ですから、決してやってはいけないんですよ。大切な税金をかすめ取るようなものですから・・・」
「ニューヨー連邦か・・・どんな国なんだろう・・・?」すぐるがこう言うと、キャンベルが説明します。
「ニューヨー連邦は、ここよりずっと西の方にある大きな国です。砂漠が広がる北のアラビンスと、高度な文明が栄えている南のメトロポリスに分かれた国です。
確か・・・アラビンス国には、大地の神をまつっているピラミッドがあって、そこには確か、覇気のメダルと、力の神器がおさめられていると聞いたことがあります」それに、すぐるはハッとしました。
「メダルと神器だって!?」
「そうですよ。間違いありません」
「じゃあ、今すぐニューヨー連邦に行こうか。確か、定期便が出ていたはず」
「すいません、わたしとエルニスさんには、たくさん依頼が来ているんですよ・・・ですから、今回は一緒に行けそうもありません・・・」キャンベルが残念そうに言います。
「安心するがよい!妾がすぐるに同行するからの♡」リリスはそう言って、すぐるの右腕に両腕をからませます。
「リリスと一緒に・・・?ありがとう・・・」すぐるは、不安そうな顔でリリスを連れて店を出て、港を目指します。
すぐるとリリスはまず、雑貨屋に行って食料や薬などを買い込み、王都の南側にある港へと足を進めました。
そこは、大きな帆船がいくつも停泊していて、縞々もようのシャツを着こんで、赤いバンダナを頭に巻いた船乗りたちが、大きな木箱を抱えて倉庫へ運んだり、大きな荷物を持った旅行客が行きかっていたりと、にぎやかな場所です。
すぐるはまず、チケット売り場で、ニューヨー連邦のアラビンス行きの乗船チケットを二人分買いました。
「えーっと・・・アラビンス行の船は・・・あれか!」すぐるとリリスはアラビンス行の帆船に乗り込み、甲板のへさきに出ると、いよいよ船は港を出て、西のアラビンス目指して出航します。
「こうしてみると、いざ旅立ちって感じだね!」船が波に揺られながら進んで行くと、リリスがうつむいて、嫌な事を思い出したような声で言いました。
「うぬ・・・船には苦い思い出が・・・」
「どうしたの?リリス、いつもの君らしくないよ?」
「うぬ、妾が悪魔に対するイメージを変えようと、あてのない旅を始めたのはしっておろう・・・」
「うん、そうだね」
「それで、妾は、海を渡るときは、もちろん船を使ったが、船に乗る時は、悪魔族だからと言うだけで、乗船拒否されてしまった・・・
それで、皆に見つからぬよう、こっそり乗船し、隠れておったが、警備兵に見つかり、剣で背中を斬られてしまい、海に放り出されてしまったのじゃ・・・!」それを聞いたすぐるは驚きました。
「そうか・・・それで浜でリリスを見つけたとき、背中にひどい傷を負っていたんだ・・・!」
「うぬ、しかし、そこで妾はすぐるに出会ったのじゃ。あの時、すぐるは悪魔の妾に隔たりなく接してくれた・・・!本当にうれしかったのだぞ・・・!」
リリスは涙を浮かべながら、すぐるに抱き着きました。
「大変だったんだね・・・!大丈夫、今度はぼくが守ってあげるからね・・・!」すぐるはそっとリリスの背中に手を当て、抱きしめます。
「こらぁ!待ちなさい!」テイルが、黒いバッグを持った黒スーツ姿の男を追いかけています。
黒スーツの男は、追いつかれてたまるかとばかりに、西の港へと足を速めますが、
足はテイルの方がずっと速く、あっという間に追いつかれて足払いをかけられてしまい、バッグを落として転んでしまいました。
男はバッグを拾うべく、起き上がりますが、テイルは男の前に立ちはだかります。
「このアマ!そこをどけ!」男はテイルの顔に殴りかかりますが、テイルはスッとしゃがんでかわし、男の腹めがけて二発のパンチを打ちこみます。
「うぐおっ・・・!」その衝撃に男は耐えきれず、その場でうずくまります。
「往生際が悪いわね!観念しなさい!」テイルが黒いバッグを回収すると、カインがやって来ました。
「さすがテイルだね!さあ、立つんだ!」カインは男を立たせ、ヤツの両手に手錠をかけると、二人は男を連行しました。
『昨日、スピネルの銀行から、時価十万ゴールド相当の金塊が強奪され、
西のニューヨー連邦に密輸しようとした金塊強奪事件が発生した。被疑者は、
