上 下
24 / 35
2章 ドラクル伯爵の野望

ブライアンの過去

しおりを挟む
 ブライアンが傷だらけの体をゆっくり立ち上げると、周りに麻里子やほかの団員たちが集まっていました。

「・・・ブライアン、やはり私はあなたには賛同さんどうしない。人間と争うことは望まないし、あなたの横暴おうぼうなやり方についていけないから・・・!」麻里子はシャノンたちの方に戻りました。

「ぼくも・・・戦いなんていやだ!」
「私も、全ての人間が悪いやつとは思わないから」他の団員たちもブライアンからはなれていきます。
「が・・・!」ブライアンはその場にひざをつきました。

 思えば彼は、幼少ようしょうのころから魔力のせいでまわりの人間のこどもたちからはいじめられてきました。

 失意しついの中、前団長に拾われたブライアンは、魔法の修業しゅぎょうに明け暮れ、他の団長よりも早く一級魔いっきゅうま導士どうしになりました。

 そして、その後にやったことは、さらなる修行ではなく、かつてのいじめっこや自分をバカにした者に片っぱしから勝負を挑み、全員、魔法でぶっ飛ばし、勝利することでした。

 それまで自分をあざ笑う視線が、自分におびえ命乞いのちごいをする視線に変わっていったのを、ブライアンは大変愉快ゆかいに感じたのです。

 しかし、それをやっていくにつれ、彼の周りからは人の姿が消えていき、両親もブライアンの事を恐れるようになり、彼は家から追い出されてしまったのです。

 それから、彼は人間に対し、不信感をつのらせるようになり、一部のおろかな人間のふるまいを見ていくうちに、人間に対する憎悪ぞうおやすことになったのでした。

 そして、前団長が年をとってくなった後、ブライアンが団長になると宣言せんげんすると、彼を敵に回したくない団員たちは、意義いぎとなえなかったのです。

 人間だけでなく、同志どうしたちですらはなれていくのを見たブライアンは、もう顔をうなだれるしかありませんでした。そこに、すぐるがブライアンの前でひざまずき、声をかけます。

「・・・顔をあげてくれ」しかし、ブライアンは無言のままうなだれています。
「・・・ぼくも、君と同じように、周りの人間たちからいろいろいじめにあったんだ」それを聞いたブライアンは顔を上げました。

「本当か!?」すぐるは首をたてに振ります。

「ぼくも魔力持ちだからと言う理由で仲間外れにされたり、いじめられたりした。

 でも、ぼくのじいちゃんであるえいじ前団長は、「お前が魔力を持ったのは、普通の人じゃ救えない者を救うためだ、その力を世のため人のために生かせ」ってね」

「そんなの・・・きれいごとだ・・・!」

「それから、こうも言っていたな、「お前がいじめっ子に手を出したら、お前もあいつらと同じになる、なめられる方が負けじゃない、なめるほうが負けだ」ってね、それに」

 すぐるはブライアンが落としたみどりの石かけら『風の破片』を拾います。

「周りを見てよ、君の目指している事って、そこまでボロボロになってまで成しげたいことなの?それをのぞんでいる者はいるの?」
 
 ブライアンが周りを見ると、他の団員たちは全員、すぐるの後ろに集まっているのを見ると、ブライアンは再び頭をうなだれました。

「・・・ぼくの・・・負けだ・・・力でも・・・心でも・・・!」
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

『完結』セプトクルール 勇者エルニスのワンダーランド

マイマイン
児童書・童話
 これは、すぐるがやってくる前の『幻想界』の物語です。ある日突然、平和な国『スピネル王国』にやってきた謎の少年エルニスが、平和を脅かす『魔王軍』に立ち向かう王道ファンタジーです。『セプトクルール』シリーズの始まりの物語をお楽しみください。

