『完結』セプトクルール 超文明Sの野望

マイマイン

文字の大きさ
上 下
4 / 97
プロローグ

日常

しおりを挟む
「すぐる、きなさい!」母親の呼び声で、すぐる少年は自室のベッドから起き上がりました。
「あっ・・・もう七時か・・・」白いシャツと青い半ズボンを着用し、黒髪のショートヘアーでパッチリとした黒い瞳を持つ童顔どうがんで十四の少年すぐるは、寝ぼけまなこで目覚まし時計を見て言いました。

 すぐるは中学の黒い制服に着替えて一階の食堂にりて来ると、早速、白いシャツとピンクのスカートを着用し、肩まで黒髪をばしたすぐるの母親とパンや目玉焼きと言った朝食をとり、黒い手提てさげかばんと緑色のかさを持って中学へと登校していきます。

 中学を目指して、日本の某所ぼうしょにある晴れ渡る住宅地の中を走る道を進んで行くと、白くて高いへいにある黒いてつ格子ごうしの門の奥に、日本には似つかわしくない白い壁に青い屋根の洋館ようかんがあり、その中央の窓からは、白いドレスを着用し、青い瞳を持つ長い金髪の少女が顔を出して遠くを見ているような視線しせんが気になって、すぐるは足を止めました。
「なんだろう?あの子は・・・なんだかきれいだな・・・おっと、それよりも学校に急がないと、遅刻ちこくしてしまう!」すぐるは再び中学目指して屋敷やしき前を後にしました。

 中学についたすぐるは二年生の教室に入り、窓際の机の席に着席すると、他の生徒たちも次々と教室に入ってきますが、誰もすぐるに近づく者はおろか、あいさつをする者もいなかったのです。みんな彼を好奇の目と言う言い方がもっともあてはまる視線を送ります。

「やっぱり・・・こんな事はもうれっこだけどね・・・」すぐるは特に意にも返さない様子で窓の景色を眺めていました。

 いよいよ授業が始まると、すぐるは国語担当の中年の男性教師から質問され、漢字の読み書きなどもソツなくこなし、数学の授業でも他の生徒が解けないような数式も、すぐるは難なく正解を導き出したのです。他の授業でもすぐるは同じように答えを叩きだしました。

 昼食が終わりお昼休みになると、話しかけてくれる者がいないすぐるは図書室へと足を運びだします。生徒たちが行きかっている廊下ろうかを歩いていると、素行の悪そうな三人の男子生徒がすぐるの前に現れました。
「おい、化け物!最近、生意気なんだよ!」リーダー格の背の高い長髪の不良生徒がにらみを利かせて言います。
「ちょっと頭いいからって調子に乗ってんじゃねぇぞ!」いがぐり頭で小太りの生徒も怒鳴ります。
「いい子ぶるなよ!」目つきの悪い背の低い生徒もすぐるを小突いてきます。
「なに・・・?そこを通して・・・!」すぐるはその場を離れようとすると、不良生徒たちは回り込みます。
「オレたちを無視してんじゃねぇぞ!」
「やるのか!?」
「やってしまえ!」

 不良生徒たちがすぐるにむかって拳を振り上げようとすると、すぐるは目をぎゅっとつむります。すると突然、不良生徒たちが宙に浮き、後方にふっとばされてしまったのです。その様子を見ていたボーズ頭で黒人の男子生徒はあっけにとられます。

「あいつ・・・!三人を同時にふっとばしやがった!いや、それにしては吹っ飛びすぎだ・・・!それにあいつ・・・手を使ったか・・・?」不良生徒たちはゆっくりと起き上がり、怒りの形相ですぐるに向かってきます。

「やってくれるじゃねぇか!化け物め!」
「わぁああっ!」すぐるは両腕で顔をおおいます。
「おい!弱い者いじめもいい加減にしろ!」みんなが見て見ぬふりをする中、様子を見ていた黒人の生徒が不良生徒の前に立ちはだかりました。
「なんだこいつ!」
「ジャマするのか!?」
「面白れぇ!やってしまえ!」
 
 向かってくる三人の不良を、黒人の生徒はパンチやキックで次々と返りちにすると、三人の不良は恐れをなして逃げて行きました。

「大丈夫か!?」黒人の生徒はすぐるの元にけ寄ります。
「ああ、ありがとう、すごいねきみ!武器ぶきを使わないであの三人をやっつけてしまうなんて・・・!」すぐるが感心して言うと、黒人少年はれくさそうに言います。

「なぁに、大したことねぇよ!いってー!」黒人の生徒は頭にできた傷を痛そうに押さえて言います。
「あっ!ケガしている!大変だ!」すぐるは精神を集中させ念じると、彼の手から優しい光が放たれ、それが黒人の生徒の傷を照らすと、なんと見る見るうちに頭の傷がふさがって行ったのです。