金塊を密輸し、ニューヨー連邦に転売しようとした模様。しかし、キーパー協会のテイルとカインのバディが、犯人を取り押さえ、無事に金塊を取り戻し、強奪事件は未遂に終わった』
「やれやれ、最近、金塊がらみの事件が多いな・・・」ここは、スピネルにある便利屋の店の中で、すぐるが今日の新聞の見出しを見てると、キャンベルが言います。
「そうですね、すぐるさん、ちゃんと金塊を輸出しようとすれば、その分税金がかかりますし、ニューヨー連邦では、金塊を税金の額ごと買い取りますので、
密輸すれば、税金の差額分儲かりますよ」これにエルニスも言います。
「しかも、危険な武器や薬物とちがって、チェックもぬるいから、やりやすいのも魅力なんだろうね・・・」
「それで、ぼろ儲けするのだな・・・」リリスが言うと、キャンベルはこう言います。
「ですが、これは立派な犯罪ですから、決してやってはいけないんですよ。大切な税金をかすめ取るようなものですから・・・」
「ニューヨー連邦か・・・どんな国なんだろう・・・?」すぐるがこう言うと、キャンベルが説明します。
「ニューヨー連邦は、ここよりずっと西の方にある大きな国です。砂漠が広がる北のアラビンスと、高度な文明が栄えている南のメトロポリスに分かれた国です。
確か・・・アラビンス国には、大地の神をまつっているピラミッドがあって、そこには確か、覇気のメダルと、力の神器がおさめられていると聞いたことがあります」それに、すぐるはハッとしました。
「メダルと神器だって!?」
「そうですよ。間違いありません」
「じゃあ、今すぐニューヨー連邦に行こうか。確か、定期便が出ていたはず」
「すいません、わたしとエルニスさんには、たくさん依頼が来ているんですよ・・・ですから、今回は一緒に行けそうもありません・・・」キャンベルが残念そうに言います。
「安心するがよい!妾がすぐるに同行するからの♡」リリスはそう言って、すぐるの右腕に両腕をからませます。
「リリスと一緒に・・・?ありがとう・・・」すぐるは、不安そうな顔でリリスを連れて店を出て、港を目指します。
すぐるとリリスはまず、雑貨屋に行って食料や薬などを買い込み、王都の南側にある港へと足を進めました。
そこは、大きな帆船がいくつも停泊していて、縞々もようのシャツを着こんで、赤いバンダナを頭に巻いた船乗りたちが、大きな木箱を抱えて倉庫へ運んだり、大きな荷物を持った旅行客が行きかっていたりと、にぎやかな場所です。
すぐるはまず、チケット売り場で、ニューヨー連邦のアラビンス行きの乗船チケットを二人分買いました。
「えーっと・・・アラビンス行の船は・・・あれか!」すぐるとリリスはアラビンス行の帆船に乗り込み、甲板のへさきに出ると、いよいよ船は港を出て、西のアラビンス目指して出航します。
「こうしてみると、いざ旅立ちって感じだね!」船が波に揺られながら進んで行くと、リリスがうつむいて、嫌な事を思い出したような声で言いました。
「うぬ・・・船には苦い思い出が・・・」
「どうしたの?リリス、いつもの君らしくないよ?」
「うぬ、妾が悪魔に対するイメージを変えようと、あてのない旅を始めたのはしっておろう・・・」
「うん、そうだね」
「それで、妾は、海を渡るときは、もちろん船を使ったが、船に乗る時は、悪魔族だからと言うだけで、乗船拒否されてしまった・・・
それで、皆に見つからぬよう、こっそり乗船し、隠れておったが、警備兵に見つかり、剣で背中を斬られてしまい、海に放り出されてしまったのじゃ・・・!」それを聞いたすぐるは驚きました。
「そうか・・・それで浜でリリスを見つけたとき、背中にひどい傷を負っていたんだ・・・!」
「うぬ、しかし、そこで妾はすぐるに出会ったのじゃ。あの時、すぐるは悪魔の妾に隔たりなく接してくれた・・・!本当にうれしかったのだぞ・・・!」
リリスは涙を浮かべながら、すぐるに抱き着きました。
「大変だったんだね・・・!大丈夫、今度はぼくが守ってあげるからね・・・!」すぐるはそっとリリスの背中に手を当て、抱きしめます。
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