セプトクルール 三賢者と虹色の夜明け

マイマイン
児童書・童話
 現実界に住む魔法使いのすぐるが、幻想界へと旅立ち、仲間たちと共に悪魔王カオスを倒して数年後、すぐるは幻想界で出会い、『誓い』を結んだ魔族の少女リリスと共に、現実界で平和な生活をおくっていました。  しかし、祖父から魔力を受け継いでいるすぐるは、現実界での生活にはなじめず、他の生徒たちからは好奇の目で見られたり、化け物扱いされていましたが、祖父から託された使命の事、リリスが亡き両親から託された使命の事などが忘れられず、再び幻想界へ旅立とうと決意をしたのでした。  今回は主人公が三人で、それぞれの物語を進んでいくことになります。

セプトクルール『すぐるとリリスの凸凹大進撃!』

マイマイン
児童書・童話
 『引っ込み思案な魔法使い』の少年すぐると、『悪魔らしくない悪魔』の少女リリスの凸凹カップルが贈る、ドタバタファンタジー短編集です。 このシリーズには、終わりという終わりは存在せず、章ごとの順番も存在しません。 随時、新しい話を載せていきますので、楽しみにしていてください。

声優召喚!

白川ちさと
児童書・童話
 星崎夢乃はいま売り出し中の、女性声優。  仕事があるって言うのに、妖精のエルメラによって精霊たちが暴れる異世界に召喚されてしまった。しかも十二歳の姿に若返っている。  ユメノは精霊使いの巫女として、暴れる精霊を鎮めることに。――それには声に魂を込めることが重要。声優である彼女には精霊使いの素質が十二分にあった。次々に精霊たちを使役していくユメノ。しかし、彼女にとっては仕事が一番。アニメもない異世界にいるわけにはいかない。  ユメノは元の世界に帰るため、精霊の四人の王ウンディーネ、シルフ、サラマンダー、ノームに会いに妖精エルメラと旅に出る。

タロウのひまわり

光野朝風
児童書・童話
捨て犬のタロウは人間不信で憎しみにも近い感情を抱きやさぐれていました。 ある日誰も信用していなかったタロウの前にタロウを受け入れてくれる存在が現れます。 タロウはやがて受け入れてくれた存在に恩返しをするため懸命な行動に出ます。 出会いと別れ、そして自己犠牲のものがたり。

野良の陰陽師少女♪

健野屋文乃
児童書・童話
吾が名は、野良のあき!ゆきちゃんの心の友にして最強の式神使い?! いつもは超名門女子小学校に通っている女の子のあき。 不可思議な式神たちと、心の友、引き籠り中の少女ゆきちゃんとの物語は進行中♪

意味が分かると○○話

ゆーゆ
児童書・童話
すぐに読めちゃうショートショートストーリーズ! 意味が分かると、怖い話や、奇妙な話、時には感動ものまで?! 気軽に読んでみてね!

おっとりドンの童歌

花田 一劫
児童書・童話
いつもおっとりしているドン(道明寺僚) が、通学途中で暴走車に引かれてしまった。 意識を失い気が付くと、この世では見たことのない奇妙な部屋の中。 「どこ。どこ。ここはどこ?」と自問していたら、こっちに雀が近づいて来た。 なんと、その雀は歌をうたい狂ったように踊って(跳ねて)いた。 「チュン。チュン。はあ~。らっせーら。らっせいら。らせらせ、らせーら。」と。 その雀が言うことには、ドンが死んだことを(津軽弁や古いギャグを交えて)伝えに来た者だという。 道明寺が下の世界を覗くと、テレビのドラマで観た昔話の風景のようだった。 その中には、自分と瓜二つのドン助や同級生の瓜二つのハナちゃん、ヤーミ、イート、ヨウカイ、カトッぺがいた。 みんながいる村では、ヌエという妖怪がいた。 ヌエとは、顔は鬼、身体は熊、虎の手や足をもち、何とシッポの先に大蛇の頭がついてあり、人を食べる恐ろしい妖怪のことだった。 ある時、ハナちゃんがヌエに攫われて、ドン助とヤーミでヌエを退治に行くことになるが、天界からドラマを観るように楽しんで鑑賞していた道明寺だったが、道明寺の体は消え、意識はドン助の体と同化していった。 ドン助とヤーミは、ハナちゃんを救出できたのか?恐ろしいヌエは退治できたのか?

処理中です...