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1章 勇気の章

運命的な出会い

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 城を出たエルニスとキャンベルとすぐるは、話し合っていました。
「引き受けたのはいいけど・・・」
「まず、どこを探せばいいんでしょう・・・?とりあえずお店に戻りましょう」

 便利屋に戻って、依頼内容を見直そうとしていると、突然、白いシャツに緑のスカートを着こなした、ロングヘアーの女性が入ってきました。

「エルニス、キャンベルちゃん、突然だけど、南海岸に悪魔が現れたの!」いきなりの飛び込みの依頼に、キャンベルは女性を落ち着かせました。
「ちょっと、落ち着いて!順序じゅんじょよくはなしてください」
「南海岸を散歩していたら、砂浜に悪魔族の女が流れ着いていたの!何とかしてくれないかしら!?」
 
 南海岸とは、スピネルの王都の南西にある遠浅の砂浜で、波がおだやかなので、海水浴や漁業ぎょぎょう最適さいてきな海です。
「わかりました。とりあえず行ってみます」エルニスとキャンベルとすぐるは、王都を出て、南海岸を目指して行きました。
 
 エルニスたちが着いた南海岸は、きらめく白い砂浜の向こうに、んだ海が静かに波打っています。見回していると、人々が集まっているのを見つけ、そこへ行ってみました。

 人々は、倒れている一人の少女の周りに集まっており、少女は茶色のミニスカートのワンピースを着て、白くて長い靴下くつしたに、黒い靴くつをはいていて、長い赤毛を上の方でツインテールの髪型かみがたにしています。普通の少女とちがうのは、背中にコウモリを思わせるつばさを一対生やしている点と、先端がハートの形をしたとがっている細長い尻尾を生やしている点です。それを見たエルニスとキャンベルは言いました。

「キャンベルちゃん・・・これって・・・」
「はい、この姿とオーラは・・・間違いありません。彼女は悪魔族です」少女は背中にひどいケガを負っていて、苦しそうにうなっていますが、誰一人として、少女に近づく者はおらず、みんなひそひそと話をしたり、怖がっている者ばかりです。
 それを見たすぐるは放っておくことが出来ず、少女にけ寄ります。
「君、かかわらない方がいいよ」
「そうだよ、相手は悪魔族だよ。悪魔はズルくて信用できない種族だ」
「いっそのこと、やっつけちゃってよ!」人々はそう言いますが、すぐるはこう言います。
「この人は悪い人じゃない。分かるんだ・・・」それを聞いたキャンベルは感心します。「すごいです、すぐるさん、あなたはもしかして・・・」
 
 すぐるは少女の背中に杖をかざし、精神を集中させて呪文を唱えました。
「頭に言葉が浮かんでくる・・・いやせ、ヒーリング!」すぐるの杖から優しい光が放たれ、少女の背中を照らすと、背中の傷が見る見るうちにふさがって行くのが分かりました。

「はい、もう大丈夫だよ」すぐるが回復の魔法を使い終わると、悪魔の少女は元気を取り戻し、ゆっくりと起き上がりました。
「うむ・・・よくぞ助けてくれた・・・礼を言うぞ。わらわは『リリス・クリムゾン』と申す者。お主は・・・?」
「ぼくは、すぐるだよ」
「うむ、そうか・・・よしなに願いたい・・・ん・・・!?お主・・・」

 リリスは顔を赤らめ、紫の両のひとみでマジマジとすぐるを見て言いました。
「お主・・・なかなかかわいいのう・・・♡」リリスはウィンクしながら言います。
「ええっ!?ど、どうしたのさ・・・?」すぐるは少しおどろいて言います。
「なんだか・・・お主にれてしまったのじゃ・・・一目ぼれというやつよのう・・・♡殿御とのごにこんな感情をいだいたのは初めてじゃ」リリスは恋人でも見るかのようにすぐるを見つめます。

「ええっ!?うそ・・・!?」すぐるは戸惑うばかりです。
「ウソではない、妾はすぐるに恋をしてしもうた・・・♡」
「えええっ!?」すぐるは戸惑いと驚きとうれしさでいっぱいになりました。
(リリスって・・・よく見たら・・・かわいいな・・・)すぐるはリリスのととのった顔を見て思いました。
「決めた!妾はすぐるについていくぞ!そして、妾を救ってくれたすぐるへの礼として、お主たちの手伝いをしようではないか!」それに、エルニスとキャンベルも驚きました。
 
 エルニスとキャンベルとすぐるはリリスを連れて、王都にある店に戻りました。リリスは店の中を見渡して言います。
「ほう・・・なかなかこぎれいな店ではないか、悪くない」それから四人はテーブルを囲んで話し合いをしました。
「なるほど、悪魔の持つイメージを変えるべく旅だったんですね」

「うむ、昔から悪魔はズルくて信用できないと言われ、我らは他の種族からきらわれてきた。妾はそれを変えたいと思い、一念発起いちねんほっきして故郷を出発したのじゃ。そして、お主たちは、王から神のノートの封印を解き、悪魔王カオスを倒すように言われておるのじゃな」

「そうだよ、そのために七つのメダルを集めなきゃいけないんだ」エルニスが言いました。
「うむ、大変そうじゃな。さっきも言ったとおり、妾はお主たちの手伝いをしよう。せめてもの礼じゃ」
「ありがとうございます、リリスさん」キャンベルがお礼を言って頭を下げます。
「それに、すぐるのそばをはなれたくないからの♡」リリスはすぐるを見つめて言いますが、すぐるはまだ戸惑いを隠せません。

「どうした?妾と一緒にいるのはいやか・・・?」リリスは不安げな表情ですぐるを見ます。
「いや・・・ただ・・・おどろいているだけだよ。でもそれは嫌だからじゃない。むしろうれしいんだ。ぼくを好きになってくれるなんて」その言葉に、リリスは目をうるませて言いました。
「そうか、良かった・・・ありがとうの・・・ううっ・・・」リリスがうれしさのあまり泣いている姿を見て、すぐるが言いました。
「やっぱり優しいんだね。よろしく、リリス」
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