「おっ!もう痛くねぇ!お前もすごいな!」黒人の生徒はすぐるのかたを軽く叩いて言いました。
「いいや、そうでもないよ、えっと・・・君は・・・?」これに黒人の生徒はこう言いました。
「おれ、ボブって言うんだ!お前は?」
「ぼくはすぐるだよ」
「おう、すぐる、またな!」
「あ、そうそう、帰りがけは雨が降るみたいだよ、それじゃ」すぐるはボブに手を振ってその場を後にしました。
「何言っているんだ?今日は雲一つないぜ?じゃあな」

 下校時間が迫ってくると、晴れ渡る空に灰色の雲が広がって行き、やがて大粒の雨が降り始めました。傘を持ってこなかったボブをはじめ、多くの生徒が校舎の入り口で足止めを食らい、中には雨の中を大急ぎで帰ろうとする者もいます。

「天気予報では今日は晴れと言っていたのに、すぐるが言ったとおり雨になったぞ・・・!」ボブはやむのを待たずに走って帰ろうとした時、すぐるが開いた緑色の傘をボブの前に差し出します。
「入りなよ、確かぼくと君はおとなり同士だったね・・・」
「おお、ありがてぇ!」ボブはすぐるの隣に並び立ち、雨が降りしきる中を進んで行きました。

 ボブの家はすぐるの家のはす向かいにある赤い屋根の家です。
「いや~助かったぜ、またな!」
「こまった時はお互い様だよ」ボブはすぐるに礼を言い、自宅の木戸を開けて中に入って行くと、すぐるも自宅のドアを開けて、なんだかうれしい気持ちで入って行きました。

「あ~あ、またやっちゃった・・・」すぐるはため息をついて自室のベッドに仰向けになって考え込みました。
「なんで、ぼくにはこんな『力』があるのかな・・・?この『力』のせいで、ぼくはみんなから化け物あつかいされる・・・でも、あのボブって子はそんなぼくでも普通通りに接してくれた・・・そう言えば、死んだじいちゃんは、魔法使いだったって言っていたっけ・・・ぼくもその血を受けいでいるってことなのかなぁ・・・?じいちゃんが話してくれたもう一つの世界『幻想界ファンタジア』の話、おもしろかったなぁ・・・魔法に幻想界ファンタジア・・・本当にあるのかな・・・?じいちゃんといえば、こんな事も言っていたっけ・・・「お前が人にはない『力』を持ったのには何か意味がある、その『力』は世のため人のために使え、そして普通の人ではすくえない人を救ってやれ」って・・・」
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

『完結』セプトクルール 勇者エルニスのワンダーランド

マイマイン
児童書・童話
 これは、すぐるがやってくる前の『幻想界』の物語です。ある日突然、平和な国『スピネル王国』にやってきた謎の少年エルニスが、平和を脅かす『魔王軍』に立ち向かう王道ファンタジーです。『セプトクルール』シリーズの始まりの物語をお楽しみください。

コボンとニャンコ

魔界の風リーテ
児童書・童話
吸血コウモリのコボンは、リンゴの森で暮らしていた。 その日常は、木枯らしの秋に倒壊し、冬が厳粛に咲き誇る。 放浪の最中、箱入りニャンコと出会ったのだ。 「お前は、バン。オレが…気まぐれに決めた」 三日月の霞が晴れるとき、黒き羽衣に火が灯る。 そばにはいつも、夜空と暦十二神。 『コボンの愛称以外のなにかを探して……』 眠りの先には、イルカのエクアルが待っていた。 残酷で美しい自然を描いた、物悲しくも心温まる物語。 ※縦書き推奨  アルファポリス、ノベルデイズにて掲載 【文章が長く、読みにくいので、修正します】(2/23) 【話を分割。文字数、表現などを整えました】(2/24) 【規定数を超えたので、長編に変更。20話前後で完結予定】(2/25) 【描写を追加、変更。整えました】(2/26) 筆者の体調を破壊()3/

【完】ノラ・ジョイ シリーズ

丹斗大巴
児童書・童話
✴* ✴* 母の教えを励みに健気に頑張る女の子の成長と恋の物語 ✴* ✴* ▶【シリーズ1】ノラ・ジョイのむげんのいずみ ~みなしごノラの母の教えと盗賊のおかしらイサイアスの知られざる正体~ 母を亡くしてみなしごになったノラ。職探しの果てに、なんと盗賊団に入ることに! 非道な盗賊のお頭イサイアスの元、母の教えを励みに働くノラ。あるとき、イサイアスの正体が発覚! 「え~っ、イサイアスって、王子だったの!?」いつからか互いに惹かれあっていた二人の運命は……? 母の教えを信じ続けた少女が最後に幸せをつかむシンデレラ&サクセスストーリー ▶【シリーズ2】ノラ・ジョイの白獣の末裔 お互いの正体が明らかになり、再会したノラとイサイアス。ノラは令嬢として相応しい教育を受けるために学校へ通うことに。その道中でトラブルに巻き込まれて失踪してしまう。慌てて後を追うイサイアスの前に現れたのは、なんと、ノラにうりふたつの辺境の民の少女。はてさて、この少女はノラなのかそれとも別人なのか……!? ✴* ✴* ✴* ✴* ✴* ✴* ✴* ✴* ✴* ✴*

セプトクルール 三賢者と虹色の夜明け

マイマイン
児童書・童話
 現実界に住む魔法使いのすぐるが、幻想界へと旅立ち、仲間たちと共に悪魔王カオスを倒して数年後、すぐるは幻想界で出会い、『誓い』を結んだ魔族の少女リリスと共に、現実界で平和な生活をおくっていました。  しかし、祖父から魔力を受け継いでいるすぐるは、現実界での生活にはなじめず、他の生徒たちからは好奇の目で見られたり、化け物扱いされていましたが、祖父から託された使命の事、リリスが亡き両親から託された使命の事などが忘れられず、再び幻想界へ旅立とうと決意をしたのでした。  今回は主人公が三人で、それぞれの物語を進んでいくことになります。

セプトクルール『すぐるとリリスの凸凹大進撃!』

マイマイン
児童書・童話
 『引っ込み思案な魔法使い』の少年すぐると、『悪魔らしくない悪魔』の少女リリスの凸凹カップルが贈る、ドタバタファンタジー短編集です。 このシリーズには、終わりという終わりは存在せず、章ごとの順番も存在しません。 随時、新しい話を載せていきますので、楽しみにしていてください。

児童絵本館のオオカミ

火隆丸
児童書・童話
閉鎖した児童絵本館に放置されたオオカミの着ぐるみが語る、数々の思い出。ボロボロの着ぐるみの中には、たくさんの人の想いが詰まっています。着ぐるみと人との間に生まれた、切なくも美しい物語です。

荒川ハツコイ物語~宇宙から来た少女と過ごした小学生最後の夏休み~

釈 余白(しやく)
児童書・童話
 今より少し前の時代には、子供らが荒川土手に集まって遊ぶのは当たり前だったらしい。野球をしたり凧揚げをしたり釣りをしたり、時には決闘したり下級生の自転車練習に付き合ったりと様々だ。  そんな話を親から聞かされながら育ったせいなのか、僕らの遊び場はもっぱら荒川土手だった。もちろん小学生最後となる六年生の夏休みもいつもと変わらず、いつものように幼馴染で集まってありきたりの遊びに精を出す毎日である。  そして今日は鯉釣りの予定だ。今まで一度も釣り上げたことのない鯉を小学生のうちに釣り上げるのが僕、田口暦(たぐち こよみ)の目標だった。  今日こそはと強い意気込みで釣りを始めた僕だったが、初めての鯉と出会う前に自分を宇宙人だと言う女子、ミクに出会い一目で恋に落ちてしまった。だが夏休みが終わるころには自分の星へ帰ってしまうと言う。  かくして小学生最後の夏休みは、彼女が帰る前に何でもいいから忘れられないくらいの思い出を作り、特別なものにするという目的が最優先となったのだった。  はたして初めての鯉と初めての恋の両方を成就させることができるのだろうか。

シンクの卵

名前も知らない兵士
児童書・童話
小学五年生で文房具好きの桜井春は、小学生ながら秘密組織を結成している。  メンバーは四人。秘密のアダ名を使うことを義務とする。六年生の閣下、同級生のアンテナ、下級生のキキ、そして桜井春ことパルコだ。  ある日、パルコは死んだ父親から手紙をもらう。  手紙の中には、銀貨一枚と黒いカードが入れられており、カードには暗号が書かれていた。  その暗号は市境にある廃工場の場所を示していた。  とある夜、忍び込むことを計画した四人は、集合場所で出くわしたファーブルもメンバーに入れて、五人で廃工場に侵入する。  廃工場の一番奥の一室に、誰もいないはずなのにランプが灯る「世界を変えるための不必要の部屋」を発見する五人。  そこには古い机と椅子、それに大きな本とインクが入った卵型の瓶があった。  エポックメイキング。  その本に万年筆で署名して、正式な秘密組織を発足させることを思いつくパルコ。  その本は「シンクの卵」と呼ばれ、書いたことが現実になる本だった。

処理中です...